『朝』太宰治1

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プレイ回数2582難易度(4.5) 2837打 長文
酒と女に溺れた男の話
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 てんぷり 5857 A+ 6.1 96.1% 457.0 2790 113 50 2024/10/02
2 なり 4564 C++ 4.9 92.5% 570.9 2834 228 50 2024/10/01
3 モロ 2936 E+ 3.0 96.4% 933.7 2846 104 50 2024/10/02

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問題文

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(わたしはあそぶことがなによりもすきなので、いえでしごとをしていながらも、)

私は遊ぶ事が何よりも好きなので、家で仕事をしていながらも、

(ともがえんぽうよりくるのをいつもひそかにこころまちにしているじょうたいで、)

友が遠方より来るのをいつもひそかに心待ちにしている状態で、

(げんかんが、がらっとあくとまゆをひそめ、くちをゆがめて、)

玄関が、がらっとあくと眉をひそめ、口をゆがめて、

(けれどもじつはむねをおどらせ、かきかけのげんこうようしをさっそくとりかたづけて、)

けれども実は胸をおどらせ、書きかけの原稿用紙をさっそく取りかたづけて、

(そのきゃくをむかえる。「あ、これは、おしごとちゅうですね」「いや、なに」)

その客を迎える。「あ、これは、お仕事中ですね」「いや、なに」

(そうしてそのきゃくといっしょにあそびにでる。)

そうしてその客と一緒に遊びに出る。

(けれども、それではいつまでもなにもしごとができないので、)

けれども、それではいつまでも何も仕事が出来ないので、

(ぼうしょにひみつのしごとべやをもうけることにしたのである。)

某所に秘密の仕事部屋を設ける事にしたのである。

(それはどこにあるのか、いえのものにもしらせていない。まいあさくじごろ、)

それはどこにあるのか、家の者にも知らせていない。毎朝九時頃、

(わたしはいえのものにべんとうをつくらせ、それをもってそのしごとべやにしゅっきんする。)

私は家の者に弁当を作らせ、それを持ってその仕事部屋に出勤する。

(さすがにそのひみつのしごとべやにはおとずれてくるひともないので、)

さすがにその秘密の仕事部屋には訪れて来る人も無いので、

(わたしのしごともたいていよていどおりにしんこうする。しかし、ごごのさんじごろになると、)

私の仕事もたいてい予定通りに進行する。しかし、午後の三時頃になると、

(つかれてもくるし、ひとがこいしくもなるし、あそびたくなって、ころあいのところで)

疲れても来るし、人が恋しくもなるし、遊びたくなって、頃合いのところで

(しごとをきりあげ、いえへかえる。かえるとちゅうで、おでんやなどにひっかかって、)

仕事を切り上げ、家へ帰る。帰る途中で、おでん屋などに引っかかって、

(しんやのきたくになることもある。)

深夜の帰宅になる事もある。

(そんなしごとべやは、じつはおんなのひとのへやなのである。)

そんな仕事部屋は、実は女の人の部屋なのである。

(そのわかいおんなのひとが、あさはやくにほんばしのあるぎんこうにしゅっきんする。)

その若い女の人が、朝早く日本橋のある銀行に出勤する。

(そのあとにわたしがいって、し、ごじかんそこでしごとをして、)

その後に私が行って、四、五時間そこで仕事をして、

(おんなのひとがぎんこうからかえってくるまえにたいしゅつする。)

女の人が銀行から帰って来る前に退出する。

(あいじんとかなんとか、そんなものではない。)

愛人とかなんとか、そんなものでは無い。

など

(わたしがそのひとのおかあさんをしっていて、そのおかあさんは、あるじじょうで、)

私がその人のお母さんを知っていて、そのお母さんは、ある事情で、

(そのむすめさんとわかれわかれになって、いまはとうほくのほうでくらしているのである。)

その娘さんと別れ別れになって、今は東北のほうで暮しているのである。

(そうしてときたまわたしにてがみをよこして、そのむすめのえんだんについて、)

そうして時たま私に手紙を寄こして、その娘の縁談について、

(わたしのいけんをもとめたりなどして、わたしもそのこうほしゃのせいねんとあい、)

私の意見を求めたりなどして、私もその候補者の青年と会い、

(あれならいいおむこさんでしょう、さんせいです、)

あれならいいお婿さんでしょう、賛成です、

(なんてかいておくってやったこともあった。)

なんて書いて送ってやった事もあった。

(しかし、いまではそのおかあさんよりも、むすめさんのほうが、)

しかし、今ではそのお母さんよりも、娘さんのほうが、

(わたしをしんらいしているようにおもわれてきた。)

私を信頼しているように思われて来た。

(「きくちゃん。こないだ、あなたのみらいのだんなさんにあったよ」)

「キクちゃん。こないだ、あなたの未来の旦那さんに会ったよ」

(「そう、どうでした。すこし、きざね。そうでしょう」)

「そう、どうでした。少し、キザね。そうでしょう」

(「まあでも、あんなところさ。そりゃもう、ぼくにくらべたら、)

「まあでも、あんなところさ。そりゃもう、僕に比べたら、

(どんなおとこでもあほらしくみえるんだからね。がまんしな」「そりゃ、そうね」)

どんな男でもアホらしく見えるんだからね。我慢しな」「そりゃ、そうね」

(むすめさんは、そのせいねんとあっさりけっこんするきでいるようであった。)

娘さんは、その青年とあっさり結婚する気でいるようであった。

(さくや、わたしはおおざけをのんだ。いや、おおざけをのむのは、まいよのことであって、)

昨夜、私は大酒を飲んだ。いや、大酒を飲むのは、毎夜の事であって、

(なにもめずらしいことではないけれども、そのひしごとばからのかえりに、)

なにも珍しい事ではないけれども、その日仕事場からの帰りに、

(えきのところでひさしぶりのゆうじんとあい、わたしのなじみのおでんやにあんないして)

駅の所で久しぶりの友人と会い、私のなじみのおでん屋に案内して

(おおいにのみ、そろそろさけがくつうになりかけてきたときに、)

おおいに飲み、そろそろ酒が苦痛になりかけて来た時に、

(ざっししゃのへんしゅうしゃが、たぶんここだろうとおもった、といって)

雑誌社の編集者が、多分ここだろうと思った、と言って

(ういすきーじさんであらわれ、そのへんしゅうしゃのあいてをして)

ウイスキー持参で現れ、その編集者の相手をして

(またそのういすきーをいっぽんのみつくして、こりゃもうはくのではなかろうか、)

またそのウイスキーを一本飲みつくして、こりゃもう吐くのではなかろうか、

(どうなるのだろう、とじぶんながらおそろしくなってきて、)

どうなるのだろう、と自分ながら恐ろしくなってきて、

(さすがにもう、このへんでよそうとおもっても、)

さすがにもう、このへんでよそうと思っても、

(こんどはゆうじんがせきをあらためてぼくにこれからおごらせてくれ、といいだし、)

今度は友人が席を改めて僕にこれからおごらせてくれ、と言い出し、

(でんしゃにのって、そのゆうじんのなじみのこりょうりやにひっぱっていかれ、)

電車に乗って、その友人のなじみの小料理屋に引っ張って行かれ、

(そこでもまたにほんしゅをのみ、やっとそのゆうじんとへんしゅうしゃ、)

そこでもまた日本酒を飲み、やっとその友人と編集者、

(りょうにんとわかれたときには、わたしはもうあるけないくらいによっていた。)

両人と別れた時には、私はもう歩けないくらいに酔っていた。

(「とめてくれ。いえまであるいていけそうもないんだ。このままねちまうからね、)

「泊めてくれ。家まで歩いていけそうもないんだ。このまま寝ちまうからね、

(たのむよ」わたしは、こたつにあしをつっこみ、きもののうわぎをきたままねた。)

頼むよ」私は、コタツに足を突っ込み、着物の上着を着たまま寝た。

(よなかに、ふとめがさめた。まっくらである。)

夜中に、ふと眼がさめた。真っ暗である。

(すうびょうかん、わたしはじぶんのいえでねているようなきがしていた。)

数秒間、私は自分の家で寝ているような気がしていた。

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