『虻のおれい』夢野久作2【完】
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問題文
(それからなんにちもたってから、ちえこさんがおざしきでうたたねをしていたあいだに、)
それから何日もたってから、チエ子さんがお座敷でうたた寝をしていた間に、
(おかあさまはちょっとおかいものにいかれました。そのるすのことでした。)
お母さまはちょっとお買物に行かれました。その留守の事でした。
(だいどころのほうからひとりのどろぼうがはいってきまして、)
台所の方から一人の泥棒が入ってきまして、
(ちえこさんがねているのをみつけますと、)
チエ子さんが寝ているのを見つけますと、
(つかつかとちかよってゆすぶりおこしました。)
つかつかと近寄って揺すぶり起こしました。
(ちえこさんはびっくりしてめをさましますと、)
チエ子さんはビックリして目を覚ましますと、
(めのまえにきみのわるいかおをしたおおきなおとこがにやにやわらってたっております。)
目の前に気味の悪い顔をした大きな男がニヤニヤ笑って立っております。
(ちえこさんはめをこすりながら、「おじさんだあれ」といいました。)
チエ子さんは目をこすりながら、「おじさんだあれ」と言いました。
(どろぼうはやっぱりにやにやわらいながら、「かわいいおじょうさんだね。)
泥棒はやっぱりニヤニヤ笑いながら、「可愛いお嬢さんだね。
(いいこだから、おかねはどこにしまってあるかおしえておくれ」といいました。)
いい子だから、お金はどこにしまってあるか教えておくれ」と言いました。
(ちえこさんはめをぱちぱちさせてなきだしそうなかおをしながら、)
チエ子さんは目をパチパチさせて泣き出しそうな顔をしながら、
(「あたししらない。おじさんはどこのひと」とたずねました。)
「あたし知らない。おじさんはどこの人」と尋ねました。
(どろぼうはこわいかおになって、ふところからぴかぴかひかるほうちょうをだして)
泥棒は怖い顔になって、ふところからピカピカ光る包丁を出して
(みせながら、「ないたらきかないぞ。さ、おまえのおかあさんは、)
見せながら、「泣いたらきかないぞ。さ、お前のお母さんは、
(おかねをどこにしまっているか。いわないとこれでころしてしまうぞ」)
お金をどこにしまっているか。言わないとこれで殺してしまうぞ」
(といいました。ちえこさんは、「おかあさん」となきながらにげだしました。)
と言いました。チエ子さんは、「お母さん」と泣きながら逃げ出しました。
(「このやつ、にげたな」とどろぼうはいきなりおっかけて)
「このやつ、逃げたな」と泥棒はいきなり追っかけて
(ちえこさんをつかまえようとしました。)
チエ子さんを捕まえようとしました。
(そのとき、ぶーんとうなっていっぴきのあぶがとんできて、)
その時、ブーンと唸って一匹のアブが飛んで来て、
(どろぼうのめのまえでぶるんぶるんぶるんとまわりはじめました。)
泥棒の目の前でブルンブルンブルンと回り始めました。
(どろぼうはじゃまになるので、「こんちくしょう、こんちくしょう」)
泥棒は邪魔になるので、「こんちくしょう、こんちくしょう」
(とはらいのけようとしましたが、なかなかはらいのけられません。)
と払いのけようとしましたが、なかなか払いのけられません。
(そのうちにちえこさんは、「おかあさん、おかあさん」とさけびながら)
そのうちにチエ子さんは、「お母さん、お母さん」と叫びながら
(しょうじをあけて、えんがわのほうににげていきます。「にがしてなるものか」と)
障子を開けて、縁側の方に逃げていきます。「逃がしてなるものか」と
(どろぼうはいっしょうけんめいになって、とうとうあぶをたたきおとしておっかけてきました。)
泥棒は一生懸命になって、とうとうアブを叩き落として追っかけてきました。
(そうすると、あぶはたたきおとされてちょっとしんだようになりましたが、)
そうすると、アブは叩き落とされてちょっと死んだようになりましたが、
(またとびあがってどろぼうのあしへとびついてちからいっぱいくいつきました。)
また飛び上って泥棒の足へ飛びついて力一杯食いつきました。
(「あいた」とどろぼうはうしろむきにたちどまるひょうしにえんがわからあしをすべらして、)
「アイタ」と泥棒はうしろ向きに立ち止まる拍子に縁側から足をすべらして、
(いしのうえにおっこちてあたまをうってめをまわしてしまいました。)
石の上に落っこちて頭を打って目を回してしまいました。
(そのうちにちえこさんはおもてへでて、とおりがかりのおまわりさんに)
そのうちにチエ子さんは表へ出て、通りがかりのおまわりさんに
(このことをいいましたので、どろぼうはすぐにしばられてしまいました。)
この事を言いましたので、泥棒はすぐに縛られてしまいました。
(おかあさんがおかえりになってこのおはなしをおききになると、)
お母さんがお帰りになってこのお話をお聞きになると、
(なみだをこぼしてちえこさんをだきしめておよろこびになりました。)
涙をこぼしてチエ子さんを抱きしめてお喜びになりました。
(そのときに、ちえこさんがえんがわをみると、いっぴきのあぶがしんでおちておりました。)
その時に、チエ子さんが縁側を見ると、一匹のアブが死んで落ちておりました。
(「おかあさん、ごらんなさい。このあいだのあぶがどろぼうをさしたのよ。)
「お母さん、ご覧なさい。この間のアブが泥棒を刺したのよ。
(あたしがたすけてやったおれいをしてくれたのよ」といいました。)
あたしが助けてやったお礼をしてくれたのよ」と言いました。
(おかあさんは、おうなずきになりました。)
お母さんは、おうなずきになりました。
(そのばん、おとうさんがおかえりになっておかあさんがこのおはなしをされますと、)
その晩、お父さんがお帰りになってお母さんがこのお話をされますと、
(おとうさまはちえこのあたまをなでながら、)
お父さまはチエ子の頭をなでながら、
(「あぶとおはなししたこはせかいじゅうでちえこひとりだろう」とおわらいになりました。)
「アブとお話しした子は世界中でチエ子一人だろう」とお笑いになりました。
(ちえこさんはあぶのおはかをつくってやりました。)
チエ子さんはアブのお墓を作ってやりました。