『怪人二十面相』江戸川乱歩3

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(もしぞくがこのなかへあしをふみいれたら、ねずみとりと)

もし賊がこの中へ足を踏み入れたら、ネズミ捕りと

(おなじぐあいに、たちまちぱちんとりょうほうののこぎりが)

同じ具合に、たちまちパチンと両方のノコギリが

(あわさって、まるでまっくろな、でっかいもうじゅうのはの)

合わさって、まるで真っ黒な、でっかい猛獣の歯の

(ように、ぞくのあしくびにくいこんでしまうのです。)

ように、賊の足首に食い込んでしまうのです。

(いえのひとがわなにかかってはたいへんですが、かだんのまんなか)

家の人が罠にかかっては大変ですが、花壇の真ん中

(ですから、ぞくでもなければ、めったにそんなところへ)

ですから、賊でもなければ、滅多にそんな所へ

(ふみこむものはいません。「これでよしと。でも、)

踏みこむ者はいません。「これでよしと。でも、

(うまくいくかな。まんがいち、ぞくがこいつにあしくびを)

上手くいくかな。万が一、賊がこいつに足首を

(はさまれてうごけなくなったら、さぞゆかい)

はさまれて動けなくなったら、さぞ愉快

(だろうなあ。どうかうまくいってくれますように」)

だろうなあ。どうか上手くいってくれますように」

(そうじくんは、かみさまにおいのりするようなかっこうをして、)

壮二君は、神さまにお祈りするようなかっこうをして、

(それからにやにやわらいながら、いえのなかへはいって)

それからニヤニヤ笑いながら、家の中へ入って

(いきました。じつに、こどもらしいおもいつきでした。)

行きました。実に、子どもらしい思いつきでした。

(しかししょうねんのちょっかんというものは、けっしてばかに)

しかし少年の直感というものは、決してバカに

(できません。そうじくんのしかけたわながのちに、)

出来ません。壮二君の仕掛けた罠がのちに、

(どんなじゅうだいなやくめをはたすことになるか、)

どんな重大な役目を果たすことになるか、

(どくしゃしょくんは、このわなのことをよくきおくして)

読者諸君は、この罠のことをよく記憶して

(おいていただきたいのです。)

おいていただきたいのです。

(「ひとかまか」)

「人か魔か」

(そのごごにははしばけそうどういんで、そういちくんをはねだくうこうへ)

その午後には羽柴家総動員で、壮一君を羽田空港へ

など

(でむかえにいきました。ひこうきからおりたった)

出迎えに行きました。飛行機から降り立った

(そういちくんはよそうどおり、じつにさっそうとしたすがたでした。)

壮一君は予想通り、実に颯爽とした姿でした。

(こげちゃいろのうすいうわぎをこわきにかかえて、おなじいろの)

焦げ茶色の薄い上着を小脇に抱えて、同じ色の

(だぶるぼたんのせびろをきちんときこなし、おりめの)

ダブルボタンの背広をキチンと着こなし、折り目の

(ただしいずぼんがすーっとながくみえて、えいがのなかの)

正しいズボンがスーッと長く見えて、映画の中の

(せいようじんみたいなかんじがしました。おなじこげちゃいろの)

西洋人みたいな感じがしました。 同じ焦げ茶色の

(そふとぼうのしたに、ぼうしのいろとあまりちがわない、)

ソフト帽の下に、帽子の色と余り違わない、

(ひにやけたいろの、でもうつくしいかおがにこにこわらって)

日に焼けた色の、でも美しい顔がニコニコ笑って

(いました。こいまゆげ、よくひかるおおきなめ、わらうたびに)

いました。濃い眉毛、よく光る大きな目、笑う度に

(みえる、よくそろったまっしろなは、それから)

見える、よく揃った真っ白な歯、それから

(くちびるのうえにあるくちひげが、なんともいえない)

唇の上にある口ヒゲが、何とも言えない

(なつかしさでした。しゃしんとそっくりです。)

懐かしさでした。写真とソックリです。

(いや、しゃしんよりいちだんとりっぱでした。みんなと)

いや、写真より一段と立派でした。 みんなと

(あくしゅをかわすとそういちくんは、おとうさんと)

握手をかわすと壮一君は、お父さんと

(おかあさんにはさまれて、じどうしゃにのりました。)

お母さんに挟まれて、自動車に乗りました。

(そうじくんは、おねえさんやこんどうろうじんといっしょの、)

壮二君は、お姉さんや近藤老人と一緒の、

(うしろのじどうしゃでしたが、くるまがはしるあいだも、)

後ろの自動車でしたが、車が走るあいだも、

(うしろのまどからみえるおにいさんのすがたをじっと)

後ろの窓から見えるお兄さんの姿をジッと

(みつめていると、なんだかうれしさがこみあげて)

見つめていると、なんだか嬉しさが込み上げて

(くるようでした。きたくして、いちどうがそういちくんを)

くるようでした。 帰宅して、一同が壮一君を

(とりかこんで、なにかとはなしているうちに、もうゆうがた)

取り囲んで、何かと話しているうちに、もう夕方

(でした。しょくどうには、おかあさんがこころをこめてつくった)

でした。食堂には、お母さんが心を込めて作った

(ばんさんがよういされました。あたらしいてーぶるくろすで)

晩餐が用意されました。 新しいテーブルクロスで

(おおったおおきなしょくたくのうえには、うつくしいあきのはなが)

覆った大きな食卓の上には、美しい秋の花が

(かざられ、ひとりひとりのせきには、ぎんのないふやふぉーくが)

飾られ、一人一人の席には、銀のナイフやフォークが

(きらきらとひかっていました。きょうはいつもと)

キラキラと光っていました。今日はいつもと

(ちがって、ちゃんとせいしきにおりたたんだなぷきんが)

違って、チャンと正式に折り畳んだナプキンが

(でていました。しょくじちゅうは、そういちくんがだんわの)

出ていました。 食事中は、壮一君が談話の

(ちゅうしんでした。めずらしいなんようのはなしが、つぎからつぎへと)

中心でした。珍しい南洋の話が、次から次へと

(かたられました。そのあいだにはいえでいぜんの、)

語られました。そのあいだには家出以前の、

(しょうねんじだいのおもいでばなしもさかんにとびだしました。)

少年時代の思い出話も盛んに飛び出しました。

(「そうじくん、きみはそのころ、まだあんよができるように)

「壮二君、きみはその頃、まだあんよが出来るように

(なったばかりでね。ぼくのべんきょうべやへしんにゅうして、)

なったばかりでね。ぼくの勉強部屋へ侵入して、

(つくえのうえをひっかきまわしたりしたものだよ。)

机の上を引っ掻きまわしたりしたものだよ。

(いつだったか、いんくのはいったつぼを)

いつだったか、インクの入ったツボを

(ひっくりかえして、そのてでかおをさわって、)

引っくり返して、その手で顔をさわって、

(こくじんみたいになってね、おおさわぎをしたことがあるよ。)

黒人みたいになってね、大騒ぎをしたことがあるよ。

(ねえ、おかあさん」おかあさんは、そんなことが)

ねえ、お母さん」お母さんは、そんなことが

(あったかしらと、よくおもいだせませんでしたが、)

あったかしらと、よく思い出せませんでしたが、

(ただうれしさになみだをうかべて、にこにこと)

ただ嬉しさに涙を浮かべて、ニコニコと

(うなずいていました。ところがです。)

うなずいていました。ところがです。

(どくしゃしょくん、こうしたいっかのよろこびは、あるおそろしい)

読者諸君、こうした一家の喜びは、ある恐ろしい

(できごとによって、じつにとつぜん、まるでばいおりんの)

出来事によって、実に突然、まるでバイオリンの

(いとがきれたように、ぷっつりとたちきられて)

糸が切れたように、プッツリと断ち切られて

(しまいました。なんというおもいやりのないあくま)

しまいました。なんという思いやりのない悪魔

(でしょう。おやこきょうだいじゅうねんぶりのさいかい、いっしょうにいちど)

でしょう。親子兄弟十年ぶりの再会、一生に一度

(というめでたいせきで、そのしあわせをのろうかのように、)

というめでたい席で、その幸せを呪うかのように、

(あいつのぶきみなすがたが、もうろうとたちあらわれた)

あいつの不気味な姿が、もうろうと立ち現れた

(のです。おもいでばなしのさいちゅうへ、)

のです。 思い出話のさいちゅうへ、

(ひしょがいっつうのでんぽうをもってはいってきました。)

秘書が一通の電報を持って入って来ました。

(いくらはなしにむちゅうになっていても、でんぽうとあっては、)

いくら話に夢中になっていても、電報とあっては、

(ひらいてみないわけにはいきません。そうたろうしは)

ひらいて見ない訳にはいきません。壮太郎氏は

(すこしかおをしかめて、そのでんぽうをよみましたが、)

少し顔をしかめて、その電報を読みましたが、

(すると、どうしたことか、にわかにむっつりと)

すると、どうしたことか、にわかにムッツリと

(だまりこんでしまったのです。「おとうさん、)

黙り込んでしまったのです。「お父さん、

(なにかごしんぱいなことでも」そういちくんが、めざとくそれを)

何かご心配なことでも」壮一君が、目ざとくそれを

(みつけてたずねました。「うん、こまったものが)

見つけてたずねました。「うん、困ったものが

(とびこんできた。おまえたちにしんぱいさせたくないが、)

飛び込んできた。お前たちに心配させたくないが、

(こういうものがくるようでは、こんやはよほど)

こういうものが来るようでは、今夜は余程

(ようじんしないといけない」そういって、おみせに)

用心しないといけない」そう言って、お見せに

(なったでんぽうには、「こんやじゅうにじにおやくそくのものを)

なった電報には、「今夜十二時にお約束の物を

(うけとりにいく」とありました。これは、)

受け取りに行く」とありました。これは、

(にじゅうめんそうからで、ごぜんれいじぴったりに、)

二十面相からで、午前零時ピッタリに、

(ぬすみだすぞという、かくしんにみちたぶんです。)

盗み出すぞという、確信にみちた文です。

(「これは、もしやにじゅうめんそうのぞくのことでは)

「これは、もしや二十面相の賊のことでは

(ありませんか」そういちくんがはっとしたように、)

ありませんか」 壮一君がハッとしたように、

(おとうさんをみつめていいました。)

お父さんを見つめて言いました。

(「そうだよ。おまえ、よくしっているね」)

「そうだよ。お前、よく知っているね」

(「しものせきにじょうりくしてから、たびたびそのうわさを)

「下関に上陸してから、度々そのウワサを

(ききました。ひこうきのなかで、しんぶんもよみました。)

聞きました。飛行機の中で、新聞も読みました。

(とうとう、うちをねらったのですね。しかし、)

とうとう、うちを狙ったのですね。しかし、

(あいつはなにをほしがっているのです」「わしは、)

あいつは何を欲しがっているのです」「わしは、

(おまえがいなくなってから、きゅうろしあこうていのかんむりを)

お前が居なくなってから、旧ロシア皇帝の冠を

(かざっていただいやもんどを、てにいれたのだよ。)

飾っていたダイヤモンドを、手に入れたのだよ。

(ぞくはそれをぬすんでみせるというのだ」そうして)

賊はそれを盗んでみせると言うのだ」そうして

(そうたろうしは、にじゅうめんそうのぞくについて、またその)

壮太郎氏は、二十面相の賊について、またその

(よこくじょうについて、くわしくはなしてきかせました。)

予告状について、詳しく話して聞かせました。

(「しかし、こんやはおまえがいてくれるので、)

「しかし、今夜はお前が居てくれるので、

(こころづよいよ。とりあえず、おまえとふたりで、)

心強いよ。とりあえず、お前と二人で、

(ほうせきのまえで、ねないでみはりでもするかな」)

宝石の前で、寝ないで見張りでもするかな」

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