半七捕物帳 猫騒動13

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第12話

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問題文

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(「いや、かくしてもしっている。おめえはあのさかなやにちえをつけて、)

「いや、隠しても知っている。おめえはあの魚商(さかなや)に知恵をつけて、

(となりちょうのさんきちのところへそうだんにいけといっていたろう。さっきもくまぞうが)

隣り町の三吉のところへ相談に行けと云っていたろう。さっきも熊蔵が

(いったとおり、そのばんにあのしちのすけがてんびんぼうでおふくろをなぐりころした。)

云った通り、その晩にあの七之助が天秤棒でおふくろをなぐり殺した。

(それをおめえはしっていながら、あいつをかばってさんきちのところへ)

それをおめえは知っていながら、あいつを庇(かば)って三吉のところへ

(にがしてやった。さんきちがまたいいかげんなことをいってしらばっくれて)

逃がしてやった。三吉がまた好い加減なことを云って白ばっくれて

(しちのすけをひっぱってきた。さあ、どうだ。このうらないがはずれたらぜにはとらねえ。)

七之助を引っ張って来た。さあ、どうだ。この占いがはずれたら銭は取らねえ。

(ながやじゅうのものはそれでごまかされるかしらねえが、おれたちがすなおに)

長屋じゅうの者はそれで誤魔化されるか知らねえが、おれ達が素直に

(それをしょうちするんじゃあねえ。しちのすけはもちろんのことだが、いっしょになって)

それを承知するんじゃあねえ。七之助は勿論のことだが、一緒になって

(しばいをうったさんきちもおまえもどうるいだ。かたっぱしからじゅずつなぎにするから)

芝居を打った三吉もお前も同類だ。片っ端から数珠つなぎにするから

(そうおもってくれ」)

そう思ってくれ」

(かさにかかって、おどされたおはつはわっとなきだした。かれはどまにすわって、)

嵩にかかって、嚇されたお初はわっと泣き出した。かれは土間に坐って、

(かんにんしてくれとおがんだ。)

堪忍してくれと拝んだ。

(「しだいによったらかんにんしてやるめえものでもねえが、おじひがねがいたければ)

「次第によったら堪忍してやるめえものでもねえが、お慈悲が願いたければ

(まっすぐにはくじょうしろ。どうだ、おれがにらんだにそういあるめえ。)

真っ直ぐに白状しろ。どうだ、おれが睨んだに相違あるめえ。

(おめえとさんきちとがぐるになって、しちのすけのきょうじょうをかばっているんだろう」)

おめえと三吉とが同腹(ぐる)になって、七之助の兇状を庇っているんだろう」

(「おそれいりました」と、おはつはふるえながらつちにてをついた。)

「恐れ入りました」と、お初はふるえながら土に手をついた。

(「おそれいったらしょうじきにいってくれ」と、はんしちはこえをやわらげた。)

「恐れ入ったら正直に云ってくれ」と、半七は声をやわらげた。

(「そこで、あのしちのすけはなぜおふくろをころしたんだ。おやこうこうだというから、)

「そこで、あの七之助はなぜおふくろを殺したんだ。親孝行だというから、

(さいしょからたくんだしごとじゃあるめえが、なにかけんかでもしたのか」)

最初から巧んだ仕事じゃあるめえが、なにか喧嘩でもしたのか」

(「おふくろさんがねこになったんです」と、おはつはおもいだしても)

「おふくろさんが猫になったんです」と、お初は思い出しても

など

(ぞっとするというようにかたをすくめた。)

慄然(ぞっ)とするというように肩をすくめた。

(はんしちはわらいながらまゆをよせた。)

半七は笑いながら眉を寄せた。

(「ふむう。ねこばばがねこになった・・・・・・。それもなにかしばいのすじがきじゃあねえか」)

「ふむう。猫婆が猫になった……。それも何か芝居の筋書きじゃあねえか」

(「いいえ。これはほんとうで、うそもいつわりももうしあげません。)

「いいえ。これはほんとうで、嘘も詐(いつわ)りも申し上げません。

(ここのうちのおまきさんはまったくねこになったんです。そのときには)

ここの家のおまきさんはまったく猫になったんです。その時には

(わたくしもぞっとしました」)

わたくしもぞっとしました」

(たしかにみたとおはつはいった。)

確かに見たとお初は云った。

(「それがこういうわけなんです。おまきさんのうちにねこがたくさんかってある)

「それがこういう訳なんです。おまきさんの家に猫がたくさん飼ってある

(じぶんには、そのねこにたべさせるんだといって、しちのすけさんはしょうばいもののおさかなを)

時分には、その猫に食べさせるんだと云って、七之助さんは商売物のお魚を

(まいにちいくひきずつかのこして、うちへかえっていたんです。そのうちにねこは)

毎日幾尾(ひき)ずつか残して、家へ帰っていたんです。そのうちに猫は

(みんなしばうらのうみへほうりこまれてしまって、うちにはいっぴきも)

みんな芝浦の海へほうり込まれてしまって、家には一匹も

(いなくなったんですけれども、おふくろさんはやっぱりいままでどおりに)

いなくなったんですけれども、おふくろさんはやっぱり今まで通りに

(さかなをもってかえれというんだそうです。しちのすけさんはおとなしいから)

魚を持って帰れと云うんだそうです。七之助さんはおとなしいから

(なんでもすなおにあいあいといっていたんですけれども、うちのひとが)

何でも素直にあいあいと云っていたんですけれども、良人(うちのひと)が

(それをききまして、そんなばかなはなしはない、うちにいもしないねこに)

それを聞きまして、そんな馬鹿な話はない、家にいもしない猫に

(たかいさかなをたくさんもってくるにはおよばないから、)

高価(たか)い魚をたくさん持って来るには及ばないから、

(もうよしたほうがいいとしちのすけさんにいけんしました」)

もう止した方がいいと七之助さんに意見しました」

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