半七捕物帳 三河万歳7

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第17話
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 おっ 8079 8.3 96.8% 398.3 3328 110 64 2024/03/06
2 berry 8053 8.1 98.6% 406.4 3319 46 64 2024/03/07
3 デコポン 6717 S+ 6.9 97.0% 482.5 3344 103 64 2024/03/03
4 かす 6311 S 6.6 95.2% 505.4 3358 168 64 2024/03/25
5 miko 6030 A++ 6.1 97.4% 540.1 3343 86 64 2024/04/13

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問題文

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(とみぞうのねこはこういうじじょうでうしなわれたのであった。かれがはんしちにたいして、)

富蔵の猫はこういう事情で失われたのであった。かれが半七に対して、

(あくまでしらないとごうじょうをはっていたのは、たといじぶんにそうとうのりが)

飽くまで知らないと強情を張っていたのは、たとい自分に相当の理が

(あるとはいえ、ものとりどうようにあいてをてごめにして、そのかみいれを)

あるとは云え、物取り同様に相手を手籠(てご)めにして、その紙入れを

(むたいにとりあげたという、うしろぐらいかどがあるからであろうと)

無体に取りあげたという、うしろ暗い廉(かど)があるからであろうと

(そうぞうされた。)

想像された。

(「それからどうしたね。そのおとこはあとがねをもってきたらしいかえ」)

「それからどうしたね。その男は後金(あとがね)を持って来たらしいかえ」

(と、はんしちはまたきいた。)

と、半七はまた訊いた。

(「そのばんはぶじにすんで、そのひとはそれからおつがさんのいえで)

「その晩は無事に済んで、その人はそれからお津賀さんの家で

(こいっときもはなしてかえったようでしたが、そのあくるばん)

小一刻(こいっとき)も話して帰ったようでしたが、その明くる晩

(またでなおしてくると、なんだかおつがさんとけんかをはじめて、)

また出直して来ると、なんだかお津賀さんと喧嘩をはじめて、

(りょうほうがよっていたらしいんですが、おつがさんはそのひとをつかまえて)

両方が酔っていたらしいんですが、お津賀さんはその人をつかまえて

(おもてへつきだしてしまったんです」)

表へ突き出してしまったんです」

(「ひどいおんなだな」と、かめきちはめをまるくした。)

「ひどい女だな」と、亀吉は眼を丸くした。

(「そりゃなかなかつよいんですから」と、にょうぼうはあざけるように)

「そりゃなかなか強いんですから」と、女房は嘲(あざけ)るように

(わらっていた。「おまえさんのようないくじなしはどうだとかこうだとかいって、)

笑っていた。「お前さんのような意気地なしはどうだとか斯うだとか云って、

(そりゃあもうひどいけんまくで・・・・・・。かりにもせけんにたいしてはおじさんだとか)

そりゃあもうひどい権幕で……。かりにも世間に対しては叔父さんだとか

(いっているひとを、さんざんこづきまわして、おもてへつきだしてしまったんです。)

云っている人を、さんざん小突きまわして、表へ突き出してしまったんです。

(それでもそのひとはなんにもいわないで、おとなしくしおしおと)

それでも其の人はなんにも云わないで、おとなしく悄々(しおしお)と

(でていきました。もっともおつがさんにかかっちゃあたいていのおとこは)

出て行きました。もっともお津賀さんにかかっちゃあ大抵の男は

(かなわないのかもしれませんよ」)

かなわないのかも知れませんよ」

など

(「そのおつがさんというのはいえにいるかえ」と、はんしちはうしろを)

「そのお津賀さんというのは家にいるかえ」と、半七はうしろを

(みかえりながらきいた。)

見かえりながら訊いた。

(おなじうらながやでもおつがのいえはこぎれいにすまっているらしく、)

おなじ裏長屋でもお津賀の家は小綺麗に住まっているらしく、

(のきにはかめいどのらいよけのおふだがはってあった。)

軒には亀戸(かめいど)の雷除(らいよ)けの御札が貼ってあった。

(おもてのとはあいかわらずじょうをおろしてあるので、うちのようすはわからなかった。)

表の戸は相変わらず錠をおろしてあるので、内の様子はわからなかった。

(「ゆうべからかえってこないようですよ」と、にょうぼうはまたわらった。)

「ゆうべから帰って来ないようですよ」と、女房はまた笑った。

(「で、どうだい。となりのとみぞうとおかしいようなようすはないかね」)

「で、どうだい。隣りの富蔵とおかしいような様子はないかね」

(「そりゃあわかりませんね。あのひとのことですから」)

「そりゃあ判りませんね。あの人のことですから」

(「そうだろう」と、はんしちもわらった。「いや、ひのみじけえのに)

「そうだろう」と、半七も笑った。「いや、日の短けえのに

(てまづいえをさせてすみません。さあ、かめ。もういこうぜ」)

手間費(てまづい)えをさせて済みません。さあ、亀。もう行こうぜ」

(にょうぼうにあいさつして、ふたりはろじのそとへでた。)

女房に挨拶して、ふたりは露地の外へ出た。

(「おやぶん。ふしぎなことがあるもんですね」)

「親分。不思議なことがあるもんですね」

(「むむ、ひろいせけんにはいろいろのことがある」と、はんしちはうなずいた。)

「むむ、広い世間にはいろいろのことがある」と、半七はうなずいた。

(「だが、まあ、ここまであしをはこんだこうのうはある。それでもうたいていけんとうは)

「だが、まあ、ここまで足を運んだ効能はある。それでもう大抵見当は

(ついたが、こんどはそのおにっこのでどころだ。いや、それもすぐにわかるだろう。)

付いたが、今度はその鬼っ児の出どころだ。いや、それもすぐに判るだろう。

(それでおまえのほうはもうねんあけらしい。おれはわきへまわるからここでわかれようぜ」)

それでお前の方はもう年明けらしい。おれは脇へ廻るからここで別れようぜ」

(「とみのやろうはどうしましょう」)

「富の野郎はどうしましょう」

(「さあ、いまのところじゃあしようがねえ。まあうっちゃっておけ」)

「さあ、今のところじゃあしようがねえ。まあ打っちゃって置け」

(「あい」と、かめきちはしぶしぶにわかれていった。)

「あい」と、亀吉は渋々に別れて行った。

(あまりながおいをするほどのじけんでもないとおもったが、かれのしょうぶんとして)

あまり長追いをするほどの事件でもないと思ったが、かれの性分として

(なんでもさいごまでつきとめなければきがすまないので、はんしちはそのあしで)

なんでも最後まで突き留めなければ気が済まないので、半七はその足で

(やまのてまでのぼってゆくと、ふゆのひはもうくれかかってさむそうなからすのかげが)

山の手まで登ってゆくと、冬の日はもう暮れかかって寒そうな鴉の影が

(おほりのまつのうえにまよっていた。こうじまちごちょうめのみかわやへたずねてゆくと、)

御堀の松の上に迷っていた。麹町五丁目の三河屋へたずねてゆくと、

(すじむこうのたばこやのみせさきにぜんぱちがこしかけていた。)

筋向うの煙草屋の店さきに善八が腰かけていた。

(「おやぶん、いけねえ。いちまるはまだかえらねえようですよ」と、)

「親分、いけねえ。市丸はまだ帰らねえようですよ」と、

(かれはまちくたびれたようにいった。)

かれは待ちくたびれたように云った。

(「おおきにごくろう。そのいちまるのところへちかごろおんながたずねてきたらしい)

「大きに御苦労。その市丸のところへ近ごろ女がたずねて来たらしい

(ようすはねえか」)

様子はねえか」

(「きました、きました。じょちゅうにきいたら、なんでもこいきなにじゅうごろくのおんなが)

「来ました、来ました。女中に聞いたら、なんでも小粋な二十五六の女が

(に、さんどたずねてきたそうです。おまえさんよくしっていますね」)

二、三度たずねて来たそうです。お前さんよく知っていますね」

(「むむ、しっている」とはんしちはわらっていた。「もうたいていわかっているんだから、)

「むむ、知っている」と半七は笑っていた。「もう大抵判っているんだから、

(きょうはこのくらいにしておこう。おめえもかぞえびにここでいつまでも)

きょうはこのくらいにしておこう。おめえも数え日にここでいつまでも

(すずんでもいられめえ。いえへかえってかかあが)

納涼(すず)んでもいられめえ。家へ帰って嬶(かかあ)が

(のしもちをきるてつだいでもしてやれ」)

熨斗餅(のしもち)を切る手伝いでもしてやれ」

(「じゃあ、もうようがすかえ」 「もうよかろう」)

「じゃあ、もうようがすかえ」 「もうよかろう」

(ふたりはつれだってかんだへかえった。さむいかぜはよどおしふきつづけたので、)

ふたりは連れ立って神田へ帰った。寒い風は夜通し吹きつづけたので、

(かじばやいえどにすんでいるひとたちはそのばんおちおちねむられなかった。)

火事早い江戸に住んでいる人達はその晩おちおち眠られなかった。

(とりわけてごようをもっているからだのはんしちは、いよいよめがさえて)

とりわけて御用を持っているからだの半七は、いよいよ眼が冴えて

(まんじりともしなかった。あくるあさななつ(ごぜんよじ)ごろからねどこをぬけだして、)

まんじりともしなかった。あくる朝七ツ(午前四時)頃から寝床をぬけ出して、

(あんどんのあかりでたばこをのんでいると、われるようにおもてのとをたたくものがあった。)

行燈の灯で煙草をのんでいると、割れるように表の戸を叩く者があった。

(「だれだ。だれだ」 「わっしです。かめです」と、そとであわただしくよんだ。)

「誰だ。誰だ」 「わっしです。亀です」と、外であわただしく呼んだ。

(「とうふやか。ばかにはええな」)

「豆腐屋か。馬鹿に早えな」

(いえのものはまだおきないので、はんしちはじぶんでたってとをあけると、)

家の者はまだ起きないので、半七は自分で起って戸をあけると、

(かめきちはいきをはずませてころげこんできた。 「おやぶん。とみぞうがやられた」)

亀吉は息をはずませて転げ込んで来た。 「親分。富蔵が殺(や)られた」

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