半七捕物帳 三河万歳2

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第17話
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 すもさん 5727 A 6.0 95.5% 517.7 3111 146 51 2024/04/27
2 じゅんこ 5270 B++ 5.5 95.9% 549.7 3025 128 51 2024/03/10
3 にこーる 4989 B 5.2 95.9% 609.9 3178 135 51 2024/03/23

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問題文

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(おとこはいきがたえていた。しわすのかぜのさむいいちやをしにんのふところに)

男は息が絶えていた。師走(しわす)の風の寒い一夜を死人のふところに

(だかれていたあかごは、もうなきかれてこえもでなかったが、)

抱かれていた赤児は、もう泣き嗄(か)れて声も出なかったが、

(これはまださいわいにいきていた。ついめとはなのあいだのできごとであるから、)

これはまだ幸いに生きていた。つい眼と鼻のあいだの出来事であるから、

(けんしのまだおりないうちにはんしちはすぐにそのばへかけつけてみると、)

検視のまだ下りないうちに半七はすぐに其の場へ駈け付けてみると、

(しんだおとこのからだにはなにもあやしいきずのあとはなかった。)

死んだ男のからだには何も怪しい疵(きず)のあとは無かった。

(だいているあかごにもべつじょうはなかった。しかしはんしちをおどろかしたのは、)

抱いている赤児にも別状はなかった。しかし半七をおどろかしたのは、

(そのあかごがにほんのするどいきばをもっていることであった。)

その赤児が二本の鋭い牙をもっていることであった。

(あかごはうまれてからまだふたつきかみつきしかたつまいとおもわれるぐらいの)

赤児は生まれてからまだ二タ月か三月しか経つまいと思われるぐらいの

(みずこであったが、そのうわあごのさゆうにはいっぽんずつのきばがはえていた。)

嬰児(みずこ)であったが、その上顎の左右には一本ずつの牙が生えていた。

(ぞくにいうおにっこである。このおにっこをかかえておうらいにたおれていたおとこーー)

俗にいう鬼っ児である。この鬼っ児をかかえて往来に倒れていた男ーー

(それにはなにかのしさいがあるらしくおもわれた。きんじょのひとにだんだん)

それには何かの仔細があるらしく思われた。近所の人にだんだん

(といあわせると、まえのばんのよふけにかれによくにたおとこがとおりかかりの)

問い合わせると、前の晩の夜ふけに彼によく似た男が通りかかりの

(よたかそばをよびとめて、かんざけをのんでいるのを)

夜鷹蕎麦(よたかそば)を呼び止めて、燗酒(かんざけ)を飲んでいるのを

(みたものがあるとのことであった。それらのはなしからかんがえると、)

見た者があるとのことであった。それらの話から考えると、

(かれはさむさしのぎにかんざけをしたたかにのんでのぜんごふかくによいたおれて、)

かれは寒さ凌(しの)ぎに燗酒をしたたかに飲んでの前後不覚に酔い倒れて、

(とうとうこごえしんでしまったのではあるまいかとはんしちははんだんした。)

とうとう凍(こご)え死んでしまったのではあるまいかと半七は判断した。

(かれはもめんのさいふにこぜにをすこしばかりいれているだけで、)

かれは木綿の財布に小銭を少しばかり入れているだけで、

(ほかにはなんにもてがかりになりそうなものをもっていなかったが、)

ほかにはなんにも手掛りになりそうなものを持っていなかったが、

(はんしちはそのみぎのてのひらのつづみだこをあらためて、かれはおそらく)

半七はその右の手のひらの鼓胝(つづみだこ)をあらためて、彼はおそらく

(さいぞうであろうとすぐかんていした。たとえまんざいであろうが、さいぞうであろうが、)

才蔵であろうとすぐ鑑定した。たとえ万歳であろうが、才蔵であろうが、

など

(かってにくらいよってこごえしんだというだけのことであれば、)

勝手にくらい酔って凍え死んだというだけのことであれば、

(べつにむずかしいせんぎはいらない。そのままちょうやくにんにひきわたしてしまえば)

別にむずかしい詮議はいらない。そのまま町役人に引き渡してしまえば

(いいのであるが、かれのふところにかかえていたあかごのらいれきがどうも)

いいのであるが、彼のふところに抱えていた赤児の来歴がどうも

(わからなかった。たこくもののさいぞうがあかごをかかえて、さむいよなかに)

判らなかった。他国者の才蔵が赤児をかかえて、寒い夜なかに

(えどのまちなかをさまよいあるいていたという、そのりくつがのみこめなかった。)

江戸の町なかをさまよい歩いていたという、その理窟が吞み込めなかった。

(ことにあかごがにほんのあやしいきばをもっているだけにそれのうたがいはいよいよふかくなった。)

殊に赤児が二本の怪しい牙をもっているだけに其の疑いはいよいよ深くなった。

(やがてまちぶぎょうしょからとうばんのやくにんがしゅっちょうして、いしもたちあいで)

やがて町奉行所から当番の役人が出張して、医師も立ち会いで

(けんしをすませたが、しにんのからだにはしさいなく、やはりたいすいのために)

検視をすませたが、死人のからだには仔細なく、やはり大酔のために

(みちばたにたおれて、ぜんごふかくのうちにとうしをとげたものと)

路傍(みちばた)に倒れて、前後不覚のうちに凍死を遂げたものと

(きめられてしまった。しかしかれのかかえているおにっこのしょうたいはかかりやくにんにも)

決められてしまった。しかしかれの抱えている鬼っ児の正体は係り役人にも

(わからなかった。はんしちははっちょうぼりどうしんすがややへえのやしきへよばれた。)

判らなかった。半七は八丁堀同心菅谷弥兵衛の屋敷へ呼ばれた。

(「どうだ、はんしち。けさのゆきだおれは、なにものだとおもう。あんないんがものを)

「どうだ、半七。けさの行き倒れは、何者だと思う。あんな因果者を

(かかえているのをみると、やしのなかまかな」と、やへえはいった。)

抱えているのをみると、香具師(やし)の仲間かな」と、弥兵衛は云った。

(「さあ、てのひらのかたいぐあいがどうもさいぞうじゃねえかとおもいますが・・・・・・」)

「さあ、手のひらの硬い工合がどうも才蔵じゃねえかと思いますが……」

(「むう。おれもそうおもわねえでもなかったが、やしならばりくつがつく。)

「むう。おれもそう思わねえでもなかったが、香具師ならば理窟が付く。

(やあぽんぽんのさいぞうじゃあ、どうもひょうそくがあわねえじゃねえか」)

やあぽんぽんの才蔵じゃあ、どうも平仄(ひょうそく)が合わねえじゃねえか」

(「ごもっともです」と、はんしちもかんがえていた。「しかしだんなのまえですが、)

「ごもっともです」と、半七も考えていた。「しかし旦那の前ですが、

(そのひょうそくのあわねえところになにかうまみがあるんじゃありますまいか。)

その平仄の合わねえところになにか旨味があるんじゃありますまいか。

(ともかくもちっとあらいあげてみましょう」)

ともかくもちっと洗いあげてみましょう」

(「せっきしわすにきのどくだな。あんまりいいおせいぼでも)

「節季師走(せっきしわす)に気の毒だな。あんまりいい御歳暮でも

(なさそうだが、しゃけのあたまでもひろうきでやってくれ」)

無さそうだが、鮭(しゃけ)の頭でも拾う気でやってくれ」

(「かしこまりました」)

「かしこまりました」

(はんしちはうけあってはっちょうぼりをでたが、どこからてをつけていいか)

半七は受け合って八丁堀を出たが、どこから手をつけていいか

(ちょっとけんとうがきまらなかった。おおえどのとしのくれにまんざいやさいぞうを)

ちょっと見当が決まらなかった。大江戸の歳(とし)の暮に万歳や才蔵を

(さがしてあるくのは、そのあいてのあまりおおいのにたえなかった。)

探してあるくのは、その相手のあまり多いのに堪えなかった。

(なんとかしててっとりばやくさがしだすくふうはあるまいかとかんがえながら、)

なんとかして手っ取り早く探し出す工夫はあるまいかと考えながら、

(しわすのいそがしいおうらいを、ほんごうのほうがくへぶらぶらあるいてくると、)

師走の忙がしい往来を、本郷の方角へぶらぶらあるいて来ると、

(はしのたもとでにじゅうしごのおとこにであった。)

橋の袂で二十四五の男に出逢った。

(「やあ、おやぶん。おはようございます」)

「やあ、親分。お早うございます」

(かれはかめきちというてさきであった。もとはとうふやのせがれで、どうらくのはてから)

彼は亀吉という手先であった。もとは豆腐屋の伜で、道楽の果てから

(はんしちのところへころげこんできたので、なかまではとうふやかめとよばれていた。)

半七のところへ転げ込んで来たので、仲間では豆腐屋亀と呼ばれていた。

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