『妖怪博士』江戸川乱歩14

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ヌオー 5831 A+ 6.2 93.7% 735.3 4596 308 98 2024/12/16
2 baru 3857 D++ 4.3 90.4% 1080.7 4661 492 98 2024/11/30
3 りいい 2828 E+ 2.9 96.6% 1585.1 4645 162 98 2024/12/20

関連タイピング

問題文

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(あいかわたいじくんのおとうさんはとうようせいさくがいしゃのぎしちょう)

相川泰二君のお父さんは東洋製作会社の技師長

(なのですが、そのかいしゃでせいぞうしているきかいの)

なのですが、その会社で製造している機械の

(きみつぶんしょが、たいじくんといっしょにふんしつしてしまったのです)

機密文書が、泰二君と一緒に紛失してしまったのです

(から、かいしゃにたいしてももうしわけないうえに、たいじくんの)

から、会社に対しても申し訳ない上に、泰二君の

(こともじっとしていられないほどしんぱいなのです。)

こともジッとしていられないほど心配なのです。

(むろん、けいさつではぜんりょくをあげてはんにんそうさにあたって)

無論、警察では全力をあげて犯人捜査にあたって

(いますが、とうようせいさくがいしゃとしてはけいさつにまかせっきりで)

いますが、東洋製作会社としては警察に任せっきりで

(のんきなかおをしているわけにもいきません。なにしろ、)

呑気な顔をしている訳にもいきません。なにしろ、

(くにのきみつにかんするじゅうようしょるいをふんしつしたのですから、)

国の機密に関する重要書類を紛失したのですから、

(できるだけのてはつくさなければならないのです。)

出来るだけの手は尽くさなければならないのです。

(そこで、かいしゃはかんぶかいぎのけっか、あいかわぎしちょうの)

そこで、会社は幹部会議の結果、相川技師長の

(はつあんで、みんかんのめいたんていのあけちこごろうしにこのじけんを)

発案で、民間の名探偵の明智小五郎氏にこの事件を

(いらいし、けいさつときょうりょくしてはんにんそうさにあたってもらう)

依頼し、警察と協力して犯人捜査に当たってもらう

(ことにきまり、ぎしちょうがみずからたんていじむしょを)

ことに決まり、技師長がみずから探偵事務所を

(たずね、このことをたのみこみました。あけちたんていは、)

たずね、このことを頼み込みました。 明智探偵は、

(こころよくかいしゃのいらいをひきうけましたが、なんといっても)

快く会社の依頼を引き受けましたが、何といっても

(てがかりがまったくないなんじけんですから、いくらめいたんてい)

手がかりが全くない難事件ですから、いくら名探偵

(でもきゅうにはんにんをはっけんすることはできません。ただ、)

でも急に犯人を発見することは出来ません。 ただ、

(ふつか、みっかとむなしくひがたっていくばかりで、)

二日、三日とむなしく日が経っていくばかりで、

(けいしちょうからもあけちたんていじむしょからも、なんのきっぽうも)

警視庁からも明智探偵事務所からも、何の吉報も

など

(なく、あいかわぎしちょうをはじめかいしゃのひとたちは、)

なく、相川技師長を始め会社の人たちは、

(ただいらいらとあれこれしんぱいするばかりです。)

ただイライラとあれこれ心配するばかりです。

(さて、きみつぶんしょがぬすまれてからいつかめのごごのこと)

さて、機密文書が盗まれてから五日目の午後のこと

(でした。ひとりのきみょうなじんぶつが、とうようせいさくがいしゃのげんかんに)

でした。一人の奇妙な人物が、東洋製作会社の玄関に

(あらわれて、あいかわぎしちょうにめんかいをもうしこみました。)

現れて、相川技師長に面会を申しこみました。

(こんかいのとうなんじけんについて、おはなししたいことがある)

今回の盗難事件について、お話したいことがある

(というのです。すたっふからうけとっためいしを)

というのです。スタッフから受け取った名刺を

(みると、「しりつたんてい、とのむらこうぞう」といんさつして)

見ると、「私立探偵、殿村弘三」と印刷して

(あります。きいたこともないしりつたんていですけれど、)

あります。聞いたこともない私立探偵ですけれど、

(あいかわぎしちょうは、ともかくあってみることにして、)

相川技師長は、ともかく会ってみることにして、

(そのじんぶつをかいしゃのおうせつしつへあんないするようにめいじ)

その人物を会社の応接室へ案内するように命じ

(ました。ぎしちょうはさきにそのおうせつしつへいって、)

ました。 技師長は先にその応接室へ行って、

(きゃくがくるのをまっていましたが、やがてすたっふの)

客が来るのを待っていましたが、やがてスタッフの

(あんないではいってきたじんぶつをみると、そのあまりに)

案内で入って来た人物を見ると、そのあまりに

(いようなふうぼうに、あっとおどろいてしまいました。)

異様な風貌に、アッと驚いてしまいました。

(とのむらというしりつたんていはみたところごじゅっさいぐらいの、)

殿村という私立探偵は見たところ五十歳ぐらいの、

(せなかにむしがいるようなようしをした、おそろしいおとこ)

背中に虫がいるような容姿をした、恐ろしい男

(でした。まるでおおきなこぶができているように、)

でした。まるで大きなコブが出来ているように、

(せなかがふくれあがり、じょうはんしんがふたつにおれたように)

背中がふくれあがり、上半身が二つに折れたように

(まがっており、かおだけがくびをもちあげたように)

曲がっており、顔だけが首を持ちあげたように

(にゅーっとそらをむいているのです。すがただけでは)

ニューッと空を向いているのです。 姿だけでは

(ありません。そのじんぶつは、またじつにおそろしいかおを)

ありません。その人物は、また実に恐ろしい顔を

(もっています。なんねんまえにきったかどうかもわからない)

持っています。何年前に切ったかどうかも分からない

(ぼうぼうなかみのけ、にひきのけむしがはっているような、)

ボウボウな髪の毛、二匹の毛虫が這っているような、

(ねじれまがったふといまゆ、そのしたにぎょろりとひかる)

ねじれ曲がった太い眉、その下にギョロリと光る

(めと、うわくちびるがめくれあがったようになっていて、)

目と、上唇がめくれあがったようになっていて、

(いつもむきだしになっている、ひどいでっぱ、ほおから)

いつもむきだしになっている、ひどい出っ歯、頬から

(あごにかけてはえている、うすぎたないぶしょうひげと、みる)

あごにかけて生えている、薄汚い無精ヒゲと、見る

(からにぞっとするようなかおつきです。それにくわえ、)

からにゾッとするような顔つきです。 それに加え、

(なんじゅうねんまえにりゅうこうしたかとおもわれるような、おそろしく)

何十年前に流行したかと思われるような、恐ろしく

(ふるびたくろのせびろをきて、せなかをまげて、みょうに)

古びた黒の背広を着て、背中を曲げて、みょうに

(まがりくねったきのえだのすてっきをてに、よちよちと)

曲がりくねった木の枝のステッキを手に、ヨチヨチと

(はいってくるさまは、これでたんていのしごとができるのかと)

入って来る様は、これで探偵の仕事が出来るのかと

(うたがわれるほどでした。「わたしはあいかわともうしますが、)

疑われるほどでした。「私は相川と申しますが、

(あなたがとのむらさんですか」ぎしちょうはあっけに)

あなたが殿村さんですか」技師長はあっけに

(とられて、めいしとあいてのかおをみくらべながら、たずね)

とられて、名刺と相手の顔を見比べながら、たずね

(ました。「そうです。わしがしりつたんてい、とのむらこうぞう)

ました。「そうです。わしが私立探偵、殿村弘三

(です。さっそくですが、あいかわさん。あなたはおこさんの)

です。早速ですが、相川さん。あなたはお子さんの

(いのちがしんぱいではありませんか。かいしゃのじゅうようしょるいをいっこくも)

命が心配ではありませんか。会社の重要書類を一刻も

(はやく、とりもどしたいとおもっていませんか」とのむらは)

早く、取り戻したいと思っていませんか」 殿村は

(ぶさほうに、そこのいすによっこらしょとこしをかけ、)

無作法に、そこのイスにヨッコラショと腰をかけ、

(すてっきをまえにたてて、そのうえにあごをのせるように)

ステッキを前に立てて、その上にあごをのせるように

(して、じろじろとぎしちょうをみあげるのでした。)

して、ジロジロと技師長を見上げるのでした。

(「それは、もちろんですが」あいかわしがあいてのきもちを)

「それは、もちろんですが」相川氏が相手の気持ちを

(さっしかねてくちごもっていると、とのむらはおそろしい)

察しかねて口ごもっていると、殿村は恐ろしい

(でっぱのあいだからつばをとばしながら、やつぎばやに)

出っ歯の間からツバを飛ばしながら、矢継ぎ早に

(まくしたてるのです。「それなら、あんたらの)

まくしたてるのです。「それなら、あんたらの

(やりかたはまちがっとる。きけばあんたらは、)

やりかたは間違っとる。聞けばあんたらは、

(あけちこごろうにじけんをいらいされておるということだが、)

明智小五郎に事件を依頼されておるということだが、

(あんなあおにさいのうでで、このじけんのなぞがとけると)

あんな青二才の腕で、この事件のナゾがとけると

(かんがえているのか。うふふ、とてもこのはんざいはあけちの)

考えているのか。ウフフ、とてもこの犯罪は明智の

(みじゅくなうでにはあいませんよ。あれがぬすまれてから、)

未熟な腕には合いませんよ。 あれが盗まれてから、

(きょうでなんにちになるとおもいますか。いつかも、むだに)

今日で何日になると思いますか。五日も、無駄に

(ついやしたじゃありませんか。けいさつもけいさつじゃが、)

費やしたじゃありませんか。警察も警察じゃが、

(めいたんていといわれているあけちの、このざまはなんです。)

名探偵といわれている明智の、このざまは何です。

(あいかわさん、あんたらは、なぜこのわしにそうさくをいらい)

相川さん、あんたらは、なぜこのわしに捜索を依頼

(なさらんのか。わしなればあけちのはんぶんのにっすうで、かならず)

なさらんのか。わしなれば明智の半分の日数で、必ず

(しょるいをとりもどし、よにんのこどもをたすけだしてみせる。)

書類を取り戻し、四人の子どもを助け出してみせる。

(わしはもう、あらかたはんにんのめぼしさえつけておる)

わしはもう、あらかた犯人の目星さえつけておる

(のです」めいたんていあけちこごろうをあおにさいとののしる)

のです」 名探偵明智小五郎を青二才とののしる

(なんて、このおとこはいったいなにものであろうか。きでもくるって)

なんて、この男は一体何者であろうか。気でも狂って

(いるのではないかと、あいかわぎしちょうはあきれかえって)

いるのではないかと、相川技師長はあきれかえって

(しまいました。「まってください。するとなんですか。)

しまいました。「待ってください。すると何ですか。

(あなたは、このじけんのはんにんのめぼしが、もうついて)

あなたは、この事件の犯人の目星が、もうついて

(いるのですか」「ついております。わしはあけちなどの)

いるのですか」「ついております。わしは明智などの

(ゆめにもしらないてがかりをにぎっておりますのじゃ。)

夢にも知らない手がかりを握っておりますのじゃ。

(どうです、あいかわさん。あけちなんか、おはらいばこに)

どうです、相川さん。明智なんか、お払い箱に

(して、このわしをやといませんか。かならずとおかとたたない)

して、このわしを雇いませんか。必ず十日と経たない

(うちに、しょるいとこどもたちをとりもどしてみせます」)

うちに、書類と子どもたちを取り戻してみせます」

(とのむらはじしんありげに、おちつきはらっていう)

殿村は自信ありげに、落ち着き払って言う

(のです。でたらめともかんがえられません。たしょう、ばかに)

のです。デタラメとも考えられません。多少、バカに

(しているようなかおをしていますが、よくみれば、)

しているような顔をしていますが、よく見れば、

(そのぎょろりとしたりょうめには、ひとのこころのおくをみとおす)

そのギョロリとした両目には、人の心の奥を見通す

(ようなするどいひかりがあって、なんとなくひとくせありそうな)

ような鋭い光があって、何となく一癖ありそうな

(じんぶつです。あいかわしはあいてのようすをみて、)

人物です。 相川氏は相手の様子を見て、

(ことばをきいているうちにだんだん、このあやしいじんぶつを)

言葉を聞いているうちに段々、この怪しい人物を

(むげにおいかえすようなこともできないような)

むげに追い返すようなことも出来ないような

(きもちになってきました。)

気持ちになってきました。

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