シャーロックホームズ 空家の冒険3
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問題文
(わたしはもじどおりしゅうじつ、このじけんにたいして、あらゆるちえをしぼってかんがえて、)
私は文字通り終日、この事件に対して、あらゆる智慧を絞って考えて、
(だいたいにおいてつじつまのあう,ひととおりのじょうりあるかいしゃくをみだそうとし,)
大体において辻褄の合う,一通りの条理ある解釈を見出そうとし,
(かつてわたしのあわれなゆうじんのいった)
かつて私の哀れな友人の云った
(「すべてのこうさのしゅっぱつてんとなる,もっともていこうのすくないいってん」のはっけんにどりょくしたが)
「凡ての考査の出発点となる,最も抵抗の少ない一点」の発見に努力したが
(しょうじきのところわたしは、ほとんどなにものもすすめえなかった。わたしはゆうこくになってから、)
正直のところ私は、ほとんど何物も進め得なかった。私は夕刻になってから、
(こうえんをしょうようしながらよこぎって,ごごろくじごろには,わたしはれーぬこうえんのはずれである)
公園を逍遥しながら横切って,午後六時ごろには,私はレーヌ公園の外れである
(おっくすふぉーどまちにあらわれていた。そこではいちぐんのやじうまが)
オックスフォード街に現れていた。そこでは一軍の弥次馬が
(ぺーぶめんとのうえからひとつのまどをみつめていたが、)
ペーブメントの上から一つの窓を見つめていたが、
(このひとたちはわたしがみにきたいっけんのいえをゆびさしてくれた。)
この人たちは私がみに来た一軒の家を指さしてくれた。
(ひとりのせいのたかいやせたいろめがねのおとこが,)
一人の脊の高い痩せた色眼鏡の男が,
(わたしはてっきりしふくのけいじじゅんさにあいちがいないとおもったが)
私はてっきり私服の刑事巡査に相違いないと思ったが
(いろいろとじぶんのかんさつをいっているのに、ひとびとはむらがりあつまってけいちょうしていた)
色々と自分の観察を云っているのに、人々は群がり集まって傾聴していた
(わたしもできるだけそのちかくにすすんでみたが,)
私もできるだけその近くに進んでみたが,
(しかしそのかんさつはどうもでたらめであるので、わたしはちょっといやきがさして)
しかしその観察はどうも出鱈目であるので、私はちょっと嫌気がさして
(またひきかえした。と、そのとたんにわたしは,わたしのうしろにたっていた)
また引き返した。と、その途端に私は,私の後ろに立っていた
(きけいのろうじんにつきあたって、そのろうじんのもっていたほんをごろくさつ、)
畸形の老人に突き当たって、その老人の持っていた本を五六冊、
(ふりおとさせてしまった。わたしはそれをひろいあげてやるときにちらっとみると,)
振り落とさせてしまった。私はそれを拾い上げてやる時にちらっと見ると,
(そのなかには,「じゅもくすうはいのきげん」といったようななまえのほんもあったが、)
その中には,「樹木崇拝の起源」と云ったような名前の本もあったが、
(たぶんこのろうじんは,あるいはしょうばいにしろものずきにしろ,)
多分この老人は,あるいは商売にしろ物好きにしろ,
(とにかくまずしいあいしょかで,しかもちんほんのしゅうしゅうかにあいちがいないとおもった。)
とにかく貧しい愛書家で,しかも珍本の蒐集家に相違いないと思った。
(わたしはこのそこつを、だいにちんしゃしたが、しかしこのちんほんたるや、)
私はこの粗忽を、大に陳謝したが、しかしこの珍本たるや、
(このしょゆうしゃには、はなはだきちょうなものであったとみえて,)
この所有者には、はなはだ貴重なものであったと見えて,
(そのろうじんはふんぜんとして、じぶんにばげんのことばをなげかけて,)
その老人は憤然として、自分に罵言の言葉を投げかけて,
(かかとをかえしてたちさった。わたしはそのわんきょくしたしせいの、ほおひげのしろいすがたが,)
踵を返して立ち去った。私はその彎曲した姿勢の、頬髭の白い姿が,
(ぐんしゅうのなかからとおざかってゆくのをみまもった。)
群衆の中から遠ざかってゆくのを見守った。
(れーぬこうえんのだいよんひゃくにじゅうななばんのじけんについてはわたしはひどくきょうみをもたされながら)
レーヌ公園の第四百二十七番の事件については私はひどく興味を持たされながら
(けっきょくかんさつのうえでは,いぜんとしてほとんどなにものもすすめえなかった。)
結局観察の上では,以前としてほとんど何物も進め得なかった。
(ていたくはごしゃくたらずのへいで、どうろからかこわれていたから、)
邸宅は五尺起らずの塀で、道路から囲われていたから、
(まあていえんないにしのびこもうとおもえば、それはごくよういなことであった。)
まあ庭園内に忍び込もうと思えば、それはごく容易なことであった。
(がしかしまどはひどくたかいもので、きわめてとくしゅのびんわんなものであったら、)
がしかし窓はひどく高いもので、極めて特殊の敏腕なものであったら、
(あるいはそれにつたってのぼることもできるかもしれないとおもわれる、)
あるいはそれに伝って登ることもできるかもしれないと思われる、
(すいかんといったようなものさえもなかった。わたしはいよいよこうさつにきゅうして)
水管と云ったような物さえもなかった。私はいよいよ考察に窮して
(けんしんとんのほうにあしをむけなおした。そしてわたしがしょさいにはいって,)
ケンシントンの方に足を向け直した。そして私が書斎に入って,
(ごふんもたつかたたないなかに,じょちゅうがめんかいにんがあるといってきたのであった。)
五分も経つか経たない中に,女中が面会人があると云って来たのであった。
(そのらいきゃくというのは、だれあろう、わたしもおどろいたことには、)
その来客と云うのは、誰あろう、私も驚いたことには、
(わたしがまだいんぎんをつうじない,さきのちんほんしゅうしゅうかで、するどいくぼんだかおが、)
私がまだ慇懃を通じない,先の珍本蒐集家で、鋭いくぼんだ顔が、
(しらがのなかからのぞきだて、みぎうでにはすくなくともいちだーすはあろうとおもわれるほどの)
白髪の中から覗き出て、右腕には少なくとも一打はあろうと思われるほどの
(きちょうなしょせきをかかえていた。)
貴重な書籍をかかえていた。
(「いや、わたしにすいさんされて、びっくりなされたでしょう」)
「いや、私に推参されて、吃驚なされたでしょう」
(そのろうじんは,まったくききなれないしわがれたこえでいってきた。)
その老人は,全くききなれない嗄れた声で云って来た。
(わたしはまったくそのとおりとこたえた。)
私は全くその通りと答えた。
(「いや、まったくごむりもありません。ところがこうみえてもわたしにも、)
「いや、全く御無理もありません。ところがこう見えても私にも、
(りょうしんというものはあります。わたしはあなたがこのおうちにおはいりになるのをみたので)
良心と云うものはあります。私はあなたがこのお家にお入りになるのをみたので
(びっこをひきながら、あなたのあとをおっかけてうかがったしだいです。)
びっこを引きながら、あなたの後を追っかけて伺った次第です。
(というのは、さきほどのごしんせつなしんしにしたしくおめにかかって、)
と云うのは、先きほどのご親切な紳士に親しくお目にかかって、
(さっきのわたしのたいどに、もしらんぼうすぎたとおぼしめされたところがあるなら、)
さっきの私の態度に、もし乱暴すぎたと思召されたところがあるなら、
(それはけっしてなにもあくいのあったわけではなかったことをもうしあげて,)
それは決して何も悪意のあったわけではなかったことを申し上げて,
(またそのうえに、わざわざぼんまでもひろってくださったごしんせつに,)
またその上に、わざわざ本までも拾ってくださったご親切に,
(おれいをもうそうとおもってのことですよ」)
お礼を申そうと思ってのことですよ」
(「いや、それはあんまりごていねいすぎますな、しかししつれいですがあなたは,)
「いや、それはあんまり御叮嚀すぎますな、しかし失礼ですがあなたは,
(どうしてわたしをごぞんじなのでした?)
どうして私をご存知なのでした?私は訊ねた。
(「ごもっともです、いや、じつはその,わたしは、おたくのごきんじょのものです。)
「御尤もです、いや、実はその,私は、御宅の御近所のものです。
(あのきょうかいのとおりのかくに、ちいさなほんやがあるのをごぞんじなされますか,)
あの教会の通りの角に、小さな本屋があるのをご存知なされますか,
(あれがわたしのひんじゃくなみせですが,どうぞおたずねくださればこうえいのいたりです。)
あれが私の貧弱な店ですが,どうぞお尋ねくだされば光栄の至りです。
(それでよくがてんのゆかれたこととおもいますが,さて、ここに、)
それでよく合点のゆかれたことと思いますが,さて、ここに、
(「えいこくのきんちょうかい」「かつらす」(やくしゃちゅう、きげんちょくぜんごろのろーまのだいしじん))
「英国のきん鳥界」「カツラス」(訳者註、紀元直前頃のローマの大詩人)
(「しゅうきょうせんそう」というほんがございますが,)
「宗教戦争」と云う本がございますが,
(これはいずれもなかなかのほりだしものです。あのほんだなのだいにだんめのすきは、)
これはいずれもなかなかの掘り出しものです。あの本棚の第二段目の空所は、
(せいぜいごろくさつもあれば、きちんとうまりますが,いかがですか?)
せいぜい五六冊もあれば、きちんと埋まりますが,いかがですか?
(あのくうしょはなんですかふたいせいでございますよ」)
あの空所はなんですか不体制でございますよ」
(わたしはこういわれて、あたまをめぐらして,あとのほんだなをみた。)
私はこう云われて、頭をめぐらして,後の本棚を見た。
(そしてまたふりかえると,つくえのむこうから、しゃーろっくほーむずが、)
そしてまた振り返ると,机の向うから、シャーロック・ホームズが、
(びしょうしながらこっちをむいてたっている。わたしはすっくとたちあがった。)
微笑しながらこっちを向いて立っている。私はすっくと立ち上った。
(そしてすうびょうかんのあいだ,わたしは、こんらんするようなきょうがくとともに,かれをみつめた。)
そして数秒間の間,私は、混乱するような驚愕と共に,彼を見つめた。
(そしてわたしはみつめみつめたがさて,わたしはたしかにあとにもさきにもしょうがいにただいちどの、)
そして私は見つめ見つめたがさて,私は確かに後にも先にも生涯にただ一度の、
(きぜつをしてしまったらしかった。たしかにきぜつをしたにそういいなかった,)
気絶をしてしまったらしかった。確かに気絶をしたに相違いなかった,
(わたしのめのまえには,あきらかにはいいろのきりがうずまいた。そしてそのきりがはれたときは,)
私の目の前には,明らかに灰色の霧が渦巻いた。そしてその霧が晴れたときは,
(わたしのからのぼたんははずされ、くちびるには,)
私のカラのボタンは外され、唇には,
(ぶらんでーのさすようなみかんがのこっていた。そしてほーむずは,)
ブランデーの刺すような味感がのこっていた。そしてホームズは,
(かれのすいとうをもって,わたしのいすのうえから,おおいかぶさるようにのしかかっていた)
彼の水筒を持って,私の椅子の上から,おおいかぶさるようにのしかかっていた