紫式部 源氏物語 紅葉賀 5 與謝野晶子訳

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1 berry 7625 7.7 98.3% 300.3 2330 40 34 2024/11/04
2 subaru 7578 7.9 95.3% 293.2 2336 114 34 2024/11/05
3 HAKU 7436 7.7 96.6% 307.4 2368 82 34 2024/11/04
4 おもち 7275 7.6 95.8% 310.1 2359 103 34 2024/11/03
5 ヤス 7043 7.4 94.8% 315.9 2352 127 34 2024/11/06

問題文

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(しょうなごんはおもいのほかのこうふくがしょうにょおうのうんめいにあらわれてきたことを、しんだあまぎみが)

少納言は思いのほかの幸福が小女王の運命に現われてきたことを、死んだ尼君が

(たえまないきがんにあいそんのことをいってほとけにすがったそのききめであろうと)

絶え間ない祈願に愛孫のことを言って仏にすがったその効験であろうと

(おもうのであったが、けんりょくのつよいさだいじんけにだいいちのふじんがあることであるし、)

思うのであったが、権力の強い左大臣家に第一の夫人があることであるし、

(そこかしこにあいじんをもつげんじであることをおもうと、しんじつのけっこんをみるころに)

そこかしこに愛人を持つ源氏であることを思うと、真実の結婚を見るころに

(なってめんどうがおおくなり、ひめぎみにくろうがはじまるのではないかとおそれていた。しかし)

なって面倒が多くなり、姫君に苦労が始まるのではないかと恐れていた。しかし

(これにはとくいせいがある。おとめのひにすでにこんなにあいしているげんじであるから)

これには特異性がある。少女の日にすでにこんなに愛している源氏であるから

(しょうらいもたのもしいわけであるとみえた。ははかたのそぼのもはさんかげつであったから、)

将来もたのもしいわけであると見えた。母方の祖母の喪は三か月であったから、

(しわすのみそかにもふくをかえさせた。ははがわりをしていたそぼであったから)

師走の三十日に喪服を替えさせた。母代わりをしていた祖母であったから

(じょそうのあともはでにはせずこくはないべにのいろ、むらさき、やまぶきのおちついたいろなどで、)

除喪のあとも派手にはせず濃くはない紅の色、紫、山吹の落ち着いた色などで、

(そしてじしつのきわめてよいおりもののこうちぎをきたがんじつのむらさきのにょおうは、きゅうにきんだいてきな)

そして地質のきわめてよい織物の小袿を着た元日の紫の女王は、急に近代的な

(びじんになったようである。げんじはきゅうちゅうのちょうはいのしきにでかけるところで、ちょっと)

美人になったようである。源氏は宮中の朝拝の式に出かけるところで、ちょっと

(にしのたいへよった。 「きょうからは、もうおとなになりましたか」)

西の対へ寄った。 「今日からは、もう大人になりましたか」

(とえがおをしてげんじはいった。ひかるげんじのうつくしいことはいうまでもない。むらさきのきみは)

と笑顔をして源氏は言った。光源氏の美しいことはいうまでもない。紫の君は

(もうひなをだしてあそびにむちゅうであった。さんじゃくのすえだなふたつにいろいろなこどうぐを)

もう雛を出して遊びに夢中であった。三尺の据棚二つにいろいろな小道具を

(おいて、またそのほかにちいさくつくったいえなどをいくつもげんじがあたえてあったのを、)

置いて、またそのほかに小さく作った家などを幾つも源氏が与えてあったのを、

(それらをざしきじゅうにならべてあそんでいるのである。 「なやらおいをするといって)

それらを座敷じゅうに並べて遊んでいるのである。 「儺追いをするといって

(いぬきがこれをこわしましたから、わたくしよくしていますの」 とひめぎみはいって、)

犬君がこれをこわしましたから、私よくしていますの」 と姫君は言って、

(いっしょけんめいになってちいさいいえをつくろおうとしている。 「ほんとうに)

一所懸命になって小さい家を繕おうとしている。 「ほんとうに

(そそっかしいひとですね。すぐなおさせてあげますよ。きょうはえんぎを)

そそっかしい人ですね。すぐ直させてあげますよ。今日は縁起を

(いわうひですからね、ないてはいけませんよ」 いいのこしてでていくげんじの)

祝う日ですからね、泣いてはいけませんよ」 言い残して出て行く源氏の

など

(はるのしんそうをにょうぼうたちはえんにちかくでてみおくっていた。むらさきのきみもおなじように)

春の新装を女房たちは縁に近く出て見送っていた。紫の君も同じように

(みにたってから、ひなにんぎょうのなかのげんじのきみをきれいにしょうぞくさせてまねのさんだいを)

見に立ってから、雛人形の中の源氏の君をきれいに装束させて真似の参内を

(させたりしているのである。 「もうことしからはすこしおとなにおなりあそばせよ。)

させたりしているのである。 「もう今年からは少し大人におなりあそばせよ。

(とおよりうえのひとはおひなさまあそびをしてはよくないとせけんではもうしますのよ。)

十歳より上の人はお雛様遊びをしてはよくないと世間では申しますのよ。

(あなたさまはもうおっとがいらっしゃるかたなんですから、おくさまらしくしずかにして)

あなた様はもう良人がいらっしゃる方なんですから、奥様らしく静かにして

(いらっしゃらなくてはなりません。かみをおすきするのもおうるさがりに)

いらっしゃらなくてはなりません。髪をお梳きするのもおうるさがりに

(なるようなことではね」 などとしょうなごんがいった。あそびにばかり)

なるようなことではね」 などと少納言が言った。遊びにばかり

(むちゅうになっているのをはじさせようとしていったのであるが、にょおうはこころのなかで、)

夢中になっているのを恥じさせようとして言ったのであるが、女王は心の中で、

(わたくしにはもうおっとがあるのだって、げんじのきみがそうなんだ。しょうなごんなどのおっとはみな)

私にはもう良人があるのだって、源氏の君がそうなんだ。少納言などの良人は皆

(みにくいかおをしている。わたくしはあんなにうつくしいひとをおっとにした、こんなことを)

醜い顔をしている。私はあんなに美しい人を良人にした、こんなことを

(はじめておもった。というのもひとつとしがくわわったせいかもしれない。)

はじめて思った。というのも一つ年が加わったせいかもしれない。

(なんということなしにこうしたようちさがみすのそとまでくるけいしやさむらいたちにも)

何ということなしにこうした幼稚さが御簾の外まで来る家司や侍たちにも

(しれてきて、あやしんではいたが、だれもまだなばかりのふじんであるとは)

知れてきて、怪しんではいたが、だれもまだ名ばかりの夫人であるとは

(しらなんだ。)

知らなんだ。

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