卍 1
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | もっちゃん先生 | 5129 | B+ | 5.3 | 95.3% | 1054.0 | 5683 | 277 | 86 | 2025/02/08 |
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問題文
(せんせい、わたしきょうはすっかりきいてもらうつもりでうかがいましたのんですけど、)
先生、わたし今日はすっかり聞いてもらうつもりで伺いましたのんですけど、
(せっかくおしごとちゅうのとこかまいませんですやろか?)
折角お仕事中のとこかまいませんですやろか?
(それはそれはくわしいにもうしあげますとじつにながいのんで、ほんまにわたし、)
それはそれは詳しいに申し上げますと実に長いのんで、ほんまにわたし、
(せめてもうすこしじゆうにふでうごきましたら、じぶんでこのことなにからなにまでかきとめて、)
せめてもう少し自由に筆動きましたら、自分でこの事何から何まで書き留めて、
(しょうせつのようなふうにまとめて、せんせいにみてもらおうかおもたりしましたのんですが、)
小説のような風にまとめて、先生に見てもらおうか思たりしましたのんですが、
(・・・じつはこないだぢゅうひょっとかきだしてみましたのんですが、)
……実はこないだ中ひょっと書き出して見ましたのんですが、
(なにしろじけんがあんまりこんがらがってて、どういうふうに)
何しろ事件があんまりこんがらがってて、どういう風に
(どこからふでつけてええやら、とてもわたしなんぞにはけんとうつけしません。)
何処から筆着けてええやら、とてもわたしなんぞには見当つけしません。
(そんでやっぱりせんせいにでもきいてもらうよりしようないおもいまして)
そんでやっぱり先生にでも聞いてもらうより仕様ない思いまして
(おじゃまにでましたのんですけど、でもせんせいわたしのために)
お邪魔に出ましたのんですけど、でも先生わたしのために
(だいじなじかんめちゃめちゃにしられておしまいになって、えらいごめいわくで)
大事な時間滅茶々々にしられておしまいになって、えらい御迷惑で
(ございますやろなあ。ほんまによろしございますか?わたしせんせいにはもう)
ございますやろなあ。ほんまに宜しございますか? わたし先生にはもう
(まいどまいどおやさしいにしていただきますもんですから、ついごしんせつに)
毎度々々おやさしいにしていただきますもんですから、つい御親切に
(あまえるきいになって、ごやっかいにばっかりなりまして、どないにかんしゃしても)
甘える気イになって、御厄介にばっかりなりまして、どないに感謝しても
(しきれへんくらいやおもてます。そいであのう、いつかもたいへん)
しきれへんくらいや思てます。そいであのう、いつかも大へん
(ごしんぱいかけましたあのひとのこと、あれからおはなしせんならんのんですが、あれは)
御心配かけましたあの人のこと、あれからお話せんならんのんですが、あれは
(あののちにもうしあげましたとおり、あないにいうてくださいましたのんで、じぶんでも)
あの後に申し上げました通り、あないにいうて下さいましたのんで、自分でも
(しみじみかんがえまして、あんなりぷっつりぜっこうしてしまいました。)
しみじみ考えまして、あんなりぷっつり絶交してしまいました。
(そのとうざはみれんとでもいいますのんか、)
その当座は未練とでもいいますのんか、
(なにかにつけておもいだされますもんですから、うちにいてましてもまるで)
何かにつけて思い出されますもんですから、家にいてましてもまるで
(ひすてりーのようになってましたけど、そのうちにだんだんあのひとが)
ヒステリーのようになってましたけど、そのうちにだんだんあの人が
(ええことないおとこやったいうことはっきりわかってきまして、・・・しゅじんもわたしがまえは)
ええことない男やったいうことはっきり分って来まして、……主人も私が前は
(しじゅうそわそわしておんがくかいやなにかいうてはであるいてばっかりいましたのんに、)
始終そわそわして音楽会や何かいうては出歩いてばっかりいましたのんに、
(せんせいのおたくいよせてもらうようになりましてから、すっかりようすかわりまして、)
先生の御宅い寄せてもらうようになりましてから、すっかり様子変りまして、
(ええかいたり、ぴあののけいこしたりして、いちにちうちにおちついてますもんです)
絵エ書いたり、ピアノの稽古したりして、一日家に落ち着いてますもんです
(から、「このころはおまえもおんならしなったなあ」なんぞいいまして、かげながら)
から、「この頃はお前も女らしなったなあ」なんぞいいまして、蔭ながら
(せんせいのごこういよろこんでました。もっともわたし、あのひとのことについてはなにもしゅじんに)
先生の御好意よろこんでました。尤わたし、あの人の事については何も主人に
(いいませなんだ。「おっとにかこのあやまちかくしとくのんよろしゅうないから、)
いいませなんだ。「夫に過去のあやまち隠しとくのんよろしゅうないから、
(ーーことににくたいじょうのかんけいなかったのんならこくはくしやすいわけやから、すべてを)
ーー殊に肉体上の関係なかったのんなら告白しやすい訳やから、すべてを
(うちあけておしまいなさい」とせんせいはいうてくださいましたけど、・・・けど)
打ち明けておしまいなさい」と先生はいうて下さいましたけど、……けど
(どうも、・・・それはまあ、しゅじんにしましてもあいはうすうすきいついてたかも)
どうも、……それはまあ、主人にしましてもあいはうすうす気イついてたかも
(わかれしませんのですが、わたしのくちからはなにやいいにくうもありましたし、こののち)
分れしませんのですが、私の口からは何やいいにくうもありましたし、この後
(まちがいないようにじぶんさいちゅういしてたらええのやおもいまして、なにごともむねに)
間違いないように自分さい注意してたらええのや思いまして、何事も胸に
(おさめてたのんです。ですからしゅじんはわたしがせんせいからどんなおはなしうかごうて)
収めてたのんです。ですから主人は私が先生からどんなお話伺うて
(きましたやら、それはしりませんでしたけど、いろいろためになること)
来ましたやら、それは知りませんでしたけど、いろいろ為めになること
(おせてもろたにちがいないおもて、そういうこころがけになったのんはええけいこうや)
教せてもろたに違いない思て、そういう心がけになったのんはええ傾向や
(いうてましてん。そんなわけで、そいからしばらくはおとなしいにうちいひっこもって)
いうてましてん。 そんな訳で、そいから暫くは大人しいに家い引っ籠って
(ましたもんですから、このようすやったらまああんしんやおもいましたもんか、そうそう)
ましたもんですから、この様子やったらまあ安心や思いましたもんか、そうそう
(おれもあそんではいられんからいうて、おおさかのいまばしびるでぃんぐにじむしょかって)
己も遊んではいられんからいうて、大阪の今橋ビルディングに事務所借って
(べんごしかいぎょうしましたのんが、あれがさくねんのにがつごろでしたかしらん。ーーはあ、)
弁護士開業しましたのんが、あれが昨年の二月頃でしたかしらん。ーーはあ、
(そうです。だいがくのほうはどくほうやりましたのんで、べんごしにならいつでも)
そうです。大学の方は独法やりましたのんで、弁護士にならいつでも
(なれたのんです。はじめはなんでもぷろふぇっさあになりたいようにいうてまして、)
なれたのんです。始めは何でもプロフェッサアになりたいようにいうてまして、
(ちょうどわたしのあのじけんありましたじぶんには、ひきつづいてだいがくいんのけんきゅうしつのほうい)
ちょうど私のあの事件ありました時分には、引きつづいて大学院の研究室の方い
(かよおてましたのんですが、べんごしやるきいになりましたのんはべつにこれちゅうりゆう)
通てましたのんですが、弁護士やる気イになりましたのんは別にこれちゅう理由
(あったのんではあれしません。そういつまでもわたしのじっかのほうにせわにばっかり)
あったのんではあれしません。そういつまでも私の実家の方に世話にばっかり
(なってましてはぎりもわるいし、わたしにたいしてもあたまあがらんとおもうたのんです)
なってましては義理も悪いし、私に対しても頭上らんと思うたのんです
(やろ。いったいしゅじんはだいがくじだいにしゅうさいやいうひょうばんで、たいへんにええせいせきで)
やろ。いったい主人は大学時代に秀才やいう評判で、たいへんにええ成績で
(そつぎょうしましたもんですから、そういうにんげんならばいうのんで、よめにきたとは)
卒業しましたもんですから、そういう人間ならばいうのんで、嫁に来たとは
(いうもんの、むこをとるのもどうようにしてけっこんしたのんです。そいでもうわたしの)
いうもんの、婿を取るのも同様にして結婚したのんです。そいでもう私の
(おやたちはしゅじんをしんようしてまして、いくらかざいさんもわけてくれまして、まあまあ)
親たちは主人を信用してまして、いくらか財産も分けてくれまして、まあまあ
(あせるにはおよばんから、がくしゃになりたかったらがくしゃになるで、ゆっくり)
あせるには及ばんから、学者になりたかったら学者になるで、ゆっくり
(べんきょうするがええ。ようこうもしたければふうふでに、さんねんあっちいいてくるがええなど)
勉強するがええ。洋行もしたければ夫婦で二、三年彼方い行てくるがええなど
(いうてくれまして、ーーさいしょはしゅじんもたいそうよろこんで、そんなつもりもあった)
いうてくれまして、ーー最初は主人も大そう喜んで、そんなつもりもあった
(らしいのんですけど、ーーわたしがあんまりわがままやのんで、じっかのほうかさにきて)
らしいのんですけど、ーー私があんまり我が儘やのんで、実家の方笠に着て
(いばるのんやいうふうにとって、それがしゃくにさわったのかもわかれしません。)
威張るのんやいう風に取って、それが癪に触ったのかも分れしません。
(しかしせいしつががくしゃはだにできてまして、いつまでたってもしょせいりゅうのぶっきらぼう)
しかし性質が学者肌に出来てまして、いつまでたっても書生流のぶっきらぼう
(ぬけしませんし、あいそはへたですし、それはそれはひとづきあいわるい)
抜けしませんし、あいそは下手ですし、それはそれは人づきあい悪い
(ほうですから、べんごしなんぞになりましたところでいっこうしごとやかいあれ)
方ですから、弁護士なんぞになりましたところで一向仕事やかいあれ
(しませんね。それでもまいにちじむしょいだけはきちんきちんでてましたが、)
しませんね。それでも毎日事務所いだけはきちんきちん出てましたが、
(そうなりましたら、わたしのほうはいちにちうちにぼんやりしてまして、しょうないもの)
そうなりましたら、私の方は一日家にぼんやりしてまして、しょうないもの
(ですから、しぜんまた、いろいろと、いったんわすれてたことがむねにうかんで)
ですから、自然また、いろいろと、いったん忘れてたことが胸に浮かんで
(くるのんです。まえにはひまありますとうたつくったりしましたが、うたはかいって)
来るのんです。前には暇ありますと歌作ったりしましたが、歌はかいって
(おもいでのたねになりますので、もうこのころはせえしませんやろう?)
思い出の種になりますので、もうこの頃はせえしませんやろう?
(そんでわたし、こうやっててはろくなことかんがえへんさかい、これはなんとかせんと)
そんで私、こうやっててはろくな事考えへんさかい、これは何とかせんと
(いかん、なんぞきいまぎれるようなことはとおもいまして、ーーせんせいは)
いかん、何ぞ気イ紛れるようなことはと思いまして、ーー先生は
(ごぞんじでしょうか、ーーあのう、てんのうじのほうにじょしぎげいがっこいうのん)
御存知でしょうか、ーーあのう、天王寺の方に女子技芸学校いうのん
(ありますねん。しりつのつまらんがっこですねんけど、ええと、おんがくと、さいほうと、)
ありますねん。私立の詰まらん学校ですねんけど、絵エと、音楽と、裁縫と、
(ししゅうと、そいからまだほかにもなんや、まあそんなふうにかあわかれてまして、にゅうがくの)
刺繍と、そいからまだ外にも何や、まあそんな風に科ア分れてまして、入学の
(しかくなぞむずかしいこともなんにものうて、おとなでもこどもでもじゆうにはいれます。)
資格なぞむずかしいことも何にものうて、大人でも子供でも自由に這入れます。
(わたしまえにもにほんがけいこしてまして、へたですけど、そのほうにならいくらかしゅみ)
わたし前にも日本画稽古してまして、下手ですけど、その方になら幾らか趣味
(もってますもんですから、それいまいにち、あさはしゅじんといっしょにでかけるように)
持ってますもんですから、それい毎日、朝は主人と一緒に出かけるように
(しまして、ともかくもまあ、かようことにしましてんわ。もっともまいにちとは)
しまして、ともかくもまあ、通うことにしましてんわ。尤も毎日とは
(いいましても、そんながっこですから、やすみたいときはかってに)
いいましても、そんな学校ですから、休みたい時は勝手に
(やすんだりしましたけど、ーー)
休んだりしましたけど、ーー
(しゅじんはええやぶんがくやにはてんとしゅみないほうやのんですが、わたしががっこうい)
主人は絵エや文学やにはてんと趣味ない方やのんですが、私が学校い
(いきますことはさんせいしてくれまして、それはけっこうや、ええおもいつきやさかい)
行きますことは賛成してくれまして、それは結構や、ええ思いつきやさかい
(せいだしていくがええいうて、じぶんからすすめたくらいやのんでした。)
精出して行くがええいうて、自分から勧めたくらいやのんでした。
(まいあさでかけますのんにも、わたしがいきますのんはくじのこともあり、)
毎朝出かけますのんにも、私が行きますのんは九時のこともあり、
(じゅうじのこともあり、じぶんのつごうでいろいろになることありましたけど、)
十時のこともあり、自分の都合でいろいろになることありましたけど、
(しゅじんのほうもじむしょひまやのんですさかい、いつになろうとたいがいまっててくれまして、)
主人の方も事務所暇やのんですさかい、何時になろうと大概待ってて
(くれまして、はんしんでんしゃでいっしょにいき、そいからふたりえんたくにのってさかいすじの)
くれまして、阪神電車で一緒に行き、そいから二人円タクに乗って堺筋の
(でんしゃどおりのいまばしのかどでしゅじんおろしましてわたしはずっとそのくるまでてんのうじいいきます。)
電車通りの今橋の角で主人おろしまして私はずっとその車で天王寺い行きます。
(しゅじんはそういうふうにしていっしょにでかけますことたのしみにしてたらしいのんで、)
主人はそういう風にして一緒に出かけますこと楽しみにしてたらしいのんで、
(「またもういっぺんがくせいじだいにかいったようなきいするなあ」などいいますから、)
「またもう一遍学生時代に復ったような気イするなあ」などいいますから、
(「ふうふづれでじどうしゃでかようがくせいあったらおかしいやないか」いいましたら、)
「夫婦づれで自動車で通う学生あったらおかしいやないか」いいましたら、
(あはあはわらうたりなんぞしてじょうきげんでした。)
あはあは笑うたりなんぞして上機嫌でした。