紫式部 源氏物語 蓬生 4 與謝野晶子訳

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1 omochi 7664 8.0 95.7% 334.4 2681 118 40 2025/03/21
2 berry 7638 7.7 98.4% 342.1 2656 43 40 2025/03/20
3 はく 7251 7.4 97.0% 358.4 2681 82 40 2025/03/24
4 ヤス 7247 7.5 96.0% 354.2 2678 111 40 2025/03/19

問題文

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(だいにのふじんは、わたくしのいったとおりじゃないか。どうしてあんなみるかげもないひとを)

大弐の婦人は、私の言ったとおりじゃないか。どうしてあんな見る影もない人を

(げんじのきみがおくさまのひとりだとおおもいになるものかね、ほとけさまだってつみのかるいものほど)

源氏の君が奥様の一人だとお思いになるものかね、仏様だって罪の軽い者ほど

(よくみちびいてくださるのだ。てもつけられないほどのびんぼうおんなでいて、)

よく導いてくださるのだ。手もつけられないほどの貧乏女でいて、

(いばっていて、みやさまやおくさんのいらっしゃったときとおなじように)

いばっていて、宮様や奥さんのいらっしゃった時と同じように

(おもいあがっているのだからしまつがわるいなどとおもっていっそうけいべつてきに)

思い上がっているのだから始末が悪いなどと思っていっそう軽蔑的に

(すえつむはなをみた。 「ぜひけっしんをしてきゅうしゅうへおいでなさい。)

末摘花を見た。 「ぜひ決心をして九州へおいでなさい。

(よのなかがかなしくなるときには、ひとはすすんでもたびへでるではありませんか。)

世の中が悲しくなる時には、人は進んでも旅へ出るではありませんか。

(いなかとはいやなところのようにおおもいになるかしりませんが、わたくしはうけあって)

田舎とはいやな所のようにお思いになるかしりませんが、私は受け合って

(あなたをたのしくさせます」 くちまえよくねっしんにどうこうをうながすと、びんぼうにあいた)

あなたを楽しくさせます」 口前よく熱心に同行を促すと、貧乏に飽いた

(にょうぼうなどは、 「そうなればいいのに、なんのたのむところもないかたが、どうしてまた)

女房などは、 「そうなればいいのに、何のたのむ所もない方が、どうしてまた

(いじをおはりになるのだろう」 といって、すえつむはなをひなんした。)

意地をお張りになるのだろう」 と言って、末摘花を批難した。

(じじゅうもだいにのおいのようなおとこのあいじんになっていて、きょうへのこることも)

侍従も大弐の甥のような男の愛人になっていて、京へ残ることも

(できないたちばから、そのいしでもなくにょおうのもとをさって)

できない立場から、その意志でもなく女王のもとを去って

(きゅうしゅういきをすることになっていた。 「きょうへおおきしてまいることは)

九州行きをすることになっていた。 「京へお置きして参ることは

(きがかりでなりませんからいらっしゃいませ」 とさそうのであるが、)

気がかりでなりませんからいらっしゃいませ」 と誘うのであるが、

(にょおうのこころはなおわすれられたかたちになっているげんじをたのみにしていた。)

女王の心はなお忘れられた形になっている源氏を頼みにしていた。

(どんなにときがたってもじぶんのおもいだされるきかいのないわけはない、)

どんなに時がたっても自分の思い出される機会のないわけはない、

(あれほどかたいちかいをじぶんにしてくれたひとのこころはかわっていないはずであるが、)

あれほど堅い誓いを自分にしてくれた人の心は変っていないはずであるが、

(じぶんのうんのわるいためにすてられたともひとからはみられるようなことに)

自分の運の悪いために捨てられたとも人からは見られるようなことに

(なっているのであろう、かぜのたよりででもじぶんのあわれなせいかつがげんじのみみにはいれば)

なっているのであろう、風の便りででも自分の哀れな生活が源氏の耳にはいれば

など

(きっとすくってくれるにちがいないと、これはずっといぜんからにょおうの)

きっと救ってくれるに違いないと、これはずっと以前から女王の

(しんじているところではあって、やしきもいえもむかしにばいしたこうはいのしかたではあるが、)

信じているところではあって、邸も家も昔に倍した荒廃のしかたではあるが、

(へやのなかのどうぐるいをそこばくのかねにかえていくようなことは、げんじのきたときに)

部屋の中の道具類をそこばくの金に変えていくようなことは、源氏の来た時に

(ふつごうであるからとにんたいをつづけているのである。きをめいらせて)

不都合であるからと忍耐を続けているのである。気をめいらせて

(ないているときのほうがおおいすえつむはなのかおは、ひとつのきのみだけをだいじにかおにあてて)

泣いている時のほうが多い末摘花の顔は、一つの木の実だけを大事に顔に当てて

(もっているせんにんともいってよいきかいなものにみえて、いせいのきょうみをひく)

持っている仙人とも言ってよい奇怪な物に見えて、異性の興味を惹く

(かちなどはない。きのどくであるからくわしいびょうしゃはしないことにする。)

価値などはない。気の毒であるからくわしい描写はしないことにする。

(ふゆにはいればはいるほどたよりなさはひどくなって、かなしくものおもいばかりして)

冬にはいればはいるほど頼りなさはひどくなって、悲しく物思いばかりして

(くらすにょおうだった。げんじのほうではこいんのためのさかんなはっこうをもよおして、)

暮らす女王だった。源氏のほうでは故院のための盛んな八講を催して、

(せけんがそれにわきたっていた。そうなどはへいぼんなものをよばずにがくもんととっこうの)

世間がそれに湧き立っていた。僧などは平凡な者を呼ばずに学問と徳行の

(すぐれたのをえらんでしょうじたそのぶつじに、にょおうのあにのぜんじもでたかえりに)

すぐれたのを選んで招じたその物事に、女王の兄の禅師も出た帰りに

(いもうとぎみをたずねてきた。 「げんのだいなごんさんのはっこうにいったのです。)

妹君を訪ねて来た。 「源大納言さんの八講に行ったのです。

(たいへんなじゅんびでね、このよのじょうどのようにほうようのばしょはできていましたよ。)

たいへんな準備でね、この世の浄土のように法要の場所はできていましたよ。

(おんがくもぶがくもたいしたものでしたよ。あのかたはきっとほとけさまのけしんだろう、)

音楽も舞楽もたいしたものでしたよ。あの方はきっと仏様の化身だろう、

(ごじょくのよにどうしてうまれておいでになったろう」 こんなはなしをして)

五濁の世にどうして生まれておいでになったろう」 こんな話をして

(ぜんじはすぐにかえった。ふつうのきょうだいのようにははなしあわないふたりであるから、)

禅師はすぐに帰った。普通の兄弟のようには話し合わない二人であるから、

(せいかつくもすえつむはなはうったえることができないのである。それにしてもこのふこうな)

生活苦も末摘花は訴えることができないのである。それにしてもこの不幸な

(みじめなおんなをすてておくというのは、なさけないほとけさまであると)

みじめな女を捨てて置くというのは、情けない仏様であると

(すえつむはなはうらめしかった。こんなきのしたときから、)

末摘花は恨めしかった。こんな気のした時から、

(じぶんはもうかえりみられるのぞみがないのだろうとようやくおもうようになった。)

自分はもう顧みられる望みがないのだろうとようやく思うようになった。

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