大江千里　返信

(ふゆやすみあけのひとけのないろうかは)

冬休み明けの人気のない廊下は

(しいのきのかげをおとしてゆれてた)

しいの木の影を落として揺れてた

(せいふくじゃないきみをはじめてみたよ)

制服じゃない君を初めてみたよ

(とかいへでてもれんらくするよ)

都会へ出ても連絡するよ

(まだまにあうかもしれない　つぎのとっきゅうにちゃんとのれば)

まだ間に合うかもしれない　次の特急にちゃんと乗れば

(くらすめ－とはみんなあつまる)

クラスメートは皆な集まる

(しょちゅうみまいくらいしかだせず「きみもげんき！」くらいしかかけず)

暑中見舞くらいしか出せず「君も元気！」くらいしか書けず

(ぼくはここのくうきにいまだになれない)

僕はここの空気にいまだに慣れない

(「かみをみみまでだしてみました　あさがはやいのででんしゃでかいてます」)

「髪を耳まで出してみました　朝が早いので電車で書いてます」

(きみからとどくはがきのもんくはおぼえた)

君から届くハガキの文句は覚えた

(かわらないまちやけしきがこいしい)

かわらない町や景色が恋しい

(ここはたくさんひとであふれて　いつもたくさんひととわかれて)

ここはたくさん人であふれて　いつもたくさん人と別れて

(おもいでをかかえてあるけない)

思い出を抱えて歩けない

(ひとのなみにせなかをおされて　だんだんきみのことをわすれて)

人の波に背中を押されて　だんだん君の事を忘れて

(まだあのころにすなおなへんじがだせない)

まだあの頃に素直な返事が出せない

(しょうこうぐちやどてのかたばみ　よりみちしたほどうのらくがき)

昇降口や土手のカタバミ　寄り道した歩道の落書き

(かわってゆくじぶんをゆるしていきてる)

変わってゆく自分を許して生きてる

(まだまにあうかもしれない　つぎのとっきゅうにちゃんとのれば)

まだ間に合うかもしれない　次の特急にちゃんと乗れば

(くらすめーとはみんなあつまる)

クラスメートは皆な集まる

(しょちゅうみまいくらいしかだせず「きみもげんき！」くらいしかかけず)

暑中見舞くらいしか出せず「君も元気！」くらいしか書けず

(まだあのころにすなおなへんじがだせない)

まだあの頃に素直な返事が出せない

(ここはたくさんひとであふれて　いつもたくさんひととわかれて)

ここはたくさん人であふれて　いつもたくさん人と別れて

(ほしのみえないよるがつづくよ)

星の見えない夜がつづくよ

(やっぱりきょうかえるのはよそう　はっしゃのべるをほーむできいた)

やっぱり今日帰るのはよそう　発車のベルをホームで聞いた

(わすれられないおもいではさわらぬほうがいい)

忘れられない思い出はさわらぬほうがいい