めおと鎧2

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(それははじめてしものおりたあさだった。)

それは初めて霜のおりた朝だった。

(まだくらいうちにびぜんじまのほうへあるきにでたまごへいが、)

まだ暗いうちに備前島のほうへあるきにでた孫兵衛が、

(やしきへもどろうとしてきょうばしのほうへむかってゆくと、)

屋敷へ戻ろうとして京橋のほうへ向ってゆくと、

(きくおかのいえのあしがるでごんろくというものが、ひりゅうをつれて)

菊岡の家の足軽で権六という者が、飛竜をつれて

(やってくるのとあった。まえにもしるしたように)

やって来るのと会った。まえにも記したように

(こうしこうしほどもあるおおきなやつで、)

こうしほどもある大きなやつで、

(ふといつなをたすきのようにかけている。)

太い綱を襷のようにかけている。

(そのつなのはしをごんろくがつかんでいるわけだが、)

その綱の端を権六がつかんでいるわけだが、

(いぬをひいているというよりは、いぬにひかれているかっこうだった。)

犬を曳いているというよりは、犬に曳かれている恰好だった。

(なんというふがいないざまだ。)

なんという不甲斐いないざまだ。

(まずごんろくをみてそうおもった。つぎにいぬをみると、)

まず権六を見てそう思った。つぎに犬を見ると、

(こいつはまたいかにもひとをみくだしためつきで)

こいつはまたいかにも人を見くだした眼つきで

(うさんくさそうにあたりをねめまわしながら)

うさん臭そうにあたりをねめまわしながら

(ゆうゆうとあるいている、「うん、おれがじぶさまの)

悠々とあるいている、「うん、おれが治部さまの

(おてがいになったら、おまえたちにも)

お手飼いになったら、おまえたちにも

(しゅっせのみちをひらいてやるよ」)

出世のみちをひらいてやるよ」

(といったふうなたいどだった。)

といった風な態度だった。

(まごへいはむらむらとはらがたってきた。)

孫兵衛はむらむらと腹がたってきた。

(それでえしゃくをしながらちかよってくるごんろくに、)

それで会釈をしながら近寄って来る権六に、

(「おい、ちょっとそのつなをはなしてみろ」)

「おい、ちょっとその綱をはなしてみろ」

など

(といった。しゅじんのぎていにあたるので)

と云った。主人の義弟にあたるので

(よくしっているあいてだし、まさかきられようとは)

よく知っている相手だし、まさか斬られようとは

(かんがえなかったので、ごんろくはつなをはなした。)

考えなかったので、権六は綱をはなした。

(いぬはそのままあるいてきたが、)

犬はそのままあるいてきたが、

(どうぶつのほんのうできけんにたいしてはびんかんだから、)

動物の本能で危険に対しては敏感だから、

(めのまえにぬっとたっているまごへいをみると、)

めのまえにぬっと立っている孫兵衛をみると、

(あゆみをとめてじろっとみあげた、)

あゆみをとめてじろっと見あげた、

(「なんだおまえは」そういうこえが)

「なんだおまえは」そう云うこえが

(まごへいにはきこえるようにおもえた。)

孫兵衛には聞えるように思えた。

(それでぐっとねめつけながら、)

それでぐっとねめつけながら、

(「きさまはなんだ」とどなった。)

「きさまはなんだ」とどなった。

(いぬはううとひくくうなった。)

犬はううと低くうなった。

(まごへいはなんだといいながらいっぽでた。)

孫兵衛はなんだと云いながら一歩でた。

(いぬはまたううとうなり、うわくちびるをあげてきばきばをみせた。)

犬はまたううと呻り、上唇をあげて牙きばを見せた。

(「なんだ、そのつらはなんだというんだ」)

「なんだ、そのつらはなんだというんだ」

(まごへいは、またいっぽまえにでた。)

孫兵衛は、また一歩まえに出た。

(いぬはがあとのどをならし、ぜんぶのはをむきだした。)

犬はがあと喉をならし、ぜんぶの歯をむきだした。

(「ああこうださま、あぶのうございます」)

「ああ香田さま、危のうございます」

(とごんろくがこえをかけたとき、)

と権六がこえをかけたとき、

(いぬはそれにけしかけられたように)

犬はそれにけしかけられたように

(ごうとはをかみならした。おどしである。)

ごうと歯を噛みならした。おどしである。

(こういういぬはけっしてほえない。)

こういう犬は決して吠えない。

(いきなりかみつきもしない。)

いきなり噛みつきもしない。

(ちょっと、じぶんのいりょくがどんなものかみせつけるのである。)

ちょっと、自分の威力がどんなものか見せつけるのである。

(ごんろくがこえをかけ、いぬがはをかみならしたとき、)

権六が声をかけ、犬が歯を噛みならしたとき、

(「ぶれいもの」とさけびながら、まごへいがぬきうちに)

「ぶれい者」と叫びながら、孫兵衛が抜打に

(いっとうさっとあびせた。それはみをひこうとする)

一刀さっと浴びせた。それは身をひこうとする

(ひりゅうのくびを、なかばまできりはなした。)

飛竜の首を、半ばまで斬り放した。

(いぬはきみょうなこえでひとつほえると、)

犬は奇妙なこえでひとつほえると、

(よこざまにとんでいってくさちへたおれ、)

横ざまにとんでいって草地へ倒れ、

(じめんへつけたくびをちゅうしんにくるくると)

地面へつけた首を中心にくるくると

(にどばかりまわってうごかなくなった。)

二度ばかり廻って動かなくなった。

(「こうださま、こ、こなたさまは」)

「香田さま、こ、こなた様は」

(ごんろくは、まっさおになってつめよった。)

権六は、まっ蒼になってつめ寄った。

(「こなたさまは、なにをなさいます、)

「こなた様は、なにをなさいます、

(こ、このおいぬは、このおいぬはじぶさまへ」)

こ、このお犬は、このお犬は治部さまへ」

(「なんだ、おまえおれにもんくをいうのか」)

「なんだ、おまえおれに文句を云うのか」

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