『妖怪博士』江戸川乱歩7

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
前回→https://typing.twi1.me/game/369860
次回→https://typing.twi1.me/game/369862
初回→https://typing.twi1.me/game/369844

第2作品→https://typing.twi1.me/game/329807
第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 sai 8895 9.1 97.5% 468.1 4271 107 98 2024/05/16
2 berry 7637 7.8 97.6% 539.3 4222 103 98 2024/05/30
3 HAKU 7630 7.9 96.3% 541.5 4294 162 98 2024/05/13
4 □「いいね」する 7251 7.5 96.5% 569.5 4282 152 98 2024/05/26
5 zero 6956 S++ 7.2 96.5% 595.3 4296 155 98 2024/05/25

関連タイピング

問題文

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(「おほほ、よくきたね。いいこだからにげるんじゃ)

「オホホ、よく来たね。いい子だから逃げるんじゃ

(ないよ。おばあさんがおもしろいはなしをしてあげるからね。)

ないよ。おばあさんが面白い話をしてあげるからね。

(さあ、こちらへおいで」ぶきみなろうばは、かたかけのした)

さあ、こちらへおいで」不気味な老婆は、肩かけの下

(からてをだしてたいじくんをまねきながら、じりじりと)

から手を出して泰二君を招きながら、ジリジリと

(ちかづいてきます。みぎへにげればみぎへ、ひだりへにげれば)

近づいて来ます。右へ逃げれば右へ、左へ逃げれば

(ひだりへ、おばあさんはたいじくんのにげるほうへ、まるで)

左へ、おばあさんは泰二君の逃げる方へ、まるで

(ひもでひかれでもいるかのように、こんきよく)

ヒモで引かれでもいるかのように、根気よく

(つきまとっているのです。どこにもにげみちがないあなの)

付きまとっているのです。 どこにも逃げ道がない穴の

(なかなので、いくらにげまわっても、いつかはつかまるに)

中なので、いくら逃げまわっても、いつかは捕まるに

(きまっています。たいじくんは、とうとうかくごをきめ)

決まっています。泰二君は、とうとう覚悟を決め

(ました。ほとんどしにものぐるいのけっしんをして、まっさおな)

ました。ほとんど死に物狂いの決心をして、真っ青な

(かおでそこにたちどまると、おばあさんをまちかまえ、)

顔でそこに立ち止まると、おばあさんを待ち構え、

(おそろしいめでにらみつけました。「おお、いいこだ。)

恐ろしい目でにらみつけました。「おお、いい子だ。

(おまえはおとこらしいこだねえ。ゆうきがあるねえ。)

お前は男らしい子だねえ。勇気があるねえ。

(さあ、おばあさんと「にらめっこ」をしましょう。)

さあ、おばあさんと「にらめっこ」をしましょう。

(さきにわらったほうがまけだよ。いいかい」)

先に笑ったほうが負けだよ。いいかい」

(おばあさんはじょうだんともほんきともつかない、みょうな)

おばあさんは冗談とも本気ともつかない、みょうな

(ことをいってたいじくんのまえにたち、しらがのまゆげの)

ことを言って泰二君の前に立ち、しらがの眉毛の

(したでぎろぎろひかっているおそろしいめで、またたきも)

下でギロギロ光っている恐ろしい目で、またたきも

(せずたいじくんのめをみつめました。しばらくのあいだ、)

せず泰二君の目を見つめました。 しばらくのあいだ、

など

(なんともけいようできない、ふしぎなにらみあいがつづき)

なんとも形容出来ない、不思議なにらみ合いが続き

(ました。たいじくんは、いまにもきをうしないそうになるのを)

ました。 泰二君は、今にも気を失いそうになるのを

(やっとがまんし、はをくいしばっていっしょうけんめいに、)

やっと我慢し、歯を食いしばって一生懸命に、

(おばあさんをにらみかえしていましたが、おばあさんの)

おばあさんをにらみ返していましたが、おばあさんの

(めはだんだんとおおきくみひらかれていき、なにかしらどうぶつ)

目は段々と大きく見ひらかれていき、何かしら動物

(のようなあおいひかりをはなちはじめました。なんだか、そこ)

のような青い光を放ち始めました。なんだか、そこ

(からめにみえないでんきのようなものが、たいじくんのほうへ)

から目に見えない電気のような物が、泰二君の方へ

(とんでくるようなかんじです。やがて、めだけはするどく)

飛んで来るような感じです。 やがて、目だけは鋭く

(みひらかれたまま、おばあさんのしわくちゃなかおに、)

見開かれたまま、おばあさんのシワくちゃな顔に、

(うすきみわるいびしょうがうかんできました。そして、)

薄気味悪い微笑が浮かんできました。そして、

(おばあさんはりょうてをちゅうにあげ、たいじくんのあたまのうえで、)

おばあさんは両手を宙にあげ、泰二君の頭の上で、

(なにかりずむでもとるかのように、ゆっくりさゆうへ)

何かリズムでもとるかのように、ゆっくり左右へ

(うごかしはじめました。すると、それがあいずだったのか、)

動かし始めました。 すると、それが合図だったのか、

(たいじくんはめのまえがぼーっとしろくなって、おばあさんの)

泰二君は目の前がボーっと白くなって、おばあさんの

(かおがみえなくなってきました。おばあさんのかおだけ)

顔が見えなくなってきました。おばあさんの顔だけ

(ではありません。あなのなかぜんたいが、こいもやにでも)

ではありません。穴の中全体が、濃いモヤにでも

(つつまれたようにいちめんがうすじろくなって、あたまがぼんやり)

包まれたように一面が薄白くなって、頭がボンヤリ

(してきました。「あ、いけない。ぼくはいま、)

してきました。「あ、いけない。ぼくは今、

(おばあさんのまほうにかかっているのだ。しっかり)

おばあさんの魔法にかかっているのだ。しっかり

(しなければいけない」そうおもって、なんどもきをとり)

しなければいけない」そう思って、何度も気を取り

(なおすのですが、やっぱりおばあさんのめからでる、)

直すのですが、やっぱりおばあさんの目から出る、

(でんきのようなものにまけて、うとうととゆめみごこちになる)

電気のような物に負けて、ウトウトと夢見心地になる

(のです。「ぼくは、ぼくはかえるんだ。おかあさん、)

のです。「ぼくは、ぼくは帰るんだ。お母さん、

(たすけてください」そんなわけのわからない、ねごとの)

助けてください」そんな訳の分からない、寝言の

(ようなことをふたこと、みことつぶやいたかとおもうと、)

ようなことを二言、三言つぶやいたかと思うと、

(かわいそうにたいじくんは、とうとうきりょくがつきて)

可哀想に泰二君は、とうとう気力がつきて

(くなくなと、そのばにたおれてしまいました。たおれて)

クナクナと、その場に倒れてしまいました。倒れて

(からもむがむちゅうでおきあがろうとして、しばらくは)

からも無我夢中で起き上がろうとして、しばらくは

(もがいていましたが、そのちからもだんだんおとろえて)

もがいていましたが、その力も段々おとろえて

(しまい、ぐったりとなって、しにんのようにぜんごも)

しまい、グッタリとなって、死人のように前後も

(しらずに、ねむりこんでしまいました。「おほほ、)

知らずに、ねむり込んでしまいました。「オホホ、

(とうとうねたね。さいみんじゅつのちからはおそろしいねえ。さあ、)

とうとう寝たね。催眠術の力は恐ろしいねえ。さあ、

(いいこだから、そうしてねむりながらわたしのいう)

いい子だから、そうしてねむりながら私の言う

(ことを、よくきいておぼえておくのだよ。いいかい」)

ことを、よく聞いて憶えておくのだよ。いいかい」

(おばあさんはたおれたたいじくんのうえにみをかがめて、)

おばあさんは倒れた泰二君の上に身をかがめて、

(やっぱりりょうてはちゅうにうかしたまま、ゆっくりと)

やっぱり両手は宙に浮かしたまま、ゆっくりと

(さゆうにうごかしながら、なにかじゅもんでもとなえるように)

左右に動かしながら、何か呪文でも唱えるように

(くどくどと、しゃべりはじめるのでした。たいじくんは、)

クドクドと、しゃべり始めるのでした。 泰二君は、

(ぶきみなろうばのまほうにかかったのでしょうか。)

不気味な老婆の魔法にかかったのでしょうか。

(いやいや、いまのじだいに「まほう」なんてあるはずが)

いやいや、今の時代に「魔法」なんてあるはずが

(ありません。これはおばあさんがいっていたとおり、)

ありません。これはおばあさんが言っていた通り、

(「さいみんじゅつ」というもののちからなのです。ひとをじゆうに)

「催眠術」というものの力なのです。人を自由に

(ねむらせ、ねむっているあいだにいろいろなことをめいれい)

ねむらせ、ねむっているあいだに色々なことを命令

(して、めがさめたら、それをじっこうさせるという、)

して、目が覚めたら、それを実行させるという、

(あのおそろしい「さいみんじゅつ」のちからだったのです。)

あの恐ろしい「催眠術」の力だったのです。

(「ふしぎなとうぞく」)

「不思議な盗賊」

(そのばんのしちじごろ、たいじしょうねんはなにごともなかったように、)

その晩の七時頃、泰二少年は何事もなかったように、

(おうちへかえってきました。おかあさんが、)

おうちへ帰ってきました。 お母さんが、

(「たいちゃん、どうしてこんなにおそくなったの」と、)

「タイちゃん、どうしてこんなに遅くなったの」と、

(たずねても、ただ「ともだちとべんきょうしていたんです」と)

たずねても、ただ「友だちと勉強していたんです」と

(こたえるのみで、なぜかほんとうのことをいおうとしない)

答えるのみで、なぜか本当のことを言おうとしない

(のでした。おかあさんが、「たいちゃん、ごはんは)

のでした。 お母さんが、「タイちゃん、ご飯は

(まだなのでしょう。ちゃんとよういしてありますから、)

まだなのでしょう。ちゃんと用意してありますから、

(はやくめしあがりなさい」といってもたいじくんは、)

早く召し上がりなさい」と言っても泰二君は、

(おかあさんやじょちゅうたちのかおをみるのがこわいとでも)

お母さんや女中たちの顔を見るのが怖いとでも

(いうふうに、だまってべんきょうべやへはいったまま、なにをして)

いう風に、黙って勉強部屋へ入ったまま、何をして

(いるのか、ことりともものおとをたてませんでした。)

いるのか、コトリとも物音をたてませんでした。

(いつもならばはちじごろになると、おかあさんのへやへ)

いつもならば八時頃になると、お母さんの部屋へ

(きて「なにか、おかしをください」と、おねだりする)

来て「なにか、お菓子をください」と、おねだりする

(のがくせのようになっていたのですが、こんやは)

のがクセのようになっていたのですが、今夜は

(どうしたのか、いっこうにへやからでてくるようすが)

どうしたのか、一向に部屋から出て来る様子が

(ありません。おかあさんは、もうしんぱいでたまらなく)

ありません。お母さんは、もう心配でたまらなく

(なったものですから、おかしとおちゃをもって、)

なったものですから、お菓子とお茶を持って、

(わざわざたいじくんのへやへ、ようすをみにいきました。)

わざわざ泰二君の部屋へ、様子を見に行きました。

(すると、どうでしょう。いつもはじゅうじごろまでおきて)

すると、どうでしょう。いつもは十時頃まで起きて

(いるたいじくんが、いつのまにかひとりでふとんをしいて、)

いる泰二君が、いつのまにか一人で布団を敷いて、

(ねているではありませんか。「あら、もうねるの。)

寝ているではありませんか。「あら、もう寝るの。

(へんねえ。きぶんでもわるいのかい」おかあさんからこえを)

変ねえ。気分でも悪いのかい」お母さんから声を

(かけられても、たいじくんはだまりこんだまま、へんじも)

かけられても、泰二君は黙り込んだまま、返事も

(しません。そうかといって、ねむっているわけでは)

しません。そうかといって、ねむっている訳では

(ないのです。あおいかおをして、まじまじとめをひらき、)

ないのです。青い顔をして、マジマジと目をひらき、

(しきりになにかかんがえごとをしているようすです。)

しきりに何か考え事をしている様子です。

(「まあ、なぜへんじをしないの。なにについてかんがえて)

「まあ、なぜ返事をしないの。何について考えて

(いるんですか。なにかしんぱいなことでもあるのかい。)

いるんですか。何か心配なことでもあるのかい。

(もしかして、おなかでもいたむのかい」)

もしかして、お腹でも痛むのかい」

(くりかえしたずねても、たいじくんはだまっています。)

繰り返したずねても、泰二君は黙っています。

(そして、じっとてんじょうをみつめたりょうめが、)

そして、ジッと天井を見つめた両目が、

(なみだぐんでいるように、ぎらぎらひかっているのです。)

涙ぐんでいるように、ギラギラ光っているのです。

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