第21章 失われた朝

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(かいとがめをさましたとき。) 海斗が目を覚ました時。 (そこはひろさきのりんごばたけだった。) そこは弘前のりんご畑だった。 (あさひがのぼりはじめている。) 朝日が昇り始めている。 (そらはすみわたり、とおくにはいわきさんがみえた。) 空は澄み渡り、遠くには岩木山が見えた。 (まるですべてがゆめだったようなしずかなあさだった。) まるで全てが夢だったような静かな朝だった。 (しばらくかいとはうごかなかった。) しばらく海斗は動かなかった。 (かぜのおとをきいていた。) 風の音を聞いていた。 (りんごのはがゆれる。) りんごの葉が揺れる。 (とりのさえずりもきこえる。) 鳥のさえずりも聞こえる。 (だがむねのなかにはいわかんがのこっていた。) だが胸の中には違和感が残っていた。
(あまりにもしずかだった。) あまりにも静かだった。 (ななつのかぎ。) 七つの鍵。 (あおかげだん。) 蒼影団。 (たっぴざきでのたたかい。) 龍飛崎での戦い。 (そうまとのであい。) 蒼真との出会い。 (すべてをおぼえている。) 全てを覚えている。 (だがしゅういにはなにものこっていなかった。) だが周囲には何も残っていなかった。 (「おわったのか?」) 「終わったのか……?」 (かいとはたちあがる。) 海斗は立ち上がる。 (そのときだった。) その時だった。
など
(はたけのむこうからだれかがはしってきた。) 畑の向こうから誰かが走ってきた。 (「かいとーーー!」) 「海斗ーーー!」 (れんだった。) 蓮だった。 (いきをきらしている。) 息を切らしている。 (つづいてみさきもあらわれた。) 続いて美咲も現れた。 (さんにんはしばらくむごんだった。) 三人はしばらく無言だった。 (たがいのかおをみる。) 互いの顔を見る。 (そしてどうじにわらった。) そして同時に笑った。 (「おぼえてる?」) 「覚えてる?」 (かいとがきく。) 海斗が聞く。 (「ぜんぶな」) 「全部な」 (れんがこたえた。) 蓮が答えた。 (「わたしも」) 「私も」 (みさきがうなずいた。) 美咲が頷いた。 (げんじつだった。) 現実だった。 (あのぼうけんはたしかにそんざいしたのだ。) あの冒険は確かに存在したのだ。 (だがとうどうのすがただけはなかった。) だが東堂の姿だけはなかった。 (どこにも。) どこにも。 (そのひいちにちさがしてもみつからなかった。) その日一日探しても見つからなかった。 (まるでさいしょからそんざいしなかったかのように。) まるで最初から存在しなかったかのように。 (とうどうはどこへいったのか。) 東堂はどこへ行ったのか。 (だれにもわからなかった。) 誰にも分からなかった。
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