魔法使いサラバント

(むかしあるところにひとりのまほうつかいがいた)

昔あるところに　ひとりの魔法使いがいた

(かれがもとめたのはししゃをよみがえらせるきんだんのひほう)

彼が求めたのは　死者を甦らせる禁断の秘法

(りょうぶんをおかすものにふりかかるのはやくさいのみとしりながら)

領分を侵す者に降りかかるのは　厄災のみと識りながら

(なにゆえひとはもとめるのか？じんちをこえたまじんのちからを)

何故人は求めるのか？　人智を超えた魔神の力を…

(ふきすさぶかぜはすなをまきあげて)

吹きすさぶ風は砂を巻き上げて

(わかいたびびとのゆくてをはばむ)

若い旅人の行く手を阻む

(たびのみちづれはいっとうのらくだ)

旅の道連れは一頭の駱駝

(おかをのりこえてまちへとむかう)

砂丘を乗り越えて街へと向かう…

(まほうのらんぷがほしくはないか？)

魔法のランプが欲しくはないか？

(うさんくさいひげのおとこがささやいた)

胡散臭い髭の男が囁いた

(うすぐらいろじうらでのかけひき)

薄暗い路地裏での駆け引き

(かれはおとこがもちだしたじょうけんをのんだ)

彼は男が持ち出した条件を飲んだ…

(らんぷをこするとまじんがあらわれみっつのねがいをかなえてくれるという)

ランプを擦ると魔神が現れ　三つの願いを叶えてくれると言う

(ねがいごとをひとつゆずるというじょうけんでかれはそのありかをききだした)

願い事を一つ譲るという条件で　彼はその有処を聞き出した

(そのらんぷはなんせいにあるどうくつにふういんされているという)

そのランプは　南西に有る洞窟に封印されているという

(かたあしがわるいというおとこのかわりにかれはあなのなかへとおりた)

片足が悪いという男の代わりに　彼は穴の中へと降りた…

(さばくのしたにはおおきなくうどう)

砂漠の下には　大きな空洞

(つめたいくうきがせすじをかすめる)

冷たい空気が　背筋を掠める

(どうくつのおくにはあやしいさいだん)

洞窟の奥には　妖しい祭壇

(おうごんのらんぷとふるびたじゅうたん)

黄金のランプと　古びた絨毯

(らんぷをてにとるとどうくつがくずれた)

ランプを手に取ると　洞窟が崩れた

(らんぷをはやくこっちへよこせ)

「ランプを早くこっちへよこせ！」

(おとこがさけんだ)

男が叫んだ

(わすれものはありませんか)

忘レモノハ在リマセンカ…？

(くらいやみのなかなつかしいこえをきく)

暗い闇の中　懐かしい声を聴く

(あたたかなひかりいとしいこえがいう)

暖かな光　愛しい声が言う

(うしなわれたもののためにねがうより)

失われたモノの為に願うより

(いまめのまえにあるものをみつめて)

今目の前にあるモノを見つめて…

(めざめればすながまきあがるおかのうえでだかれていた)

覚醒めれば砂が巻き上がる　砂丘の飢えで抱かれていた

(くろかみのうつくしいしょうじょなきながらほほえんでいた)

黒髪の美しい少女　泣きながら微笑んでいた

(いにしえのつみとばつのろんどらんぷにとじこめられていた)

古の罪と罰の輪舞曲　ランプに閉じ込められていた

(おろかなわたしをだしてくれたますたーさぁねがいをどうぞかなえましょう)

愚かな私を出してくれた御主人様　さぁ願いをどうぞ　叶えましょう

(みっつのねがいすべてかなえたらしょうじょはふたたび)

三つの願い全て叶えたら少女は再び

(ただつめたいすなのしたでいくせんのこどくにふるえる)

唯冷たい砂の下で幾千の孤独に震える…

(そしてかれはねがった)

そして彼は願った…

(ふきすさぶかぜはすなをまきあげてわかいたびびとのゆくてをはばむ)

吹きすさぶ風は砂を巻き上げて　若い旅人の行く手を阻む

(たびのみちづれはにとうのらくだながいくろかみのしょうじょがひとり)

旅の道連れは二頭の駱駝　長い黒髪の少女が一人…