銀河鉄道の夜 11
五、天気輪の柱 (1/2)
宮沢賢治 作
宮沢賢治 作
牧場のうしろはゆるい丘になって、その黒い平らな頂上は、北の大熊星の下に、ぼんやりふだんよりも低くつらなって見えました。
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問題文
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(ご、てんきりんのはしら)
五、天気輪の柱
(ぼくじょうのうしろはゆるいおかになって、)
牧場のうしろはゆるい丘になって、
(そのくろいたいらなちょうじょうは、きたのおおくまぼしのしたに、)
その黒い平らな頂上は、北の大熊星の下に、
(ぼんやりふだんよりもひくくつらなってみえました。)
ぼんやりふだんよりも低く連なって見えました。
(じょばんには、もうつゆのおりかかったちいさなはやしのこみちを、)
ジョバンニは、もう露の降りかかった小さな林のこみちを、
(どんどんのぼっていきました。)
どんどんのぼって行きました。
(まっくらなくさや、いろいろなかたちにみえるやぶのしげみのあいだを、)
まっくらな草や、いろいろな形に見える藪のしげみの間を、
(そのちいさなみちが、ひとすじしろく)
その小さなみちが、一すじ白く
(ほしあかりにてらしだされてあったのです。)
星あかりに照らしだされてあったのです。
(くさのなかには、ぴかぴかあおびかりをだすちいさなむしもいて、)
草の中には、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、
(あるははあおくすかしだされ、)
ある葉は青くすかし出され、
(じょばんには、さっきみんなのもっていった)
ジョバンニは、さっきみんなの持って行った
(からすうりのあかりのようだともおもいました。)
カラスウリの灯りのようだとも思いました。
(そのまっくろな、まつやならのはやしをこえると、)
そのまっ黒な、松やナラの林を越えると、
(にわかにがらんとそらがひらけて、)
にわかにがらんと空がひらけて、
(あまのがわがしらしらとみなみからきたへわたっているのがみえ、)
天の川がしらしらと南から北へわたっているのが見え、
(またいただきの、てんきりんのはしらもみわけられたのでした。)
また頂きの、天気輪の柱も見わけられたのでした。
(つりがねそうかのぎくかのはなが、)
ツリガネソウか野菊かの花が、
(そこらいちめんに、ゆめのなかからでもかおりだしたというようにさき、)
そこらいちめんに、夢の中からでも香りだしたというように咲き、
(とりがいっぴき、おかのうえをなきつづけながらとおっていきました。)
鳥が一ぴき、丘の上を鳴きつづけながら通って行きました。
など
(じょばんには、いただきのてんきりんのはしらのしたにきて、)
ジョバンニは、頂きの天気輪の柱の下にきて、
(どかどかするからだを、つめたいくさになげました。)
どかどかするからだを、つめたい草に投げました。
(まちのあかりは、やみのなかをまるでうみのそこのおみやのけしきのようにともり、)
町の灯りは、暗の中をまるで海の底のお宮のけしきのようにともり、
(こどもらのうたうこえやくちぶえ、)
子どもらの歌う声や口笛、
(きれぎれのさけびごえもかすかにきこえてくるのでした。)
きれぎれの叫び声もかすかに聞こえてくるのでした。