銀河鉄道の夜 20
七、北十字とプリオシン海岸 (4/6)
宮沢賢治 作
宮沢賢治 作
カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌にひろげ、指できしきしさせながら、夢のようにいっているのでした。
「この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えている。」
「この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えている。」
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(そしてまもなく、あのきしゃからみえたきれいなかわらにきました。)
そして間もなく、あの汽車から見えたきれいな河原にきました。
(かむぱねるらは、そのきれいなすなをひとつまみ、てのひらにひろげ、)
カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌にひろげ、
(ゆびできしきしさせながら、ゆめのようにいっているのでした。)
指できしきしさせながら、夢のようにいっているのでした。
(「このすなはみんなすいしょうだ。なかでちいさなひがもえている。」)
「この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えている。」
(「そうだ。」)
「そうだ。」
(どこでぼくは、そんなことならったろうとおもいながら、)
どこでぼくは、そんなこと習ったろうと思いながら、
(じょばんにもぼんやりこたえていました。)
ジョバンニもぼんやり答えていました。
(かわらのこいしは、みんなすきとおって、)
河原の礫(こいし)は、みんなすきとおって、
(たしかにすいしょうやとぱーずや、)
たしかに水晶や黄玉(トパーズ)や、
(またくしゃくしゃのしゅうきょくをあらわしたのや、)
またくしゃくしゃの皺曲(しゅうきょく)をあらわしたのや、
(またかどからきりのようなあおじろいひかりをだすこうぎょくやらでした。)
また稜(かど)から霧のような青白い光を出す鋼玉(こうぎょく)やらでした。
(じょばんには、はしってそのなぎさにいって、みずにてをひたしました。)
ジョバンニは、走ってその渚に行って、水に手をひたしました。
(けれどもあやしいそのぎんがのみずは、)
けれどもあやしいその銀河の水は、
(すいそよりもすきとおっていたのです。)
水素よりもすきとおっていたのです。
(それでもたしかにながれていたことは、)
それでもたしかに流れていたことは、
(ふたりのてくびの、みずにひたったとこが、)
ふたりの手首の、水にひたったとこが、
(すこしすいぎんいろにういたようにみえ、)
少し水銀いろに浮いたように見え、
(そのてくびにぶっつかってできたなみは、)
その手首にぶっつかってできた波は、
(うつくしいりんこうをあげて、)
うつくしい燐光をあげて、
(ちらちらともえるようにみえたのでもわかりました。)
ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。
など
(かわかみのほうをみると、すすきのいっぱいにはえているがけのしたに、)
川上の方を見ると、すすきのいっぱいに生えている崖の下に、
(しろいいわが、まるでうんどうじょうのようにたいらにかわにそってでているのでした。)
白い岩が、まるで運動場のように平らに川に沿って出ているのでした。
(そこにちいさなご、ろくにんのひとかげが、)
そこに小さな五、六人の人かげが、
(なにかほりだすかうめるかしているらしく、)
何か掘り出すか埋めるかしているらしく、
(たったりかがんだり、ときどきなにかのどうぐが、)
立ったりかがんだり、ときどきなにかの道具が、
(ぴかっとひかったりしました。)
ピカッと光ったりしました。
(「いってみよう。」)
「行ってみよう。」
(ふたりは、まるでいちどにさけんで、そっちのほうへはしりました。)
ふたりは、まるで一度に叫んで、そっちの方へ走りました。