銀河鉄道の夜 57
九、ジョバンニの切符 29/36
(サザンクロス 2/4)
(サザンクロス 2/4)
「あなたの神さまってどんな神さまですか。」
青年は笑いながらいいました。
青年は笑いながらいいました。
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(「あなたのかみさまってどんなかみさまですか。」)
「あなたの神さまってどんな神さまですか。」
(せいねんはわらいながらいいました。)
青年は笑いながらいいました。
(「ぼくほんとうはよくしりません、)
「ぼくほんとうはよく知りません、
(けれどもそんなんでなしに、ほんとうのたったひとりのかみさまです。」)
けれどもそんなんでなしに、ほんとうのたったひとりの神さまです。」
(「ほんとうのかみさまはもちろんたったひとりです。」)
「ほんとうの神さまはもちろんたったひとりです。」
(「ああ、そんなんでなしにたったひとりのほんとうのかみさまです。」)
「ああ、そんなんでなしにたったひとりのほんとうの神さまです。」
(「だからそうじゃありませんか。)
「だからそうじゃありませんか。
(わたくしはあなたがたがいまにそのほんとうのかみさまのまえに)
わたくしはあなた方がいまにそのほんとうの神さまの前に
(わたくしたちとおあいになることをいのります。」)
わたくしたちとお会いになることを祈ります。」
(せいねんはつつましくりょうてをくみました。)
青年はつつましく両手を組みました。
(おんなのこもちょうどそのとおりにしました。)
女の子もちょうどその通りにしました。
(みんなほんとうにわかれがおしそうで)
みんなほんとうに別れが惜しそうで
(そのかおいろもすこしあおざめてみえました。)
その顔いろも少し青ざめて見えました。
(じょばんにはあぶなくこえをあげてなきだそうとしました。)
ジョバンニはあぶなく声をあげて泣き出そうとしました。
(「さあもうしたくはいいんですか。じきさざんくろすですから。」)
「さあもうしたくはいいんですか。じきサザンクロスですから。」
(ああそのときでした。)
ああそのときでした。
(みえないあまのがわのずうっとかわしもに、)
見えない天の川のずうっと川下に、
(あおやだいだいや、もうあらゆるひかりでちりばめられたじゅうじかが)
青や橙や、もうあらゆる光でちりばめられた十字架が
(まるでいっぽんのきというふうにかわのなかからたってかがやき、)
まるで一本の木というふうに川の中から立ってかがやき、
(そのうえにはあおじろいくもがまるいわになって)
その上には青じろい雲がまるい環になって
など
(ごこうのようにかかっているのでした。)
後光のようにかかっているのでした。
(きしゃのなかがまるでざわざわしました。)
汽車の中がまるでざわざわしました。
(みんなあのきたのじゅうじのときのように)
みんなあの北の十字のときのように
(まっすぐにたっておいのりをはじめました。)
まっすぐに立ってお祈りをはじめました。
(あっちにもこっちにも)
あっちにもこっちにも
(こどもがうりにとびついたときのような、よろこびのこえや、)
子どもが瓜に飛びついたときのような、よろこびの声や、
(なんともいいようない)
なんともいいようない
(ふかいつつましいためいきのおとばかりきこえました。)
深いつつましいためいきの音ばかりきこえました。
(そしてだんだんじゅうじかはまどのしょうめんになり、)
そしてだんだん十字架は窓の正面になり、
(あのりんごのにくのようなあおじろいわのくもも)
あのりんごの肉のような青じろい環の雲も
(ゆるやかにゆるやかにめぐっているのがみえました。)
ゆるやかにゆるやかにめぐっているのが見えました。