人間失格(第一の手記)3

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プレイ回数1難易度(3.9) 1944打 長文 かな
太宰治の人間失格
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問題文

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(じぶんはこどものころからじぶんのかぞくのものたちにたいしてさえ) 自分は子供の頃から、自分の家族の者たちに対してさえ、 (かれらがどんなにくるしくまたどんなことをかんがえていきているのか) 彼等がどんなに苦しく、またどんな事を考えて生きているのか、 (まるでちっともけんとうつかずただおそろしくそのきまずさにたえることができず) まるでちっとも見当つかず、ただ恐ろしく、その気まずさに堪える事が出来ず、 (すでにどうけのじょうずになっていました) 既に道化の上手になっていました。 (つまりじぶんはいつのまにやら) つまり、自分は、いつのまにやら、 (ひとこともほんとうのことをいわないこになっていたのです) 一言も本当の事を言わない子になっていたのです。 (そのころのかぞくたちといっしょにうつしたしゃしんなどをみると) その頃の、家族たちと一緒にうつした写真などを見ると、 (ほかのものたちはみなまじめなかおをしているのにじぶんひとり) 他の者たちは皆まじめな顔をしているのに、自分ひとり、 (かならずきみょうにかおをゆがめてわらっているのです) 必ず奇妙に顔をゆがめて笑っているのです。 (これもまたじぶんのおさなくかなしいどうけのいっしゅでした) これもまた、自分の幼く悲しい道化の一種でした。
(またじぶんはにくしんたちになにかいわれて) また自分は、肉親たちに何か言われて、 (くちごたえしたことはいちどもありませんでした) 口応えした事はいちども有りませんでした。 (そのわずかなおこごとはじぶんにはへきれきのごとくつよくかんぜられ) そのわずかなおこごとは、自分には霹靂の如く強く感ぜられ、 (くるうみたいになりくちごたえどころかそのおこごとこそ) 狂うみたいになり、口応えどころか、そのおこごとこそ、 (いわばばんせいいっけいのにんげんのしんりとかいうものにちがいない) 謂わば万世一系の人間の「真理」とかいうものに違いない、 (じぶんにはそのしんりをおこなうちからがないのだから) 自分にはその真理を行う力が無いのだから、 (もはやにんげんといっしょにすめないのではないかしらとおもいこんでしまうのでした) もはや人間と一緒に住めないのではないかしら、と思い込んでしまうのでした。 (だからじぶんにはいいあらそいもじこべんかいもできないのでした) だから自分には、言い争いも自己弁解も出来ないのでした。 (ひとからわるくいわれるといかにももっとも) 人から悪く言われると、いかにも、もっとも、 (じぶんがひどいおもいちがいをしているようなきがしてきて) 自分がひどい思い違いをしているような気がして来て、
など
(いつもそのこうげきをもくしてうけないしんくるうほどのきょうふをかんじました) いつもその攻撃を黙して受け、内心、狂うほどの恐怖を感じました。 (それはだれでもひとからひなんせられたりおこられたりして) それは誰でも、人から非難せられたり、怒られたりして (いいきもちがするものではないかもしれませんが) いい気持がするものでは無いかも知れませんが、 (じぶんはおこっているにんげんのかおにししよりもわによりもりゅうよりも) 自分は怒っている人間の顔に、獅子よりも鰐よりも竜よりも、 (もっとおそろしいどうぶつのほんしょうをみるのです) もっとおそろしい動物の本性を見るのです。 (ふだんはそのほんしょうをかくしているようですけれども) ふだんは、その本性をかくしているようですけれども、 (なにかのきかいにたとえばうしがそうげんでおっとりしたかたちでねていて) 何かの機会に、たとえば、牛が草原でおっとりした形で寝ていて、 (とつじょしっぽでぴしっとはらのあぶをうちころすみたいに) 突如、尻尾でピシッと腹の虻を打ち殺すみたいに (ふいににんげんのおそろしいしょうたいをいかりによってばくろするようすをみて) 不意に人間のおそろしい正体を、怒りに依って暴露する様子を見て、 (じぶんはいつもかみのさかだつほどのせんりつをおぼえ) 自分はいつも髪の逆立つほどの戦慄を覚え、 (このほんしょうもまたにんげんのいきていくしかくのひとつなのかもしれないとおもえば) この本性もまた人間の生きて行く資格の一つなのかも知れないと思えば、 (ほとんどじぶんにぜつぼうをかんじるのでした) ほとんど自分に絶望を感じるのでした。 (にんげんにたいしていつもきょうふにふるいおののきまたにんげんとしてのじぶんのげんどうに) 人間に対して、いつも恐怖に震いおののき、また、人間としての自分の言動に、 (みじんもじしんをもてずそうしてじぶんひとりのおうのうはむねのなかのこばこにひめ) みじんも自信を持てず、そうして自分ひとりの懊悩は胸の中の小箱に秘め、 (そのゆううつなあヴぁすねすをひたかくしにかくして) その憂鬱、ナアヴァスネスを、ひたかくしに隠して、 (ひたすらむじゃきのらくてんせいをよそおいじぶんはおどけたおへんじんとして) ひたすら無邪気の楽天性を装い、自分はお道化たお変人として、 (しだいにかんせいされていきました) 次第に完成されて行きました。
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