星の王子さま 25 (28/32)

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プレイ回数1678難易度(4.2) 4392打 長文
ごちそうの水
サン=テグジュペリ作 内藤濯訳 

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問題文

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(おうじさまはいいました。)

王子さまはいいました。

(「みんなは、とっきゅうれっしゃにのりこむけど、いまではもう、なにをさがしてるのか、)

「みんなは、特急列車に乗りこむけど、今ではもう、なにを探してるのか、

(わからなくなってる。 だからみんなは、そわそわしたり、)

わからなくなってる。 だからみんなは、そわそわしたり、

(どうどうめぐりなんかしてるんだよ・・・」)

どうどうめぐりなんかしてるんだよ・・・」

(それからまた、つづけていいました。)

それからまた、つづけていいました。

(「ごくろうさまなはなしだ・・・」)

「ごくろうさまな話だ・・・」

(ぼくたちが、いきついたいどは、)

ぼくたちが、行き着いた井戸は、

(さはらさばくにあるいどらしくはありませんでした。)

サハラ砂漠にある井戸らしくはありませんでした。

(さはらさばくのいどは、ただのあなが、すなちにほられているだけのものです。)

サハラ砂漠の井戸は、ただの穴が、砂地にほられているだけのものです。

(ところで、ぼくたちのはっけんしたいどは、むらにあるようないどでした。)

ところで、ぼくたちの発見した井戸は、村にあるような井戸でした。

(でも、あたりには、むらなんか、ひとつもありません。)

でも、あたりには、村なんか、一つもありません。

(ぼくは、ゆめをみているきもちでした。)

ぼくは、夢を見ている気持ちでした。

(「へんだな、みんなよういしてある。 くるまも、つるべも、つなも・・・」)

「へんだな、みんな用意してある。 車も、つるべも、綱も・・・」

(と、ぼくは、おうじさまにいいました。)

と、ぼくは、王子さまにいいました。

(おうじさまはわらいました。)

王子さまは笑いました。

(そして、つなにてをかけて、いどのくるまをうごかしました。)

そして、綱に手をかけて、井戸の車を動かしました。

(すると、くるまが、うめくようにひびきました。)

すると、車が、うめくようにひびきました。

(ながいこと、かぜにふかれずにいる、ふるいかざみのようにぎいときしりました。)

長いこと、風に吹かれずにいる、古い風見のようにギイときしりました。

(「ほら、このいどが、めをさましてうたってるよ・・・」)

「ほら、この井戸が、目をさまして歌ってるよ・・・」

(ぼくは、おうじさまにほねをおらせたくなかったので、いいました。)

ぼくは、王子さまに骨をおらせたくなかったので、いいました。

など

(「ぼくがくんであげるよ。きみにはおもすぎるから」)

「ぼくが汲んであげるよ。きみには重すぎるから」

(ぼくはゆっくりと、つるべをいどのふちまでひきあげました。)

ぼくはゆっくりと、つるべを井戸のふちまでひきあげました。

(そして、それをいどがわに、ちゃんとおきました。)

そして、それを井戸がわに、ちゃんとおきました。

(ぼくのみみには、くるまのからからいうおとが、ずっときこえているし、)

ぼくの耳には、車のカラカラいう音が、ずっと聞こえているし、

(まだゆれているいどみずには、ひのひかりが、きらきらとうつっていました。)

まだゆれている井戸水には、日の光が、キラキラとうつっていました。

(「ぼく、そのみずがほしいな。 のましてくれない?・・・」)

「ぼく、その水がほしいな。 のましてくれない?・・・」

(ぼくは、おうじさまがなにをさがしていたのか、わかりました。)

ぼくは、王子さまがなにを探していたのか、わかりました。

(ぼくは、つるべを、おうじさまのくちびるにもちあげました。)

ぼくは、つるべを、王子さまのくちびるに持ち上げました。

(すると、おうじさまは、めをつぶったまま、ごくごくとのみました。)

すると、王子さまは、目をつぶったまま、ごくごくと飲みました。

(おいわいのひのごちそうでもたべるように、うまかったのです。)

お祝いの日のごちそうでも食べるように、うまかったのです。

(そのみずは、たべものとは、べつなものでした。)

その水は、たべものとは、べつなものでした。

(ほしぞらのしたをあるいたあとで、くるまがきしるのをききながら、ぼくのうでにちからをいれて、)

星空の下を歩いたあとで、車がきしるのをききながら、ぼくの腕に力を入れて、

(くみあげたみずだったのです。)

汲みあげた水だったのです。

(だから、なにかおくりものでもうけるように、しみじみとうれしいみずだったのです。)

だから、なにか贈り物でも受けるように、しみじみとうれしい水だったのです。

(ぼくは、ほんのこどもだったころ、ぼくのもらうくりすますのおくりものも、)

ぼくは、ほんの子どもだったころ、ぼくのもらうクリスマスの贈り物も、

(くりすます・つりーにはろうそくがひかっているし、)

クリスマス・ツリーにはロウソクが光っているし、

(まよなかのみさのおんがくはきこえるし、ひとたちがはるのようににっこりしているので、)

真夜中のミサの音楽はきこえるし、人たちが春のようににっこりしているので、

(いよいよきらきらとめにうつりました。)

いよいよキラキラと目にうつりました。

(「きみのすんでるとこのひとたちったら、おなじひとつのにわで、)

「きみの住んでるとこの人たちったら、おなじ一つの庭で、

(ばらのはなをごせんもつくってるけど、・・・じぶんたちがなにがほしいのか、)

バラの花を五千も作ってるけど、・・・自分たちがなにがほしいのか、

(わからずにいるんだ」 と、おうじさまがいいました。)

わからずにいるんだ」 と、王子さまがいいました。

(「うん、わからずにいる・・・」 と、ぼくはこたえました。)

「うん、わからずにいる・・・」 と、ぼくは答えました。

(「だけど、さがしてるものは、たったひとつのばらのはなのなかにだって、)

「だけど、探してるものは、たった一つのバラの花の中にだって、

(すこしのみずにだって、あるんだがなあ・・・」)

少しの水にだって、あるんだがなあ・・・」

(「そうだとも」 と、ぼくはこたえました。)

「そうだとも」 と、ぼくは答えました。

(すると、おうじさまは、またつづけていいました。)

すると、王子さまは、またつづけていいました。

(「だけど、めでは、なにもみえないよ。 こころでさがさないとね」)

「だけど、目では、なにも見えないよ。 心で探さないとね」

(ぼくはみずをのんで、ほっとしました。)

ぼくは水を飲んで、ほっとしました。

(よあけのすなちは、みつのようないろになるものです。)

夜明けの砂地は、蜜のような色になるものです。

(ぼくはそのみつのようないろを、いいきもちになってながめていました。)

ぼくはその蜜のような色を、いい気持ちになってながめていました。

(くろうするわけなんか、どこにもありませんでした。)

苦労するわけなんか、どこにもありませんでした。

(「きみはやくそくまもらなくちゃ」 と、しずかにいったおうじさまは、)

「きみは約束まもらなくちゃ」 と、しずかにいった王子さまは、

(また、ぼくのそばにきてこしをおろしていました。)

また、ぼくのそばにきて腰を下ろしていました。

(「やくそくって?」)

「約束って?」

(「ほら・・・ぼくのひつじにはめてやるくちわのことさ。)

「ほら・・・ぼくのヒツジにはめてやる口輪のことさ。

(ぼく、どんなことになったって、あのはなをほっとくわけにいかないんだもの」)

ぼく、どんなことになったって、あの花をほっとくわけにいかないんだもの」

(ぼくは、ぽけっとから、かきなぐったいろいろなえをだしました。)

ぼくは、ポケットから、かきなぐったいろいろな絵をだしました。

(おうじさまは、それをみると、わらいながらいいました。)

王子さまは、それを見ると、笑いながらいいました。

(「きみのかいたばおばぶったら、なんだか、きゃべつみたいだな」)

「きみのかいたバオバブったら、なんだか、キャベツみたいだな」

(「ひどいなあ!」)

「ひどいなあ!」

(ずいぶんとくいになってかいたばおばぶだったのに・・・)

随分とくいになってかいたバオバブだったのに・・・

(「これ、きつねだな・・・このみみったら・・・なんだかつのみたいだね・・・)

「これ、キツネだな・・・この耳ったら・・・なんだか角みたいだね・・・

(あんまりながすぎるよ」)

あんまり長すぎるよ」

(そして、またおうじさまはわらいました。)

そして、また王子さまは笑いました。

(「ぼっちゃん、ひどいよ、そりゃ。 うわばみのうちがわとそとがわでなくちゃ、)

「ぼっちゃん、ひどいよ、そりゃ。 ウワバミの内側と外側でなくちゃ、

(なんにもかけなかったぼくなんだからねえ」)

なんにもかけなかったぼくなんだからねえ」

(「なに、それで、けっこうだよ。 こどもにはわかるんだから」)

「なに、それで、けっこうだよ。 子どもにはわかるんだから」

(ぼくは、そこでくちわをえんぴつでかきました。)

ぼくは、そこで口輪をエンピツでかきました。

(でも、それをおうじさまにわたすとなると、むねがいっぱいになりました。)

でも、それを王子さまにわたすとなると、胸がいっぱいになりました。

(「きみは、いろんなことをしようとしているんだ、ぼくのしらない・・・」)

「きみは、いろんな事をしようとしているんだ、ぼくの知らない・・・」

(が、おうじさまは、ぼくがそういったことにはこたえずに、こういいました。)

が、王子さまは、ぼくがそういったことには答えずに、こういいました。

(「ね、ぼくは、このちきゅうにおりてきたろ?・・・)

「ね、ぼくは、この地球に降りてきたろ?・・・

(あしたはいちねんめのきねんびなんだよ・・・」)

明日は一年目の記念日なんだよ・・・」

(それから、しばらくだまっていたあとで、おうじさまは、またこういいました。)

それから、しばらく黙っていたあとで、王子さまは、またこういいました。

(「ぼく、ここのすぐちかくにおりてきたんだった・・・」)

「ぼく、ここのすぐ近くに降りてきたんだった・・・」

(そしておうじさまは、かおをあかくしました。)

そして王子さまは、顔を赤くしました。

(すると、ぼくは、なぜかわけはわからずに、また、へんにかなしくなりました。)

すると、ぼくは、なぜかわけはわからずに、また、変に悲しくなりました。

(そして、またひとつ、きくことを、おもいつきました。)

そして、また一つ、聞くことを、思いつきました。

(「いっしゅうかんまえのあさ、ぼくがきみとしりあったとき、)

「一週間まえの朝、ぼくがきみと知り合ったとき、

(きみは、ひとのすんでるところから、せんまいるもはなれたところを、)

きみは、人の住んでるところから、千マイルもはなれたところを、

(あんなにひとりぼっちであるいていた。)

あんなにひとりぼっちで歩いていた。

(じゃ、あれも、ただ、そうやっていたわけじゃなかったんだね。)

じゃ、あれも、ただ、そうやっていたわけじゃなかったんだね。

(きみは、おりてきたところへ、またいきかけていたんだね?」)

きみは、降りてきたところへ、また行きかけていたんだね?」

(おうじさまは、またかおをあかくしました。)

王子さまは、また顔を赤くしました。

(で、ぼくは、もじもじしながら、つづけていいました。)

で、ぼくは、もじもじしながら、つづけていいました。

(「きねんびだったからだろうね?・・・」 おうじさまは、またかおをあかくしました。)

「記念日だったからだろうね?・・・」 王子さまは、また顔を赤くしました。

(なにか、きかれても、それにこたえたことがないのです。)

なにか、きかれても、それに答えたことがないのです。

(それは、<そうだ>といういみではないでしょうか。)

それは、<そうだ>という意味ではないでしょうか。

(「ああ、ぼく、すこしこわくなった・・・」)

「ああ、ぼく、少し怖くなった・・・」

(しかし、おうじさまは、ぼくにこういうのでした。)

しかし、王子さまは、ぼくにこういうのでした。

(「さあ、もう、しごとをしなくちゃいけないよ。 ひこうきのところへいってね。)

「さあ、もう、仕事をしなくちゃいけないよ。 飛行機のところへいってね。

(ぼく、ここでまってるよ。 またきてね、あしたのゆうがた・・・」)

ぼく、ここで待ってるよ。 またきてね、あしたの夕方・・・」

(が、ぼくは、おちついてはいられませんでした。)

が、ぼくは、落ち着いてはいられませんでした。

(きつねのことをおもいだしていたのです。)

キツネのことを思い出していたのです。

(なかのよいあいてができると、ひとは、なにかしらなきたくなるものかもしれません。)

仲のよい相手ができると、人は、なにかしら泣きたくなるものかもしれません。

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