ツルゲーネフ はつ恋 ⑩
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | りく | 5578 | A | 5.7 | 97.8% | 526.7 | 3004 | 66 | 48 | 2024/11/10 |
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問題文
(しち きっかりはちじに、わたしはふろっくこーとをいっちゃくおよび、あたまのかみを)
七 きっかり八時に、わたしはフロックコートを一着および、頭の髪を
(こだかくもりあげて、こうしゃくふじんのすみかなるはなれへはいっていった。)
小高く盛り上げて、侯爵夫人の住家なる傍屋へ入って行った。
(れいのろうぼくが、ぶあいそうなめでわたしをじろりとみると、しぶしぶこしかけから)
例の老僕が、無愛想な眼でわたしをじろりと見ると、しぶしぶ腰掛から
(しりをもたげた。)
尻をもたげた。
(きゃくまにはようきなひとごえがきこえていた。わたしはそのどあをあけると、)
客間には陽気な人声が聞こえていた。わたしはそのドアをあけると、
(あっとばかりうしろへすさった。へやのまんなかには、いすのうえにこうしゃくれいじょう)
あっとばかり後ろへすさった。部屋の真ん中には、椅子の上に侯爵令嬢
(がつったちあがって、おとこのぼうしをめのまえにささげている。いすのまわりには、)
が突っ立ち上がって、男の帽子を眼の前に捧げている。椅子のまわりには、
(ごにんのおとこがひしめきあっている。かれらはわれがちにぼうしのなかへてをつっこもうと)
五人の男がひしめき合っている。彼らは我がちに帽子の中へ手を突っ込もうと
(するのだが、れいじょうはそれをうえへうえへともちあげて、ちからいっぱいゆすぶっていた。)
するのだが、令嬢はそれを上へ上へと持ち上げて、力いっぱい揺ぶっていた。
(わたしのすがたをみとめると、かのじょはおおきなこえで、「まってよ、まってよ!)
わたしの姿を認めると、彼女は大きな声で、「待ってよ、待ってよ!
(あたらしいおきゃくさまだわ、あのひとにもふだをあげなくちゃ」というなり、ひらりと)
新しいお客様だわ、あの人にも札をあげなくちゃ」と言うなり、ひらりと
(いすからとびおりて、わたしのふろっくのそでのおりかえしをつかまえると、--)
椅子から飛び下りて、わたしのフロックの袖の折返しをつかまえると、--
(「さあ、いらっしゃいってば」といった。--「なにをぼんやりたっているの?)
「さあ、いらっしゃいってば」と言った。--「何をぼんやり立っているの?
(みなさん、ごしょうかいいたしますわ。このかたはむっしゅー・ヴぉるでまーる、)
皆さん、御紹介いたしますわ。この方はムッシュー・ヴォルデマール、
(おとなりのぼっちゃんです。それからこちらは」とかのじょは、わたしにむかってじゅんぐりに)
お隣の坊ちゃんです。それからこちらは」と彼女は、わたしに向って順ぐりに
(きゃくをゆびさしながら、つけくわえた。「まれーふすきいはくしゃく、)
客を指さしながら、付け加えた。「マレーフスキイ伯爵、
(おいしゃのるーしんさん、しじんのまいだーのふさん、)
お医者のルーシンさん、詩人のマイダーノフさん、
(たいしょくたいいのにるまーつきいさん、それからけいきへいのべろヴぞーろふさん、)
退職大尉のニルマーツキイさん、それから軽騎兵のベロヴゾーロフさん、
(このかたはもうおあいになったわね、どうぞみなさん、なかよくなすってね」)
この方はもうお会いになったわね、どうぞ皆さん、仲よくなすってね」
(わたしはすっかりあがってしまって、だれにもおじぎをせずにいたほどだった。)
わたしはすっかりあがってしまって、誰にもお辞儀をせずにいたほどだった。
(いしゃのるーしんというのが、あのときにわでわたしにこっぴどくはじをかかした)
医者のルーシンというのが、あのとき庭でわたしにこっぴどく恥をかかした
(れいのあさぐろいおとこであることはわかったが、あとはみんなしょたいめんだった。)
例の浅黒い男であることはわかったが、あとはみんな初対面だった。
(「はくしゃく!と、じないーだはあとをつづけた。--「むっしゅー・ヴぉるでまーる)
「伯爵!と、ジナイーダはあとを続けた。--「ムッシュー・ヴォルデマール
(にもふだをかいてあげてちょうだい」「それはふこうへいですな」と、)
にも札を書いて上げてちょうだい」「それは不公平ですな」と、
(こころもちぽーらんどなまりのあることばつきで、はくしゃくははんたいした。)
心もちポーランドなまりのある言葉つきで、伯爵は反対した。
(これはすこぶるびぼうの、こったみなりをしたくりいろのかみのおとこで、ひょうじょうにとんだ)
これは頗る美貌の、凝った身なりをした栗色の髪の男で、表情に富んだ
(とびいろのめと、ほそいこぢんまりしたしろいはなをもち、ちっぽけなくちのうえに、)
鳶色の目と、細い小ぢんまりした白い鼻をもち、ちっぽけな口の上に、
(ちょびひげをはやしている。--「このひと、ばっきんごっこのなかまに)
ちょび髭を生やしている。--「この人、罰金ごっこの仲間に
(はいらなかったんですからねえ」「ふこうへいだ」と、べろヴぞーろふと、もうひとり)
入らなかったんですからねえ」「不公平だ」と、ベロヴゾーロフと、もう一人
(べつのおとこがあいづちをうった。あとのほうのおとこは、たいしょくたいいとよばれたじんぶつで、)
別の男が相槌を打った。あとの方の男は、退職大尉と呼ばれた人物で、
(としはしじゅうがらみ、みっともないほどのあばたづらで、あらびあじんみたいに)
年は四十がらみ、みっともないほどのあばた面で、アラビア人みたいに
(かみのけがちぢれて、ねこぜで、がにまたで、けんしょうのないぐんぷくをきて、むねのぼたんを)
髪の毛が縮れて、猫背で、がに股で、肩章のない軍服を着て、胸のボタンを
(はずしている。「ふだをかいてあげなさいってば」と、れいじょうはくりかえした。--)
はずしている。「札を書いて上げなさいってば」と、令嬢は繰り返した。--
(「そりゃなんのぼうどうなの?むっしゅー・ヴぉるまーるははじめていっしょに)
「そりゃなんの暴動なの?ムッシュー・ヴォルマールは初めて一緒に
(なったんだから、きょうはこのひととくべつあつかいよ。ぶつぶついわないで、)
なったんだから、今日はこの人特別扱いよ。ぶつぶつ言わないで、
(かいてちょうだい、あたしそうしたいんだから」)
書いてちょうだい、あたしそうしたいんだから」
(はくしゃくはかたをすくめたが、すなおにいちれいすると、ほうせきいりのゆびわで)
伯爵は肩をすくめたが、素直に一礼すると、宝石入りの指輪で
(かざりたてたしろいてにぺんをとりあげ、ちいさなかみきれをさきとって、)
飾り立てた白い手にペンをとりあげ、小さな紙切れを裂き取って、
(それにかきはじめた。)
それに書き始めた。
(「ではせめてヴぉるでまーるしに、ことのしだいをせつめいしてあげてもいいでしょう」)
「ではせめてヴォルデマール氏に、事の次第を説明して上げてもいいでしょう」
(と、あざけるようなこえでるーしんがいいだした。ーー)
と、嘲るような声でルーシンが言い出した。ーー
(「さもないと、すっかりまごついておられるようですからな。じつはね、きみ、)
「さもないと、すっかりまごついておられるようですからな。実はね、君、
(われわれはばっきんごっこをしているんだが、れいじょうがばっきんをはらうことになったので、)
我々は罰金ごっこをしているんだが、令嬢が罰金を払うことになったので、
(こううんのくじをひきあてたひとは、れいじょうのおてにきすするけんりをえるわけなんです。)
幸運のくじを引き当てた人は、令嬢のお手にキスする権利を得るわけなんです。
(わかったですか、ぼくのいったことが?」わたしはちらりとかれのかおみたばかりで、)
わかったですか、僕のいったことが?」わたしはちらりと彼の顔見たばかりで、
(あいかわらずぼうぜんじしつのていでつったっていたが、そのあいだにれいじょうはまたいすの)
相変わらず茫然自失のていで突っ立っていたが、その間に令嬢はまた椅子の
(うえにとびのると、またもやぼうしをゆすぶりはじめた。)
上に飛び乗ると、またもや帽子を揺すぶり始めた。
(みんながてをのばしたのでーーわたしもそれにしたがった。)
みんなが手を伸ばしたのでーーわたしもそれに従った。