古事記上巻・伊邪那美伊邪那岐6
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問題文
(ここをもちていざなぎのおほかみのりたまひしく、)
ここをもちて伊邪那伎大神詔りたまひしく、
(あはいなしこめしこめききたなきくににいたりてありけり。)
吾はいなしこめしこめき穢き国に到りてありけり。
(かれ、あはみみのみぞぎせむとのりたまひて、)
故、吾は御身の禊為むとのりたまひて、
(つくしのひむかのたちばなのをどのあはきはらにいたりまして、みそぎはらひたまひき。)
竺紫の日向の橘の小門の阿波岐原に到りまして、禊ぎ祓ひたまひき。
(かれ、なげうつるみつえになれるかみのなは、つきたつふなどのかみ。)
故、投げ棄つる御杖に成れる神の名は、衝立船戸神。
(つぎになげうつるみおびになれるかみのなは、みちのながちはのかみ。)
次に投げ棄つる御帯に成れる神の名は、道之長乳歯神。
(つぎになげうつるみふくろになれるかみのなは、ときはかしのかみ。)
次に投げ棄つる御嚢に成れる神の名は、時量師神。
(つぎになげうつるみけしになれるかみのなは、わづらひのうしのかみ。)
次に投げ棄つる御衣に成れる神の名は、和豆良比能宇斯能神。
(つぎになげうつるみはかまになれるかみのなは、ちまたのかみ。)
次に投げ棄つる御褌に成れる神の名は、道俣神。
(つぎになげうつるみかがふりになれるかみのなは、あきぐひのうしのかみ。)
次に投げ棄つる御冠に成れる神の名は、飽咋之宇斯能神。
(つぎになげうつるひだりのみてのたまきになれるかみのなは、おきざかるのかみ。)
次に投げ棄つる左の御手の手纏に成れる神の名は、奥疎神。
(つぎにおきつなぎさびこのかみ。つぎにおきつかひべらのかみ。)
次に奥津那芸佐毘古神。次に奥津甲斐弁羅神。
(つぎになげうつるみぎのみてのたまきになれるかみのなは、へざかるのかみ。)
次に投げ棄つる右の御手の手纏に成れる神の名は、辺疎神。
(つぎにへつなぎさびこのかみ。つぎにへつかひべらのかみ。)
次に辺津那芸佐毘古神。次に辺津甲斐弁羅神。
(みぎのくだりのふなどのかみよりしも、へつかひべらのかみよりさきのとをつはしらあまりふたつはしらのかみは、)
右の件の船戸神以下、辺津甲斐弁羅神以前の十二神は、
(みにつけるものをぬくによりてなれるかみなり。)
身に着ける物を脱くによりて生れる神なり。
(ここにのたりたまひしく、かみつせはせはやし。しもつせはせよはしとのりたまひて、)
ここに詔りたまひしく、上つ瀬は瀬速し。下つ瀬は瀬弱しとのりたまひて、
(はじめてなかつせにおりかづきてすすぎたまふとき、なりませるかみのなは、やそまがついひのかみ。)
初めて中つ瀬に堕り潜き滌ぎたまふ時、成りませる神の名は、八十禍津日神。
(つぎにおほまがつひのかみ。)
次に大禍津日神。
(このふたはしらのかみは、そのけがらはしきくににいたりしときのけがれによりてなれるかみなり。)
この二はしらの神は、その穢繁国に到りし時の汚垢によりて成れる神なり。
(つぎにそのまがをなほさむとして、なれるかみのなは、かむなほびのかみ。)
次にその禍を直さむとして、成れる神の名は、神直毘神。
(つぎにおほなほびのかみ。つぎにいずのめのかみ。)
次に大直毘神。次に伊豆能売神。
(つぎにみずのそこにすすぐときに、なれるかみのなは、そこつわたつみのかみ。)
次に水の底に滌ぐ時に、成れる神の名は、底津綿津見神。
(つぎにそこつつのをのみこと。)
次に底筒之男命。
(なかにすすぐときに、なれるかみのなは、なかつわたつみのかみ。つぎになかつつのをのみこと。)
中に滌ぐ時に、成れる神の名は、中津綿津見神。次に中筒之男命。
(みずのうえにすすぐときに、なれるかみのなは、うはつわたつみのかみ。つぎにうはつつのをのみこと。)
水の上に滌ぐ時に、成れる神の名は、上津綿津見神。次に上筒之男命。
(このみはしらのわたつみのかみは、あづみのむらじらのおやがみともちいつくかみなり。)
この三柱の綿津見神は、阿曇連等の祖神と以ち拝く神なり。
(かれ、あづみのむらじらは、そのわたつみのかみのこ、うつしひがなさくのみことのうみのこなり。)
故、安曇連等は、その綿津見神の子、宇都心日金拆命の子孫なり。
(そのそこつつのをのみこと、なかつつのをのみこと、うはつつのをのみことのみはしらのかみは、)
その底筒之男命、中筒之男命、上筒之男命の三柱の神は、
(すみのえのみまへのおほかみなり。)
墨江の三前の大神なり。