オオカミ王ロボ 1
シートン動物記
アーネスト・トムソン・シートン作
偕成社文庫
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(1)
1
(からんぽーは、にゅーめきしこのほくぶにある、ひろびろとしたちほうで、)
カランポーは、ニューメキシコの北部にある、広々とした地方で、
(ここでは、どこへいってもさかんにぼくちくがおこなわれている。)
ここでは、どこへいっても盛んに牧畜が行われている。
(よくこえたぼくそうのはらに、かずしれぬひつじやうしがむれつどい、)
良く肥えた牧草の原に、数しれぬ羊や牛が群れ集い、
(うねうねとつづくだいちは、うつくしいおがわであらわれている。)
うねうねとつづく台地は、美しい小川であらわれている。
(そしてこのいくつものおがわは、さいごはすべてからんぽーがわにそそぐのだ。)
そしてこのいくつもの小川は、最後はすべてカランポー川にそそぐのだ。
(このちほうのよびなも、もとはといえば、このかわからきているのである。)
この地方の呼名も、もとはといえば、この川からきているのである。
(さて、このうつくしいちほうのいったいに、わがものがおにちからをふるうおうは、)
さて、この美しい地方のいったいに、我が物顔に力をふるう王は、
(いっとうのとしとった、はいいろおおかみだった。)
一頭の年取った、ハイイロオオカミだった。
(<ろぼじい>とか<おうさま>とか、めきしこじんによばれるこのおおかみは、)
<ロボじい>とか<王さま>とか、メキシコ人によばれるこのオオカミは、
(そのころ、おとにきこえたはいいろおおかみのしゅうだんのおやだまだったが、)
そのころ、音にきこえたハイイロオオカミの集団の親玉だったが、
(このいちみこそは、もうながねんにわたって)
この一味こそは、もう長年にわたって
(からんぽーのたにまを、あらしまわってきたくせものどもだった。)
カランポーの谷間を、荒らしまわってきた曲者どもだった。
(ひつじかいというひつじかい、ぼくじょうしゅというぼくじょうしゅは、)
羊飼いという羊飼い、牧場主という牧場主は、
(だれでもこのはいいろおおかみをしっていた。)
だれでもこのハイイロオオカミを知っていた。
(このおうさまが、そのつめともきばともたのむ、ふくしんのいちみをひきつれてあらわれると、)
この王さまが、その爪とも牙とも頼む、腹心の一味をひきつれてあらわれると、
(たちまちかちくたちはふるえあがり、)
たちまち家畜たちはふるえあがり、
(ぼくじょうしゅたちはいかりとぜつぼうに、むねをかきむしるのだった。)
牧場主たちは怒りと絶望に、胸をかきむしるのだった。
(なみいるはいいろおおかみのなかでも、ろぼじいはいちばんおおきい。)
並み居るハイイロオオカミの中でも、ロボじいは一番大きい。
(しかも、そのずうたいにふさわしく、いちばんずるくて、かしこくて、つよい。)
しかも、その図体にふさわしく、一番ずるくて、賢くて、強い。
など
(そのこえはよるきいても、はっきりそれとわかり、)
その声は夜聞いても、はっきりそれとわかり、
(ほかのおおかみとまちがえるなどということはない。)
ほかのオオカミと間違えるなどということはない。
(ふつうのおおかみなら、たとえひつじかいがやえいしているすぐそばで、)
ふつうのオオカミなら、たとえ羊飼いが野営しているすぐそばで、
(ひとばんのなかばをほえつづけようと、だれもほとんどきにしないだろう。)
一晩の半ばを吠え続けようと、だれもほとんど気にしないだろう。
(だがこのろうおうの、じーんとはらにこたえるようなこえが、たにまにひびきわたると、)
だがこの老王の、ジーンと腹にこたえるような声が、谷間に響き渡ると、
(みはりばんはたちまちいろをかえてうごきだす。)
見張り番はたちまち色をかえて動き出す。
(そしてあしたのあさ、みるもむざんなかちくどものすがたをむねにえがいて、)
そして明日の朝、見るも無残な家畜どもの姿を胸にえがいて、
(かくごをきめるのだ。)
覚悟をきめるのだ。