緋のエチュード 5

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タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

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問題文

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(9.いじょうなじけんきろくのちしき ぼうだい。)

9.異常な事件記録の知識 膨大。

(かれはこんせいきにおきたさんじのしょうさいをすべてしっているようだ。)

彼は今世紀に起きた惨事の詳細をすべて知っているようだ。

(10.ばいおりんをじょうずにひく。)

10.バイオリンを上手に弾く。

(11.じゅくれんのぼくとうせんしゅ、ぼくさー、けんし。)

11.熟練の木刀選手、ボクサー、剣士。

(12.いぎりすほうについてきわめてじつようてきなちしきをほゆう。)

12.イギリス法について極めて実用的な知識を保有。

(わたしはりすとをここまでかいたとき、あきらめてだんろになげいれた。)

私はリストをここまで書いたとき、あきらめて暖炉に投げ入れた。

(「こんなぎのうをぜんぶりようして、どんなことをするつもりなのか、)

「こんな技能を全部利用して、どんなことをするつもりなのか、

(これがすべてひつようなしょくぎょうとはなんなのか、わかりさえすればなあ」)

これがすべて必要な職業とはなんなのか、わかりさえすればなあ」

(わたしはじぶんにかたりかけた。)

私は自分に語りかけた。

(「もう、こんなことをかんがえるのはやめにしよう」)

「もう、こんなことを考えるのはやめにしよう」

(かれのばいおりんのぎじゅつについては、うえのりすとにかいたとおりだ。)

彼のバイオリンの技術については、上のリストに書いたとおりだ。

(ひじょうにすばらしいうでまえだったが、ほかのぎのうとおなじようにきみょうだった。)

非常にすばらしい腕前だったが、ほかの技能と同じように奇妙だった。

(かれはがっきょくを、それもむずかしいがっきょくを、)

彼は楽曲を、 それも難しい楽曲を 、

(たくみにひくことができた。りくえすとすると、)

巧みに弾くことができた。リクエストすると、

(めんでるすぞーんのりーとなど、すきなきょくをひいてくれたので、)

メンデルスゾーンのリートなど、好きな曲を弾いてくれたので、

(それはたしかだ。しかしかってにえんそうさせておくと、きょくや、)

それは確かだ。しかし勝手に演奏させておくと、曲や、

(ききおぼえのあるせんりつをひくことはほとんどなかった。)

聞き覚えのある旋律を弾くことはほとんどなかった。

(ゆうがたになるとかれはひじかけいすにもたれかかり、)

夕方になると彼は肘掛け椅子にもたれかかり、

(めをとじてひざのうえにぽんとおいたばいおりんをひいた。)

目を閉じて膝の上にポンと置いたバイオリンを弾いた。

(わおんはときにはろうろうと、ときにはいんうつになった。)

和音はときには朗々と、ときには陰鬱になった。

など

(げんそうてきでかいかつになることもたまにあった。)

幻想的で快活になることもたまにあった。

(あきらかにそれはかれのしこうないようのはんえいだった。)

明らかにそれは彼の思考内容の反映だった。

(しかしおんがくがしこうをたすけているのか、)

しかし音楽が思考を助けているのか、

(それともえんそうはただきまぐれやおもいつきなのか、)

それとも演奏はただ気まぐれや思いつきなのか、

(これははんだんのしようがなかった。もしかすると、)

これは判断のしようがなかった。もしかすると、

(このはらだたしいどくえんかいにもんくをいっていたかのうせいもある。)

この腹立たしい独演会に文句を言っていた可能性もある。

(しかし、かれはわたしのがまんにたいするささやかなうめあわせとして、)

しかし、彼は私の我慢に対するささやかな埋め合わせとして、

(いつもさいごにわたしがすきなかきょくをぜんぶ、じゅんにえんそうしてくれたのだった。)

いつも最後に私が好きな歌曲を全部、順に演奏してくれたのだった。

(さいしょのいっしゅうかんほど、ほうもんきゃくがだれもいなかったので、)

最初の一週間ほど、訪問客がだれもいなかったので、

(このどうきょにんはわたしとおなじようにゆうじんがいないのだとおもいはじめていた。)

この同居人は私と同じように友人がいないのだと思い始めていた。

(しかしまもなく、かれにはひじょうにさまざまなかいきゅうのかおみしりが)

しかしまもなく、彼には非常にさまざまな階級の顔見知りが

(おおぜいいることがわかった。そのひとりにせのひくい、)

大勢いることがわかった。その一人に背の低い、

(つちけいろでねずみのようなかおのくろいめをしたじんぶつがいた。)

土気色でネズミのような顔の黒い目をした人物がいた。

(ほーむずは、かれをれすとれーどしだとしょうかいした。)

ホームズは、彼をレストレード氏だと紹介した。

(かれはいっしゅうかんにさんよんかいやってきた。あるあさ、)

彼は一週間に三・四回やって来た。ある朝、

(りゅうこうのふくをきたわかいじょせいがたずねてきて、さんじゅっぷんいじょうまっていた。)

流行の服を着た若い女性が訪ねて来て、三十分以上待っていた。

(そのひのごごには、ゆだやじんぎょうしょうにんふうの、)

その日の午後には、ユダヤ人行商人風の、

(しらがまじりのみすぼらしいほうもんしゃがやってきた。みたところ、)

白髪交じりのみすぼらしい訪問者がやってきた。見たところ、

(ひじょうにこうふんしているようだった。)

非常に興奮しているようだった。

(そしてそのすぐあとにはだらしないかんじのねんぱいじょせいがやってきた。)

そしてそのすぐ後にはだらしない感じの年配女性がやって来た。

(べつのひには、しらがのろうじんがほーむずとかいだんをしていた。)

別の日には、白髪の老人がホームズと会談をしていた。

(またべつのひにはべるべっとのせいふくをきたえきのぽーたーがおとずれた。)

また別の日にはベルベットの制服を来た駅のポーターが訪れた。

(こういうなぞのじんぶつがあらわれると、)

こういう謎の人物が現れると、

(ほーむずはいまをつかわせてほしいとたのみ、わたしはしんしつにひきさがった。)

ホームズは居間を使わせて欲しいと頼み、私は寝室に引き下がった。

(かれはそのたびに、めいわくをかけてすまないとしゃざいした。)

彼はそのたびに、迷惑をかけてすまないと謝罪した。

(「いまをしごとべやとしてつかうひつようがあるんだ」かれはいった。)

「居間を仕事部屋として使う必要があるんだ」彼は言った。

(「あのひとたちはぼくのきゃくだ」)

「あの人たちは僕の客だ」

(これは、たんとうちょくにゅうにしごとのことをしつもんできるちゃんすだった。)

これは、単刀直入に仕事のことを質問できるチャンスだった。

(しかしわたしはそれほどずうずうしいせいかくではなかったので、)

しかし私はそれほどずうずうしい性格ではなかったので、

(はなしをむりにききだすのをためらった。わたしはとうじ、)

話を無理に聞きだすのをためらった。私は当時、

(かれがしごとについてしられるのを、はげしくきらっているとそうぞうしていた。)

彼が仕事について知られるのを、激しく嫌っていると想像していた。

(しかしまもなく、じぶんからわだいにしたので、)

しかしまもなく、自分から話題にしたので、

(このそうぞうはまちがっていたのだ。)

この想像は間違っていたのだ。

(さんがつよっかのことだった。これは、おぼえていてもふしぎではないひづけだ。)

三月四日のことだった。これは、覚えていても不思議ではない日付だ。

(ふだんよりちょっとあさはやくおきたので、)

ふだんよりちょっと朝早く起きたので、

(しゃーろっくほーむずはまだちょうしょくをたべおえていなかった。)

シャーロックホームズはまだ朝食を食べ終えていなかった。

(おんなやぬしは、わたしがあさねぼうだということをよくしっていたので、)

女家主は、私が朝寝坊だということをよく知っていたので、

(わたしのせきにはしょっきがならべられておらず、こーひーのじゅんびもまだだった。)

私の席には食器が並べられておらず、コーヒーの準備もまだだった。

(なぜかいらいらしたわたしは、べるをならし、)

なぜかイライラした私は、ベルを鳴らし、

(じぶんがしょくたくにきたことをぶあいそうにしらせた。)

自分が食卓に来たことを無愛想に知らせた。

(それからてーぶるのざっしをとりあげ、)

それからテーブルの雑誌を取り上げ、

(どうきょにんがしずかにとーすとをたべているあいだ、)

同居人が静かにトーストを食べているあいだ、

(しばらくひまつぶしをしようとした。)

しばらくひまつぶしをしようとした。

(ひとつのきじのひょうだいにえんぴつでしるしがつけてあったので、)

ひとつの記事の表題に鉛筆で印がつけてあったので、

(しぜんにそのきじにめをはしらせた。)

自然にその記事に目を走らせた。

(そのいささかだいたんなひょうだいは「せいめいのしょ」だった。)

そのいささか大胆な表題は「生命の書」だった。

(これはかんさつりょくのあるにんげんが、せいかくでたいけいてきなちょうさによって、)

これは観察力のある人間が、正確で体系的な調査によって、

(しゅういでおきていることをどのていどみぬけるかをしめそうとしていた。)

周囲で起きていることをどの程度見抜けるかを示そうとしていた。

(わたしのめからみると、)

私の目から見ると、

(これはごうりとふごうりのふしぎなごったににしかみえなかった。)

これは合理と不合理の不思議なごった煮にしか見えなかった。

(りろんはこまかくするどいが、そのすいろんはこじつけでおおげさにみえた。)

理論は細かく鋭いが、その推論はこじつけで大げさに見えた。

(ちょしゃは、いっしゅんのひょうじょう、きんにくのびみょうなしゅうしゅく、わずかなめのうごきで、)

著者は、一瞬の表情、筋肉の微妙な収縮、わずかな目の動きで、

(こころのしんえんをみぬけるとしゅちょうする。ちょしゃによれば、)

心の深淵を見抜けると主張する。著者によれば、

(くんれんされたかんさつしゃとぶんせきしゃにたいしてごまかしは、まったくこうかがない。)

訓練された観察者と分析者に対してごまかしは、まったく効果がない。

(ちょしゃのけつろんは、ゆーくりっどていりのかずかずとどうよう、)

著者の結論は、ユークリッド定理の数々と同様、

(ぜったいてきにかくじつなものらしい。ちょしゃがくだすけつろんは、)

絶対的に確実なものらしい。著者がくだす結論は、

(じょうじんにはあまりにもしょうげきてきなので、)

常人にはあまりにも衝撃的なので、

(そのけつろんにきちゃくしたてじゅんをおしえるまで、)

その結論に帰着した手順を教えるまで、

(ちょしゃがまじゅつしだとおもわれるのもとうぜん、とのことだ。)

著者が魔術師だと思われるのも当然、とのことだ。

(「いってきのみずから」ちょしゃはかく。)

「一滴の水から」著者は書く。

(「ろんりかはたいせいようやないあがらばくふがそんざいするかのうせいを、)

「論理家は大西洋やナイアガラ瀑布が存在する可能性を、

(じっさいにみることもきくこともなくすいさつできる。)

実際に見ることも聞くこともなく推察できる。

(おなじようにせいめいぜんたいはおおきなれんさになっており、)

同じように生命全体は大きな連鎖になっており、

(そのひとつのれんさをていじされれば、ぜんたいのせいしつはいつでもわかる。)

そのひとつの連鎖を提示されれば、全体の性質はいつでも分かる。

(ほかのすべてのぎげいとどうよう、すいろんとぶんせきのかがくは、)

他のすべての技芸と同様、推論と分析の科学は、

(ながくにんたいづよいくんれんをとおしてのみかくとくできる。)

長く忍耐強い訓練を通してのみ獲得できる。

(これをさいこうのじげんにまできわめるには、)

これを最高の次元にまで極めるには、

(いっしょうをかけてもじゅうぶんとはいえない。せいしんてきでちせいてきなぶぶんについては、)

一生をかけても十分とは言えない。精神的で知性的な部分については、

(さいこうなんいどのぎじゅつがもとめられるので、)

最高難易度の技術が求められるので、

(このほうめんにおうようするまえににんげんちょうさいんは)

この方面に応用する前に人間調査員は

(もっとしょほてきなもんだいをかいけつすることからはじめるべきである。)

もっと初歩的な問題を解決することから始めるべきである。

(さいしょは、ひとにあったとき、)

最初は、人に会ったとき、

(ひとめみてそのじんぶつのけいれきとしょくぎょうをはんだんすることを)

一目見てその人物の経歴と職業を判断することを

(がくしゅうさせるべきである。)

学習させるべきである。

(そういうくんれんはくだらないとおもうかもしれないが、)

そういう訓練はくだらないと思うかもしれないが、

(これでかんさつのぎのうがえいびんになり、みるべきてんとさがすべきばしょがまなべる。)

これで観察の技能が鋭敏になり、見るべき点と探すべき場所が学べる。

(にんげんのつめによって、こーとのそでによって、くつによって、)

人間の爪によって、コートの袖によって、靴によって、

(ずぼんのひざによって、ひとさしゆびとおやゆびのたこによって、ひょうじょうによって、)

ズボンの膝によって、人差し指と親指のタコによって、表情によって、

(しゃつのそでぐちによって、・・・これらのひとつひとつで、)

シャツの袖口によって、・・・・これらのひとつひとつで、

(しょくぎょうはめいはくなものとなっている。すべてをあわせれば、)

職業は明白なものとなっている。すべてを合わせれば、

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