緋のエチュード 16
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問題文
(めいどのあしおとがしてべっどのしーつをたたくおとがきこえた。じゅういちじ、)
メイドの足音がしてベッドのシーツを叩く音が聞こえた。十一時、
(やぬしのじょせいが、)
家主の女性が、
(もっとおもおもしいあしおとでわたしのとびらのまえをおなじほうこうにすぎていった。)
もっと重々しい足音で私の扉の前を同じ方向に過ぎて行った。
(ほーむずがかけがねのかぎをまわすするどいおとがきこえてきたとき、)
ホームズが掛け金の鍵を回す鋭い音が聞こえて来た時、
(すでにじゅうにじちかくになっていた。かれがはいってきたしゅんかん、)
すでに十二時近くになっていた。彼が入って来た瞬間、
(そのかおをみてびこうがしっぱいしたとわかった。)
その顔を見て尾行が失敗したと分かった。
(ゆかいさとくやしさがしょうりをあらそっていたようだ。とつぜんぜんしゃがしょうりをおさめ、)
愉快さと悔しさが勝利を争っていたようだ。突然前者が勝利を収め、
(かれはおおきなこえでわらいだした。)
彼は大きな声で笑い出した。
(「なにがあってもろんどんけいしちょうにしられるわけにはいかんな」)
「何があってもロンドン警視庁に知られるわけにはいかんな」
(かれはいすにたおれこんでさけんだ。「ぼくはかれらをさんざんひやかしたから、)
彼は椅子に倒れ込んで叫んだ。「僕は彼らをさんざん冷やかしたから、
(はてしなくいわれるだろうな。まあ、ぼくにはわらうよゆうがある。)
果てしなく言われるだろうな。まあ、僕には笑う余裕がある。
(いずれこのおかえしができるとわかっているからだ」)
いずれこのお返しができると分かっているからだ」
(「いったいなにがあったんだ?」わたしはたずねた。)
「いったい何があったんだ?」私は尋ねた。
(「ああ、しっぱいだからといってはなさないつもりはないよ。)
「ああ、失敗だからといって話さないつもりはないよ。
(あのろうばはちょっといくと、あしをひきずりだし、)
あの老婆はちょっと行くと、足を引きずり出し、
(あしにまめができたようなしぐさをみせた。まもなくかのじょはたちどまり、)
足に豆が出来たような仕草を見せた。まもなく彼女は立ち止まり、
(とおりがかったよりんばしゃをよびとめた。)
通りがかった四輪馬車を呼び止めた。
(ぼくはなんとかちかづいてじゅうしょをききとれるようにした。)
僕はなんとか近づいて住所を聞きとれるようにした。
(しかしそうしんぱいするひつようはなかった。)
しかしそう心配する必要はなかった。
(とおりのはんたいがわまできこえるようなおおごえでいったからだ。)
通りの反対側まで聞こえるような大声で言ったからだ。
(「はうんずでぃっち、だんかんがい13まで」かのじょはこうさけんだ。)
『ハウンズディッチ、ダンカン街13まで』彼女はこう叫んだ。
(これはほんものらしくみえはじめたなとおもったよ。)
これは本物らしく見え始めたなと思ったよ。
(そしてかのじょがちゃんとなかにはいるのをみとどけて、)
そして彼女がちゃんと中に入るのを見届けて、
(ぼくはばしゃのうしろにしがみついた。)
僕は馬車の後ろにしがみついた。
(このぎじゅつはたんていならだれでもしゅうとくしておくべきだよ。)
この技術は探偵なら誰でも習得しておくべきだよ。
(それからばしゃはがたがたとすすみ、)
それから馬車はガタガタと進み、
(もんだいのとおりにつくまでたづなはひかれなかった。)
問題の通りにつくまで手綱は引かれなかった。
(ぼくはとぐちにつくまえにとびおり、)
僕は戸口に着く前に飛び降り、
(とおりをなにげなくぶらぶらしているふりをしてあるいた。)
通りを何気なくブラブラしている振りをして歩いた。
(ばしゃがとまるのがみえた。ぎょしゃがとびおり、とびらをあけ、)
馬車が止まるのが見えた。御者が飛び降り、扉を開け、
(きゃくをまちうけているのがみえた。しかしだれもおりてこない。)
客を待ち受けているのが見えた。しかし誰も降りてこない。
(ぼくがぎょしゃのちかくにいったとき、かれはからのしゃないをひっしでさがしていた。)
僕が御者の近くに行った時、彼は空の車内を必死で探していた。
(ぼくがきいたこともないような、)
僕が聞いたこともないような、
(ありとあらゆるばとうのことばをはきだしていたよ。)
ありとあらゆる罵倒の言葉を吐き出していたよ。
(じょうきゃくのこんせきもてがかりもまったくなかった。)
乗客の痕跡も手がかりも全く無かった。
(ぼくはかれがりょうきんをうけとるまでにはそうとうじかんがかかるとおもったよ。)
僕は彼が料金を受け取るまでには相当時間がかかると思ったよ。
(13ばんちをたずねると、そのいえには、)
13番地を尋ねると、その家には、
(みもとのたしかなかべがみばりしょくにんがすんでいた。なまえはけずうぃっくだ。)
身元の確かな壁紙貼り職人が住んでいた。名前はケズウィックだ。
(そしてそーやーもでにすも、そういうなまえのにんげんは、)
そしてソーヤーもデニスも、そういう名前の人間は、
(だれもきいたことがなかった」)
誰も聞いたことがなかった」
(「じょうだんだろう」わたしはおどろいてさけんだ。)
「冗談だろう」私は驚いて叫んだ。
(「あのあしをひきずったよわよわしいろうばが、ばしゃがうごきだしてから、)
「あの足を引きずった弱々しい老婆が、馬車が動きだしてから、
(きみにもぎょしゃにもみられずにとびおりたというのか?」)
君にも御者にも見られずに飛び降りたと言うのか?」
(「とんだろうばだ!」しゃーろっくほーむずはするどくいった。)
「とんだ老婆だ!」シャーロックホームズは鋭く言った。
(「ろうばだとおもいこまされていただけだ。)
「老婆だと思い込まされていただけだ。
(あれはわかいおとこだったにちがいない。しかもみのかるいやつだ。)
あれは若い男だったに違いない。しかも身の軽い奴だ。
(それにひるいなきはいゆうだ。あのへんそうはちょっとまねのできないものだ。)
それに比類なき俳優だ。あの変装はちょっと真似の出来ないものだ。
(かれはつけられているときづき、まちがいなく、)
彼はつけられていると気付き、間違いなく、
(そのてをつかってぼくをまいた。われわれがおっているおとこは、)
その手を使って僕をまいた。我々が追っている男は、
(ぼくがおもっていたようにひとりきりではなく、)
僕が思っていたように一人きりではなく、
(いつでもかれのためにきけんをおかすゆうじんがついていることが、)
何時でも彼のために危険を冒す友人がついていることが、
(これではっきりした。さあ、せんせい、つかれているみたいだよ。)
これではっきりした。さあ、先生、疲れているみたいだよ。
(べっどにいったらどうかな」)
ベッドに行ったらどうかな」
(たしかにたいへんなつかれをかんじていたので、)
確かに大変な疲れを感じていたので、
(かれのいうとおりにすることにした。へやをでるとき、)
彼の言うとおりにすることにした。部屋を出る時、
(ほーむずはくすぶっているだんろのまえにすわっていた。)
ホームズはくすぶっている暖炉の前に座っていた。
(わたしはながいあいだねつけず、)
私は長い間寝付けず、
(かれのばいおりんのものうげでなげくようなしらべをきいていた。)
彼のバイオリンの物憂げで嘆くような調べを聞いていた。
(そしてそのしらべで、)
そしてその調べで、
(かれはかいけつにのりだしたこのきみょうなじけんを)
彼は解決に乗り出したこの奇妙な事件を
(まだかんがえつづけていたことがわかった。)
まだ考え続けていた事が分かった。
(とびあすぐれっぐそんのちょうさけっか)
トビアス・グレッグソンの調査結果
(つぎのひのしんぶんは、)
次の日の新聞は、
(「ぶりくすとんのなぞ」となづけられたきじであふれていた。)
「ブリクストンの謎」と名づけられた記事で溢れていた。
(どのしんぶんにも、このじけんのながいきじがあり、)
どの新聞にも、この事件の長い記事があり、
(しゃせつをけいさいしているしんぶんもなんしかあった。)
社説を掲載している新聞も何紙かあった。
(そのなかにはわたしのしらなかったじょうほうもいくつかのっていた。)
その中には私の知らなかった情報もいくつか載っていた。
(わたしはいまだにすくらっぷぶっくのなかに、)
私はいまだにスクラップブックの中に、
(このじけんにかんするおびただしいりょうのきりぬきやばっすいをほぞんしている。)
この事件に関するおびただしい量の切り抜きや抜粋を保存している。
(そのいちぶをようやくしてしょうかいしよう。)
その一部を要約して紹介しよう。
(でいりーてれぐらふはこうのべた。はんざいしじょう、)
デイリー・テレグラフはこう述べた。犯罪史上、
(このようにきみょうなとくちょうをそなえたさんげきはほとんどない。)
このように奇妙な特徴を備えた惨劇はほとんど無い。
(ぎせいしゃがどいつめいであること、ほかにどうきがまったくないこと、)
犠牲者がドイツ名であること、他に動機が全く無いこと、
(そしてかべのじゃあくなもじ、)
そして壁の邪悪な文字、
(すべてがかくめいかやせいじぼうめいしゃのはんこうをしめしている。)
すべてが革命家や政治亡命者の犯行を示している。
(しゃかいしゅぎしゃはあめりかにかずおおくのしぶをおき、そしてころされたおとこは、)
社会主義者はアメリカに数多くの支部を置き、そして殺された男は、
(まちがいなくかれらのふぶんりつにていしょくし、いばしょをはっけんされた。)
間違いなく彼らの不文律に抵触し、居場所を発見された。
(ひみつさいばんせいど、とふぁなすい、かるぼなりとう、ぶらんヴぃりえこうしゃくふじん、)
秘密裁判制度、トファナ水、カルボナリ党、ブランヴィリエ公爵夫人、
(だーうぃんのりろん、まるさすのげんり、)
ダーウィンの理論、マルサスの原理、
(らとくりふはいうぇいのさつじんじけん、)
ラトクリフ・ハイウェイの殺人事件、
(これらにけいはくなげんきゅうをしたあと、)
これらに軽薄な言及をした後、
(このきじはいぎりすのがいこくじんをもっとこまかくかんしすることをていしょうして、)
この記事はイギリスの外国人をもっと細かく監視することを提唱して、
(せいふにかんこくし、しめくくられていた。)
政府に勧告し、締めくくられていた。
(ざすたんだーどはこのじけんをつぎのようにろんぴょうしていた。)
ザ・スタンダードはこの事件を次のように論評していた。
(ふほうなぼうりょくのたぐいはたいていじゆうとうのせいけんかではっせいする。)
不法な暴力の類はたいてい自由党の政権下で発生する。
(かれらはいっぱんたいしゅうのふあんなしんりからうまれ、)
彼らは一般大衆の不安な心理から生まれ、
(けっかとしてあらゆるけんいをじゃくたいかする。ころされたおとこはあめりかじんで、)
結果としてあらゆる権威を弱体化する。殺された男はアメリカ人で、
(ろんどんにすうしゅうかんたいざいしていた。かれはきゃんばーうぇる、)
ロンドンに数週間滞在していた。彼はキャンバーウェル、
(とーきーてらすのしゃるぱんてぃえふじんのげしゅくにとまっていた。)
トーキー・テラスのシャルパンティエ夫人の下宿に泊まっていた。
(かれはじょせふすたんがーそんしというしせつひしょと)
彼はジョセフ・スタンガーソン氏という私設秘書と
(いっしょにりょこうしていた。ふたりはこんげつ4かかようびにおんなしゅじんにわかれをつげ、)
一緒に旅行していた。二人は今月4日火曜日に女主人に別れを告げ、
(りばぷーるとっきゅうにのるつもりだといいのこしてゆーすとんえきにむかった。)
リバプール特急に乗るつもりだと言い残してユーストン駅に向かった。
(かれらはそのあと、)
彼らはその後、
(ぷらっとほーむにいっしょにたっていたのをもくげきされている。)
プラットホームに一緒に立っていたのを目撃されている。
(きじにあるように、)
記事にあるように、
(どればーのしたいがいーすとんからかなりはなれた)
ドレバーの死体がイーストンからかなり離れた
(ぶりくすとんろーどのあきやでみつかるまで、)
ブリクストンロードの空家で見つかるまで、
(ふたりのそのあとのしょうそくはふめいである。かれがそのばしょにいったけいいや、)
二人のその後の消息は不明である。彼がその場所に行った経緯や、
(さつがいほうほうについては、いぜんとしてなぞのままである。)
殺害方法については、依然として謎のままである。
(すたんがーそんのしょうそくはまったくわからない。)
スタンガーソンの消息は全く分からない。