贋作師

(にゅうはくのかんヴぁすでかくうのはながあびる)

乳白のカンヴァスで　架空の花が浴びる

(ようこうはにせものかい？)

陽光は偽物かい？

(しゃだんするまぶたからむこうがげんじつなら)

遮断する瞼から　向こうが現実なら

(やみのなかのきみはなに)

闇の中の君は何

(みんなおもう)

みんな思う

(ほんとのじぶんはどこにいるのかって)

ホントの自分は　どこにいるのかって

(くもったそのめをこじあけてやろう)

曇ったその目を　抉じ開けてやろう

(てんぶのうでにしゅくされたいっぴんのがんさくで)

天賊(てんぶ)の腕に祝された　逸品の贋作で

(びよりもまさるしんせいなどない)

美よりも勝る真正などない

(てをつくされたげんわくとぼんようななぐさみと)

手を尽された幻惑と　凡庸な慰みと

(つみぶかきはどっち)

罪深きはどっち

(さあみきわめよきみがほんとうのきみならば)

さあ見極めよ　君が本当の君ならば

(ときをへたよごれきず)

時を経た　汚れ　傷

(じゅくれんとこうかつで)

熟練と狡猾(こうかつ)で

(じんせいさえもぞうする)

人生さえ模造する

(だれもねがう)

だれも願う

(このよのしんじつをさとりたいなんて)

この世の真実を悟りたい　なんて

(くさったみみへとうちこんでやろう)

腐った耳へと　撃ち込んでやろう

(うるわしのこえにつつんだじゅそのことばたちを)

麗しの声に包んだ　呪詛の言葉たちを

(ぎぜんにまさるあくこそがぜんと)

偽善に勝る悪こそが善と

(じごくのさたはかねしだい)

地獄の沙汰は金次第

(しんぱんはくだされず)

審判は下されず

(かみにもさばけない)

神にも裁けない

(さあだまされよいまじゅんぜんなこうえつに)

さあ騙されよ　いま純然な光悦に

(ふずいのこころをふるわせてやろう)

不随の魂(こころ)を　震わせてやろう

(けんいをもひるがえさせるかんぺきながんさくで)

権威をも翻させる　完璧な贋作で

(びにそむかれたしんりなどいらぬ)

美に背かれた真理などいらぬ

(あばかれてゆくげんしょうとくずれるほんしつと)

曝(あば)かれてゆく現象と　崩れる本質と

(まちうけるのはどっち)

待ち受けるのはどっち

(さありょうがせよきみがほんとうの)

さあ凌駕せよ　君が本物(ほんとう)の

(きみとなり)

君となり