『怪人二十面相』江戸川乱歩4

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プレイ回数847難易度(4.1) 4357打 長文 長文モードのみ
少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
前回→https://typing.twi1.me/game/314531
次回→https://typing.twi1.me/game/314904
初回→https://typing.twi1.me/game/314206

第2作品→https://typing.twi1.me/game/329807
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 あも 6804 S++ 7.0 96.8% 608.7 4281 139 100 2024/10/23

関連タイピング

問題文

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(「ええ、それがよろしいでしょう。ぼくはわんりょくに)

「ええ、それがよろしいでしょう。ぼくは腕力に

(じしんがあります。きたくそうそうおやくにたてば、)

自信があります。帰宅早々お役にたてば、

(うれしいとおもいます」たちまち、ていないにげんじゅうなけいかいが)

嬉しいと思います」たちまち、邸内に厳重な警戒が

(しかれました。あおくなったこんどうしはいにんのさしずで、)

しかれました。青くなった近藤支配人の指図で、

(ごごはちじというのに、もうおもてもんをはじめ、あらゆる)

午後八時というのに、もう表門をはじめ、あらゆる

(でいりぐちがぴったりとしめられ、うちがわからじょうが)

出入り口がピッタリと閉められ、内側から錠が

(おろされました。「こんやだけは、どんなおきゃくさまで)

下ろされました。「今夜だけは、どんなお客さまで

(あっても、おことわりするのだぞ」ろうじんが、めしつかい)

あっても、お断りするのだぞ」 老人が、召使い

(たちにめいれいをしました。ひとばんじゅう、さんにんのひばんけいかんと、)

たちに命令をしました。一晩中、三人の非番警官と、

(さんにんのひしょと、じどうしゃうんてんしゅがてわけをして、)

三人の秘書と、自動車運転手が手分けをして、

(かくでいりぐちをかため、あるいはていないをけいかいするてはず)

各出入り口をかため、あるいは邸内を警戒する手はず

(でした。はしばふじんとさなえさんとそうじくんは、はやくから)

でした。 羽柴夫人と早苗さんと壮二君は、早くから

(しんしつにひきこもるようにいいつけられました。)

寝室に引きこもるように言いつけられました。

(おおぜいのしようにんたちはひとつのへやにあつまって、)

大勢の使用人たちは一つの部屋に集まって、

(おびえたようにぼそぼそとささやきあっています。)

おびえたようにボソボソとささやき合っています。

(そうたろうしとそういちくんは、ようかんのにかいのしょさいにこもって、)

壮太郎氏と壮一君は、洋館の二階の書斎にこもって、

(まもることになりました。しょさいのてーぶるには、)

守ることになりました。書斎のテーブルには、

(さんどいっちとぶどうしゅをよういさせて、)

サンドイッチとブドウ酒を用意させて、

(てつやのかくごです。しょさいのどあやまどには、そとがわから)

徹夜の覚悟です。 書斎のドアや窓には、外側から

(あかないように、かぎやかけがねがかけられました。)

あかないように、カギや掛け金がかけられました。

など

(ほんとうに、ありがはいるすきまもないのです。)

本当に、アリが入る隙間もないのです。

(さて、しょさいにこしをおろすと、そうたろうしが)

さて、書斎に腰を下ろすと、壮太郎氏が

(くしょうしながらいいました。「すこしようじんがおおげさ)

苦笑しながら言いました。「少し用心が大袈裟

(すぎたかもしれないね」「いや、あいつにかぎっては、)

過ぎたかもしれないね」「いや、あいつに限っては、

(どんなようじんだって、おおげさすぎることはないでしょう。)

どんな用心だって、大袈裟過ぎることはないでしょう。

(ぼくはさっきからしんぶんで、にじゅうめんそうのじけんを)

ぼくはさっきから新聞で、二十面相の事件を

(すっかりけんきゅうしてみましたが、よめばよむほど)

すっかり研究してみましたが、読めば読むほど

(おそろしいやつです」そういちくんはしんけんなかおで、)

恐ろしい奴です」 壮一君は真剣な顔で、

(さもふあんらしくこたえました。「ではおまえは、)

さも不安らしく答えました。「ではお前は、

(これほどげんじゅうなぼうびをしても、まだぞくが)

これほど厳重な防備をしても、まだ賊が

(やってくるかもしれないというのかね」「ええ、)

やって来るかもしれないと言うのかね」「ええ、

(おくびょうのようですけれど、なんだかそんなきが)

臆病のようですけれど、なんだかそんな気が

(するのです」「だが、いったいどこからはいるのだ。)

するのです」「だが、一体どこから入るのだ。

(ぞくがほうせきをてにいれるためには、まずたかいへいを)

賊が宝石を手に入れるためには、まず高い塀を

(のりこえなければならない。それから、おおぜいのひとの)

乗り越えなければならない。それから、大勢の人の

(めをかすめて、ここまできたとしても、)

目をかすめて、ここまで来たとしても、

(どあをうちやぶらなくてはならない。そして、)

ドアを打ち破らなくてはならない。そして、

(わたしたちふたりとたたかわなければならない。しかも、)

私たち二人と戦わなければならない。しかも、

(それでおしまいじゃないのだ。ほうせきは、だいやるの)

それでおしまいじゃないのだ。宝石は、ダイヤルの

(もじのくみあわせをしらなくては、ひらくことが)

文字の組み合わせを知らなくては、ひらくことが

(できないきんこのなかにはいっているのだよ。)

出来ない金庫の中に入っているのだよ。

(いくらにじゅうめんそうがまほうつかいだとしても、このよんじゅう、)

いくら二十面相が魔法使いだとしても、この四重、

(ごじゅうのかんもんを、どうしてくぐりぬけられるものか。)

五重の関門を、どうしてくぐりぬけられるものか。

(ははは」そうたろうしは、おおきなこえでわらうのでした。)

ハハハ」壮太郎氏は、大きな声で笑うのでした。

(でも、そのわらいごえにはなにかしらくうきょな、)

でも、その笑い声には何かしら空虚な、

(からいばりみたいなひびきがまじっていました。)

からいばりみたいな響きが混じっていました。

(「しかしおとうさん、しんぶんきじでみると、)

「しかしお父さん、新聞記事で見ると、

(あいつはなんども、まったくふかのうとしかかんがえられない)

あいつは何度も、まったく不可能としか考えられない

(ようなことを、やすやすとなしとげている)

ようなことを、やすやすと成し遂げている

(じゃありませんか。きんこにいれてあるから)

じゃありませんか。金庫に入れてあるから

(だいじょうぶだとあんしんしていると、そのきんこのせなかに)

大丈夫だと安心していると、その金庫の背中に

(ぽっかりとおおきなあながあいて、なかのしなものは)

ポッカリと大きな穴があいて、中の品物は

(なにもかもなくなっているというじつれいもあります。)

何もかも無くなっているという実例もあります。

(それからまた、ごにんのくっきょうなおとこがみはりを)

それからまた、五人の屈強な男が見張りを

(していても、いつのまにかねむりぐすりをのまされて、)

していても、いつのまにか眠り薬を飲まされて、

(かんじんのときには、みんなぐっすりねこんでいた)

肝心の時には、みんなグッスリ寝こんでいた

(というれいもあります。あいつは、そのときとばあいに)

という例もあります。あいつは、その時と場合に

(よって、どんなしゅだんでもかんがえだすちえをもって)

よって、どんな手段でも考え出す知恵を持って

(いるのです」「おいおいそういち、おまえ、なんだか、)

いるのです」「おいおい壮一、お前、なんだか、

(ぞくをほめたたえているようなくちょうだね」そうたろうしは、)

賊を褒めたたえているような口調だね」壮太郎氏は、

(あきれたように、わがこのかおをながめました。)

呆れたように、我が子の顔をながめました。

(「いいえ、ほめたたえていません。でも、あいつは)

「いいえ、褒めたたえていません。でも、あいつは

(けんきゅうすればするほど、おそろしいやつです。あいつの)

研究すればするほど、恐ろしい奴です。あいつの

(ぶきはわんりょくではありません。ちえです。ちえのつかいかたに)

武器は腕力ではありません。知恵です。知恵の使い方に

(よっては、ほとんどこのよにできないことは)

よっては、ほとんどこの世に出来ないことは

(ないですからね」ちちとこがそんなぎろんをしている)

無いですからね」 父と子がそんな議論をしている

(あいだに、よるはじょじょにふけていき、すこしかぜが)

あいだに、夜は徐々にふけていき、少し風が

(ふいてきたとみえて、さーっとふきすぎるくろいかぜに、)

吹いてきたとみえて、サーッと吹き過ぎる黒い風に、

(まどのがらすがことこととおとをたてました。「いや、)

窓のガラスがコトコトと音をたてました。「いや、

(おまえがあまりにもぞくをかいかぶっている)

お前が余りにも賊を買いかぶっている

(もんだから、どうやらわしもすこししんぱいになって)

もんだから、どうやらわしも少し心配になって

(きたぞ。ひとまずほうせきをたしかめておこう。きんこのうらに)

きたぞ。ひとまず宝石を確かめておこう。金庫の裏に

(あなでもあいていては、たいへんだからね」)

穴でもあいていては、大変だからね」

(そうたろうしはわらいながらたちあがって、へやのすみの)

壮太郎氏は笑いながら立ち上がって、部屋の隅の

(こがたきんこにちかづき、だいやるをまわし、とびらを)

小型金庫に近づき、ダイヤルを回し、扉を

(ひらいて、こばこをとりだしました。そして、)

ひらいて、小箱を取り出しました。そして、

(さもだいじそうにこばこをかかえてもとのいすに)

さも大事そうに小箱をかかえて元のイスに

(もどると、それをそういちくんとのあいだにあるまるてーぶるの)

戻ると、それを壮一君との間にある丸テーブルの

(うえにおきました。「ぼくは、はじめてはいけんする)

上に置きました。「ぼくは、初めて拝見する

(わけですね」そういちくんが、もんだいのほうせきにこうきしんを)

訳ですね」 壮一君が、問題の宝石に好奇心を

(かんじたらしく、めをひからせていいます。「うん、)

感じたらしく、目を光らせて言います。「うん、

(おまえにははじめてだったね。さあ、これが、)

お前には初めてだったね。さあ、これが、

(かつてろしあこうていのあたまにかがやいていただいやだよ」)

かつてロシア皇帝の頭に輝いていたダイヤだよ」

(こばこのふたがひらかれると、)

小箱のフタがひらかれると、

(めもくらむようなにじいろがするどくひかりました。)

目もくらむような虹色が鋭く光りました。

(だいずほどもある、じつにみごとなだいやもんどが)

大豆ほどもある、実に見事なダイヤモンドが

(ろっこ、くろいびろーどのだいざのうえでかがやいていたのです。)

六個、黒いビロードの台座の上で輝いていたのです。

(そういちくんがじゅうぶんにかんしょうするのをまって、こばこの)

壮一君が充分に観賞するのを待って、小箱の

(ふたがとじられました。「このはこは、ここへおく)

フタが閉じられました。「この箱は、ここへ置く

(ことにしよう。きんこなんかよりは、おまえとわしの、)

ことにしよう。金庫なんかよりは、お前とわしの、

(よっつのめでにらんでいるほうがたしかだからね」)

四つの目でにらんでいるほうが確かだからね」

(「ええ、そのほうがいいでしょう」ふたりはもう、)

「ええ、そのほうがいいでしょう」 二人はもう、

(はなすこともなくなって、こばこをのせたてーぶるを)

話すこともなくなって、小箱をのせたテーブルを

(ちゅうしんに、じっとかおをみあわせていました。)

中心に、ジッと顔を見合わせていました。

(ときどき、おもいだしたように、かぜがまどのがらすどを、)

時々、思い出したように、風が窓のガラス戸を、

(ことこといわせてふきすぎます。どこかとおくの)

コトコトいわせて吹き過ぎます。どこか遠くの

(ほうから、はげしくなきたてるいぬのこえが)

ほうから、激しく鳴きたてる犬の声が

(きこえてきます。「なんじだね」「じゅういちじよんじゅうさんぷんです。)

聞こえてきます。「何時だね」「十一時四十三分です。

(あと、じゅうななふん」そういちくんがうでどけいをみてこたえると、)

あと、十七分」 壮一君が腕時計を見て答えると、

(それっきりふたりは、まただまりこんでしまいました。)

それっきり二人は、また黙り込んでしまいました。

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