『怪人二十面相』江戸川乱歩7
○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヌオー | 6114 | A++ | 6.5 | 93.2% | 656.3 | 4324 | 311 | 100 | 2024/12/10 |
2 | ねずみの小部屋 | 5842 | A+ | 6.2 | 93.3% | 686.4 | 4317 | 307 | 100 | 2024/12/15 |
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問題文
(もし、じょんがかせいしてくれたら、まんがいちにもぞくを)
もし、ジョンが加勢してくれたら、万が一にも賊を
(とりにがすようなことはなかったでしょうに。)
とりにがすようなことはなかったでしょうに。
(にじゅうめんそうが、やっとわなをはずしておきあがった)
二十面相が、やっと罠を外して起き上がった
(ときには、てにかいちゅうでんとうをもったおってのひとたちが、)
時には、手に懐中電灯を持った追っ手の人たちが、
(じゅうめーとるもまぢかにせまっていました。)
十メートルも間近に迫っていました。
(それもいっぽうからではなく、みぎからもひだりからも、)
それも一方からではなく、右からも左からも、
(しょうめんからもです。ぞくはくろいかぜのようにはしりました。)
正面からもです。 賊は黒い風のように走りました。
(いや、だんがんのようといったほうがいいかもしれません。)
いや、弾丸のようと言ったほうがいいかもしれません。
(おってのえんじんのいっぽうをとっぱして、にわのおくへ)
追っ手の円陣の一方を突破して、庭の奥へ
(はしりました。にわはこうえんのようにひろいです。)
走りました。 庭は公園のように広いです。
(じんこうのやまやいけがあり、もりのようなこだちがあります。)
人工の山や池があり、森のような木立ちがあります。
(くらいので、しちにんのおってでも、けっして)
暗いので、七人の追っ手でも、決して
(じゅうぶんとはいえません。ああ、こんなとき、)
充分とはいえません。ああ、こんな時、
(じょんさえいてくれたらよかったのに。)
ジョンさえ居てくれたらよかったのに。
(しかしおってはひっしでした。なかでもさんにんの)
しかし追っ手は必死でした。中でも三人の
(おまわりさんは、とうそうしゃをつかまえたことがある)
お巡りさんは、逃走者をつかまえたことがある
(ひとびとです。ぞくがやまのうえのしげみのなかへかけあがったと)
人々です。賊が山の上のしげみの中へ駆けあがったと
(みると、はしってやまのむこうがわへさきまわりをしました。)
見ると、走って山の向こう側へ先まわりをしました。
(あとからくるおってと、はさみうちにしようという)
あとから来る追っ手と、はさみうちにしようという
(のです。こうしておけば、ぞくはへいのそとへにげだす)
のです。 こうしておけば、賊は塀の外へ逃げ出す
(ことができません。それに、にわをとりまく)
ことが出来ません。それに、庭を取り巻く
(こんくりーとべいは、たかさがよんめーとるもあって、)
コンクリート塀は、高さが四メートルもあって、
(はしごでもないかぎり、のりこえるほうほうはないのです。)
ハシゴでもない限り、乗り越える方法はないのです。
(「あ、ここだ。ぞくはここにいるぞ」ひしょのひとりが、)
「あ、ここだ。賊はここに居るぞ」 秘書の一人が、
(やまのうえのしげみのなかでさけびました。かいちゅうでんとうの)
山の上のしげみの中で叫びました。 懐中電灯の
(まるいひかりが、しほうからそこへしゅうちゅうします。しげみは)
丸い光が、四方からそこへ集中します。しげみは
(ひるのようにあかるくなりました。そのひかりのなかを、)
昼のように明るくなりました。その光の中を、
(ぞくはせなかをまるくして、やまのみぎてにある、)
賊は背中を丸くして、山の右手にある、
(もりのようなこだちへとかけおります。)
森のような木立ちへと駆け下ります。
(「にがすな、やまをおりたぞ」そしてこだちのなかを、)
「逃がすな、山を下りたぞ」 そして木立ちの中を、
(かいちゅうでんとうがちろちろと、うつくしくはしるのです。)
懐中電灯がチロチロと、美しく走るのです。
(にわがひじょうにひろく、じゅもくやがんせきがおおいのと、)
庭が非常に広く、樹木や岩石が多いのと、
(ぞくのとうそうがたくみなために、どうしても)
賊の逃走がたくみなために、どうしても
(とらえることができません。そうしているうちに、)
とらえることができません。 そうしているうちに、
(ちかくのけいさつしょからすうめいのけいかんがかけつけ、)
近くの警察署から数名の警官が駆けつけ、
(ただちにへいのそとをかためました。ぞくは、いよいよ)
ただちに塀の外をかためました。賊は、いよいよ
(ふくろのねずみです。それからしばらくのあいだ、)
袋のネズミです。それからしばらくのあいだ、
(おそろしいおにごっこがつづきましたが、)
恐ろしい鬼ごっこが続きましたが、
(そのうちにおってたちは、ふとぞくのすがたを)
その内に追っ手たちは、ふと賊の姿を
(みうしなってしまいました。ぞくは、すぐまえを)
見失ってしまいました。 賊は、すぐ前を
(はしっていたのです。おおきなきのみきをぬうよう)
走っていたのです。大きな木の幹をぬうよう
(にして、ちらちらとみえたり、かくれたりして)
にして、チラチラと見えたり隠れたりして
(いたのです。それがとつぜん、きえてしまった)
いたのです。それが突然、消えてしまった
(のです。こだちをいっぽんいっぽん、えだのうえまでてらして)
のです。木立ちを一本一本、枝の上まで照らして
(みましたが、どこにもぞくのすがたはないのです。)
みましたが、どこにも賊の姿はないのです。
(へいのそとにはけいかんのみはりがあります。)
塀の外には警官の見張りがあります。
(たてもののほうは、ようかんはもちろん、にほんざしきも)
建物のほうは、洋館はもちろん、日本座敷も
(あまどがひらかれ、いえじゅうのでんとうがあかあかとにわを)
雨戸がひらかれ、家中の電灯があかあかと庭を
(てらしているうえに、そうたろうし、こんどうろうじん、そうじくん)
照らしている上に、壮太郎氏、近藤老人、壮二君
(をはじめ、おてつだいさんたちまでが、えんがわにでて)
をはじめ、お手伝いさんたちまでが、縁側に出て
(にわをながめているのですから、そちらへにげる)
庭をながめているのですから、そちらへ逃げる
(わけにもいきません。ぞくはていえんのどこかに、)
訳にもいきません。 賊は庭園のどこかに、
(みをひそめているにちがいないのです。)
身をひそめているに違いないのです。
(それでいて、しちにんのものがいくらさがしても、)
それでいて、七人の者がいくら探しても、
(そのすがたをはっけんすることができないのです。)
その姿を発見することが出来ないのです。
(にじゅうめんそうはまたしても、にんじゅつをつかったのでは)
二十面相はまたしても、忍術を使ったのでは
(ないでしょうか。けっきょく、よるがあけるのを)
ないでしょうか。結局、夜が明けるのを
(まって、さがしなおすほかはないときまりました。)
待って、探し直す他はないと決まりました。
(おもてもんとうらもんとへいのそとのみはりさえげんじゅうにして)
表門と裏門と塀の外の見張りさえ厳重にして
(おけば、ぞくはふくろのねずみですから、あさまでまっても)
おけば、賊は袋のネズミですから、朝まで待っても
(だいじょうぶなのです。そこでおってのひとびとは、)
大丈夫なのです。そこで追っ手の人々は、
(やしきのそとにいるけいかんたいをたすけるために、にわから)
屋敷の外にいる警官隊を助けるために、庭から
(たいさんしたのですが、ただひとり、まつのというじどうしゃの)
退散したのですが、ただ一人、松野という自動車の
(うんてんしゅだけが、まだにわのおくにのこっていました。)
運転手だけが、まだ庭の奥に残っていました。
(もりのようなこだちにかこまれた、おおきないけが)
森のような木立ちに囲まれた、大きな池が
(あります。まつのうんてんしゅはひとびとにおくれて、そのいけの)
あります。松野運転手は人々に遅れて、その池の
(きしをあるいていたとき、ふとみょうなものに)
岸を歩いていた時、ふとみょうな物に
(きづいたのです。かいちゅうでんとうにてらしだされた)
気づいたのです。 懐中電灯に照らしだされた
(いけのみずぎわには、おちばがいっぱいういていましたが、)
池の水際には、落ち葉が一杯浮いていましたが、
(そのおちばのあいだから、いっぽんのたけぎれが、)
その落ち葉の間から、一本の竹切れが、
(すこしばかりくびをだして、ゆらゆらとうごいているのです。)
少しばかり首を出して、ユラユラと動いているのです。
(かぜのせいではありません。なみもないのに、)
風のせいではありません。波もないのに、
(たけぎれだけが、みょうにうごいているのです。)
竹切れだけが、みょうに動いているのです。
(まつののあたまに、あるひじょうにとっぴなかんがえがうかびました。)
松野の頭に、ある非常に突飛な考えが浮かびました。
(みんなをよびかえそうかとおもったほどです。)
みんなを呼びかえそうかと思ったほどです。
(しかし、それほどのかくしんはありません。)
しかし、それほどの確信はありません。
(あまりにもしんじられないことなのです。)
あまりにも信じられないことなのです。
(かれはでんとうをてらしたまま、いけのきしにしゃがみました。)
彼は電灯を照らしたまま、池の岸にしゃがみました。
(そして、おそろしいうたがいをはらすために、)
そして、恐ろしい疑いを晴らすために、
(みょうなことをはじめたのです。ぽけっとをさぐって、)
みょうなことを始めたのです。 ポケットを探って、
(かみをとりだすと、それをほそくさいて、そっといけのなかの)
紙を取り出すと、それを細くさいて、ソッと池の中の
(たけぎれのうえにもっていきました。すると、ふしぎな)
竹切れの上に持っていきました。 すると、不思議な
(ことがおこったのです。うすいかみきれが、)
ことが起こったのです。薄い紙切れが、
(たけのつつのさきで、ふわふわとじょうげにうごきはじめた)
竹の筒の先で、フワフワと上下に動き始めた
(ではありませんか。かみがそんなふうにうごくからには、)
ではありませんか。紙がそんな風に動くからには、
(たけのつつから、くうきがでたりはいったりしているに)
竹の筒から、空気が出たり入ったりしているに
(ちがいありません。まさかそんなことがと、)
違いありません。 まさかそんなことがと、
(まつのはじぶんのそうぞうをしんじるきになれないのです。)
松野は自分の想像を信じる気になれないのです。
(でも、このたしかなしょうこをどうしましょうか。)
でも、この確かな証拠をどうしましょうか。
(いのちのないたけぎれが、こきゅうをするはずはないでは)
命のない竹切れが、呼吸をするはずはないでは
(ありませんか。ふゆならば、ちょっとかんがえられるかも)
ありませんか。冬ならば、ちょっと考えられるかも
(しれません。しかしいまは、まえにももうしましたとおり、)
しれません。しかし今は、前にも申しました通り、
(あきのじゅうがつ、それほどさむいきこうではありません。)
秋の十月、それほど寒い気候ではありません。
(ことににじゅうめんそうのかいぶつは、みずからをまじゅつしと)
ことに二十面相の怪物は、みずからを魔術師と
(しょうしているほど、とっぴなぼうけんがすきなのです。)
称しているほど、突飛な冒険が好きなのです。
(まつのはそのとき、みんなをよべばよかったのです。)
松野はその時、みんなを呼べばよかったのです。
(でも、かれはてがらをひとりじめにしたかったのでしょう。)
でも、彼は手柄を独り占めにしたかったのでしょう。
(たにんのちからをかりないで、そのうたがいをはらしてみようと)
他人の力を借りないで、その疑いを晴らしてみようと
(おもいました。かれはでんとうをじめんにおくと、いきなり)
思いました。 彼は電灯を地面に置くと、いきなり
(りょうてをのばしてたけぎれをつかみ、ひきあげました。)
両手を伸ばして竹切れをつかみ、引きあげました。