『怪人二十面相』江戸川乱歩10

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(しかし、おれいはおれいとして、すこしうらみがあるのです。)

しかし、お礼はお礼として、少し恨みがあるのです。

(なにものかがにわにわなをしかけておいて、ぼくのあしに)

何者かが庭に罠を仕掛けておいて、ぼくの足に

(ぜんちとおかかんのきずをおわせたことです。ぼくはそんがいを)

全治十日間の傷をおわせたことです。ぼくは損害を

(ばいしょうしてもらうけんりがあります。そのために、)

賠償してもらう権利があります。そのために、

(ごしそくのそうじくんをひとじちとしてつれてかえりました。)

ご子息の壮二君を人質として連れて帰りました。

(そうじくんはいま、わたしのじたくにある、つめたいちかしつに)

壮二君は今、私の自宅にある、冷たい地下室に

(とじこめられて、くらやみのなかでしくしくないております。)

閉じこめられて、暗闇の中でシクシク泣いております。

(そうじくんこそ、あののろわしいわなをしかけたほんにんです。)

壮二君こそ、あの呪わしい罠を仕掛けた本人です。

(これくらいのむくいは、とうぜんではないでしょうか。)

これくらいの報いは、当然ではないでしょうか。

(ところでそんがいのばいしょうですが、ぼくは)

ところで損害の賠償ですが、ぼくは

(しょぞうされているかんぜおんぼさつぞうをようきゅうします。)

所蔵されている観世音菩薩像を要求します。

(ぼくはきのう、はからずもあなたのいえのびじゅつしつを)

ぼくは昨日、はからずもあなたの家の美術室を

(はいけんするこうえいをえたのですが、そのりっぱさに)

拝見する光栄を得たのですが、その立派さに

(おどろきました。なかでもあのかんぜおんぼさつぞうは、)

驚きました。中でもあの観世音菩薩像は、

(かまくらきのちょうこく、あんあみのさくひんとせつめいがきが)

鎌倉期の彫刻、安阿弥の作品と説明書きが

(ありましたが、いかにもこくほうにしたいほどのもの。)

ありましたが、いかにも国宝にしたいほどの物。

(びじゅつずきのぼくは、ほしくてほしくて)

美術好きのぼくは、欲しくて欲しくて

(たまりませんでした。そのとき、どうあっても、)

たまりませんでした。その時、どうあっても、

(このぶつぞうだけはちょうだいしなければならないと、)

この仏像だけは頂戴しなければならないと、

(かたくけっしんしたのです。ついては、こんやじゅうじ、)

固く決心したのです。 ついては、今夜十時、

など

(ぼくのぶかのものさんめいが、あなたのいえに)

ぼくの部下の者三名が、あなたの家に

(さんじょうしますから、だまってびじゅつしつにとおして)

参上しますから、黙って美術室に通して

(いただきたいのです。かれらはかんぜおんぼさつぞうだけを)

いただきたいのです。彼らは観世音菩薩像だけを

(にづくりして、とらっくにつんではこびさるよていに)

荷づくりして、トラックに積んで運び去る予定に

(なっております。ひとじちのそうじくんは、ぶつぞうとひきかえに)

なっております。人質の壮二君は、仏像と引き替えに

(あなたのいえへもどるように、はからいます。やくそくは)

あなたの家へ戻るように、はからいます。約束は

(にじゅうめんそうのなにかけてまちがいありません。)

二十面相の名にかけて間違いありません。

(このことをけいさつにしらせてはなりません。また、)

このことを警察に知らせてはなりません。また、

(ぶかのとらっくのあとをつけさせてはいけません。)

部下のトラックのあとをつけさせてはいけません。

(もしそういうことがあれば、そうじくんはえいきゅうに)

もしそういうことがあれば、壮二君は永久に

(かえらないものとおもってください。このもうしでは、)

帰らないものと思ってください。この申し出は、

(かならずごしょうだくをいただけるものとしんじますが、)

必ずご承諾をいただけるものと信じますが、

(ねんのためごしょうだくのせつは、こんやだけじゅうじまでせいもんを)

念のためご承諾のせつは、今夜だけ十時まで正門を

(あけはなっておいてください。それをめじるしに)

あけはなっておいてください。それを目印に

(さんじょうすることにいたします。にじゅうめんそうより。)

参上することにいたします。二十面相より。

(はしばそうたろうどの。なんというむしのよいようきゅうでしょう。)

羽柴壮太郎殿。なんという虫のよい要求でしょう。

(そうたろうしは、こぶしをにぎってくやしがりましたが、)

壮太郎氏は、こぶしを握って悔しがりましたが、

(そうじくんというかけがえのないひとじちをとられては、)

壮二君というかけがえのない人質をとられては、

(どうすることもできません。ざんねんながら、このむちゃな)

どうすることも出来ません。残念ながら、この無茶な

(もうしでにおうずるほかにてだてはないようにおもわれます。)

申し出に応ずる他に手立てはないように思われます。

(なお、ぞくにたのまれてじどうしゃをうんてんしてきたせいねんを)

なお、賊に頼まれて自動車を運転してきた青年を

(とらえて、じゅうぶんとりしらべましたが、)

とらえて、充分取り調べましたが、

(かれはただ、いくらかおれいをもらってたのまれただけで、)

彼はただ、いくらかお礼をもらって頼まれただけで、

(ぞくのことはなにもしりませんでした。)

賊のことは何も知りませんでした。

(「しょうねんたんてい」)

「少年探偵」

(せいねんうんてんしゅをかえすと、ただちにしゅじんのそうたろうしふさい、)

青年運転手を帰すと、ただちに主人の壮太郎氏夫妻、

(こんどうろうじん、それにがっこうのようむいんさんにおくられて、)

近藤老人、それに学校の用務員さんに送られて、

(くるまをとばしてかえってきたさなえさんもくわわって、)

車をとばして帰ってきた早苗さんも加わって、

(おくまったへやに、どうすればうまくいくのかの)

奥まった部屋に、どうすれば上手くいくのかの

(そうだんがひらかれました。もうぐずぐずしては)

相談がひらかれました。もうグズグズしては

(いられないのです。じゅうじといえば、はち、くじかんしか)

いられないのです。十時といえば、八、九時間しか

(ありません。「ほかのものならばかまわない。)

ありません。「他の物ならば構わない。

(だいやなぞ、おかねさえだせばてにはいるのだからね。)

ダイヤなぞ、お金さえ出せば手に入るのだからね。

(しかし、あのかんぜおんぼさつぞうだけは、わしはどうも)

しかし、あの観世音菩薩像だけは、わしはどうも

(てばなしたくないのだ。ああいう、こくほうきゅうのめいさくを、)

手放したくないのだ。ああいう、国宝級の名作を、

(ぞくのてなどにわたしては、にほんのびじゅつかいのために)

賊の手などに渡しては、日本の美術界のために

(すまない。あのちょうこくは、このいえのびじゅつしつに)

すまない。あの彫刻は、この家の美術室に

(おさめてあるけど、けっしてわしのしゆうぶつではないと)

収めてあるけど、決してわしの私有物ではないと

(おもっているくらいだからね」そうたろうしは、)

思っているくらいだからね」 壮太郎氏は、

(さすがにわがこのことばかりかんがえてはいませんでした。)

さすがに我が子のことばかり考えてはいませんでした。

(しかしはしばふじんは、そうはいきません。)

しかし羽柴夫人は、そうはいきません。

(かわいそうなそうじくんのことで、いっぱいなのです。)

可哀想な壮二君のことで、一杯なのです。

(「でも、ぶつぞうをわたさなければ、あのこが)

「でも、仏像を渡さなければ、あの子が

(どんなめにあうかわからないじゃございませんか。)

どんな目にあうか分からないじゃございませんか。

(いくらたいせつなびじゅつひんでも、にんげんのいのちには)

いくら大切な美術品でも、人間の命には

(かえられないとおもいます。どうかけいさつなどへ)

かえられないと思います。どうか警察などへ

(おっしゃらないで、ぞくのもうしでにおうじてやって)

おっしゃらないで、賊の申し出に応じてやって

(くださいませ」おかあさんのまぶたのうらには、)

くださいませ」 お母さんのまぶたの裏には、

(どこともしれないまっくらなちかしつに、)

どこともしれない真っ暗な地下室に、

(ひとりぼっちでなきじゃくっているそうじくんのすがたが、)

ひとりぼっちで泣きじゃくっている壮二君の姿が、

(まざまざとうかんでいました。こんばんのじゅうじさえ)

まざまざと浮かんでいました。今晩の十時さえ

(まちどおしいのです。たったいまでも、)

待ち遠しいのです。たった今でも、

(ぶつぞうとひきかえに、はやくそうじくんをとりもどして)

仏像と引き替えに、早く壮二君を取り戻して

(ほしいのです。「うん、そうじをとりもどすのは)

ほしいのです。「うん、壮二を取り戻すのは

(もちろんだが、しかしだいやをとられた)

勿論だが、しかしダイヤを取られた

(うえに、あのかけがえのないびじゅつひんまで、)

上に、あのかけがえのない美術品まで、

(おめおめぞくにわたすのかとおもうと、ざんねんで)

おめおめ賊に渡すのかと思うと、残念で

(たまらないのだ。こんどうくん、なにかほうほうはないもの)

たまらないのだ。近藤君、何か方法はないもの

(だろうか」「そうでございますね。けいさつにしらせたら、)

だろうか」「そうでございますね。警察に知らせたら、

(たちまちことがあらだってしまいますから、)

たちまち事が荒立ってしまいますから、

(ぞくのてがみのことはこんばんじゅうじまでは、そとへもれない)

賊の手紙のことは今晩十時までは、外へ漏れない

(ようにしておかねばなりません。しかし)

ようにしておかねばなりません。しかし

(しりつたんていならば、もんだいないかとおもいます」)

私立探偵ならば、問題ないかと思います」

(ろうじんが、ふとひとつのあんをもちだしました。)

老人が、ふと一つの案を持ちだしました。

(「うん、しりつたんていというものがあるね。)

「うん、私立探偵というものがあるね。

(しかし、こじんのたんていなどにこのだいじけんが)

しかし、個人の探偵などにこの大事件が

(こなせるかな」「きくところによりますと、)

こなせるかな」「聞くところによりますと、

(なんでもとうきょうにひとり、えらいたんていがいるとか」)

なんでも東京に一人、偉い探偵がいるとか」

(ろうじんがくびをかしげているのをみて、さなえさんが、)

老人が首をかしげているのを見て、早苗さんが、

(とつぜんくちをはさみました。「おとうさん、)

とつぜん口をはさみました。「お父さん、

(それはあけちこごろうたんていよ。あのひとならば、)

それは明智小五郎探偵よ。あの人ならば、

(けいさつがさじをなげたじけんを、いくつもかいけつしたって)

警察がさじを投げた事件を、いくつも解決したって

(いうほどのめいたんていですわ」「そうそう、)

いうほどの名探偵ですわ」「そうそう、

(そのあけちこごろうというじんぶつでした。)

その明智小五郎という人物でした。

(じつにえらいおとこだそうで、にじゅうめんそうとはかっこうの)

実に偉い男だそうで、二十面相とはかっこうの

(とりくみでございましょう」「うん、そのなは)

取り組みでございましょう」「うん、その名は

(わしもきいたことがある。では、そのたんていを)

わしも聞いたことがある。では、その探偵を

(そっとよんで、そうだんしてみることにしようか。)

ソッと呼んで、相談してみることにしようか。

(せんもんかには、われわれのそうぞうにおよばない)

専門家には、我々の想像に及ばない

(めいあんがあるかもしれん」)

名案があるかもしれん」

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