『怪人二十面相』江戸川乱歩11
○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文
(そしてけっきょく、あけちこごろうにこのじけんを)
そして結局、明智小五郎にこの事件を
(いらいすることにはなしがきまったのでした。)
依頼することに話が決まったのでした。
(さっそく、こんどうろうじんがでんわちょうをしらべて、)
早速、近藤老人が電話帳を調べて、
(あけちたんていのじたくにでんわをかけました。すると、)
明智探偵の自宅に電話をかけました。すると、
(でんわぐちからこどもらしいこえで、こんなへんじが)
電話口から子どもらしい声で、こんな返事が
(きこえてきました。「せんせいはいま、あるじゅうだいな)
聞こえてきました。「先生は今、ある重大な
(じけんをたんとうしていて、がいこくへしゅっちょうちゅうですので、)
事件を担当していて、外国へ出張中ですので、
(いつもどるのかわかりません。しかし、)
いつ戻るのか分かりません。しかし、
(せんせいのだいりをつとめている、こばやしというじょしゅが)
先生の代理を務めている、小林という助手が
(おりますので、そのひとでよければ、すぐおうかがい)
おりますので、その人でよければ、すぐおうかがい
(いたします」「ああ、そうですか。だが、ひじょうに)
いたします」「ああ、そうですか。だが、非常に
(なんじけんですからねえ。じょしゅのかたではどうもこころぼそい」)
難事件ですからねえ。助手のかたではどうも心細い」
(こんどうしはいにんがちゅうちょしていると、)
近藤支配人がちゅうちょしていると、
(せんぽうからおおいかぶせるように、げんきのよいこえが)
先方から覆いかぶせるように、元気のよい声が
(ひびいてきました。「じょしゅといっても、せんせいに)
響いてきました。「助手といっても、先生に
(おとらない、うでききなんです。じゅうぶんごしんらい)
劣らない、腕ききなんです。充分ご信頼
(なさっていいとおもいます。ともかく、いちど)
なさっていいと思います。ともかく、一度
(おうかがいしてみることにしましょう」)
おうかがいしてみることにしましょう」
(「そうですか。では、すぐこちらへ)
「そうですか。では、すぐこちらへ
(くるように、おつたえください。ただ、)
来るように、お伝えください。ただ、
(おことわりしておきますが、じけんをごいらいした)
お断りしておきますが、事件をご依頼した
(ことが、あいてがたにしられてはたいへんなのです。)
ことが、相手方に知られては大変なのです。
(ひとのせいめいにかんすることなのです。じゅうぶん)
人の生命に関することなのです。充分
(ごちゅういのうえ、だれにもさとられないよう、)
ご注意の上、だれにも悟られないよう、
(こっそりとおたずねください」「それは、)
コッソリとおたずねください」「それは、
(おっしゃるまでもなく、よくこころえております」)
おっしゃるまでもなく、よく心得ております」
(そういうもんどうがあって、いよいよこばやしという)
そういう問答があって、いよいよ小林という
(めいたんていがやってくることになりました。)
名探偵がやって来ることになりました。
(でんわがきれて、じゅっぷんもたったかとおもわれたころ、)
電話が切れて、十分も経ったかと思われた頃、
(ひとりのかわいらしいしょうねんが、はしばけのげんかんに)
一人の可愛らしい少年が、羽柴家の玄関に
(たって、あんないをこいました。ひしょがとりつぎに)
立って、案内をこいました。秘書が取り次ぎに
(でると、そのしょうねんは「ぼくはそうじくんのおともだち)
出ると、その少年は「ぼくは壮二君のお友だち
(です」とじこしょうかいしました。「そうじさんは)
です」と自己紹介しました。「壮二さんは
(いらっしゃいませんが」とこたえると、しょうねんは)
いらっしゃいませんが」と答えると、少年は
(とうぜんだろうというかおつきで、「おおかた、そんな)
当然だろうという顔つきで、「おおかた、そんな
(ことだろうとおもいました。では、おとうさんに)
ことだろうと思いました。では、お父さんに
(ちょっとあわせてください。ぼくのおとうさんから)
ちょっと会わせてください。ぼくのお父さんから
(ことづけがあるんです。ぼく、こばやしっていうもん)
ことづけがあるんです。ぼく、小林っていうもん
(です」と、すましてめんかいをもうしこみました。)
です」と、すまして面会を申し込みました。
(ひしょからそのはなしをきくとそうたろうしは、こばやしという)
秘書からその話を聞くと壮太郎氏は、小林という
(なまえにこころあたりがあったので、ともかく)
名前に心当たりがあったので、ともかく
(おうせつしつにとおさせました。そうたろうしがはいって)
応接室に通させました。 壮太郎氏が入って
(いくと、りんごのようにつやつやしたほおの、)
行くと、リンゴのようにツヤツヤした頬の、
(めがおおきい、じゅうに、さんさいのしょうねんがたっていました。)
目が大きい、十二、三歳の少年が立っていました。
(「はしばさんですか、はじめまして。ぼく、)
「羽柴さんですか、はじめまして。ぼく、
(あけちたんていじむしょのこばやしっていうもんです。)
明智探偵事務所の小林っていうもんです。
(おでんわをくださいましたので、おうかがい)
お電話をくださいましたので、おうかがい
(しました」しょうねんはめをくりくりさせて、)
しました」 少年は目をクリクリさせて、
(はっきりしたくちょうでいいました。「ああ、こばやしさんの)
ハッキリした口調で言いました。「ああ、小林さんの
(おつかいですか。ちと、こみいったじけんなのでね。)
お使いですか。ちと、こみいった事件なのでね。
(ごほんにんにきてもらいたいのだが」そうたろうしが)
ご本人に来てもらいたいのだが」壮太郎氏が
(いいかけるのを、しょうねんはてをあげてとめるように)
言いかけるのを、少年は手をあげて止めるように
(しながらこたえました。「いえ、ぼくがその)
しながら答えました。「いえ、ぼくがその
(こばやしよしおです。ほかにじょしゅはいないのです」)
小林芳雄です。他に助手は居ないのです」
(「ほほう、きみがごほんにんですか」そうたろうしは)
「ほほう、きみがご本人ですか」 壮太郎氏は
(びっくりしました。とどうじに、なんだか)
ビックリしました。と同時に、なんだか
(ゆかいなきもちになってきました。こんなちっぽけな)
愉快な気持ちになってきました。こんなチッポケな
(こどもがめいたんていだなんて、ほんとうだろうか。)
子どもが名探偵だなんて、本当だろうか。
(だが、かおつきやことばづかいは、なかなかたのもしそう)
だが、顔つきや言葉づかいは、なかなか頼もしそう
(です。ひとまず、このこどもにそうだんしてみるか。)
です。ひとまず、この子どもに相談してみるか。
(「さっきでんわぐちで、うでききのめいたんていといったのは、)
「さっき電話口で、腕ききの名探偵と言ったのは、
(きみじしんだったのですか」「ええ、そうです。)
きみ自身だったのですか」「ええ、そうです。
(ぼくはせんせいから、るすちゅうのじけんをすべて)
ぼくは先生から、留守中の事件をすべて
(まかされているのです」しょうねんはじしんたっぷりです。)
任されているのです」少年は自信たっぷりです。
(「いま、きみはそうじのともだちだっていったそうですね。)
「今、きみは壮二の友だちだって言ったそうですね。
(どうしてそうじのなまえをしっていたのだ」)
どうして壮二の名前を知っていたのだ」
(「それくらいのことがわからないでは、たんていの)
「それくらいのことが分からないでは、探偵の
(しごとはできません。じつぎょうざっしにあなたのごかぞくの)
仕事は出来ません。実業雑誌にあなたのご家族の
(ことがでていたのを、きりぬきちょうでしらべてきた)
ことが出ていたのを、切り抜き帳で調べてきた
(のです。でんわで、ひとのいのちにかかわるというおはなしが)
のです。電話で、人の命にかかわるというお話が
(あったので、さなえさんかそうじくんか、どちらかが)
あったので、早苗さんか壮二君か、どちらかが
(ゆくえふめいにでもなったのではないかとそうぞうして)
行方不明にでもなったのではないかと想像して
(きました。どうやら、そのそうぞうがあたったようですね。)
きました。どうやら、その想像が当たったようですね。
(それから、このじけんにはにじゅうめんそうのぞくが、)
それから、この事件には二十面相の賊が、
(かんけいしているのではありませんか」こばやししょうねんは、)
関係しているのではありませんか」 小林少年は、
(じつにかんじよくくちをききます。なるほど、)
実に感じよく口をききます。 なるほど、
(このこどもはほんとうにめいたんていかもしれないぞと、)
この子どもは本当に名探偵かもしれないぞと、
(そうたろうしはすっかりかんしんしてしまいました。)
壮太郎氏はすっかり感心してしまいました。
(そこで、こんどうろうじんをおうせつしつによんで、ふたりで)
そこで、近藤老人を応接室に呼んで、二人で
(じけんのてんまつを、このしょうねんにくわしくかたり)
事件のてんまつを、この少年に詳しく語り
(きかせることにしたのです。しょうねんは、きゅうしょきゅうしょで)
聞かせることにしたのです。少年は、急所急所で
(みじかいしつもんをはさみながらねっしんにきいていましたが、)
短い質問をはさみながら熱心に聞いていましたが、
(はなしがすむと、そのかんのんぞうをみたいともうしでました。)
話が済むと、その観音像を見たいと申し出ました。
(そして、そうたろうしのあんないでびじゅつしつをみて、)
そして、壮太郎氏の案内で美術室を見て、
(もとのおうせつしつにかえったのですが、しばらくのあいだ)
元の応接室に帰ったのですが、しばらくの間
(ものもいわないで、めをつむって、なにかかんがえごとに)
物も言わないで、目をつむって、何か考え事に
(ふけっているようすでした。やがて、しょうねんは)
ふけっている様子でした。 やがて、少年は
(ぱっちりめをひらくと、からだをまえにのりだすように)
パッチリ目をひらくと、体を前に乗り出すように
(して、いきごんでいいました。「ぼくはひとつ、)
して、意気込んで言いました。「ぼくは一つ、
(うまいしゅだんをかんがえついたのです。あいてがまほうつかい)
上手い手段を考えついたのです。相手が魔法使い
(なら、こっちもまほうつかいになるのです。ひじょうに)
なら、こっちも魔法使いになるのです。非常に
(きけんなしゅだんです。でも、きけんをおかさないで、)
危険な手段です。でも、危険をおかさないで、
(てがらをたてることはできませんからね。)
手柄をたてることは出来ませんからね。
(ぼくはまえに、もっとあぶないことさえやった)
ぼくは前に、もっと危ないことさえやった
(けいけんがあります」「ほう、それはたのもしい。)
経験があります」「ほう、それは頼もしい。
(だが、いったいどういうしゅだんだね」「それはね」)
だが、一体どういう手段だね」「それはね」
(こばやししょうねんは、いきなりそうたろうしにちかづいて、)
小林少年は、いきなり壮太郎氏に近づいて、
(みみもとでなにかをささやきました。「え、きみがですか」)
耳元で何かをささやきました。「え、きみがですか」
(そうたろうしは、あまりにもとっぴなもうしでに、)
壮太郎氏は、あまりにも突飛な申し出に、
(めをまるくしないではいられませんでした。)
目を丸くしないではいられませんでした。