『怪人二十面相』江戸川乱歩9
○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文
(ぞくは、ほそいきぬひものようなもので、)
賊は、細い絹ヒモのような物で、
(ぐるぐるまきにしばられています。)
グルグル巻きにしばられています。
(そのうえ、さるぐつわもしています。)
その上、さるぐつわもしています。
(おおきなはんかちをくちのなかへおしこんで、)
大きなハンカチを口の中へ押し込んで、
(べつのはんかちでかたく、くくってあります。)
別のハンカチで固く、くくってあります。
(それから、みょうなことに、ようふくがあめにでも)
それから、みょうなことに、洋服が雨にでも
(ぬれたように、ぐっしょりしているのです。)
濡れたように、グッショリしているのです。
(さるぐつわをとってやると、おとこはやっと)
さるぐつわを取ってやると、男はやっと
(げんきになったようで、「ちくしょうめ、)
元気になったようで、「ちくしょうめ、
(ちくしょうめ」と、うなりました。)
ちくしょうめ」と、うなりました。
(「あ、きみはまつのくんじゃないか」)
「あ、きみは松野君じゃないか」
(ひしょがびっくりしてさけびました。)
秘書がビックリして叫びました。
(それはにじゅうめんそうではなかったのです。)
それは二十面相ではなかったのです。
(にじゅうめんそうのふくをきていましたが、)
二十面相の服を着ていましたが、
(かおはまったくちがうのです。おかかえうんてんしゅの)
顔はまったく違うのです。おかかえ運転手の
(まつのにちがいありません。でも、うんてんしゅといえば、)
松野に違いありません。でも、運転手といえば、
(さきほど、さなえさんとそうじくんをがっこうへおくるために、)
先ほど、早苗さんと壮二君を学校へ送るために、
(でかけたばかりではありませんか。そのまつのが、)
出かけたばかりではありませんか。その松野が、
(どうしてここにいるのでしょう。「きみは、)
どうしてここに居るのでしょう。「きみは、
(いったいどうしたんだ」かかりちょうがたずねると)
一体どうしたんだ」 係長がたずねると
(まつのは、「ちくしょうめ、やられたんです。)
松野は、「ちくしょうめ、やられたんです。
(あいつにやられたんです」と、)
あいつにやられたんです」と、
(くやしそうにさけぶのでした。)
くやしそうに叫ぶのでした。
(「そうじくんのゆくえ」)
「壮二君の行方」
(まつののかたったないようによると、けっきょくぞくは、)
松野の語った内容によると、結局賊は、
(つぎのようなとっぴなしゅだんによって、まんまと)
次のような突飛な手段によって、まんまと
(おってのめをくらまし、おおぜいがみているなかを)
追っ手の目をくらまし、大勢が見ている中を
(やすやすとにげさったことがわかりました。)
やすやすと逃げ去ったことが分かりました。
(ひとびとにおいまわされているあいだに、ぞくはにわのいけに)
人々に追いまわされている間に、賊は庭の池に
(とびこんで、みずのなかにもぐってしまったのです。)
飛び込んで、水の中にもぐってしまったのです。
(でも、ただもぐっていたのではこきゅうができませんが、)
でも、ただもぐっていたのでは呼吸が出来ませんが、
(ちょうどそのへんにそうじくんがおもちゃにして、)
ちょうどその辺に壮二君がオモチャにして、
(すてておいた、ふしのないたけぎれがおちていた)
捨てておいた、節のない竹切れが落ちていた
(ものですから、それをもっていけのなかへはいり、)
ものですから、それを持って池の中へ入り、
(たけのつつをくちにあて、いっぽうのはしをすいめんにだし、)
竹の筒を口にあて、一方の端を水面に出し、
(しずかにこきゅうをして、おってがたちさるのを)
静かに呼吸をして、追っ手が立ち去るのを
(まっていたのでした。ところがひとびとのあとに)
待っていたのでした。ところが人々のあとに
(のこって、ひとりでそのへんをみまわしていた)
残って、一人でその辺を見まわしていた
(まつのうんてんしゅが、そのたけぎれをはっけんし、)
松野運転手が、その竹切れを発見し、
(ぞくのたくらみにかんづいたのです。おもいきってたけぎれを)
賊のたくらみに感づいたのです。思いきって竹切れを
(ひっぱってみると、いけのなかからどろまみれのにんげんが)
引っ張ってみると、池の中から泥まみれの人間が
(あらわれてきました。そこで、やみのなかのかくとうがはじまった)
現れてきました。そこで、闇の中の格闘が始まった
(のですが、きのどくなまつのはすくいをもとめるひまも)
のですが、気の毒な松野は救いを求める暇も
(なく、たちまちぞくによりくみふせられ、)
なく、たちまち賊により組み伏せられ、
(ぞくがぽけっとによういしていた)
賊がポケットに用意していた
(きぬひもでしばりあげられ、さるぐつわをされて)
絹ヒモでしばりあげられ、さるぐつわをされて
(しまったのです。そしてふくをとりかえられ、)
しまったのです。そして服を取り替えられ、
(たかいきのまたへ、かつぎあげられたのでした。)
高い木のまたへ、かつぎあげられたのでした。
(だとすると、そうじくんたちをがっこうへおくっていった)
だとすると、壮二君たちを学校へ送っていった
(うんてんしゅは、いよいよにせものときまりました。)
運転手は、いよいよ偽者と決まりました。
(たいせつなおじょうさんとおぼっちゃんが、にじゅうめんそうじしんの)
大切なお嬢さんとお坊ちゃんが、二十面相自身の
(うんてんするじどうしゃで、どこかへいってしまったのです。)
運転する自動車で、どこかへ行ってしまったのです。
(ひとびとのおどろき、おとうさんとおかあさんの)
人々の驚き、お父さんとお母さんの
(ごしんぱいは、くどくどとせつめいするまでもありません。)
ご心配は、くどくどと説明するまでもありません。
(まずさなえさんがいく、かどわきちゅうがっこうへでんわを)
まず早苗さんが行く、門脇中学校へ電話を
(かけました。すると、いがいにもさなえさんはぶじに)
かけました。すると、意外にも早苗さんは無事に
(がっこうへついていることがわかりました。)
学校へついていることが分かりました。
(では、ぞくはべつにゆうかいをするつもりではなかった)
では、賊は別に誘拐をするつもりではなかった
(のだなとあんしんして、つぎにそうじくんのがっこうへ)
のだなと安心して、次に壮二君の学校へ
(でんわをしてたずねると、もうじゅぎょうがはじまって)
電話をしてたずねると、もう授業が始まって
(いるのに、そうじくんのすがたはみえないというへんじです。)
いるのに、壮二君の姿は見えないという返事です。
(それをきくと、おとうさんとおかあさんのかおいろが)
それを聞くと、お父さんとお母さんの顔色が
(かわってしまいました。ぞくはわなをしかけたのが、)
変わってしまいました。 賊は罠を仕掛けたのが、
(そうじくんであることをしったのかもしれません。)
壮二君であることを知ったのかもしれません。
(そして、あしにうけたきずのふくしゅうをするために、)
そして、足に受けた傷の復讐をするために、
(そうじくんだけをゆうかいしたのかもしれません。)
壮二君だけを誘拐したのかもしれません。
(さあ、おおさわぎになりました。なかむらそうさかかりちょうは、)
さあ、大騒ぎになりました。中村捜査係長は、
(ただちにこのことをけいしちょうにほうこくし、とうきょうぜんとに)
ただちにこのことを警視庁に報告し、東京全都に
(ひじょうせんをはって、はしばけのじどうしゃをさがしだす)
非常線をはって、羽柴家の自動車を探し出す
(てはいをとりました。さいわいじどうしゃのかたやばんごうは)
手配をとりました。さいわい自動車の型や番号は
(わかっているので、てがかりはじゅうぶんあるのです。)
分かっているので、手がかりは充分あるのです。
(そうたろうしは、さんじゅっぷんごとにがっこうと)
壮太郎氏は、三十分ごとに学校と
(けいしちょうとへでんわをかけて、そのごのようすを)
警視庁とへ電話をかけて、そのごの様子を
(たずねましたが、いちじかん、にじかん、さんじかんと、)
たずねましたが、一時間、二時間、三時間と、
(ときはようしゃなくたっていくのに、)
時は容赦なく経っていくのに、
(そうじくんのしょうそくは、いつまでもわかりませんでした。)
壮二君の消息は、いつまでも分かりませんでした。
(ところが、そのひのおひるすぎになって、)
ところが、その日のお昼過ぎになって、
(ひとりのうすよごれたせびろにはんちんぐぼうのせいねんが、)
一人の薄汚れた背広にハンチング帽の青年が、
(はしばけのげんかんにあらわれて、みょうなことをいいだし)
羽柴家の玄関に現れて、みょうなことを言いだし
(ました。「あたしは、おたくのうんてんしゅさんに)
ました。「あたしは、おたくの運転手さんに
(たのまれたんですがね。うんてんしゅさんが、なんだか)
頼まれたんですがね。運転手さんが、なんだか
(とちゅうできゅうにしようができたとかで、)
途中で急に私用ができたとかで、
(じどうしゃをはこぶようにたのまれたのですよ。くるまはもんのなかへ)
自動車を運ぶように頼まれたのですよ。車は門の中へ
(いれておきましたから、しらべてうけとってほしいんです)
入れておきましたから、調べて受とって欲しいんです
(がね」ひしょが、そのことをほうこくする。)
がね」秘書が、そのことを報告する。
(すると、しゅじんのそうたろうしやしはいにんのこんどうろうじんが、)
すると、主人の壮太郎氏や支配人の近藤老人が、
(げんかんへかけだして、くるまをしらべてみると、)
玄関へ駆けだして、車を調べてみると、
(たしかにはしばけのじどうしゃにちがいありません。)
確かに羽柴家の自動車に違いありません。
(しかし、なかにはだれもいないのです。そうじくんは)
しかし、中にはだれも居ないのです。壮二君は
(やっぱりゆうかいされてしまったのです。「おや、)
やっぱり誘拐されてしまったのです。「おや、
(みょうなふうとうがおちていますよ」こんどうろうじんが、)
みょうな封筒が落ちていますよ」近藤老人が、
(じどうしゃのくっしょんのうえから、いっつうのふうしょを)
自動車のクッションの上から、一通の封書を
(ひろいあげました。そのおもてには「はしばそうたろうどの」と)
拾いあげました。その表には「羽柴壮太郎殿」と
(おおきくかいてあるのみで、うらをみてもさしだしにんの)
大きく書いてあるのみで、裏を見ても差出人の
(なまえはありません。「なんだろう」と、そうたろうしが)
名前はありません。「なんだろう」と、壮太郎氏が
(ふうをひらいて、にわにたったままよんでみると、)
封をひらいて、庭に立ったまま読んでみると、
(そこにはつぎのようなおそろしいことばがかきつらねて)
そこには次のような恐ろしい言葉が書き連ねて
(あったのです。さくやはだいやろっこをたしかに)
あったのです。 昨夜はダイヤ六個を確かに
(ちょうだいしました。もちかえって、みればみるほど)
ちょうだいしました。持ち帰って、見れば見るほど
(みごとなほうせき。かほうとしてたいせつにほぞんします。)
見事な宝石。家宝として大切に保存します。