『怪人二十面相』江戸川乱歩21

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(すると、ぞくはそのこえにおうじて、まちかまえていたように)

すると、賊はその声に応じて、待ち構えていたように

(こたえました。「あたしは、きのしたとらきちっていうもん)

答えました。「あたしは、木下虎吉っていうもん

(です。しょくぎょうはこっくです」「だまれ。そんなばか)

です。職業はコックです」「黙れ。そんなバカ

(みたいなくちをきいて、ごまかそうとしたって、)

みたいな口をきいて、ごまかそうとしたって、

(だめだぞ。ほんとうのことをいえ。にじゅうめんそうといえば、)

だめだぞ。本当のことを言え。二十面相と言えば、

(せけんてきにだいとうぞくじゃないか。ひきょうなまねを)

世間的に大盗賊じゃないか。卑怯な真似を

(するな」どなりつけられて、ひるむかとおもわれたが、)

するな」 どなりつけられて、ひるむかと思われたが、

(ぞくは、いきなりげらげらとわらいだしたでは)

賊は、いきなりゲラゲラと笑いだしたでは

(ありませんか。「へえー、にじゅうめんそうですって。)

ありませんか。「ヘエー、二十面相ですって。

(このあたしがですかい。ははは、とんだことに)

このあたしがですかい。ハハハ、とんだことに

(なるものですね。にじゅうめんそうが、こんなきたねえおとこだと)

なるものですね。二十面相が、こんなきたねえ男だと

(おもっているんですかい。けいぶさんもめがないねえ。)

思っているんですかい。警部さんも目がないねえ。

(いいかげんに、わかりそうなもんじゃありませんか」)

いいかげんに、分かりそうなもんじゃありませんか」

(なかむらかかりちょうはそれをきくと、はっとかおいろを)

中村係長はそれを聞くと、ハッと顔色を

(かえないでいられませんでした。「だまれ、)

変えないでいられませんでした。「黙れ、

(でたらめもいいかげんにしろ。そんなばかなことが)

デタラメもいいかげんにしろ。そんなバカなことが

(あるものか。きさまがにじゅうめんそうだということは、)

あるものか。貴様が二十面相だということは、

(こばやししょうねんがちゃんとしょうめいしているじゃないか」)

小林少年がちゃんと証明しているじゃないか」

(「わはは、それがまちがっているんだから、)

「ワハハ、それが間違っているんだから、

(おわらいぐさでさあ。あたしはね、べつになんにも)

お笑い草でさあ。あたしはね、別に何にも

など

(わるいことをしたおぼえはねえ、ただのこっくですよ。)

悪いことをした覚えはねえ、ただのコックですよ。

(にじゅうめんそうだかなんだかしらないが、とおかばかりまえ、)

二十面相だか何だか知らないが、十日ばかり前、

(あのいえへ、やとわれたこっくのとらきちってもんですよ。)

あの家へ、雇われたコックの虎吉ってもんですよ。

(なんなら、こっくのおやかたのほうをしらべてくださりゃ、)

なんなら、コックの親方のほうを調べてくださりゃ、

(すぐわかることです」「その、なんでもない)

すぐ分かることです」「その、何でもない

(こっくが、どうしてこんなろうじんのへんそうをしている)

コックが、どうしてこんな老人の変装をしている

(んだ」「それがね、いきなりおさえつけられて、)

んだ」「それがね、いきなり押さえつけられて、

(きものをきがえさせられ、かつらをかぶせられて)

着物を着替えさせられ、カツラをかぶせられて

(しまったんでさあ。あたしもじつは、よくわけが)

しまったんでさあ。あたしも実は、よく訳が

(わからないんだが、おまわりさんがふみこんで)

分からないんだが、お巡りさんが踏み込んで

(きなすったときにしゅじんが、あたしのてをとって、)

きなすった時に主人が、あたしの手を取って、

(やねうらべやへかけあがったのですよ。あのへやには、)

屋根裏部屋へ駆け上がったのですよ。あの部屋には、

(かくしとだながあってね、そこにいろんなへんそうのいしょうが)

隠し戸棚があってね、そこにいろんな変装の衣装が

(いれてあるんです。しゅじんはそのなかから、)

入れてあるんです。主人はその中から、

(おまわりさんのようふくや、ぼうしなどをとりだして、)

お巡りさんの洋服や、帽子などを取り出して、

(てばやくみにつけると、いままできていたおじいさんの)

手早く身に付けると、今まで着ていたおじいさんの

(きものをあたしにきせて、いきなり)

着物をあたしに着せて、いきなり

(「ぞくをつかまえた」と、どなりながら、みうごきも)

「賊を捕まえた」と、どなりながら、身動きも

(できないようにおさえつけてしまったんです。)

出来ないように押さえつけてしまったんです。

(いまからかんがえてみると、つまりけいぶさんのぶかの)

今から考えてみると、つまり警部さんの部下の

(おまわりさんがにじゅうめんそうをみつけだして、)

お巡りさんが二十面相を見つけだして、

(いきなりとびかかったという、おしばいをやって)

いきなり跳びかかったという、お芝居をやって

(みせたわけですね。やねうらべやはうすぐらいです)

みせた訳ですね。屋根裏部屋は薄暗いです

(からね。あのさわぎのさいちゅう、かおなんか)

からね。あの騒ぎのさいちゅう、顔なんか

(わかりっこありませんや。あたしは、どうすることも)

分かりっこありませんや。あたしは、どうすることも

(できなかったんですよ。なにしろ、しゅじんときたら、)

出来なかったんですよ。なにしろ、主人ときたら、

(えらいちからですからねえ」なかむらかかりちょうはあおざめて)

えらい力ですからねえ」 中村係長は青ざめて

(こわばったかおで、むごんのままはげしくたくじょうのべるを)

こわばった顔で、無言のまま激しく卓上のベルを

(おしました。そしてけいぶがかおをだすと、けさ)

押しました。そして警部が顔を出すと、今朝

(とやまがはらのはいおくをほういしたけいかんのうち、おもてぐち、)

戸山ヶ原の廃屋を包囲した警官のうち、表口、

(うらぐちのみはりばんをつとめたよにんのけいかんに、すぐくる)

裏口の見張り番を務めた四人の警官に、すぐ来る

(ようにとつたえさせたのです。やがて、はいってきた)

ようにと伝えさせたのです。やがて、入って来た

(よにんのけいかんを、かかりちょうはこわいかおでにらみつけました。)

四人の警官を、係長は怖い顔でにらみつけました。

(「こいつをたいほしていたとき、あのいえからでていった)

「こいつを逮捕していた時、あの家から出ていった

(ものはいなかったかね。そいつはけいかんのふくそうを)

者はいなかったかね。そいつは警官の服装を

(していたかもしれないのだ。だれかみかけなかった)

していたかもしれないのだ。だれか見かけなかった

(かね」そのといにおうじて、ひとりのけいかんがこたえました。)

かね」その問いに応じて、一人の警官が答えました。

(「けいかんならばひとりでていきましたよ。ぞくがつかまった)

「警官ならば一人出ていきましたよ。賊が捕まった

(からはやくにかいへいけと、どなっておいて、ぼくらが)

から早く二階へ行けと、どなっておいて、ぼくらが

(あわててかいだんのほうへかけだすのとはんたいに、そのおとこは)

慌てて階段のほうへ駆けだすのと反対に、その男は

(そとへはしっていきました」「なぜ、それをいままでだまって)

外へ走っていきました」「なぜ、それを今まで黙って

(いるんだ。だいいち、きみはそのおとこのかおをみなかった)

いるんだ。第一、きみはその男の顔を見なかった

(のかね。いくらけいかんのせいふくをきていたからって、かおを)

のかね。いくら警官の制服を着ていたからって、顔を

(みれば、にせものかどうかすぐわかるはずじゃないか」)

見れば、偽者かどうかすぐ分かるはずじゃないか」

(かかりちょうのひたいには、じょうみゃくがおそろしくふくれあがって)

係長のひたいには、静脈が恐ろしく膨れ上がって

(います。「それが、かおをみるひまがなかったんです。)

います。「それが、顔を見る暇がなかったんです。

(かぜのようにはしってきて、かぜのようにとびだしていった)

風のように走って来て、風のように飛び出して行った

(ものですから。しかし、ぼくはちょっとふしんにおもった)

ものですから。しかし、ぼくはちょっと不信に思った

(ので、きみはどこへいくんだ、とこえをかけました。)

ので、きみはどこへ行くんだ、と声をかけました。

(するとそのおとこは、「でんわだよ。かかりちょうのいいつけででんわを)

するとその男は、「電話だよ。係長の言いつけで電話を

(かけにいくんだよ」とさけびながら、はしっていって)

かけに行くんだよ」と叫びながら、走って行って

(しまいました。でんわならば、これまでれいがないことも)

しまいました。 電話ならば、これまで例が無いことも

(ないので、ぼくはそれいじょううたがいませんでした。)

ないので、ぼくはそれ以上疑いませんでした。

(それに、ぞくがつかまってしまったのですから、)

それに、賊が捕まってしまったのですから、

(かけだしていったけいかんのことなんかわすれてしまって、)

駆け出していった警官のことなんか忘れてしまって、

(つい、ごほうこくしなかったのですよ」きいてみれば、)

つい、ご報告しなかったのですよ」 聞いてみれば、

(むりのないはなしでした。むりがないだけに、)

無理のない話でした。無理がないだけに、

(ぞくのけいかくがじつにきびんに、しかもよういしゅうとうに)

賊の計画が実に機敏に、しかも用意周到に

(おこなわれたことを、おどろかないではいられません)

行われたことを、驚かないではいられません

(でした。もう、うたがうところはありません。)

でした。 もう、疑うところはありません。

(ここにたっている、やばんじんみたいにみにくいかおのおとこは、)

ここに立っている、野蛮人みたいに醜い顔の男は、

(かいとうでもなんでもなかったのです。つまらないひとりの)

怪盗でも何でもなかったのです。つまらない一人の

(こっくにすぎなかったのです。そのつまらないこっく)

コックにすぎなかったのです。そのつまらないコック

(をつかまえるためにじゅうすうめいのけいかんが、あのおおさわぎを)

を捕まえるために十数名の警官が、あの大騒ぎを

(えんじたのかとおもうと、かかりちょうもよにんのけいかんも)

演じたのかと思うと、係長も四人の警官も

(あまりのことに、ただぼうぜんとかおをみあわせる)

余りのことに、ただ呆然と顔を見あわせる

(ほかはありませんでした。「それからけいぶさん。)

他はありませんでした。「それから警部さん。

(しゅじんがあなたに、おわたししてくれといって、)

主人があなたに、お渡ししてくれと言って、

(こんなものをかいていったんですが」こっくの)

こんな物を書いて行ったんですが」コックの

(とらきちがきもののむねをひらいて、もみくちゃになった)

虎吉が着物の胸をひらいて、もみくちゃになった

(いちまいのかみきれをとりだし、かかりちょうのまえにさしだし)

一枚の紙切れを取り出し、係長の前に差し出し

(ました。なかむらかかりちょうは、ひったくるようにそれを)

ました。 中村係長は、ひったくるようにそれを

(うけとると、しわをのばしてすばやく)

受け取ると、シワを伸ばして素早く

(よみましたが、よみながらかかりちょうのかおはふんどの)

読みましたが、読みながら係長の顔は憤怒の

(あまり、むらさきいろにかわったようにみえました。そこには)

あまり、紫色に変わったように見えました。そこには

(つぎのような、ばかにしきったもんごんがかきつけて)

次のような、バカにしきった文言が書きつけて

(あったのです。)

あったのです。

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