『怪人二十面相』江戸川乱歩24

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(「めいたんていあけちこごろう」)

「名探偵明智小五郎」

(ねずみいろのとんびにみをつつんだ、)

ネズミ色のトンビに身をつつんだ、

(こがらなさもんろうじんが、ながいさかみちをちょこちょこと)

小柄な左門老人が、長い坂道をチョコチョコと

(はしらんばかりにして、ふじやりょかんについたのは、)

走らんばかりにして、富士屋旅館に着いたのは、

(もうごごいちじごろでした。「あけちこごろうせんせいは、)

もう午後一時頃でした。「明智小五郎先生は、

(どこにいるか」とたずねると、「うらのたにがわへ)

どこに居るか」とたずねると、「裏の谷川へ

(さかなつりにでかけられました」とのこたえ。そこで、)

魚釣りに出かけられました」との答え。そこで、

(じょちゅうにあんないをたのんで、またてくてくたにがわへ)

女中に案内を頼んで、またテクテク谷川へ

(おりていかなければなりませんでした。)

下りていかなければなりませんでした。

(くまざさなどのしげったあぶないみちをとおって、)

クマザサなどのしげった危ない道を通って、

(ふかいたにまにおりると、うつくしいみずがせせらぎのおとを)

深い谷間に下りると、美しい水がせせらぎの音を

(たててながれていました。ながれのところどころに、とびいし)

たてて流れていました。 流れの所々に、飛び石

(のように、おおきないわがあたまをだしています。そのいちばん)

のように、大きな岩が頭を出しています。その一番

(おおきくてたいらないわのうえに、きものすがたのひとりのおとこが)

大きくて平らな岩の上に、着物姿の一人の男が

(せをまるくして、たれたつりざおのさきをじっと)

背を丸くして、垂れた釣り竿の先をジッと

(みつめています。「あのかたが、あけちせんせいで)

見つめています。「あの方が、明智先生で

(ございます」じょちゅうがさきにたって、いわのうえを)

ございます」 女中が先に立って、岩の上を

(ぴょいぴょいととびながら、そのおとこのそばへ)

ピョイピョイと跳びながら、その男のそばへ

(ちかづいていきました。「せんせい、あの、このおかたが、)

近づいていきました。「先生、あの、このお方が、

(せんせいにおめにかかりたいといって、わざわざえんぽうから)

先生にお目にかかりたいと言って、わざわざ遠方から

など

(おいでなさいましたのですが」そのこえに)

おいでなさいましたのですが」その声に

(きものすがたのおとこは、うるさそうにこちらをふりむいて、)

着物姿の男は、うるさそうにこちらを振り向いて、

(「おおきなこえをしちゃいけない。さかながにげてしまう)

「大きな声をしちゃいけない。魚が逃げてしまう

(じゃないか」と、しかりつけました。)

じゃないか」と、しかりつけました。

(もじゃもじゃにみだれたとうはつ、するどいめ、)

モジャモジャに乱れた頭髪、鋭い目、

(どちらかといえばあおじろくひきしまったかお、たかいはな、)

どちらかといえば青白く引きしまった顔、高い鼻、

(ひげはなくて、きっとちからのこもったくちびる、しゃしんで)

ヒゲは無くて、キッと力のこもった唇、写真で

(みおぼえのあるあけちめいたんていにちがいありません。)

見覚えのある明智名探偵に違いありません。

(「あたしはこういうものですが」さもんろうじんはめいしを)

「あたしはこういう者ですが」 左門老人は名刺を

(さしだしながら、「せんせいにおりいっておねがいがあって)

差し出しながら、「先生に折り入ってお願いがあって

(おたずねしたのですが」と、こしをかがめました。)

おたずねしたのですが」と、腰をかがめました。

(するとあけちたんていは、めいしをうけとることは)

すると明智探偵は、名刺を受け取ることは

(うけとりましたが、よくみもしないで)

受け取りましたが、よく見もしないで

(めんどうくさそうに、「ああ、そうですか。で、)

面倒くさそうに、「ああ、そうですか。で、

(どんなごようですか」といいながら、またつりざおの)

どんなご用ですか」と言いながら、また釣り竿の

(さきへきをとられています。ろうじんはじょちゅうに、さきへかえる)

先へ気をとられています。老人は女中に、先へ帰る

(ようにいいつけて、そのうしろすがたをみおくってから、)

ように言いつけて、その後ろ姿を見送ってから、

(「せんせい、じつはきょう、こんなてがみをうけとった)

「先生、実は今日、こんな手紙を受け取った

(のです」と、ふところからにじゅうめんそうのよこくじょうを)

のです」と、懐から二十面相の予告状を

(とりだして、つりざおばかりみているたんていのかおの)

取り出して、釣り竿ばかり見ている探偵の顔の

(まえへつきだしました。「ああ、またにげられて)

前へ突き出しました。「ああ、また逃げられて

(しまった。こまりますねえ、そんなにつりのじゃまを)

しまった。困りますねえ、そんなに釣りの邪魔を

(なさっちゃ。なに、てがみですか。いったい、その)

なさっちゃ。なに、手紙ですか。一体、その

(てがみが、ぼくにどんなかんけいがあるとおっしゃる)

手紙が、ぼくにどんな関係があるとおっしゃる

(のです」あけちはあくまでぶあいそうです。「せんせいは)

のです」 明智はあくまで不愛想です。「先生は

(にじゅうめんそうとよばれているぞくをごぞんじないのですかな」)

二十面相と呼ばれている賊をご存知ないのですかな」

(さもんろうじんはしょうしょうはらをたてて、するどくいいはなち)

左門老人は少々腹をたてて、鋭く言い放ち

(ました。「ほう、にじゅうめんそうですか。にじゅうめんそうがてがみを)

ました。「ほう、二十面相ですか。二十面相が手紙を

(よこしたとおっしゃるのですか」めいたんていはいっこうに)

寄越したとおっしゃるのですか」名探偵は一向に

(おどろくようすもなく、あいかわらずつりざおのさきを)

驚く様子もなく、相変わらず釣り竿の先を

(みつめているのです。そこでろうじんはしかたなく、)

見つめているのです。 そこで老人は仕方なく、

(かいとうのよこくじょうをじぶんでよみあげ、くさかべけの)

怪盗の予告状を自分で読みあげ、日下部家の

(「おしろ」にどのようなたからがひぞうされているか、)

「お城」にどのような宝が秘蔵されているか、

(くわしくかたりました。「ああ、あなたが、あのきみょうな)

詳しく語りました。「ああ、あなたが、あの奇妙な

(おしろのごしゅじんでしたか」あけちはやっときょうみを)

お城のご主人でしたか」 明智はやっと興味を

(ひかれたらしく、ろうじんのほうへむきなおりました。)

ひかれたらしく、老人のほうへ向きなおりました。

(「はい、そうです。あのめいがるいは、わしのいのちにも)

「はい、そうです。あの名画類は、わしの命にも

(かえがたいたからです。あけちせんせい、どうかこのろうじんを)

かえがたい宝です。明智先生、どうかこの老人を

(たすけてください。おねがいです」「で、ぼくにどうしろと)

助けてください。お願いです」「で、ぼくにどうしろと

(おっしゃるのですか」「すぐに、わたしのじたくまで)

おっしゃるのですか」「すぐに、わたしの自宅まで

(おこしねがいたいのです。そして、わしのたからをまもって)

おこし願いたいのです。そして、わしの宝を守って

(いただきたいのです」「けいさつへ、おとどけに)

いただきたいのです」「警察へ、お届けに

(なりましたか。ぼくなんかにおはなしするよりも、まず)

なりましたか。ぼくなんかにお話するよりも、まず

(けいさつのほごをねがうのがじゅんじょだとおもいますが」「いや、)

警察の保護を願うのが順序だと思いますが」「いや、

(それがですね、こうもうしちゃなんだが、わしは)

それがですね、こう申しちゃなんだが、わしは

(けいさつよりもせんせいをたよりにしているのです。にじゅうめんそうを)

警察よりも先生を頼りにしているのです。二十面相を

(あいてにして、ひけをとらないたんていさんは、)

相手にして、ひけをとらない探偵さんは、

(せんせいのほかにいないということを、わしはしんじて)

先生の他に居ないということを、わしは信じて

(いるのです。それに、ここはちいさいけいさつぶんしょしか)

いるのです。 それに、ここは小さい警察分署しか

(ありませんから。うでききのけいじをよぶにしたって、)

ありませんから。腕利きの刑事を呼ぶにしたって、

(じかんがかかるのです。なにしろにじゅうめんそうは、こんや)

時間がかかるのです。なにしろ二十面相は、今夜

(わしのところをおそうというのですからね。ゆっくりは)

わしの所を襲うというのですからね。ゆっくりは

(しておられません。ちょうどそのひに、せんせいが)

しておられません。 ちょうどその日に、先生が

(このおんせんにきておられるなんて、まったくかみさまの)

この温泉に来ておられるなんて、まったく神さまの

(おひきあわせともうすものです。せんせい、ろうじんのいっしょうの)

おひきあわせと申すものです。先生、老人の一生の

(おねがいです。どうかわしをたすけてください」)

お願いです。どうかわしを助けてください」

(さもんろうじんは、てをあわさんばかりにして、くどくどと)

左門老人は、手をあわさんばかりにして、クドクドと

(くりかえしのべるのです。「それほどおっしゃるなら、)

繰り返し述べるのです。「それほどおっしゃるなら、

(ともかくおひきうけしましょう。にじゅうめんそうは)

ともかくお引き受けしましょう。二十面相は

(ぼくにとってもてきです。はやくあらわれてくれるのを、)

ぼくにとっても敵です。早く現れてくれるのを、

(まちかねていたほどです。では、ごいっしょに)

待ちかねていたほどです。 では、ご一緒に

(まいりましょうか。そのまえに、いちおうはけいさつとも)

参りましょうか。その前に、一応は警察とも

(うちあわせをしておかなければなりません。)

打ち合わせをしておかなければなりません。

(やどへかえってぼくからでんわをかけましょう。そして)

宿へ帰ってぼくから電話をかけましょう。そして

(まんいちのために、に、さんにんけいじのおうえんをたのむことに)

万一のために、二、三人刑事の応援を頼むことに

(しましょう。あなたはひとあしさきへおかえりください。)

しましょう。あなたは一足先へお帰りください。

(ぼくはけいじといっしょに、すぐかけつけます」)

ぼくは刑事と一緒に、すぐ駆けつけます」

(あけちのくちょうは、にわかにねつをおびてきました。)

明智の口調は、にわかに熱をおびてきました。

(もうつりざおなんかみむきもしないのです。)

もう釣り竿なんか見向きもしないのです。

(「ありがとう、ありがとう。これでわしもひゃくまんの)

「ありがとう、ありがとう。これでわしも百万の

(みかたをえたおもいです」ろうじんはむねをなでおろし)

味方を得た思いです」 老人は胸をなでおろし

(ながら、くりかえしおれいをいうのでした。)

ながら、繰り返しお礼を言うのでした。

(「ふあんなひとよ」)

「不安な一夜」

(くさかべさもんろうじんが、しゅうぜんじでやとったじどうしゃをとばして、)

日下部左門老人が、修善寺で雇った自動車をとばして、

(たにぐちむらの「おしろ」へかえってから、さんじゅっぷんほどして)

谷口村の「お城」へ帰ってから、三十分ほどして

(あけちこごろうのいっこうがとうちゃくしました。)

明智小五郎の一行が到着しました。

(いっこうは、ぴったりとみにあうくろのようふくにきがえた)

一行は、ピッタリと身にあう黒の洋服に着替えた

(あけちたんていのほかに、せびろふくのくっきょうなしんしがさんにん、)

明智探偵の他に、背広服の屈強な紳士が三人、

(みなけいさつぶんしょづとめのけいじで、それぞれかたがきつきの)

みな警察分署勤めの刑事で、それぞれ肩書きつきの

(めいしをだして、さもんろうじんとあいさつをかわしました。)

名刺を出して、左門老人とあいさつをかわしました。

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