『怪人二十面相』江戸川乱歩25

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(ろうじんはすぐさま、よにんをおくまっためいがのへやへ)

老人はすぐさま、四人を奥まった名画の部屋へ

(あんないして、かべにかけならべたかけじくや、はこにおさめて)

案内して、壁に掛け並べた掛け軸や、箱に収めて

(たなにつみかさねてある、おびただしいこくほうてきけっさくを)

棚に積み重ねてある、おびただしい国宝的傑作を

(しめし、いちいちそのゆいしょをせつめいするのでした。)

しめし、いちいちその由緒を説明するのでした。

(「こりゃあどうも、じつにおどろくべきごしゅうしゅうです)

「こりゃあどうも、実に驚くべきご収集です

(ねえ。ぼくもふるいかいがはだいすきで、ひまがあると、)

ねえ。ぼくも古い絵画は大好きで、暇があると、

(はくぶつかんやじいんのたからなどをみてまわるのですが、)

博物館や寺院の宝などを見てまわるのですが、

(れきしてきなけっさくが、こんなにいっしつにあつまっているのを)

歴史的な傑作が、こんなに一室に集まっているのを

(みたことがありませんよ。びじゅつずきのにじゅうめんそうが)

見たことがありませんよ。 美術好きの二十面相が

(めをつけたのは、むりもありませんね。ぼくでも)

目をつけたのは、無理もありませんね。ぼくでも

(よだれがたれるようですよ」あけちたんていは、)

ヨダレが垂れるようですよ」 明智探偵は、

(かんたんにたえないように、ひとつひとつのめいがについて、)

感嘆にたえないように、一つ一つの名画について、

(さんじをならべるのでしたが、そのひひょうのことばが、)

賛辞を並べるのでしたが、その批評の言葉が、

(そのみちのせんもんかもおよばぬほどくわしいのには、)

その道の専門家も及ばぬほど詳しいのには、

(さすがのさもんろうじんもびっくりしてしまいました。)

さすがの左門老人もビックリしてしまいました。

(そして、めいたんていへのそんけいのねんが、いっそうふかくなる)

そして、名探偵への尊敬の念が、一層深くなる

(のでした。さて、すこしはやめにいちどうがゆうしょくを)

のでした。 さて、少し早めに一同が夕食を

(すませると、いよいよめいがしゅごのぶしょにつくことに)

済ませると、いよいよ名画守護の部署につくことに

(なりました。あけちはてきぱきしたくちょうで、)

なりました。明智はテキパキした口調で、

(さんにんのけいじにさしずをして、ひとりはめいがしつのなかへ、)

三人の刑事に指図をして、一人は名画室の中へ、

など

(ひとりはおもてもん、ひとりはうらぐちに、それぞれてつやをして、)

一人は表門、一人は裏口に、それぞれ徹夜をして、

(みはりばんをつとめ、あやしいもののすがたを)

見張り番を務め、怪しい者の姿を

(みとめたら、ただちにふえをふきならすというあいずまで)

認めたら、直ちに笛を吹き鳴らすという合図まで

(きめたのです。けいじたちがおのおののぶしょに)

決めたのです。 刑事たちが各々の部署に

(つくと、あけちたんていはめいがしつのがんじょうなどあを、)

つくと、明智探偵は名画室の頑丈なドアを、

(そとからぴっしゃりしめて、ろうじんにかぎをかけさせて)

外からピッシャリ閉めて、老人にカギをかけさせて

(しまいました。「ぼくは、このとのまえに、ひとばんじゅう)

しまいました。「ぼくは、この戸の前に、一晩中

(がんばっていることにしましょう」めいたんていは)

頑張っていることにしましょう」 名探偵は

(そういって、どあのまえのたたみろうかに、どっかりすわり)

そう言って、ドアの前の畳廊下に、ドッカリ座り

(ました。「せんせい、だいじょうぶでしょうな。せんせいに)

ました。「先生、大丈夫でしょうな。先生に

(こんなことをもうしては、しつれいかもしれませんが、)

こんなことを申しては、失礼かもしれませんが、

(あいてはなにしろ、まほうつかいみたいなやつだそう)

相手は何しろ、魔法使いみたいな奴だそう

(ですからね。わしはなんだか、まだふあんなような)

ですからね。わしは何だか、まだ不安なような

(きがするのですが」ろうじんはあけちのかおいろをみながら、)

気がするのですが」 老人は明智の顔色を見ながら、

(いいにくそうにたずねるのです。「ははは、)

言いにくそうにたずねるのです。「ハハハ、

(ごしんぱいなさることはありません。ぼくはさっき、)

ご心配なさることはありません。ぼくはさっき、

(じゅうぶんしらべたのですが、へやのまどにはげんじゅうな)

充分調べたのですが、部屋の窓には厳重な

(てつごうしがはめてあるし、かべはあつさがさんじゅっせんちも)

鉄格子がはめてあるし、壁は厚さが三十センチも

(あって、ちょっとやそっとでやぶれるものでは)

あって、ちょっとやそっとで破れる物では

(ないし、へやのまんなかにはけいじがめをみはって)

ないし、部屋の真ん中には刑事が目を見張って

(いるんだし、そのうえ、たったひとつのでいりぐちには、)

いるんだし、その上、たった一つの出入り口には、

(ぼくじしんががんばっているんですからね。これいじょう、)

ぼく自身が頑張っているんですからね。これ以上、

(ようじんのしようはないくらいですよ。あなたは)

用心のしようはないくらいですよ。 あなたは

(あんしんして、おやすみなさったほうがいいでしょう。)

安心して、おやすみなさったほうがいいでしょう。

(ここにおいでになっても、おなじことですからね」)

ここにおいでになっても、同じことですからね」

(あけちがすすめても、ろうじんはなかなかしょうちしません。)

明智がすすめても、老人はなかなか承知しません。

(「いや、わしもここでてつやすることにしましょう。)

「いや、わしもここで徹夜することにしましょう。

(ねどこへはいったって、ねむられるものでは)

寝床へ入ったって、ねむられるものでは

(ありませんからね」そういって、たんていのかたわらへ)

ありませんからね」 そう言って、探偵のかたわらへ

(すわりこんでしまいました。「なるほど。では、)

座りこんでしまいました。「なるほど。では、

(そうなさるほうがいいでしょう。ぼくもはなしあいてが)

そうなさるほうがいいでしょう。ぼくも話し相手が

(できてこうつごうです。かいがろんでもたたかわしましょうかね」)

出来て好都合です。絵画論でも戦わしましょうかね」

(さすがひゃくせんれんまのめいたんてい、にくらしいほどおちつき)

さすが百戦錬磨の名探偵、憎らしいほど落ちつき

(はらっています。それからふたりはらくなしせいに)

払っています。 それから二人は楽な姿勢に

(なって、ぽつぽつめいがのはなしをはじめたのですが、)

なって、ポツポツ名画の話を始めたのですが、

(しゃべるのはあけちばかりで、ろうじんはそわそわと)

しゃべるのは明智ばかりで、老人はソワソワと

(おちつきがなく、ろくなうけこたえもできない)

落ちつきがなく、ろくな受け答えも出来ない

(ありさまです。さもんろうじんには、いちねんもたったかと)

有り様です。 左門老人には、一年も経ったかと

(おもわれるほど、ながいながいじかんのあとで、やっと)

思われるほど、長い長い時間のあとで、やっと

(じゅうにじがきました。まよなかです。あけちはときどき、)

十二時がきました。真夜中です。 明智は時々、

(どあごしに、しつないのけいじにこえをかけていましたが、)

ドア越しに、室内の刑事に声をかけていましたが、

(そのつど、なかからはっきりしたくちょうで、)

その都度、中からハッキリした口調で、

(いじょうはないというへんじがきこえてきました。)

異状はないという返事が聞こえてきました。

(「あーあ、ぼくはすこしねむくなってきた」)

「あーあ、ぼくは少し眠くなってきた」

(あけちはあくびをして、「にじゅうめんそうのやつ、こんやは)

明智はあくびをして、「二十面相の奴、今夜は

(やってこないかもしれませんよ。こんなげんじゅうな)

やって来ないかもしれませんよ。こんな厳重な

(けいかいのなかへとびこんでくる、ばかでもないでしょう)

警戒の中へとびこんでくる、バカでもないでしょう

(からね。ごろうじん、いかがです。ねむけざましにいっぽん。)

からね。ご老人、いかがです。眠気覚ましに一本。

(がいこくでは、こんなぜいたくなやつをすぱすぱ)

外国では、こんなぜいたくなやつをスパスパ

(やっているんですよ」と、たばこいれをぱちんと)

やっているんですよ」と、タバコ入れをパチンと

(ひらいて、じぶんもいっぽんつまんで、ろうじんのまえにさしだす)

ひらいて、自分も一本つまんで、老人の前に差し出す

(のでした。「そうでしょうかね。こんやはこないで)

のでした。「そうでしょうかね。今夜は来ないで

(しょうかね」さもんろうじんはさしだされたえじぷと)

しょうかね」 左門老人は差し出されたエジプト

(たばこをとりながら、まだふあんらしくいうのです。)

タバコを取りながら、まだ不安らしく言うのです。

(「いや、ごあんしんなさい。あいつは、けっしてばか)

「いや、ご安心なさい。あいつは、決してバカ

(じゃありません。ぼくが、ここにがんばっていると)

じゃありません。ぼくが、ここに頑張っていると

(しったら、まさかのこのこやってくるはずは)

知ったら、まさかノコノコやって来るはずは

(ありませんよ」それからしばらくことばがとだえて、)

ありませんよ」 それからしばらく言葉が途絶えて、

(ふたりはかくじのかんがえごとをしながら、おいしそうに)

二人は各自の考え事をしながら、おいしそうに

(たばこをすっていましたが、それがすっかりはいに)

タバコを吸っていましたが、それがすっかり灰に

(なったころ、あけちはまたあくびをして、「ぼくはすこし)

なった頃、明智はまたあくびをして、「ぼくは少し

(ねむりますよ。あなたもおやすみなさい。なあに、)

眠りますよ。あなたもおやすみなさい。なあに、

(だいじょうぶです。ぶしは、うまのくちにつけるかなぐの)

大丈夫です。武士は、馬の口につける金具の

(ちいさなおとにもめをさますっていいますが、)

小さな音にも目を覚ますって言いますが、

(ぼくはしょくぎょうがら、どんなしのびあしのおとでも)

ぼくは職業柄、どんな忍び足の音でも

(めをさますのです。こころまでねむりはしないのですよ」)

目を覚ますのです。心まで眠りはしないのですよ」

(そんなことをいったかとおもうと、どあのまえにながながと)

そんなことを言ったかと思うと、ドアの前に長々と

(よこになって、めをふさいでいました。)

横になって、目をふさいでいました。

(そしてまもなく、すやすやとおだやかなねいきが)

そして間もなく、スヤスヤと穏やかな寝息が

(きこえはじめたのです。あまりにもなれきった)

聞こえ始めたのです。 あまりにも馴れきった

(たんていのしぐさに、ろうじんはきがきではありません。)

探偵の仕草に、老人は気が気ではありません。

(ねむるどころか、ますますみみをそばだてて、)

眠るどころか、ますます耳をそばだてて、

(どんなかすかなものおともききもらすまいと、)

どんなかすかな物音も聞き漏らすまいと、

(いっしょうけんめいでした。なにかみょうなおとがきこえてくる)

一生懸命でした。 何かみょうな音が聞こえてくる

(ようなきがします。みみなりかしら、それともちかくの)

ような気がします。耳鳴りかしら、それとも近くの

(もりのこずえにあたるかぜのおとかしら。)

森のこずえにあたる風の音かしら。

(そうしてみみをすましていると、しんしんとよるが)

そうして耳をすましていると、シンシンと夜が

(ふけていくのが、はっきりわかるようです。)

ふけていくのが、ハッキリ分かるようです。

(あたまのなかがだんだんからっぽになって、めのまえが)

頭の中が段々空っぽになって、目の前が

(もやのようにかすんでいきます。)

モヤのようにかすんでいきます。

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