『怪人二十面相』江戸川乱歩44

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(きんいろのひもがついた、いかめしいせいふくにつつまれた、)

金色のヒモが付いた、いかめしい制服に包まれた、

(すもうとりのようにりっぱなたいかくのけいしそうかん、)

相撲取りのように立派な体格の警視総監、

(ちゅうにくちゅうぜいで、はちじひげのうつくしいけいじぶちょう、)

中肉中背で、八字ヒゲの美しい刑事部長、

(せびろすがたでつるのようにやせたはくはつしろひげのきたこうじはかせ、)

背広姿でツルのように痩せた白髪白ヒゲの北小路博士、

(そのさんにんがそれぞれあんらくいすにこしかけて、)

その三人がそれぞれ安楽イスに腰掛けて、

(ちらちらとけいのはりをながめているようすは、)

チラチラ時計の針をながめている様子は、

(ものものしいというよりはなにかしらきみょうで、)

物々しいというよりは何かしら奇妙で、

(ばしょにそぐわぬこうけいでした。そうしてじゅっすうふんが)

場所にそぐわぬ光景でした。そうして十数分が

(けいかしたとき、ちんもくにたえかねたけいじぶちょうが)

経過した時、沈黙にたえかねた刑事部長が

(とつぜん、くちをきりました。「ああ、あけちくんは、いったい)

突然、口をきりました。「ああ、明智君は、一体

(どうしているんでしょうね。わたしは、あのおとことは)

どうしているんでしょうね。私は、あの男とは

(したしくしていたんですが、どうもふしぎですよ。)

親しくしていたんですが、どうも不思議ですよ。

(いままでのけいけんからかんがえても、こんなしっさくをやるおとこ)

今までの経験から考えても、こんな失策をやる男

(ではないのですがね」そのことばに、そうかんは)

ではないのですがね」 その言葉に、総監は

(ふとったからだをねじまげるようにして、ぶかのかおを)

太った体をねじ曲げるようにして、部下の顔を

(みました。「きみたちはあけちあけちと、まるで)

見ました。「きみたちは明智明智と、まるで

(あのおとこをすうはいでもしているようなことをいうが、)

あの男を崇拝でもしているようなことを言うが、

(ぼくはふさんせいだね。いくらえらいといっても、)

ぼくは不賛成だね。いくら偉いといっても、

(たかがいちみんかんたんていじゃないか。どれほどのことが)

たかが一民間探偵じゃないか。どれほどのことが

(できるものか。ひとりのちからでにじゅうめんそうをつかまえてみせる)

出来るものか。一人の力で二十面相を捕まえてみせる

など

(などといっていたそうだが、むせきにんがすぎるよ。)

などと言っていたそうだが、無責任がすぎるよ。

(こんどのしっぱいは、あのおとこにはよいくすりじゃろう」)

今度の失敗は、あの男には良い薬じゃろう」

(「ですが、あけちくんのこれまでのこうせきをかんがえると、)

「ですが、明智君のこれまでの功績を考えると、

(いちがいにいいきれないのです。いまもそとで)

一概に言いきれないのです。今も外で

(なかむらくんとはなしたことですが、こんなさい、あのおとこが)

中村君と話したことですが、こんな際、あの男が

(いてくれたらとおもいますよ」けいじぶちょうのことばが)

居てくれたらと思いますよ」 刑事部長の言葉が

(おわるかおわらないかのときでした。かんちょうしつの)

終わるか終わらないかの時でした。館長室の

(どあがしずかにひらかれて、ひとりのじんぶつがあらわれ)

ドアが静かにひらかれて、一人の人物が現れ

(ました。「あけちは、ここにおります」そのじんぶつが)

ました。「明智は、ここにおります」 その人物が

(にこにこわらいながら、よくとおるこえでいったのです。)

ニコニコ笑いながら、よく通る声で言ったのです。

(「おお、あけちくん」けいじぶちょうがいすからとびあがって)

「おお、明智君」 刑事部長がイスから飛び上がって

(さけびました。それは、かっこうのよいくろのせびろを)

叫びました。 それは、かっこうのよい黒の背広を

(ぴったりとみにつけ、あたまのけをもじゃもじゃにした、)

ピッタリと身につけ、頭の毛をモジャモジャにした、

(いつもどおりのあけちこごろう、そのひとでした。)

いつも通りの明智小五郎、その人でした。

(「あけちくん、きみがどうして」「それはあとでおはなし)

「明智君、きみがどうして」「それはあとでお話し

(します。いまは、もっとたいせつなことがあるのです」)

します。今は、もっと大切なことがあるのです」

(「むろん、びじゅつひんのとうなんはふせがなくてはならんが」)

「無論、美術品の盗難は防がなくてはならんが」

(「いや、それはもうおそいのです。ごらんなさい。)

「いや、それはもう遅いのです。ご覧なさい。

(やくそくのじかんはすぎました」あけちのことばに、かんちょうも)

約束の時間は過ぎました」 明智の言葉に、館長も

(そうかんも、けいじぶちょうもいっせいにかべのでんきどけいをみあげ)

総監も、刑事部長も一斉に壁の電気時計を見上げ

(ました。いかにもちょうしんは、もうじゅうにじのところを)

ました。いかにも長針は、もう十二時のところを

(すぎているのです。「おやおや、するとにじゅうめんそうは)

過ぎているのです。「おやおや、すると二十面相は

(うそをついたのかな。かんないには、べつにいじょうも)

ウソをついたのかな。館内には、別に異常も

(ないようだが」「ああ、そうです。やくそくのよじは)

ないようだが」「ああ、そうです。約束の四時は

(すぎたのです。あいつ、やっぱりてだしが)

過ぎたのです。あいつ、やっぱり手出しが

(できなかったのです」けいじぶちょうががいかをあげるように)

出来なかったのです」刑事部長が凱歌をあげるように

(さけびました。「いや、ぞくはやくそくをまもりました。)

叫びました。「いや、賊は約束を守りました。

(このはくぶつかんは、もうからっぽもどうぜんです」あけちが)

この博物館は、もう空っぽも同然です」 明智が

(おもおもしいくちょうでいいました。)

重々しい口調で言いました。

(「めいたんていのろうぜき」)

「名探偵のろうぜき」

(「え、え、きみはなにをいっているんだ。)

「え、え、きみは何を言っているんだ。

(なにもぬすまれてなんか、いやしないじゃないか。)

何も盗まれてなんか、いやしないじゃないか。

(ぼくは、ついいましがた、このめでちんれつしつをずっと)

ぼくは、つい今しがた、この目で陳列室をずっと

(みまわってきたばかりなんだぜ。それに、はくぶつかんの)

見まわってきたばかりなんだぜ。それに、博物館の

(まわりにはごじゅうにんのけいかんがはいちしてあるんだ。)

周りには五十人の警官が配置してあるんだ。

(ぼくのところのけいかんたちはもうもくじゃないんだからね」)

ぼくのところの警官たちは盲目じゃないんだからね」

(けいしそうかんはあけちをにらみつけて、はらだたしげに)

警視総監は明智をにらみつけて、腹立たしげに

(どなりました。「ところが、すっかりぬすみだされて)

どなりました。「ところが、すっかり盗み出されて

(いるのです。にじゅうめんそうはれいによって、まほうを)

いるのです。二十面相は例によって、魔法を

(つかいました。なんでしたら、ごいっしょにしらべてみよう)

使いました。なんでしたら、ご一緒に調べてみよう

(ではありませんか」あけちはしずかにこたえました。)

ではありませんか」 明智は静かに答えました。

(「ふーん、きみはたしかにぬすまれたというんだね。)

「ふーん、きみは確かに盗まれたと言うんだね。

(よし、それじゃ、みんなでしらべてみよう。かんちょう、)

よし、それじゃ、みんなで調べてみよう。館長、

(このおとこのいうのがほんとうかどうか、ともかくちんれつしつへ)

この男の言うのが本当かどうか、ともかく陳列室へ

(いってみようじゃありませんか」まさかあけちが)

行ってみようじゃありませんか」 まさか明智が

(うそをいっているともおもえませんので、そうかんもいちど)

ウソを言っているとも思えませんので、総監も一度

(しらべてみるきになったのです。「それがいい)

調べてみる気になったのです。「それがいい

(でしょう。さあ、きたこうじせんせいもごいっしょに)

でしょう。さあ、北小路先生もご一緒に

(まいりましょう」あけちははくはつしろひげのろうかんちょうに)

参りましょう」 明智は白髪白ヒゲの老館長に

(にっこりほほえみかけながら、うながしました。)

ニッコリ微笑みかけながら、うながしました。

(そこでよにんはつれだってかんちょうしつをでると、)

そこで四人は連れ立って館長室を出ると、

(ろうかづたいにほんかんのちんれつじょうのほうへはいって)

廊下づたいに本館の陳列場のほうへ入って

(いきましたが、あけちはきたこうじかんちょうのろうたいを)

行きましたが、明智は北小路館長の老体を

(いたわるようにそのてをとって、せんとうにたつ)

いたわるようにその手を取って、先頭に立つ

(のでした。「あけちくん、きみはゆめでもみたんじゃないか。)

のでした。「明智君、君は夢でも見たんじゃないか。

(どこにもいじょうはないじゃないか」ちんれつじょうにはいるや)

どこにも異常はないじゃないか」 陳列場に入るや

(いなや、けいじぶちょうがさけびました。いかにもぶちょうの)

いなや、刑事部長が叫びました。 いかにも部長の

(いうとおり、がらすばりのちんれつだなのなかには)

言う通り、ガラス張りの陳列棚の中には

(こくほうのぶつぞうがずらっとならんでいて、べつになくなった)

国宝の仏像がズラッと並んでいて、別に無くなった

(しなもないようすです。「これですか」あけちは)

品もない様子です。「これですか」 明智は

(そのぶつぞうのちんれつだなをゆびさして、いみありげにぶちょうの)

その仏像の陳列棚を指さして、意味ありげに部長の

(かおをみかえしながら、そこにたっていたしゅえいにこえを)

顔を見返しながら、そこに立っていた守衛に声を

(かけました。「このがらすどをひらいてくれたまえ」)

かけました。「このガラス戸をひらいてくれたまえ」

(しゅえいは、あけちこごろうをみしりませんでしたが、)

守衛は、明智小五郎を見知りませんでしたが、

(かんちょうやけいしそうかんといっしょなものですからめいれいに)

館長や警視総監と一緒なものですから命令に

(おうじて、すぐさまもっていたかぎで、おおきな)

応じて、すぐさま持っていたカギで、大きな

(がらすどをがらがらとひらきました。すると)

ガラス戸をガラガラとひらきました。 すると

(そのつぎのしゅんかん、じつにいようなことがおこったのです。)

その次の瞬間、実に異様なことが起こったのです。

(ああ、あけちたんていはきでもくるったのでしょうか。)

ああ、明智探偵は気でも狂ったのでしょうか。

(かれは、ひろいちんれつだなのなかへはいっていったかとおもうと、)

彼は、広い陳列棚の中へ入って行ったかと思うと、

(なかでもいちばんおおきいきぼりのこだいぶつぞうにちかづき、)

中でも一番大きい木彫りの古代仏像に近付き、

(いきなり、そのかっこうのよいうでをぽきんと)

いきなり、そのかっこうのよい腕をポキンと

(おってしまったではありませんか。しかも)

折ってしまったではありませんか。 しかも

(そのすばやいこと、さんにんのひとたちがあっけにとられ、)

その素早いこと、三人の人たちが呆気にとられ、

(とめるのもわすれて、めをみはっているあいだに、)

止めるのも忘れて、目を見張っている間に、

(おなじちんれつだなの、どれもこれもこくほうばかりのいつつの)

同じ陳列棚の、どれもこれも国宝ばかりの五つの

(ぶつぞうをつぎからつぎへと、たちまちのうちに)

仏像を次から次へと、たちまちのうちに

(かたっぱしからとりかえしのつかない)

片っぱしから取り返しのつかない

(きずものにしてしまいました。)

傷モノにしてしまいました。

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