『怪人二十面相』江戸川乱歩48
○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文
(「にじゅうめんそうのかくれがであいました。そうかんかっか、)
「二十面相の隠れ家で会いました。総監閣下、
(あなたは、ぼくがにじゅうめんそうにゆうかいされたことを)
あなたは、ぼくが二十面相に誘拐されたことを
(ごぞんじでしょう。ぼくのかていやせけんでもそうかんがえ、)
ご存知でしょう。ぼくの家庭や世間でもそう考え、
(しんぶんもそうかいておりました。しかし、あれは)
新聞もそう書いておりました。しかしあれは、
(ぼくのけいりゃくにすぎなかったのです。)
ぼくの計略にすぎなかったのです。
(ぼくはゆうかいなんかされませんでした。)
ぼくは誘拐なんかされませんでした。
(かえってぞくのみかたになって、あるじんぶつのゆうかいを)
かえって賊の味方になって、ある人物の誘拐を
(てつだってやったほどです。さくねんのことですが、)
手伝ってやったほどです。 昨年のことですが、
(あるひ、ひとりのふしぎなでしいりしがんしゃがほうもんして)
ある日、一人の不思議な弟子入り志願者が訪問して
(きました。ぼくはそのおとこをみて、ひじょうにおどろきました。)
きました。ぼくはその男を見て、非常に驚きました。
(めのまえにおおきなかがみがたったのではないかと、あやしんだ)
目の前に大きな鏡が立ったのではないかと、怪しんだ
(ほどです。なぜかともうすと、そのでしいり)
ほどです。なぜかと申すと、その弟子入り
(しがんしゃはせかっこうやかおつき、あたまのけのちぢれかた)
志願者は背かっこうや顔つき、頭の毛の縮れ方
(まで、このぼくとすんぶんちがわないくらいよくにていた)
まで、このぼくと寸分ちがわないくらい良く似ていた
(からです。つまり、そのおとこはぼくのかげむしゃとして、)
からです。つまり、その男はぼくの影武者として、
(なにかのばあいにぼくのかえだまとして、やとってほしい)
何かの場合にぼくの替え玉として、雇ってほしい
(というのです。ぼくはだれにもしらせず、)
と言うのです。 ぼくはだれにも知らせず、
(そのおとこをやといいれて、あるところへすまわせて)
その男を雇い入れて、ある所へ住まわせて
(おきましたが、それがやくにたったのです。)
おきましたが、それが役にたったのです。
(ぼくはあのひがいしゅつして、そのおとこのかくれがへいき、)
ぼくはあの日外出して、その男の隠れ家へ行き、
(すっかりふくそうをとりかえて、ぼくになりすました)
すっかり服装を取り替えて、ぼくになりすました
(そのおとこをさきにぼくのじむしょへかえらせ、しばらくして)
その男を先にぼくの事務所へ帰らせ、しばらくして
(から、ぼくじしんはふろうにんのあかいとらぞうというものに)
から、ぼく自身は浮浪人の赤井寅三という者に
(ばけてあけちじむしょをたずね、げんかんのところで)
化けて明智事務所をたずね、玄関の所で
(じぶんのかえだまとちょっとかくとうをしてみせたのです。)
自分の替え玉とちょっと格闘をして見せたのです。
(ぞくのぶかがそのようすをみて、すっかりぼくをしんよう)
賊の部下がその様子を見て、すっかりぼくを信用
(しました。そして、それほどあけちにうらみがあるなら、)
しました。そして、それほど明智に恨みがあるなら、
(にじゅうめんそうのぶかになれとすすめてくれたのです。)
二十面相の部下になれとすすめてくれたのです。
(そういうわけでぼくは、ぼくのかえだまをゆうかいする)
そういう訳でぼくは、ぼくの替え玉を誘拐する
(おてつだいをしたうえ、とうとうぞくのそうくつにはいることが)
お手伝いをした上、とうとう賊の巣窟に入ることが
(できました。しかしにじゅうめんそうのやつは、なかなか)
出来ました。 しかし二十面相の奴は、なかなか
(ゆだんがなくて、なかまいりをしたそのひから、)
油断がなくて、仲間入りをしたその日から、
(ぼくをいえのなかのしごとばかりにつかい、いっぽもそとへだして)
ぼくを家の中の仕事ばかりに使い、一歩も外へ出して
(くれませんでした。むろん、はくぶつかんのびじゅつひんを)
くれませんでした。無論、博物館の美術品を
(ぬすみだすしゅだんなど、ぼくにはすこしもうちあけて)
盗み出す手段など、ぼくには少しも打ち明けて
(くれなかったのです。そしてとうとう、)
くれなかったのです。 そしてとうとう、
(きょうになってしまいました。ぼくはあるけっしんをして、)
今日になってしまいました。ぼくはある決心をして、
(ごごになるのをまちかまえていました。すると)
午後になるのを待ち構えていました。すると
(ごごにじごろ、ぞくのかくれがのちかしつのいりぐちがあいて、)
午後二時頃、賊の隠れ家の地下室の入り口があいて、
(さぎょういんのふくそうをした、たくさんのぶかがてにきちょうな)
作業員の服装をした、たくさんの部下が手に貴重な
(びじゅつひんをかかえてどかどかとおりてきました。)
美術品を抱えてドカドカと下りて来ました。
(むろん、はくぶつかんのとうなんひんです。ぼくはちかしつに)
無論、博物館の盗難品です。 ぼくは地下室に
(るすばんしているあいだに、さけ、さかなのよういをして)
留守番している間に、酒、さかなの用意をして
(おきました。そしてかえってきたぶかと、ぼくといっしょに)
おきました。そして帰ってきた部下と、ぼくと一緒に
(のこっていたぶかの、ぜんいんにしゅくはいをすすめました。)
残っていた部下の、全員に祝杯をすすめました。
(そこでぶかたちは、だいじぎょうがせいこうしたうれしさに、)
そこで部下たちは、大事業が成功した嬉しさに、
(むちゅうになってさかもりをはじめたのですが、やがて)
夢中になって酒盛りを始めたのですが、やがて
(さんじゅっぷんほどもすると、ひとりたおれ、ふたりたおれ、)
三十分ほどもすると、一人倒れ、二人倒れ、
(ついにはのこらずきをうしなってたおれてしまいました。)
ついには残らず気を失って倒れてしまいました。
(なぜかとおっしゃるのですか。わかっているでは)
なぜかとおっしゃるのですか。分かっているでは
(ありませんか。ぼくはぞくのやくひんしつからますいざいを)
ありませんか。ぼくは賊の薬品室から麻酔剤を
(とりだして、あらかじめそのさけのなかへまぜておいた)
取り出して、あらかじめその酒の中へ混ぜておいた
(のです。それから、ぼくはそこをぬけだして、)
のです。 それから、ぼくはそこを脱け出して、
(ふきんのけいさつしょへかけつけ、じじょうをはなして、にじゅうめんそうの)
付近の警察署へ駆けつけ、事情を話して、二十面相の
(ぶかのたいほとちかしつにかくしてあるぜんぶのとうなんひんの)
部下の逮捕と地下室に隠してある全部の盗難品の
(ほかんをおねがいしました。およろこびください。とうなんひんは)
保管をお願いしました。 お喜びください。盗難品は
(かんぜんにとりもどすことができました。こくりつはくぶつかんの)
完全に取り戻すことが出来ました。国立博物館の
(びじゅつひんも、あのきのどくなくさかべろうじんのびじゅつじょうのたからも、)
美術品も、あの気の毒な日下部老人の美術城の宝も、
(そのほか、にじゅうめんそうがいままでにぬすみためた)
そのほか、二十面相が今までに盗み溜めた
(すべてのしなものは、すっかりもとのしょゆうしゃへかえります」)
全ての品物は、すっかり元の所有者へ返ります」
(あけちのながいせつめいを、ひとびとはよったようにききほれて)
明智の長い説明を、人々は酔ったように聞きほれて
(いました。ああ、めいたんていはそのなにそむきません)
いました。ああ、名探偵はその名にそむきません
(でした。かれはひとびとのまえにせんげんしたとおり、たった)
でした。彼は人々の前に宣言した通り、たった
(ひとりのちからでぞくのそうくつをつきとめ、すべてのとうなんひんを)
一人の力で賊の巣窟を突き止め、すべての盗難品を
(とりかえし、あまたのあくにんをつかまえたのです。)
取り返し、あまたの悪人を捕まえたのです。
(「あけちくん、よくやった。わしはこれまですこし、きみを)
「明智君、よくやった。わしはこれまで少し、きみを
(みあやまっていたようだ。わしからあつくおれいをもうします」)
見誤っていたようだ。わしから厚くお礼を申します」
(けいしそうかんはいきなりめいたんていのそばへよって、)
警視総監はいきなり名探偵のそばへ寄って、
(そのひだりてをにぎりました。なぜひだりてをにぎったので)
その左手を握りました。 なぜ左手を握ったので
(しょう。それはあけちのみぎてがふさがっていたから)
しょう。それは明智の右手がふさがっていたから
(です。そのみぎては、いまだにろうはくぶつかんちょうのてと、)
です。その右手は、いまだに老博物館長の手と、
(しっかりにぎりあわされていたからです。)
しっかり握り合わされていたからです。
(みょうですね。あけちは、どうしてそんなにろうはかせの)
みょうですね。明智は、どうしてそんなに老博士の
(てばかりにぎっているのでしょう。「で、にじゅうめんそうの)
手ばかり握っているのでしょう。「で、二十面相の
(やつも、そのますいやくをのんだのかね。きみはさきほどから)
奴も、その麻酔薬を飲んだのかね。きみは先程から
(ぶかのことばかりいって、いちどもにじゅうめんそうのなを)
部下のことばかり言って、一度も二十面相の名を
(ださなかったが、まさかしゅりょうをとりにがしたのでは)
出さなかったが、まさか首領を取りにがしたのでは
(あるまいね」なかむらそうさかかりちょうが、ふとそれにきづいて、)
あるまいね」 中村捜査係長が、ふとそれに気づいて、
(しんぱいらしくたずねました。「いや、にじゅうめんそうは)
心配らしくたずねました。「いや、二十面相は
(ちかしつへはかえってこなかったよ。しかしぼくは、)
地下室へは帰ってこなかったよ。しかしぼくは、
(あいつもちゃんとつかまえている」)
あいつもちゃんと捕まえている」
(あけちは、にこにことひとをひきつけるわらいがおで)
明智は、ニコニコと人をひきつける笑い顔で
(こたえました。「どこにいるんだ。いったいどこで)
答えました。「どこに居るんだ。一体どこで
(つかまえたんだ」なかむらけいぶがおちつきなくたずね)
捕まえたんだ」 中村警部が落ち着きなくたずね
(ました。ほかのひとたちもそうかんをはじめ、じっと)
ました。他の人たちも総監を始め、ジッと
(めいたんていのかおをみつめて、へんじをまちかまえています。)
名探偵の顔を見つめて、返事を待ち構えています。
(「ここでつかまえたのさ」あけちはおちつきはらって)
「ここで捕まえたのさ」 明智は落ち着き払って
(こたえました。「ここでだと。じゃあ、いまはどこに)
答えました。「ここでだと。じゃあ、今はどこに
(いるんだ」「ここにいるよ」ああ、あけちはなにを)
居るんだ」「ここに居るよ」 ああ、明智は何を
(いおうとしているのでしょう。「ぼくはにじゅうめんそうの)
言おうとしているのでしょう。「ぼくは二十面相の
(ことをいっているんだぜ」けいぶがけげんなかおで)
ことを言っているんだぜ」 警部が怪訝な顔で
(ききかえしました。「ぼくもにじゅうめんそうのことを)
聞き返しました。「ぼくも二十面相のことを
(いっているのさ」あけちがおうむがえしにこたえました。)
言っているのさ」 明智がオウム返しに答えました。
(「なぞみたいないいかたはよしたまえ。ここには、)
「ナゾみたいな言いかたはよしたまえ。ここには、
(われわれのしっているひとばかりじゃないか。それとも)
我々の知っている人ばかりじゃないか。それとも
(きみは、このへやのなかににじゅうめんそうがかくれている)
きみは、この部屋の中に二十面相が隠れている
(とでもいうのかね」)
とでも言うのかね」