『怪人二十面相』江戸川乱歩49

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(「まあ、そうだよ。ひとつ、そのしょうこをおめに)

「まあ、そうだよ。ひとつ、その証拠をお目に

(かけようか。どなたか、たびたびごめんどうですが、)

かけようか。どなたか、度々ごめんどうですが、

(したのおうせつまによにんのおきゃくさまをまたせているのですが、)

下の応接間に四人のお客様を待たせているのですが、

(そのひとたちをここへよんできてくださいませんか」)

その人たちをここへ呼んできてくださいませんか」

(あけちは、またまたいがいなことをいいだすのです。)

明智は、またまた意外なことを言いだすのです。

(かんいんのひとりがいそいでしたへおりていきました。)

館員の一人が急いで下へおりて行きました。

(ほどなくして、かいだんにおおぜいのあしおとがして、)

ほどなくして、階段に大勢の足音がして、

(よにんのおきゃくさまというひとびとがいちどうのまえにあらわれました。)

四人のお客様という人々が一同の前に現れました。

(それをみるとそのばにいたひとたちは、)

それを見るとその場に居た人たちは、

(あまりのおどろきにあっとさけびごえをたてないでは)

余りの驚きにアッと叫び声をたてないでは

(いられませんでした。まず、よにんのせんとうにたつ)

いられませんでした。 まず、四人の先頭に立つ

(はくはつしろひげのろうしんしをごらんなさい。)

白髪白ヒゲの老紳士をご覧なさい。

(それはまぎれもなく、きたこうじぶんがくはかせだったでは)

それはまぎれもなく、北小路文学博士だったでは

(ありませんか。つづくさんにんはいずれもはくぶつかんいんで、)

ありませんか。 続く三人はいずれも博物館員で、

(きのうのゆうがたからゆくえふめいになっていたひとびとです。)

昨日の夕方から行方不明になっていた人々です。

(「このかたがたは、ぼくがにじゅうめんそうのかくれがから)

「この方々は、ぼくが二十面相の隠れ家から

(すくいだしてきたのですよ」あけちがせつめいしました。)

救い出してきたのですよ」 明智が説明しました。

(しかし、これはまあ、どうしたというのでしょう。)

しかし、これはまあ、どうしたというのでしょう。

(はくぶつかんちょうのきたこうじはかせが、ふたりになったでは)

博物館長の北小路博士が、二人になったでは

(ありませんか。ひとりはいま、かいかからあがってきた)

ありませんか。 一人は今、階下から上がってきた

など

(きたこうじはかせ、もうひとりは、さっきからずっとあけちに)

北小路博士、もう一人は、さっきからずっと明智に

(てをとられているきたこうじはかせ。ふくそうからかお、かたちまで)

手をとられている北小路博士。 服装から顔、形まで

(すんぶんもちがわないふたりのろうはかせが、かおとかおを)

寸分もちがわない二人の老博士が、顔と顔を

(みあわせて、にらみあいました。「みなさん、)

見合わせて、にらみあいました。「みなさん、

(にじゅうめんそうが、どんなにへんそうのめいじんかということが、)

二十面相が、どんなに変装の名人かということが、

(おわかりになりましたか」あけちたんていはさけぶやいなや、)

お分かりになりましたか」 明智探偵は叫ぶやいなや、

(いままでしんせつらしくにぎっていたろうじんのてを、いきなり)

今まで親切らしく握っていた老人の手を、いきなり

(うしろにねじあげて、ゆかのうえにくみふせたかとおもうと、)

後ろにねじあげて、床の上に組み伏せたかと思うと、

(はくはつのかつらとしろいつけひげをなんなくむしり)

白髪のカツラと白い付けヒゲを難なくむしり

(とってしまいました。そのしたからあらわれたのは、)

取ってしまいました。その下から現れたのは、

(くろぐろとしたかみのけと、わかわかしくなめらかなかおでした。)

黒々とした髪の毛と、若々しくなめらかな顔でした。

(いうまでもなく、これこそしょうしんしょうめいのにじゅうめんそう、)

言うまでもなく、これこそ正真正銘の二十面相、

(そのひとでありました。「ははは、にじゅうめんそうくん、)

その人でありました。「ハハハ、二十面相君、

(ごくろうさまだったねえ。さきほどからきみは、ずいぶん)

ご苦労さまだったねえ。先程からきみは、ずいぶん

(くるしかっただろう。めのまえできみのひみつが、)

苦しかっただろう。目の前できみの秘密が、

(みるみるばくろしていくのをじっとがまんして、)

みるみる暴露していくのをジッと我慢して、

(なにくわぬかおできいていなければならなかったのだから)

何食わぬ顔で聞いていなければならなかったのだから

(ね。にげようにも、このおおぜいのまえではにげだすわけにも)

ね。逃げようにも、この大勢の前では逃げ出す訳にも

(いかない。いや、それよりも、ぼくのてがてじょうの)

いかない。いや、それよりも、ぼくの手が手錠の

(ように、きみのてくびをにぎりつづけていたんだからね。)

ように、きみの手首を握り続けていたんだからね。

(てくびがしびれやしなかったかい。)

手首がしびれやしなかったかい。

(まあ、かんべんしたまえ。ぼくはすこし、きみをいじめ)

まあ、勘弁したまえ。ぼくは少し、きみをイジメ

(すぎたかもしれないね」あけちは、むごんのまま)

過ぎたかもしれないね」 明智は、無言のまま

(うなだれているにじゅうめんそうをあわれむように)

うなだれている二十面相を憐れむように

(みおろしながら、ひにくななぐさめのことばをかけました。)

見おろしながら、皮肉な慰めの言葉をかけました。

(それにしてもかんちょうにばけたにじゅうめんそうは、なぜもっと)

それにしても館長に化けた二十面相は、なぜもっと

(はやくにげださなかったのでしょう。ゆうべのうちに、)

早く逃げださなかったのでしょう。ゆうべのうちに、

(もくてきははたしてしまったのですから、さんにんのかえだまの)

目的は果たしてしまったのですから、三人の替え玉の

(かんいんといっしょにさっさとひきあげてしまえば、こんな)

館員と一緒にサッサと引きあげてしまえば、こんな

(はずかしいめにあわなくてもすんだでしょうに。)

恥ずかしい目にあわなくても済んだでしょうに。

(しかしどくしゃしょくん、そこがにじゅうめんそうなのです。)

しかし読者諸君、そこが二十面相なのです。

(にげだしもしないで、ずうずうしくいのこっていた)

逃げだしもしないで、ずうずうしく居残っていた

(ところが、いかにもにじゅうめんそうらしい、やりくち)

ところが、いかにも二十面相らしい、やり口

(なのです。かれは、けいさつのひとたちがにせもののびじゅつひんに)

なのです。彼は、警察の人たちが偽物の美術品に

(びっくりするところをけんぶつしたかったのです。)

ビックリするところを見物したかったのです。

(もし、あけちがあらわれるようなことがなかったら、)

もし、明智が現れるようなことがなかったら、

(かんちょうじしんがちょうどごごよじにとうなんにきづいたふうを)

館長自身がちょうど午後四時に盗難に気づいたふうを

(よそおって、みんなをあっといわせるもくろみだったに)

装って、みんなをアッといわせる目論見だったに

(ちがいありません。いかにもにじゅうめんそうらしいぼうけんでは)

違いありません。いかにも二十面相らしい冒険では

(ありませんか。でも、そのぼうけんがすぎて、ついに)

ありませんか。でも、その冒険がすぎて、遂に

(とりかえしのつかないしっさくをえんじてしまったのでした。)

取り返しのつかない失策を演じてしまったのでした。

(さて、あけちたんていはきっとけいしそうかんのほうに)

さて、明智探偵はキッと警視総監のほうに

(むきなおって、「かっか、ではかいとうにじゅうめんそうを)

向き直って、「閣下、では怪盗二十面相を

(おひきわたしいたします」とかたぐるしくいって、)

お引き渡しいたします」と堅苦しく言って、

(いちれいしました。いちどうはあまりにもいがいなばめんに、)

一礼しました。 一同は余りにも意外な場面に、

(ただあっけにとられて、めいたんていのすばらしい)

ただ呆気にとられて、名探偵の素晴らしい

(てがらをほめたたえることもわすれて、みうごきもせず)

手柄をほめたたえることも忘れて、身動きもせず

(たちすくんでいましたが、やがてはっときを)

立ちすくんでいましたが、やがてハッと気を

(とりなおしたなかむらそうさかかりちょうは、つかつかとにじゅうめんそうの)

取り直した中村捜査係長は、ツカツカと二十面相の

(そばへすすみより、よういしていたなわをとりだし、)

そばへ進み寄り、用意していた縄を取り出し、

(みごとなてぎわで、たちまちぞくをうしろでにしばって)

見事な手際で、たちまち賊を後ろ手にしばって

(しまいました。「あけちくん、ありがとう。)

しまいました。「明智君、ありがとう。

(きみのおかげで、ぼくはうらみかさなるにじゅうめんそうに、)

きみのおかげで、ぼくは恨み重なる二十面相に、

(こんどこそ、ほんとうになわをかけることができた。)

今度こそ、本当に縄をかけることが出来た。

(こんなうれしいことはないよ」なかむらかかりちょうのめには、)

こんな嬉しいことはないよ」 中村係長の目には、

(かんしゃのなみだがひかっていました。「それでは、)

感謝の涙が光っていました。「それでは、

(ぼくはこいつをつれていって、おもてにいるけいかんしょくんを)

ぼくはこいつを連れて行って、表に居る警官諸君を

(よろこばせてやりましょう。さあにじゅうめんそう、たつんだ」)

喜ばせてやりましょう。さあ二十面相、立つんだ」

(かかりちょうは、うなだれたかいとうをむりやりつれていき、)

係長は、うなだれた怪盗を無理やり連れて行き、

(いちどうにえしゃくすると、かたわらにたたずんでいた、)

一同に会釈すると、かたわらにたたずんでいた、

(さきほどのけいかんとともに、いそいそとかいだんをおりていく)

先程の警官と共に、いそいそと階段を下りて行く

(のでした。はくぶつかんのおもてもんには、じゅうすうめいのけいかんが)

のでした。 博物館の表門には、十数名の警官が

(むらがっていました。たてもののしょうめんいりぐちから、)

群がっていました。建物の正面入り口から、

(にじゅうめんそうをたいほしたかかりちょうがあらわれたのをみると、)

二十面相を逮捕した係長が現れたのを見ると、

(さきをあらそって、そのそばへかけよりました。「しょくん、)

先を争って、そのそばへ駆け寄りました。「諸君、

(よろこんでくれたまえ。あけちくんのおかげで、とうとう)

喜んでくれたまえ。明智君のおかげで、とうとう

(こいつをつかまえたぞ。これがにじゅうめんそうのしゅりょうだ」)

こいつを捕まえたぞ。これが二十面相の首領だ」

(かかりちょうがほこらしげにほうこくすると、けいかんたちのあいだに)

係長が誇らしげに報告すると、警官たちの間に

(どっとこえがあがりました。にじゅうめんそうはみじめでした。)

ドッと声があがりました。二十面相は惨めでした。

(さすがのかいとうもいよいよ、うんのつきとかんねんしたのか、)

さすがの怪盗もいよいよ、運のつきと観念したのか、

(いつものずうずうしいえがおをみせるちからもなく、)

いつものずうずうしい笑顔を見せる力もなく、

(しんみょうにうなだれたまま、かおをあげるげんきさえ)

神妙にうなだれたまま、顔をあげる元気さえ

(ありません。それからいちどうは、ぞくをまんなかにぎょうれつを)

ありません。それから一同は、賊を真ん中に行列を

(つくって、おもてもんをでました。もんのそとはこうえんのもりの)

つくって、表門を出ました。門の外は公園の森の

(ようなこだちです。そのこだちのむこうに、にだいの)

ような木立ちです。その木立ちの向こうに、二台の

(けいさつじどうしゃがみえます。「おい、だれかあのくるまをいちだい、)

警察自動車が見えます。「おい、誰かあの車を一台、

(ここへよんでくれたまえ」かかりちょうのめいれいに)

ここへ呼んでくれたまえ」 係長の命令に

(ひとりのけいかんが、けいぼうをにぎってかけだしました。)

一人の警官が、警棒を握って駆けだしました。

(いちどうのしせんがそのあとをおって、)

一同の視線がそのあとを追って、

(はるかさきにあるじどうしゃにそそがれています。)

遥か先にある自動車にそそがれています。

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