『少年探偵団』江戸川乱歩19

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少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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問題文

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(はるきしは、たちさるこっくのうしろすがたをめでおい)

春木氏は、立ち去るコックのうしろ姿を目で追い

(ながら、いいわけするかのようにいうのでした。)

ながら、言い訳するかのように言うのでした。

(それをきっかけに、あけちたんていは、いよいよようけんに)

それをきっかけに、明智探偵は、いよいよ用件に

(はいりました。「じつは、あのよるのことを、あなた)

入りました。「じつは、あの夜のことを、あなた

(ごじしんのおくちから、よくうかがいたいとおもって、)

ご自身のお口から、よくうかがいたいと思って、

(やってきたのですが、どうもふにおちないのは、)

やって来たのですが、どうも腑に落ちないのは、

(ふたりのいんどじんが、わずかのあいだにきえてしまった)

二人のインド人が、わずかのあいだに消えてしまった

(ことです。もう、ごぞんじでしょうが、こどもたちが)

ことです。 もう、ご存知でしょうが、子どもたちが

(むじゃきなたんていだんをつくっていましてね。あのばん、)

無邪気な探偵団をつくっていましてね。あの晩、

(なかむらかかりちょうたちが、ここへかけつけるにじゅっぷんほどまえに、)

中村係長たちが、ここへ駆けつける二十分ほど前に、

(そのこどもたちが、どのへやだったか、ここのにかいに)

その子どもたちが、どの部屋だったか、ここの二階に

(ふたりのいんどじんがいることを、ちゃんとたしかめて)

二人のインド人がいることを、ちゃんと確かめて

(おいたのです。それが、けいかんたちよりもはやくあなたが)

おいたのです。それが、警官たちよりも早くあなたが

(おかえりになったときには、もういえのなかにいなかった)

お帰りになった時には、もう家の中に居なかった

(というのは、じつにふしぎじゃありませんか。)

というのは、じつに不思議じゃありませんか。

(そのあいだじゅう、ろくにんのこどもたちが、おたくのまわりに、)

そのあいだ中、六人の子どもたちが、お宅の周りに、

(げんじゅうなみはりをつづけていたのです。おもてもんはもちろん、)

厳重な見張りを続けていたのです。表門はもちろん、

(うらもんからでも、あるいはへいをのりこえてでも、)

裏門からでも、あるいは塀を乗り越えてでも、

(いんどじんがにげだしたとすれば、こどもたちのめを)

インド人が逃げ出したとすれば、子どもたちの目を

(のがれることはできなかったはずです」すると、)

のがれることは出来なかったはずです」 すると、

など

(はるきしはうなずいて、「ええ、わたしも、そのてんが、)

春木氏はうなずいて、「ええ、わたしも、その点が、

(じつにふしぎでしかたがないのです。あいつらは、)

じつに不思議で仕方がないのです。あいつらは、

(なにかわれわれにはそうぞうもできない、ようじゅつのようなものでも)

何か我々には想像も出来ない、妖術のようなものでも

(しゅうとくしていたのではないでしょうか」と、いかにも)

習得していたのではないでしょうか」 と、いかにも

(きみわるそうなひょうじょうをしてみせました。「ところが、)

気味悪そうな表情をしてみせました。「ところが、

(もうひとつ、みょうなことがあるのですよ。あなたが)

もう一つ、みょうなことがあるのですよ。あなたが

(おかえりになったのは、こどもたちがいんどじんがいる)

お帰りになったのは、子どもたちがインド人がいる

(ことをたしかめてから、けいかんがくるまでのあいだ)

ことを確かめてから、警官が来るまでのあいだ

(でしたね。すると、そのときはもう、こどもたちは、)

でしたね。すると、そのときはもう、子どもたちは、

(ちゃんとみはりのいちについていたはずなのですが。)

ちゃんと見張りの位置についていたはずなのですが。

(あなたはむろん、おもてもんからおはいりになったので)

あなたは無論、表門からお入りになったので

(しょうね」「ええ、おもてもんからはいりました」「そのとき、)

しょうね」「ええ、表門から入りました」「その時、

(おもてもんには、ふたりのこどもがばんをしていたのですよ。)

表門には、二人の子どもが番をしていたのですよ。

(そのこどもたちをごらんになりましたか。もんの)

その子どもたちをご覧になりましたか。門の

(ところに、もんばんのようにたっていたっていうのですが」)

所に、門番のように立っていたって言うのですが」

(「ほう、そうですか。わたしはちっともきがつきません)

「ほう、そうですか。私はちっとも気がつきません

(でしたよ。ちょうどそのとき、こどもたちがわきへ)

でしたよ。ちょうどそのとき、子どもたちが脇へ

(いっていたのかもしれませんね。げんじゅうなみはりと)

行っていたのかもしれませんね。厳重な見張りと

(いったところで、なにしろしょうがくせいのことですから、)

言ったところで、なにしろ小学生のことですから、

(あてにはなりませんでしょう」「ところが、こども)

当てにはなりませんでしょう」「ところが、子ども

(というものはばかになりませんよ。なにかにいっしんに)

というものは馬鹿になりませんよ。何かに一心に

(なると、おとなのように、ほかのことはかんがえません)

なると、大人のように、ほかのことは考えません

(からね。ぼくは、こういうばあいにはおとなよりも)

からね。ぼくは、こういう場合には大人よりも

(こどものほうが、しんようあるとおもいます。ぼくはきょう、)

子どものほうが、信用あると思います。 ぼくは今日、

(ここへおたずねするまえに、いろいろなようけんをすませて)

ここへおたずねする前に、色々な用件を済ませて

(きたのですが、そのもんばんをつとめたこどもにあって)

来たのですが、その門番をつとめた子どもに会って

(みるのも、ようけんのひとつでした。そして、よくきき)

みるのも、用件の一つでした。そして、よく聞き

(ただしてみますと、そのこどもはけっしてもちばを)

ただしてみますと、その子どもは決して持ち場を

(はなれなかったし、わきみさえしなかったといいはる)

離れなかったし、脇見さえしなかったと言い張る

(のです。こどもはうそをつきませんからね」)

のです。子どもはウソをつきませんからね」

(「で、そのこどもはわたしのすがたをみたといいましたか」)

「で、その子どもは私の姿を見たと言いましたか」

(「いいえ、みなかったというのです。もんをはいった)

「いいえ、見なかったと言うのです。門を入った

(ものもでたものも、ひとりもいなかったとだんげんする)

者も出た者も、一人もいなかったと断言する

(のです」あけちたんていは、そういって、じっとはるきしの)

のです」 明智探偵は、そう言って、ジッと春木氏の

(うつくしいかおをみつめました。「おやおや、すると、)

美しい顔を見つめました。「おやおや、すると、

(わたしまでがなんだかまほうでもつかったようですね。)

私までがなんだか魔法でも使ったようですね。

(これはおもしろい。ははは」はるきしはなんとなく、)

これは面白い。ハハハ」 春木氏は何となく、

(ぎこちないわらいかたをしました。「ははは」)

ぎこちない笑い方をしました。「ハハハ」

(あけちたんていも、さもおかしそうに、こえをそろえて)

明智探偵も、さもおかしそうに、声をそろえて

(わらいましたが、そのこえにはなにかするどいとげ)

笑いましたが、その声には何かするどいトゲ

(のようなものがふくまれていました。「にをひいて、)

のようなものが含まれていました。「二を引いて、

(にをたす。このいみがおわかりですか。そうすると、)

二を足す。この意味がおわかりですか。そうすると、

(もとどおりになりますね。かんたんなひきざんとたしざんです」)

元通りになりますね。簡単な引き算と足し算です」

(たんていはなにかなぞのようなことをいったまま、)

探偵は何かナゾのようなことを言ったまま、

(またべつのはなしにうつりました。「ところで、ぼくはきょう、)

また別の話に移りました。「ところで、ぼくは今日、

(ようげんじのぼちとしのざきけのうらにわで、おもしろいものをはっけん)

養源寺の墓地と篠崎家の裏庭で、面白いものを発見

(しましたよ。なんだとおもいます。そのあいだをつなぐ)

しましたよ。なんだと思います。そのあいだをつなぐ

(せまいちかのぬけあななんですよ。ようげんじとしのざきけは、)

せまい地下の抜け穴なんですよ。 養源寺と篠崎家は、

(ちょうめいがちがっているし、おもてもんはひどくはなれていますが、)

町名が違っているし、表門はひどく離れていますが、

(うらではじゅうめーとるほどのあきちをへだてて、まるで)

裏では十メートルほどの空き地をへだてて、まるで

(くっついているといってもいいのです。いんどじんの)

くっついていると言ってもいいのです。 インド人の

(やつは、この、ちょっとかんがえるとひじょうにとおいという、)

やつは、この、ちょっと考えると非常に遠いという、

(にんげんのおもいちがいをりようしたのですよ。そして、そこに)

人間の思い違いを利用したのですよ。そして、そこに

(わけもなくちかどうをつくって、あのけむりのようにきえる)

訳もなく地下道を作って、あの煙のように消える

(というまほうをつかってみせたのです。ようげんじのぼち)

という魔法を使ってみせたのです。 養源寺の墓地

(には、ふるいはかいしのだいざをもちあげると、そのしたに)

には、古い墓石の台座を持ち上げると、その下に

(ぽっかりちかどうのいりぐちがあいていましたし、)

ポッカリ地下道の入り口があいていましたし、

(しのざきさんのにわのほうは、あなのうえにあついいたをのせて、)

篠崎さんの庭のほうは、穴の上に厚い板を載せて、

(そのいたのうえいちめんにくさのはえたつちがおいてありました。)

その板の上一面に草の生えた土が置いてありました。

(ちょっとみただけでは、ほかのじめんとすこしもちがいが)

ちょっと見ただけでは、ほかの地面と少しも違いが

(ないのです。あなのあるきんじょは、いろいろなきがしげって)

ないのです。穴のある近所は、色々な木がしげって

(いて、うすぐらいのですからね。なんと、うまい)

いて、薄暗いのですからね。なんと、うまい

(かむふらーじゅじゃありませんか。いんどじんは、)

カムフラージュじゃありませんか。 インド人は、

(ぼちのなかできえたときには、このちかどうからしのざきけへ)

墓地の中で消えた時には、この地下道から篠崎家へ

(にげこみ、しのざきけのほうせきをぬすんだときには、やっぱり、)

逃げ込み、篠崎家の宝石を盗んだ時には、やっぱり、

(このみちをとおって、ようげんじのほうへぬけてしまった)

この道を通って、養源寺のほうへ抜けてしまった

(のです。そのりょうほうのじめんのおもてがわは、まるでちがうまち)

のです。その両方の地面の表側は、まるで違う町

(なんですからね。わかりっこありませんよ。ははは、)

なんですからね。わかりっこありませんよ。ハハハ、

(これがいんどじんのまじゅつのたねあかしです」きいている)

これがインド人の魔術の種明かしです」 聞いている

(うちに、はるきしのかおにひじょうなおどろきのいろがうかんで)

うちに、春木氏の顔に非常な驚きの色が浮かんで

(きました。でも、しいてそれをおしかくすようにして、)

きました。でも、しいてそれを押し隠すようにして、

(「しかし、ほうせきをぬすむだけのために、どうしてそんな)

「しかし、宝石を盗むだけのために、どうしてそんな

(てまのかかるしかけをしたんでしょうね。)

手間のかかる仕掛けをしたんでしょうね。

(もっとてがるなしゅだんがありそうじゃありませんか」と、)

もっと手軽な手段がありそうじゃありませんか」 と、

(せめるようにききかえしました。「そうです。)

責めるように聞き返しました。「そうです。

(おっしゃるとおり、ぞくはむだなてまをかけている)

おっしゃる通り、賊は無駄な手間をかけている

(のです。しかし、むだといえば、ほかにもっとおおきな)

のです。しかし、無駄といえば、ほかにもっと大きな

(むだがあるのですよ。はるきさん、それがこのじけんの)

無駄があるのですよ。春木さん、それがこの事件の

(きみょうなてんであり、また、じつにおもしろいてんなのです」)

奇妙な点であり、また、じつに面白い点なのです」

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