食物が連なる世界

(おもえばわたしはおさないころから)

思えば 私は 幼い頃から

(おおよそひとよりしょくのほそいこでした・・・)

おおよそ 人より 食の細い子でした…

(おにくのぼりゅーむとにおいがにがてで)

お肉の《食べ応え》と 匂いが苦手で

(としゃしよくいじめられた・・・)

吐瀉し よくイジメられた…

(そんなわたしをいつもたすけてくれるこがいて)

そんな私を いつも助けてくれる《女子》がいて

(つきのようにやさしいほほえみがすてきな)

月のように優しい微笑みが素敵な

(たいせつなしんゆうだとおもっていた・・・)

大切な《一生の宝物》だと思っていた…

(おもえばわたしはししゅんきのころから)

思えば 私は 思春期の頃から

(そのわりにひとよりはついくのよいこでした・・・)

その割りに 人より 発育の良い娘でした…

(「とろいくせに＊＊でくさばっか)

｢トロいくせに＊＊で《葉もの野菜》ばっか

(はんでうしかよ」とよくからかわれた・・・)

食んで牛かよ｣とよくカラカわれた…

(そんなわたしをときおりかばってくれるひとがいて)

そんな私を 時折 庇ってくれる《男子》がいて

(つきのようにやさしいほほえみがすてきな)

月のように優しい微笑みが 素敵な

(かのじょがおにのようなぎょうそうで・・・)

彼女が鬼のような形相で…

(「・・・ってゆうかうざいんだけどっ！」)

｢……ってゆうかウザいんだけどッ！」

(あんたみたいなださいこたすけるわたしはてんしみたい)

アンタみたいなダサい《女》 助ける私は天使みたい♪

(ってそんなひきたてやくのはずだったのに・・・)

-って そんな引き立て役の筈だったのに…

(ぶすがからだをつかって)

《醜女》が《無駄に色気づいた肉体》を使って

(かれをゆうわくしないでよ)

《私の想い人》を誘惑しないでよ

(かんちがいしてちょうしこかないで！)

勘違いして調子コかな・い・で！

(このひとはなにをわめいているのだろう？)

｢この《女》は何を喚いているのだろう？｣

(ああなんてぎまんではきけがするせかいだろう)

嗚呼 何て欺瞞で吐き気がする世界だろう

(にじむよるのかげでほしがわらう・・・)

滲む夜の影で 星が嗤う…

(それからのわたしはにんげんふしんにおちいりこころをかたくとざして)

それからの私は人間不信に陥り 心を固く鎖して

(ひとりきりのせかいでだれもよせつけずに)

独りきりの世界で 誰も寄せ付けずに

(なにもうけいれずにいきてたけど・・・)

何も受け入れずに生きてた 　けど…

(かれ)

《子供に関する福祉団体に長年勤める優しい人であり

(にであって)

後に生涯の伴侶ともなる最愛の男性》に出逢って

(いくつものきせつをかさねしんじつのあいはあるんだと)

幾つもの季節を重ね 真実の愛は在るんだと

(うんめいはあるんだとやっとおもえた！)

運命は在るんだと やっと思えた！

(そして)

そ し て

(はじめてむすばれたあさのひかりわたしはしょうがいわすれないでしょう)

初めて結ばれた朝の光 私は生涯忘れないでしょう

(だきしめてだきしめてこれからはあなたとふたり)

抱きしめて 抱きしめて これからは貴方と二人

(いえこのことさんにんで)

いえ《お腹の中の宝物》と三人で

(いきてゆこうひかりのなかを！)

生きてゆこう 《幸せ》の中を！

(よいことばかりじゃないけれどわるいことばかりでもない！)

良いことばかりじゃないけれど 悪いことばかりでもない!

(なんて・・・)

なんて…

(そうおもったときもあった・・・)

そう思った時もあった…

(けれどけっきょくじんせいなんてろくなものじゃない・・・)

けれど 結局人生なんて ロクなものじゃない…

(まちのぞんでたわがこにはとてもちめいてきなしょうがいがあった・・・)

待ち望んでた我が子には とても致命的な障碍があった…

(しろいかべのなかねがえりひとつうてず)

白い壁の中 寝返りひとつ打てず

(くさりのようなちゅーぶにつながれたままにいった・・・)

鎖のような《冷たい管》に繋がれたままに逝った…

(ほしくずをあつめるようにくちてゆくせかいに)

星屑を集めるように 朽ちてゆく世界に

(のぞまぬまま？うみおとされ？)

望まぬまま？ 産み堕とされ？

(せいのよろこびなどしらぬまま？)

《人生》の悦びなど 知らぬまま？

(はたしてあのこしあわせだったの？)

果たしてあの子 幸せだったの？

(ごめんなさい)

ごめんなさい

(ああなんてむりょくですくいのないせかいなのに)

嗚呼 何て無力で救いのない世界なのに

(かたりだしたからだのこえ)

騙り出した《末梢神経系植物性機能からの支持》

(このひかりをうらぎって)

この【第九の現実】を裏切って

(やみのふちさえかがやかせる)

《絶望》の淵さえ 輝かせる

(みせかけはなんてきれいではきけがするせかいだろう)

見せ掛けは何て綺麗で 吐き気がする世界だろう

(くちるよるのかげにほしがおどる・・・)

朽ちる夜の影に 星が踊る…

(ひていするしょくへのしゅうちゃくにひれいするせいへのけんおかん)

否定する食への執着に 比例する生への嫌悪感

(きらめくつみをだいたほしのすなこぼれるまどべ)

煌めく 罪を抱いた星の砂 こぼれる窓辺

(いちわのよだか・・・)

一羽の夜鷹…

(そのころのつまはじんせいを)

｢その頃の妻は《苦難の物語》を

(いきてきたそのいみを、)

生きてきたその意味を、

(じぶんをだますように、)

自分を《構成する哀しみを否定する》ように、

(いいきかせるように、なんどもくりかえした・・・)

言い聞かせるように、何度も繰り返した…

(ああしんしんともによわってゆくきみを)

嗚呼 心身ともに《衰弱して》ゆく君を

(このげんじつにつれもどさないことが、)

この現実に連れ戻さない事が、

(やさしさのかわをかぶった、それいがいのなにかだとしても、)

優しさの皮を被った､それ以外の【何か】だとしても、

(ただ・・・きみにはさいごまでわらっていてほしいとねがった・・・)

唯…君には最期まで笑って 居て欲しいと願った…｣

(くさをはむむしはのまれ)

《植物》を食む 《昆虫》は飲まれ

(そのかわずをのむへびもくわれ)

その《両生類》を呑む 《爬虫類》も食われ

(そのとりをくうたかはそらを)

その《鳥類》を食う 《猛禽類》は空を

(どこまでもたかくじゆうにとびさった)

何処までも高く 自由に飛び去った

(とおくでなりひびいたじゅうせいほふったかれも)

遠くで鳴り響いた銃声 屠った《霊長類》も

(いずれはししてつちにかえる)

いずれは死して 土に還る

(かれらをつなぐくさりであんだ)

彼等を繋ぐ 鎖で編んだ

(ぴらみっどにはしょうしゃなどだれもいないと)

《生態系》には 勝者など 誰も居ないと

(きづいたのふいに)

気付いたの 不意に

(ひかりのなかで)

《眩し過ぎる木漏れ陽》の中で

(いのちがもえる)

《誰かの死を糧にするモノ》が萌える

(こだちのなかで)

《鮮やかな新緑》の中で

(わだちがめぐる)

《あの子が生きた証》が廻る

(こえをきいた)

《音》を聴いた

(ここに・・・いたの！？わらって・・・いたの！！！)

ここに…いたの!? 笑って…いたの!!!

(「わたしはいきているし、いかされている。)

｢私は生きているし、生かされている。

(きょうからはたくさんたべよう。このいのちをむだにしないわ。)

今日からは沢山食べよう｡この命を無駄にしないわ｡

(せいとしがわになってめぐるのなら、)

生と死が輪になって廻るのなら、

(なんどだって、あなたをうめばよいのだから・・・」)

何度だって、あなたを産めば良いのだから…｣

(「やぁ」)

｢やぁ｣

(「あなた・・・」)

｢あなた…｣

(「きょうは、かおいろがいいみたいだね」)

｢今日は、顔色が良いみたいだね｣

(「あら、そう？うふふ・・・」)

｢あら、そう？うふふ…｣

(「「あははは・・・」」)

「「あははは…」」