『妖怪博士』江戸川乱歩2

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プレイ回数1135難易度(4.2) 4519打 長文 長文モードのみ
少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
前回→https://typing.twi1.me/game/369844
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第2作品→https://typing.twi1.me/game/329807
第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ももも 6951 S++ 7.3 94.4% 609.8 4501 262 98 2024/10/15
2 berry 6500 S+ 6.7 96.5% 659.8 4447 158 98 2024/10/04
3 BE 4218 C 4.5 93.8% 1003.5 4528 295 98 2024/10/15
4 ayano 3192 E++ 3.5 89.9% 1288.7 4630 516 98 2024/09/29

関連タイピング

問題文

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(「いよいよへんだぞ。あんなきたないこじきのじいさんが、)

「いよいよ変だぞ。あんな汚い乞食のじいさんが、

(こんなりっぱなようかんにすんでいるはずない。しのびこんで)

こんな立派な洋館に住んでいるはずない。忍び込んで

(なにかぬすむつもりじゃないか。それとも、もっと)

何か盗むつもりじゃないか。それとも、もっと

(おそろしいことをたくらんでいるのかもしれないぞ」)

恐ろしいことをたくらんでいるのかもしれないぞ」

(たいじくんはそうかんがえると、もうしんぱいでたまらなく)

泰二君はそう考えると、もう心配でたまらなく

(なったのでいそいでもんのまえにちかづき、とびらのからくさもようの)

なったので急いで門の前に近づき、扉の唐草模様の

(すきまからなかをのぞきこんでみました。すると、ああ、)

隙間から中をのぞきこんでみました。 すると、ああ、

(どうでしょう。あんのじょう、ろうじんはわるものでした。ようかんの)

どうでしょう。案の定、老人は悪者でした。洋館の

(そとをみぎがわへまわって、そこのまどをよじのぼっている)

外を右側へまわって、そこの窓をよじのぼっている

(ではありませんか。じゅうにんにさとられないよう、へやの)

ではありませんか。住人に悟られないよう、部屋の

(なかへしのびこもうとしているのです。「ああ、たいへんだ。)

中へ忍び込もうとしているのです。「ああ、大変だ。

(どうしよう」とたいじくんがまよっているうちに、あやしい)

どうしよう」と泰二君が迷っているうちに、怪しい

(ろうじんのすがたはまどのなかへきえてしまいました。なかでなにを)

老人の姿は窓の中へ消えてしまいました。中で何を

(しているのかとおもうと、もうきがきではありません。)

しているのかと思うと、もう気が気ではありません。

(おまわりさんにしらせるのが、いちばんいいことなのは)

お巡りさんに知らせるのが、一番いいことなのは

(わかっていました。でも、とおくのこうばんまではしっている)

分かっていました。でも、遠くの交番まで走っている

(うちに、ろうじんはもくてきをはたしてにげだしてしまうかも)

うちに、老人は目的を果たして逃げ出してしまうかも

(しれません。「そうだ。げんかんのべるをおして、ここの)

しれません。「そうだ。玄関のベルを押して、ここの

(いえのひとにしらせてあげよう」たいじくんはとっさにこころを)

家の人に知らせてあげよう」泰二君はとっさに心を

(きめてそっともんのとびらをひらくと、あしおとをたてない)

決めてソッと門の扉をひらくと、足音をたてない

など

(ようにきをつけながら、しょうめんのげんかんへかけあがって)

ように気をつけながら、正面の玄関へ駆け上がって

(いきました。よびりんのぼたんをさがすと、いりぐちの)

行きました。 呼び鈴のボタンを探すと、入り口の

(はしらのうえのほうについていることがわかったので、)

柱の上のほうに付いていることが分かったので、

(せのびをしていっしょうけんめいそれをおしつづけました。)

背伸びをして一生懸命それを押し続けました。

(ところが、いつまでおしても、だれもげんかんへでてくる)

ところが、いつまで押しても、だれも玄関へ出て来る

(ようすはありません。ひょっとしたらよびりんのでんせんが)

様子はありません。ひょっとしたら呼び鈴の電線が

(きれているのかもしれないとおもって、こんどはげんかんの)

切れているのかもしれないと思って、今度は玄関の

(どあをおしたりひいたりしてみましたが、かぎが)

ドアを押したり引いたりしてみましたが、カギが

(かけてあるらしく、びくともうごかないのです。)

かけてあるらしく、ビクとも動かないのです。

(いえのひとは、るすなのかもしれません。もんのそとを)

家の人は、留守なのかもしれません。門の外を

(ふりかえってたすけをもとめようとしても、ひとどおりは)

振り返って助けを求めようとしても、人通りは

(まったくありませんし、たいじくんはこまってしまい)

まったくありませんし、泰二君は困ってしまい

(ました。かといって、このままぞくをみのがしてたちさる)

ました。かといって、このまま賊を見逃して立ち去る

(きにはどうしてもなれません。めいよあるしょうねんたんていだんの)

気にはどうしてもなれません。名誉ある少年探偵団の

(なを、けがすようにさえかんがえられるのです。)

名を、けがすようにさえ考えられるのです。

(しかたがないので、すこしうすきみわるくはおもいましたが、)

仕方がないので、少し薄気味悪くは思いましたが、

(おもいきってあやしいろうじんがしのびこんだまどのそとへ)

思いきって怪しい老人が忍び込んだ窓の外へ

(まわってみることにしました。あいてにさとられてはたいへん)

まわってみることにしました。 相手に悟られては大変

(ですからせをかがめ、あしおとをしのばせて、まるではう)

ですから背をかがめ、足音を忍ばせて、まるで這う

(ようにして、そのまどのそとまでたどりつきました。)

ようにして、その窓の外までたどり着きました。

(しかし、たちあがってまどのなかをのぞくのは、なかなか)

しかし、立ち上がって窓の中をのぞくのは、なかなか

(ゆうきのいるしごとです。もしまどのなかのあやしいろうじんが)

勇気のいる仕事です。もし窓の中の怪しい老人が

(こちらをみていたら、たちまちとびだしてきて、)

こちらを見ていたら、たちまち飛び出して来て、

(たいじくんをとらえてしまうかもしれません。いや、)

泰二君をとらえてしまうかもしれません。いや、

(とらえるだけならいいのですが、ぴすとるやたんとう)

とらえるだけならいいのですが、ピストルや短刀

(などをもっていたら、それこそたいへんなことになり)

などを持っていたら、それこそ大変なことになり

(ます。それをかんがえると、まどをのぞくというだけの)

ます。それを考えると、窓をのぞくというだけの

(ことが、いのちがけのぼうけんなのです。たいじくんはむねを)

ことが、命がけの冒険なのです。 泰二君は胸を

(どきどきさせながら、いちみりずついちみりずつ、まるで)

ドキドキさせながら、一ミリずつ一ミリずつ、まるで

(なめくじがはうようなそくどで、ようじんにようじんをして、)

ナメクジが這うような速度で、用心に用心をして、

(まどのところへかおをあげていきました。そしてながいじかんが)

窓の所へ顔を上げていきました。そして長い時間が

(かかって、やっとへやのなかをちらっとのぞくことが)

かかって、やっと部屋の中をチラッとのぞくことが

(できました。のぞいたかとおもうと、たいじしょうねんのかおいろは)

出来ました。 のぞいたかと思うと、泰二少年の顔色は

(さっとかわりました。くろめがちのかわいらしいりょうめが、)

サッと変わりました。黒目がちの可愛らしい両目が、

(とびだすのではないかとおもうばかりにみひらかれ)

飛び出すのではないかと思うばかりに見ひらかれ

(ました。なにかしら、よほどおそろしいものをみたにちがい)

ました。何かしら、余程恐ろしいものを見たに違い

(ありません。ああ、へやのなかにはいったい、なにがあった)

ありません。 ああ、部屋の中には一体、何があった

(のでしょう。もしやそこには、あのぶきみであやしい)

のでしょう。もしやそこには、あの不気味で怪しい

(ろうじんが、「おまえがくるのをまっていたぞ」と)

老人が、「お前が来るのを待っていたぞ」と

(いわないばかりに、おそろしいかおでこちらをにらみ)

いわないばかりに、恐ろしい顔でこちらをにらみ

(つけていたのではないでしょうか。)

つけていたのではないでしょうか。

(「びしょうじょ」)

「美少女」

(そのへやはきゃくまらしく、まんなかにてーぶるがあって、)

その部屋は客間らしく、真ん中にテーブルがあって、

(そのまわりに、みょうなかっこうのいすがならんで)

そのまわりに、みょうなかっこうのイスが並んで

(いました。なんとなくうすぐらくていんきなへやでしたが、)

いました。なんとなく薄暗くて陰気な部屋でしたが、

(すみずみがみわけられないほどではありません。)

すみずみが見分けられないほどではありません。

(たいじくんはいそがしくそこをみまわしましたが、よきして)

泰二君は忙しくそこを見まわしましたが、予期して

(いたことにはんして、さきほどのろうじんのすがたはどこにも)

いたことに反して、先程の老人の姿はどこにも

(ありませんでした。そのかわり、てーぶるのあしの)

ありませんでした。そのかわり、テーブルの足の

(ところに、ろうじんなどよりもっとびっくりするようなものが)

所に、老人などよりもっとビックリするようなものが

(ころがっていたのです。それはうすぐらいへやのなかに、)

転がっていたのです。 それは薄暗い部屋の中に、

(ぱっといちりんのばらのはながさいたように、うつくしいしきさいの)

パッと一輪のバラの花が咲いたように、美しい色彩の

(ものでした。ひとりのうつくしいしょうじょなのです。めがさめる)

ものでした。一人の美しい少女なのです。目が覚める

(ほどのはでなようそうをしたじゅうろく、ななさいで、えのように)

ほどの派手な洋装をした十六、七歳で、絵のように

(うつくしいしょうじょなのです。しかしたいじくんは、その)

美しい少女なのです。 しかし泰二君は、その

(おねえさんのうつくしさにおどろいたのではありません。しょうじょの)

お姉さんの美しさに驚いたのではありません。少女の

(むごたらしいありさまにぎょっとしたのです。しょうじょは)

むごたらしい有り様にギョッとしたのです。少女は

(ようふくのうえからふといなわで、てあしをぐるぐるまきに)

洋服の上から太い縄で、手足をグルグル巻きに

(しばられていました。くちにはしろいぬので、さるぐつわ)

しばられていました。口には白い布で、さるぐつわ

(さえはめてあるのです。「あのわるもののろうじんが、)

さえはめてあるのです。「あの悪者の老人が、

(おねえさんをこんなひどいめにあわせたんだな」)

お姉さんをこんな酷い目にあわせたんだな」

(たいじくんはそうおもうと、もうじっとしてはいられません)

泰二君はそう思うと、もうジッとしてはいられません

(でした。うつくしいしょうじょがかわいそうでしかたがないのです。)

でした。美しい少女が可哀想で仕方がないのです。

(あのおいぼれじじいといっきうちのしょうぶをしても、)

あの老いぼれじじいと一騎打ちの勝負をしても、

(このおねえさんをすくわないというせんたくはないと、)

このお姉さんを救わないという選択はないと、

(しょうねんのむねにはいさましいいきどおりがこみあげて)

少年の胸には勇ましい憤りが込み上げて

(きました。しょうめんのどあはひらいたままになっており、)

きました。 正面のドアはひらいたままになっており、

(そのむこうにはずっとろうかがつづいているのですが、)

その向こうにはズッと廊下が続いているのですが、

(そこにもあやしいろうじんのすがたはみえません。きっと、)

そこにも怪しい老人の姿は見えません。きっと、

(たったひとりでおるすばんをしていた、このしょうじょを)

たった一人でお留守番をしていた、この少女を

(しばっておいて、なにかをぬすむためにおくのほうへはいって)

しばっておいて、何かを盗むために奥のほうへ入って

(いったにちがいありません。「よし、このあいだに)

行ったに違いありません。「よし、このあいだに

(おねえさんをたすけてあげよう。そして、おねえさまに)

お姉さんを助けてあげよう。そして、お姉さまに

(かぎをかりて、ろうじんをいえのなかへとじこめてしまって、)

カギを借りて、老人を家の中へ閉じこめてしまって、

(おまわりさんをよびにいくことにしよう」たいじくんは)

おまわりさんを呼びに行くことにしよう」 泰二君は

(とっさにそうけっしんすると、まどのふちにりょうてをかけ、)

とっさにそう決心すると、窓のふちに両手をかけ、

(がっこうでならったきかいたいそうのうでまえで、ぱっとみをおどらせて)

学校で習った器械体操の腕前で、パッと身を躍らせて

(みごとにへやのなかへとびこんでしまいました。)

見事に部屋の中へ飛び込んでしまいました。

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