『妖怪博士』江戸川乱歩4

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ももも 6755 S++ 7.1 94.3% 617.4 4436 265 100 2024/10/15
2 berry 6477 S 6.6 96.8% 655.0 4386 143 100 2024/10/04

関連タイピング

問題文

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(しょうめんのみぎてにたっているのは、にいさんがもっている)

正面の右手に立っているのは、兄さんが持っている

(せいようしのほんのさしえでみた、ぎりしゃのしじん)

西洋史の本の挿絵で見た、ギリシャの詩人

(そふぉくれすのちょうこくによくにています。ほかのさんにんも、)

ソフォクレスの彫刻によく似ています。他の三人も、

(きっとそふぉくれすにおとらない、むかしのえらいひとたちの)

きっとソフォクレスに劣らない、昔の偉い人たちの

(ぞうでしょうが、たいじくんにはよくわかりませんでした。)

像でしょうが、泰二君にはよく分かりませんでした。

(へやのしょうめんにはしょだなをはいけいに、ながさにめーとるも)

部屋の正面には書棚を背景に、長さ二メートルも

(ありそうな、おおきなつくえがおいてあります。あしもといちめんに)

ありそうな、大きな机が置いてあります。足元一面に

(ちょうこくがあって、ちゃいろにくろずんでおり、みたこともない)

彫刻があって、茶色に黒ずんでおり、見たこともない

(ようなりっぱなつくえです。そのひょうめんは、まるでかがみのように)

ような立派な机です。その表面は、まるで鏡のように

(ひかっていて、うしろのしょだながありありとうつって)

光っていて、後ろの書棚がありありと映って

(いるのです。そのつくえのむこうがわに、みょうなじんぶつが)

いるのです。 その机の向こう側に、みょうな人物が

(こしをかけてつくえのうえにかおをふせ、しきりになにかをかいて)

腰をかけて机の上に顔を伏せ、しきりに何かを書いて

(います。こちらにむいているあたまのけが、なかばしろく)

います。こちらに向いている頭の毛が、なかば白く

(なっているのをみると、そうとうねんぱいのひとにちがい)

なっているのを見ると、相当年配の人に違い

(ありません。むろん、さきほどのあやしいろうじんとは、にても)

ありません。無論、先程の怪しい老人とは、似ても

(につかない、りっぱなじんぶつです。そして、せいようのころも)

似つかない、立派な人物です。そして、西洋の衣

(とでもいうような、だぶだぶしたまんとのような)

とでもいうような、ダブダブしたマントのような

(ものをきています。たいじくんはそれをみると、ほっと)

物を着ています。 泰二君はそれを見ると、ホッと

(あんどのためいきをつきました。こんなりっぱなひとならば、)

安堵の溜め息をつきました。こんな立派な人ならば、

(まさかこどもをひどいめにあわせるようなことは)

まさか子どもを酷い目にあわせるようなことは

など

(ないとかんじたからです。そこで、おもいきってこえを)

ないと感じたからです。そこで、思いきって声を

(かけてみました。「おじさんは、このいえのごしゅじん)

かけてみました。「おじさんは、この家のご主人

(ですか」かきものをしていたひとはそれをきくと、)

ですか」 書き物をしていた人はそれを聞くと、

(しずかにかおをあげて、じっとたいじくんをみつめたまま、)

静かに顔をあげて、ジッと泰二君を見つめたまま、

(にやにやとみょうなわらいかたをしました。そこで、)

ニヤニヤとみょうな笑い方をしました。そこで、

(そのひとのかおがわかったのですが、はくはつまじりのながい)

その人の顔が分かったのですが、白髪混じりの長い

(かみをふさふさとしたおーるばっくにして、しろいけが)

髪をフサフサとしたオールバックにして、白い毛が

(まじったくちひげをぴんとはねて、あごひげはさんかくに)

混じった口ひげをピンと跳ねて、あごヒゲは三角に

(かったのをたくわえ、くろぶちのおおきなめがねをかけて、)

刈ったのを蓄え、黒縁の大きな眼鏡をかけて、

(そのなかから、よくひかるおおきなめがじろりとこちらを)

その中から、よく光る大きな目がジロリとこちらを

(にらんでいるのです。ただにやにやわらっている)

にらんでいるのです。 ただニヤニヤ笑っている

(だけでへんじをしてくれないので、たいじくんはもういちど、)

だけで返事をしてくれないので、泰二君はもう一度、

(おなじことばをくりかえしました。すると、そのひとははらのそこ)

同じ言葉を繰り返しました。 すると、その人は腹の底

(からでてくるようなふといこえで、「うん、わしがしゅじん)

から出て来るような太い声で、「うん、わしが主人

(じゃよ。まあ、こちらへおいで」といいながら、)

じゃよ。まあ、こちらへおいで」と言いながら、

(みぎてをつくえのうえにのばして、まるでいぬでもよぶように、)

右手を机の上に伸ばして、まるで犬でも呼ぶように、

(ひとさしゆびで「こいこい」というかたちをしてみせる)

人差し指で「来い来い」という形をして見せる

(のです。なんだかうすきみわるい、へんなおじさんだと)

のです。 なんだか薄気味悪い、変なおじさんだと

(おもいましたが、いまさらにげだすわけにもいかず、)

思いましたが、今さら逃げ出す訳にもいかず、

(いわれるままにつかつかとへやのなかへはいっていって、)

いわれるままにツカツカと部屋の中へ入って行って、

(かがみのようにひかるおおきなつくえのまえにたちました。)

鏡のように光る大きな机の前に立ちました。

(「おじさん、ぼく、だまってあなたのいえへはいってきて、)

「おじさん、ぼく、黙ってあなたの家へ入って来て、

(ごめんなさい。さっき、あやしいこじきのじいさんが)

ごめんなさい。さっき、怪しい乞食のじいさんが

(あそこのまどからしのびこむのをみたんです。ぼく、)

あそこの窓から忍び込むのを見たんです。ぼく、

(どろぼうかもしれないとおもって、げんかんのよびりんを)

泥棒かもしれないと思って、玄関の呼び鈴を

(おしたんだけど、だれもでてこないもんだから、)

押したんだけど、だれも出てこないもんだから、

(そのじいさんのあとをつけて、おなじまどからはいって)

そのじいさんのあとをつけて、同じ窓から入って

(しまったんです。ぼくは、あいかわたいじというものです」)

しまったんです。ぼくは、相川泰二という者です」

(たいじくんが、やっとそれだけをいうと、きみょうな)

泰二君が、やっとそれだけを言うと、奇妙な

(じんぶつは、やっぱりにやにやわらいながら、「きみが)

人物は、やっぱりニヤニヤ笑いながら、「きみが

(あいかわたいじくんということは、よくしっている。わしは)

相川泰二君ということは、よく知っている。わしは

(きみをまっていたのじゃからね」と、いよいよきみの)

きみを待っていたのじゃからね」と、いよいよ気味の

(わるいことをいうのです。しかしたいじくんは、さっきの)

悪いことを言うのです。 しかし泰二君は、さっきの

(あやしいろうじんのことがきになって、あいてのみょうな)

怪しい老人のことが気になって、相手のみょうな

(ことばをうたがっているよゆうがありませんでした。)

言葉を疑っている余裕がありませんでした。

(「おじさん、そのあやしいこじきのじいさんは、まだいえの)

「おじさん、その怪しい乞食のじいさんは、まだ家の

(どこかにかくれているんですよ。きっとどろぼうです。)

どこかに隠れているんですよ。きっと泥棒です。

(はやくさがしてください」「ははは、あのじいさんのこと)

早く探してください」「ハハハ、あのじいさんのこと

(なら、しんぱいせんでもいい。ちゃんと、このへやのなかに)

なら、心配せんでもいい。ちゃんと、この部屋の中に

(いるのじゃ」「え、このへやにですか」たいじくんは)

居るのじゃ」「え、この部屋にですか」 泰二君は

(びっくりして、きょろきょろとあたりをみまわし)

ビックリして、キョロキョロとあたりを見まわし

(ましたが、しゅじんのほかにはひとのけはいもないのです。)

ましたが、主人の他には人の気配もないのです。

(このみょうなじんぶつはいったい、なにをいっているので)

このみょうな人物は一体、何を言っているので

(しょう。「だれもいやしないじゃありませんか」)

しょう。「だれも居やしないじゃありませんか」

(たいじくんは、ふしぎそうにしゅじんのかおをみつめました。)

泰二君は、不思議そうに主人の顔を見つめました。

(「いないことはない。ほら、そこをごらん。そこに)

「居ないことはない。ほら、そこをご覧。そこに

(ちゃんといるじゃないか」ゆびさされてうしろを)

ちゃんと居るじゃないか」 指さされて後ろを

(ふりかえると、しょだなのすみのひとつのせっこうぞうのあしもとに、)

振り返ると、書棚の隅の一つの石膏像の足元に、

(きたないようふくがぬぎすててあるのがめにはいりました。)

汚い洋服が脱ぎ捨ててあるのが目に入りました。

(ようふくだけではありません。やぶれたくつがいっそくと、)

洋服だけではありません。破れた靴が一足と、

(それからはくはつのかつらのようなものや、つけひげの)

それから白髪のカツラのような物や、付けヒゲの

(ようなものまで、そこになげすててあります。)

ような物まで、そこに投げ捨ててあります。

(たいじくんは、それらのものをながめているうちに、)

泰二君は、それらの物をながめているうちに、

(さっきのあやしいろうじんがきていたようふく、はいていたくつ、)

さっきの怪しい老人が着ていた洋服、はいていた靴、

(それから、しらがあたまとしろひげにそっくりであることに)

それから、しらが頭と白ヒゲにソックリであることに

(きづいて、あっけにとられてしまいました。)

気づいて、あっけにとられてしまいました。

(いったい、これはどうしたというのでしょう。「ははは、)

一体、これはどうしたというのでしょう。「ハハハ、

(わかったかね。あのこじきのじじいは、このわしだった)

分かったかね。あの乞食のじじいは、このわしだった

(のさ。たったいま、そのへんそうをぬいで、もとのわしに)

のさ。たった今、その変装を脱いで、元のわしに

(かえったばかりじゃよ」たいじくんはぎょっとして、)

かえったばかりじゃよ」 泰二君はギョッとして、

(おもわずに、さんぽあとずさりをしました。「ははは、)

思わず二、三歩あとずさりをしました。「ハハハ、

(びっくりしているね。どうじゃ、わしのへんそうは)

ビックリしているね。どうじゃ、わしの変装は

(うまいものだろう」「おじさん、あなたはいったい、)

上手いものだろう」「おじさん、あなたは一体、

(だれですか」たいじくんは、いざといえば、にげだす)

だれですか」泰二君は、いざといえば、逃げ出す

(みがまえをしながら、するどくたずねました。)

身構えをしながら、鋭くたずねました。

(「ははは、わしのながしりたいのか。わしは)

「ハハハ、わしの名が知りたいのか。わしは

(ひるたはかせで、いがくはかせじゃ。さっきもいったとおり、)

ヒルタ博士で、医学博士じゃ。さっきも言った通り、

(このいえのしゅじんじゃよ」「ではなぜ、あんなじいさんに)

この家の主人じゃよ」「ではなぜ、あんなじいさんに

(へんそうして、まどからしのびこんだりなんかしたんです。)

変装して、窓から忍び込んだりなんかしたんです。

(しゅじんがじぶんのいえへ、まどからはいるなんてへんじゃ)

主人が自分の家へ、窓から入るなんて変じゃ

(ありませんか」「へんかもしれないがね。それには、)

ありませんか」「変かもしれないがね。それには、

(わけがあるのだよ。じつをいうと、だれにもしられない)

訳があるのだよ。実を言うと、だれにも知られない

(ように、きみをここまでよびよせたかったんじゃ。)

ように、きみをここまで呼び寄せたかったんじゃ。

(わかったかね」「ぼくをよびよせるだって。)

分かったかね」「ぼくを呼び寄せるだって。

(それならば、あんなまねをしなくても、ぼくのいえで)

それならば、あんな真似をしなくても、ぼくの家で

(そういってくださればよかったじゃありませんか」)

そう言ってくだされば良かったじゃありませんか」

(「それが、そうできないわけがあるんじゃ。)

「それが、そう出来ない訳があるんじゃ。

(いまにわかる。ははは、きみはなかなかようじんぶかくて、)

今に分かる。ハハハ、きみはなかなか用心深くて、

(かしこいこどもじゃからね。うかつにてだしをしては)

賢い子どもじゃからね。うかつに手出しをしては

(あぶないから、こざいくをしておびきよせなければ」)

危ないから、小細工をしておびき寄せなければ」

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