紫式部 源氏物語 帚木 11 與謝野晶子訳

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2 ヤス 7182 7.4 96.0% 485.9 3639 149 55 2024/07/31
3 だだんどん 6802 S++ 7.2 93.8% 495.0 3602 235 55 2024/08/10

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問題文

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(とりのこえがしてきた。かじゅうたちもおきて、 「ねぼうをしたものだ。)

鶏の声がしてきた。家従たちも起きて、 「寝坊をしたものだ。

(はやくおくるまのよういをせい」 そんなめいれいもくだしていた。)

早くお車の用意をせい」 そんな命令も下していた。

(「おんなのいえへかたたがえにおいでになったばあいとはちがいますよ。)

「女の家へ方違えにおいでになった場合とは違いますよ。

(はやくおかえりになるひつようはすこしもないじゃありませんか」 といっているのは)

早くお帰りになる必要は少しもないじゃありませんか」 と言っているのは

(きいのかみであった。 げんじはもうまたこんなきかいがつくりだせそうにないことと、)

紀伊守であった。 源氏はもうまたこんな機会が作り出せそうにないことと、

(こんごどうしてぶんつうをすればよいか、どうもそれがふかのうらしいことで)

今後どうして文通をすればよいか、どうもそれが不可能らしいことで

(むねをいたくしていた。おんなをいかせようとしてもまたひきとめるげんじであった。)

胸を痛くしていた。女を行かせようとしてもまた引き留める源氏であった。

(「どうしてあなたとつうしんをしたらいいでしょう。あくまでれいたんなあなたへの)

「どうしてあなたと通信をしたらいいでしょう。あくまで冷淡なあなたへの

(うらみも、こいも、ひととおりでないわたくしが、こんやのことだけをいつまでもないて)

恨みも、恋も、一通りでない私が、今夜のことだけをいつまでも泣いて

(おもっていなければならないのですか」 ないているげんじがひじょうにえんにみえた。)

思っていなければならないのですか」 泣いている源氏が非常に艶に見えた。

(なんどもとりがないた。 )

何度も鶏が鳴いた。

(つれなさをうらみもはてぬしののめにとりあえぬまでおどろかすらん )

つれなさを恨みもはてぬしののめにとりあへぬまで驚かすらん

(あわただしいこころもちでげんじはこうささやいた。おんなはおのれをかえりみると、)

あわただしい心持ちで源氏はこうささやいた。女は己を省みると、

(ふにあいというはれがましさをかんぜずにはいられないげんじからどんなにねつじょうてきに)

不似合いという晴がましさを感ぜずにはいられない源氏からどんなに熱情的に

(おもわれても、これをうれしいこととすることができないのである。)

思われても、これをうれしいこととすることができないのである。

(それにじぶんとしてはあいじょうのもてないおっとのいるいよのくにがおもわれて、)

それに自分としては愛情の持てない良人のいる伊予の国が思われて、

(こんなゆめをみてはいないだろうかとかんがえるとおそろしかった。 )

こんな夢を見てはいないだろうかと考えると恐ろしかった。

(みのうさをなげくにあかであくるよはとりかさねてもねぞなかれける )

身の憂さを歎くにあかで明くる夜はとり重ねても音ぞ泣かれける

(といった。ずんずんあかるくなってゆく。おんなはからかみのところまでおくっていった。)

と言った。ずんずん明るくなってゆく。女は襖子の所まで送って行った。

(おくのほうのひとも、こちらのえんのほうのひともおきだしてきたんでざわついた。)

奥のほうの人も、こちらの縁のほうの人も起き出して来たんでざわついた。

など

(からかみをしめてもとのせきへかえっていくげんじは、ひとえのからかみがこえがたいへだての)

襖子をしめてもとの席へ帰って行く源氏は、一重の襖子が越えがたい隔ての

(せきのようにおもわれた。 のうしなどをきて、すがたをととのえたげんじがえんがわのこうらんに)

関のように思われた。 直衣などを着て、姿を整えた源氏が縁側の高欄に

(よりかかっているのが、りんしつのえんひくいついたてのうえのほうからみえるのをのぞいて、)

よりかかっているのが、隣室の縁低い衝立の上のほうから見えるのをのぞいて、

(げんじのびのはなつひかりがみのなかへしみとおるようにおもっているにょうぼうもあった。)

源氏の美の放つ光が身の中へしみ通るように思っている女房もあった。

(ざんげつのあるころでおちついたそらのあかりがものをさわやかにてらしていた。)

残月のあるころで落ち着いた空の明かりが物をさわやかに照らしていた。

(かわったおもしろいなつのあけぼのである。だれもしらぬものおもいを、こころにいだいた)

変わったおもしろい夏の曙である。だれも知らぬ物思いを、心に抱いた

(げんじであるから、しゅかんてきにひどくみにしむよあけのふうけいだとおもった。)

源氏であるから、主観的にひどく身にしむ夜明けの風景だと思った。

(ことづてひとつするべんぎがないではないかとおもってかえりみがちにさった。)

言づて一つする便宜がないではないかと思って顧みがちに去った。

(いえへかえってからもげんじはすぐにねむることができなかった。さいかいのしなんである)

家へ帰ってからも源氏はすぐに眠ることができなかった。再会の至難である

(かなしみだけをじぶんはしているが、じゆうなおとこでないひとづまのあのひとはこのほかにも)

悲しみだけを自分はしているが、自由な男でない人妻のあの人はこのほかにも

(いろいろなはんもんがあるはずであるとおもいやっていた。かんじのよさをじゅうぶんにそなえた)

いろいろな煩悶があるはずであると思いやっていた。感じのよさを十分に備えた

(なかのしなだ。だからおおくのけいけんをもったおとこのいうことにはけいふくされるてんがあると、)

中の品だ。だから多くの経験を持った男の言うことには敬服される点があると、

(しなさだめのよるのはなしをおもいだしていた。 このごろはずっとさだいじんけにげんじはいた。)

品定めの夜の話を思い出していた。 このごろはずっと左大臣家に源氏はいた。

(あれきりなんともいってやらないことは、おんなのみにとってどんなに)

あれきり何とも言ってやらないことは、女の身にとってどんなに

(くるしいことだろうとなかがわのおんなのことがあわれまれて、しじゅうこころにかかって)

苦しいことだろうと中川の女のことがあわれまれて、始終心にかかって

(くるしいはてにげんじはきいのかみをまねいた。 「じぶんのてもとへ、このあいだみたちゅうなごんの)

苦しいはてに源氏は紀伊守を招いた。 「自分の手もとへ、この間見た中納言の

(こどもをよこしてくれないか。かわいいこだったからそばでつかおうとおもう。)

子供をよこしてくれないか。かわいい子だったからそばで使おうと思う。

(ごしょへだすこともわたくしからしてやろう」 というのであった。)

御所へ出すことも私からしてやろう」 と言うのであった。

(「けっこうなことでございます。あのこのあねにそうだんしてみましょう」)

「結構なことでございます。あの子の姉に相談してみましょう」

(そのひとがおもわずひきあいにだされたことだけででもげんじのむねはなった。)

その人が思わず引き合いに出されたことだけででも源氏の胸は鳴った。

(「そのねえさんはきみのおとうとをうんでいるの」 「そうでもございません。)

「その姉さんは君の弟を生んでいるの」 「そうでもございません。

(このにねんほどまえからちちのつまになっていますが、しんだちちおやがのぞんでいたことで)

この二年ほど前から父の妻になっていますが、死んだ父親が望んでいたことで

(ないようなけっこんをしたとおもうのでしょう。ふまんらしいということでございます」)

ないような結婚をしたと思うのでしょう。不満らしいということでございます」

(「かわいそうだね、ひょうばんのむすめだったが、ほんとうにうつくしいのか」)

「かわいそうだね、評判の娘だったが、ほんとうに美しいのか」

(「さあ、わるくもないのでございましょう。としのいったむすことわかいままははは)

「さあ、悪くもないのでございましょう。年のいった息子と若い継母は

(したしくせぬものだともうしますから、わたくしはそのしゅうかんにしたがっておりまして)

親しくせぬものだと申しますから、私はその習慣に従っておりまして

(なにもくわしいことはぞんじません」 ときいのかみはこたえていた。)

何も詳しいことは存じません」 と紀伊守は答えていた。

(きいのかみはご、ろくにちしてからそのこどもをつれてきた。ととのったかおというのでは)

紀伊守は五、六日してからその子供をつれて来た。整った顔というのでは

(ないが、えんなふうさいをそなえていて、きぞくのこらしいところがあった。そばへよんで)

ないが、艶な風采を備えていて、貴族の子らしいところがあった。そばへ呼んで

(げんじはうちとけてはなしてやった。こどもごころにうつくしいげんじのきみのおんこをうけうるひとに)

源氏は打ち解けて話してやった。子供心に美しい源氏の君の恩顧を受けうる人に

(なれたことをよろこんでいた。あねのこともくわしくげんじはきいた。)

なれたことを喜んでいた。姉のことも詳しく源氏は聞いた。

(へんじのできることだけはへんじをして、つつしみぶかくしているこどもに、)

返辞のできることだけは返辞をして、つつしみ深くしている子供に、

(げんじはひみつをうちあけにくかった。けれどもじょうずにうそまじりにはなして)

源氏は秘密を打ちあけにくかった。けれども上手に嘘まじりに話して

(きかせると、そんなことがあったのかと、こどもごころにおぼろげに)

聞かせると、そんなことがあったのかと、子供心におぼろげに

(わかればわかるほどいがいであったが、こどもはふかいせんさくをしようともしない。)

わかればわかるほど意外であったが、子供は深い穿鑿をしようともしない。

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