紫式部 源氏物語 空蝉 4 與謝野晶子訳(終)

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問題文

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(こぎみをくるまのあとにのせて、げんじはにじょうのいんへかえった。そのひとににげられて)

小君を車のあとに乗せて、源氏は二条の院へ帰った。その人に逃げられて

(しまったこんやのしまつをげんじははなして、おまえはこどもだ、やはりだめだといい、)

しまった今夜の始末を源氏は話して、おまえは子供だ、やはりだめだと言い、

(そのあねのたいどがあくまでうらめしいふうにかたった。きのどくでこぎみはなんともへんじを)

その姉の態度があくまで恨めしいふうに語った。気の毒で小君は何とも返辞を

(することができなかった。 「ねえさんはわたくしをよほどきらっているらしいから、)

することができなかった。 「姉さんは私をよほどきらっているらしいから、

(そんなにきらわれるじぶんがいやになった。そうじゃないか、せめてはなすこと)

そんなにきらわれる自分がいやになった。そうじゃないか、せめて話すこと

(ぐらいはしてくれてもよさそうじゃないか。わたくしはいよのすけよりつまらないおとこに)

ぐらいはしてくれてもよさそうじゃないか。私は伊予介よりつまらない男に

(ちがいない」 うらめしいこころから、こんなことをいった。そしてもってきたうすい)

違いない」 恨めしい心から、こんなことを言った。そして持って来た薄い

(きものをねどこのなかへいれてねた。こぎみをすぐまえにねさせて、うらめしくおもうことも、)

着物を寝床の中へ入れて寝た。小君をすぐ前に寝させて、恨めしく思うことも、

(こいしいこころもちもいっていた。 「おまえはかわいいけれど、うらめしいひとの)

恋しい心持ちも言っていた。 「おまえはかわいいけれど、恨めしい人の

(おとうとだから、いつまでもわたくしのこころがおまえをあいしうるかどうか」 まじめそうにげんじが)

弟だから、いつまでも私の心がお前を愛しうるかどうか」 まじめそうに源氏が

(こういうのをきいてこぎみはしおれていた。しばらくめをとじていたがげんじは)

こう言うのを聞いて小君はしおれていた。しばらく目を閉じていたが源氏は

(ねられなかった。おきるとすぐにすずりをとりよせててがみらしいてがみでなく)

寝られなかった。起きるとすぐに硯を取り寄せて手紙らしい手紙でなく

(むだがきのようにしてかいた。 )

無駄書きのようにして書いた。

(うつせみのみをかえてけるこのもとになおひとがらのなつかしきかな )

空蝉の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな

(このうたをわたされたこぎみはふところのなかへよくしまった。あのむすめへもなにか)

この歌を渡された小君は懐の中へよくしまった。あの娘へも何か

(いってやらねばとげんじはおもったが、いろいろかんがえたすえにてがみをかいてこぎみに)

言ってやらねばと源氏は思ったが、いろいろ考えた末に手紙を書いて小君に

(たくすることはやめた。 あのうすぎぬはこうちぎだった。なつかしいきのするにおいが)

託することはやめた。 あの薄衣は小袿だった。なつかしい気のする匂いが

(ふかくついているのをげんじはじしんのそばからはなそうとしなかった。)

深くついているのを源氏は自身のそばから離そうとしなかった。

(こぎみがあねのところへいった。うつせみはまっていたようにきびしいこごとをいった。)

小君が姉のところへ行った。空蝉は待っていたようにきびしい小言を言った。

(「ほんとうにおどろかされてしまった。わたくしはかくれてしまったけれど、だれが)

「ほんとうに驚かされてしまった。私は隠れてしまったけれど、だれが

など

(どんなことをそうぞうするかもしれないじゃないの。あさはかなことばかりする)

どんなことを想像するかもしれないじゃないの。あさはかなことばかりする

(あなたを、あちらではかえってけいべつなさらないかとしんぱいする」)

あなたを、あちらではかえって軽蔑なさらないかと心配する」

(げんじとあねのなかにたって、どちらからもうけるこごとのおおいことをこぎみはくるしく)

源氏と姉の中に立って、どちらからも受ける小言の多いことを小君は苦しく

(おもいながらことづかったうたをだした。さすがになかをあけてうつせみはよんだ。)

思いながらことづかった歌を出した。さすがに中をあけて空蝉は読んだ。

(ぬけがらにしてげんじにとられたこうちぎが、みぐるしいきふるしになって)

抜け殻にして源氏に取られた小袿が、見苦しい着古しになって

(いなかったろうかなどとおもいながらもそのひとのあいがみにしんだ。うつせみのしている)

いなかったろうかなどと思いながらもその人の愛が身に沁んだ。空蝉のしている

(はんもんはふくざつだった。 にしのたいのひともけさははずかしいきもちでかえって)

煩悶は複雑だった。 西の対の人も今朝は恥ずかしい気持ちで帰って

(いったのである。ひとりのにょうぼうすらもきのつかなかったじけんであったから、)

行ったのである。一人の女房すらも気のつかなかった事件であったから、

(ただひとりでものおもいをしていた。こぎみがいえのなかをゆききするかげをみてもむねを)

ただ一人で物思いをしていた。小君が家の中を往来する影を見ても胸を

(おどらせることがおおいにもかかわらずてがみはもらえなかった。これをおとこの)

おどらせることが多いにもかかわらず手紙はもらえなかった。これを男の

(れいたんさからとはまだかんがえることができないのであるが、はすっぱなこころにもうれいをおぼえる)

冷淡さからとはまだ考えることができないのであるが、蓮葉な心にも愁を覚える

(ひがあったであろう。 れいせいをよそおっていながらうつせみも、げんじのしんじつが)

日があったであろう。 冷静を装っていながら空蝉も、源氏の真実が

(かんぜられるにつけて、むすめのじだいであったならとかえらぬうんめいが)

感ぜられるにつけて、娘の時代であったならとかえらぬ運命が

(かなしくばかりなって、げんじからきたうたのかみのはしに、 )

悲しくばかりなって、源氏から来た歌の紙の端に、

(うつせみのはにおくつゆのこかくれてしのびしのびにぬるるそでかな )

うつせみの羽に置く露の木隠れて忍び忍びに濡るる袖かな

(こんなうたをかいていた。)

こんな歌を書いていた。

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