紫式部 源氏物語 夕顔 9 與謝野晶子訳

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(これみつがげんじのいどころをつきとめてきて、よういしてきたかしなどをざしきへもたせて)

惟光が源氏の居所を突きとめてきて、用意してきた菓子などを座敷へ持たせて

(よこした。これまでしらばくれていたたいどをうこんにうらまれるのがつらくて、)

よこした。これまで白ばくれていた態度を右近に恨まれるのがつらくて、

(ちかいところへはかおをみせない。これみつはげんじがひとさわがせにいどころをふめいにして、)

近い所へは顔を見せない。惟光は源氏が人騒がせに居所を不明にして、

(いちにちをぎせいにするまでねっしんになりうるあいてのおんなは、それにあたいするもので)

一日を犠牲にするまで熱心になりうる相手の女は、それに価する者で

(あるらしいとそうぞうをして、とうぜんじこのものになしうるはずのひとを)

あるらしいと想像をして、当然自己のものになしうるはずの人を

(しゅくんにゆずったじぶんはこうりょうなものだとしっとににたこころでじちょうもし、)

主君にゆずった自分は広量なものだと嫉妬に似た心で自嘲もし、

(せんぼうもしていた。 しずかなしずかなゆうがたのそらをながめていて、おくのほうはくらくて)

羨望もしていた。 静かな静かな夕方の空をながめていて、奥のほうは暗くて

(きみがわるいとゆうがおがおもうふうなので、えんのすだれをあげてゆうばえのくもをいっしょに)

気味が悪いと夕顔が思うふうなので、縁の簾を上げて夕映えの雲をいっしょに

(みて、おんなもげんじもただふたりでくらしえたいちにちに、まだまったくおちつかぬ)

見て、女も源氏もただ二人で暮らしえた一日に、まだまったく落ち着かぬ

(こいのきょうちとはいえ、かこにしらないまんぞくがえられたらしく、すこしずつうちとけた)

恋の境地とはいえ、過去に知らない満足が得られたらしく、少しずつ打ち解けた

(ようすがかれんであった。じっとげんじのそばへよって、このばしょが)

様子が可憐であった。じっと源氏のそばへ寄って、この場所が

(こわくてならぬふうであるのがいかにもわかわかしい。こうしをはやくおろして)

こわくてならぬふうであるのがいかにも若々しい。格子を早くおろして

(ひをつけさせてからも、 「わたくしのほうにはもうなにもひみつがのこっていないのに、)

灯をつけさせてからも、 「私のほうにはもう何も秘密が残っていないのに、

(あなたはまだそうでないのだからいけない」 などとげんじはうらみをいっていた。)

あなたはまだそうでないのだからいけない」 などと源氏は恨みを言っていた。

(へいかはきっときょうもじぶんをおめしになったにちがいないが、さがすひとたちは)

陛下はきっと今日も自分をお召しになったに違いないが、捜す人たちは

(どうけんとうをつけてどこへいっているだろう、などとそうぞうしながらも、)

どう見当をつけてどこへ行っているだろう、などと想像しながらも、

(これほどまでにこのおんなをできあいしているじぶんをげんじはふしぎにおもった。)

これほどまでにこの女を溺愛している自分を源氏は不思議に思った。

(ろくじょうのきじょもどんなにはんもんをしていることだろう、うらまれるのはくるしいが)

六条の貴女もどんなに煩悶をしていることだろう、恨まれるのは苦しいが

(うらむのはどうりであると、こいびとのことはこんなときにもまずきにかかった。)

恨むのは道理であると、恋人のことはこんな時にもまず気にかかった。

(むじゃきにおとこをしんじていっしょにいるおんなにあいをかんじるとともに、あまりにまでたかい)

無邪気に男を信じていっしょにいる女に愛を感じるとともに、あまりにまで高い

など

(じそんしんにみずからわずらわされているろくじょうのきじょがおもわれて、すこしそのてんを)

自尊心にみずから煩わされている六条の貴女が思われて、少しその点を

(とりすてたならと、がんぜんのひとにくらべてげんじはおもうのであった。)

取り捨てたならと、眼前の人に比べて源氏は思うのであった。

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