紫式部 源氏物語 花宴 5 與謝野晶子訳(終)
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | berry | 7820 | 神 | 7.9 | 98.7% | 400.6 | 3172 | 39 | 47 | 2024/11/10 |
2 | HAKU | 7572 | 神 | 7.7 | 97.5% | 414.0 | 3216 | 81 | 47 | 2024/11/10 |
3 | □「いいね」する | 7363 | 光 | 7.7 | 95.6% | 414.6 | 3198 | 145 | 47 | 2024/11/14 |
4 | もっちゃん先生 | 4579 | C++ | 4.8 | 95.3% | 669.0 | 3221 | 157 | 47 | 2024/11/12 |
5 | りつ | 4436 | C+ | 4.6 | 96.3% | 706.7 | 3259 | 124 | 47 | 2024/11/10 |
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問題文
(さんがつのはつかすぎにうだいじんはじていでゆみのしょうぶのもよおしをして、しんのうかたをはじめ)
三月の二十日過ぎに右大臣は自邸で弓の勝負の催しをして、親王方をはじめ
(こうかんをおおくしょうたいした。とうかのえんもつづいておなじひにおこなわれることに)
高官を多く招待した。藤花の宴も続いて同じ日に行われることに
(なっているのである。もうさくらのさかりはすぎているのであるが、「ほかのちりなん)
なっているのである。もう桜の盛りは過ぎているのであるが、「ほかの散りなん
(あとにさかまし」とおしえられてあったかにほんだけよくさいたのがあった。)
あとに咲かまし」と教えられてあったか二本だけよく咲いたのがあった。
(しんちくしてそとまごのないしんのうかたのもぎにもちいて、うつくしくそうしょくされたきゃくでんがあった。)
新築して外孫の内親王方の裳着に用いて、美しく装飾された客殿があった。
(はでなやしきでなにごともみなきんだいごのみであった。うだいじんはげんじのきみにもきゅうちゅうであったひに)
派手な邸で何事も皆近代好みであった。右大臣は源氏の君にも宮中で逢った日に
(らいかいをもうしいれたのであるが、そのひにびぼうのげんじがすがたをみせないのを)
来会を申し入れたのであるが、その日に美貌の源氏が姿を見せないのを
(ざんねんにおもって、むすこのしいのしょうしょうをむかえにだした。 )
残念に思って、息子の四位少将を迎えに出した。
(わがやどのはなしなべてのいろならばなにかはさらにきみをまたまし )
わが宿の花しなべての色ならば何かはさらに君を待たまし
(うだいじんからげんじへおくったうたである。げんじはごしょにいたときで、)
右大臣から源氏へ贈った歌である。源氏は御所にいた時で、
(みかどにこのことをもうしあげた。 「とくいなのだね」)
帝にこのことを申し上げた。 「得意なのだね」
(みかどはおわらいになって、 「つかいまでもよこしたのだからいってやるがいい。)
帝はお笑いになって、 「使いまでもよこしたのだから行ってやるがいい。
(まごのないしんのうたちのためにしょうらいあにとしてちからになってもらいたいとねがっている)
孫の内親王たちのために将来兄として力になってもらいたいと願っている
(だいじんのうちなのだから」 などとおおせられた。ことにうつくしくよそおって、)
大臣の家なのだから」 などと仰せられた。ことに美しく装って、
(ずっとひがくれてからまたれてげんじはいった。さくらのいろのしなにしきののうし、あかむらさきの)
ずっと日が暮れてから待たれて源氏は行った。桜の色の支那錦の直衣、赤紫の
(したがさねのすそをながくひいて、ほかのひとはみなせいそうのほうをきてでているせきへ、)
下襲の裾を長く引いて、ほかの人は皆正装の袍を着て出ている席へ、
(えんなみやさますがたをしたげんじが、たすうのひとにけいいをあらわされながらはいっていった。)
艶な宮様姿をした源氏が、多数の人に敬意を表されながらはいって行った。
(さくらのはなのびがこのときにわかにげんじてしまったようにおもわれた。おんがくのあそびも)
桜の花の美がこの時にわかに減じてしまったように思われた。音楽の遊びも
(すんでから、よがすこしふけたじぶんである。げんじはさけのよいになやむふうをしながら)
済んでから、夜が少しふけた時分である。源氏は酒の酔いに悩むふうをしながら
(そっとせきをたった。ちゅうおうのしんでんににょいちのみや、にょさんのみやがすんでおいでに)
そっと席を立った。中央の寝殿に女一の宮、女三の宮が住んでおいでに
(なるのであるが、そこのひがしのつまどのくちへげんじはよりかかっていた。)
なるのであるが、そこの東の妻戸の口へ源氏はよりかかっていた。
(ふじはこのえんがわとひがしのたいのあいだのにわにさいているので、こうしはみなあげわたされていた。)
藤はこの縁側と東の対の間の庭に咲いているので、格子は皆上げ渡されていた。
(みすぎわにはにょうぼうがならんでいた。そのひとたちのそとへだしているそでぐちの)
御簾ぎわには女房が並んでいた。その人たちの外へ出している袖口の
(かさなりようのおおぎょうさはとうかのよるのけんぶつせきがおもわれた。きょうなどのことに)
重なりようの大ぎょうさは踏歌の夜の見物席が思われた。今日などのことに
(つりあったことではないとみて、しゅみのせんれんされたふじつぼへんのことがなつかしく)
つりあったことではないと見て、趣味の洗練された藤壺辺のことがなつかしく
(げんじにはおもわれた。 「くるしいのにしいられたさけでわたくしはこまっています。)
源氏には思われた。 「苦しいのにしいられた酒で私は困っています。
(もったいないことですがこちらのみやさまにはかばっていただくえんこがあると)
もったいないことですがこちらの宮様にはかばっていただく縁故があると
(おもいますから」 つまどにそったみすのしたからじょうはんしんをすこしげんじはなかへいれた。)
思いますから」 妻戸に添った御簾の下から上半身を少し源氏は中へ入れた。
(「こまります。あなたさまのようなそんきなごみぶんのかたはしんるいのえんこなどを)
「困ります。あなた様のような尊貴な御身分の方は親類の縁故などを
(おっしゃるものではございませんでしょう」 というおんなのようすには、)
おっしゃるものではございませんでしょう」 と言う女の様子には、
(おもおもしさはないが、ただのわかいにょうぼうとはおもわれぬひんのよさと)
重々しさはないが、ただの若い女房とは思われぬ品のよさと
(うつくしいかんじのあるのをげんじはみとめた。たきものがけむいほどにたかれていて、)
美しい感じのあるのを源氏は認めた。薫物が煙いほどに焚かれていて、
(このしつないにたちいするおんなのきぬずれのおとがはなやかなものにおもわれた。)
この室内に起ち居する女の衣摺れの音がはなやかなものに思われた。
(おくゆかしいところはかけて、はでなげんだいがたのぜいたくさがみえるのである。)
奥ゆかしいところは欠けて、派手な現代型の贅沢さが見えるのである。
(れいじょうたちがけんぶつのためにこのへんへでているので、つまどがしめられて)
令嬢たちが見物のためにこの辺へ出ているので、妻戸がしめられて
(あったものらしい。きじょがこんなところへでているというようなことに)
あったものらしい。貴女がこんな所へ出ているというようなことに
(さんいはあらわされなかったが、さすがにわかいげんじとしておもしろいことにおもわれた。)
賛意は表されなかったが、さすがに若い源氏としておもしろいことに思われた。
(このなかのだれをこいびととみわけてよいのかとげんじのむねはとどろいた。)
この中のだれを恋人と見分けてよいのかと源氏の胸はとどろいた。
(「おうぎをとられてからきめをみる」(こまびとにおびをとられてからきめをみる))
「扇を取られてからき目を見る」(高麗人に帯を取られてからき目を見る)
(じょうだんらしくこういってみすにみをよせていた。 「かわったこまびとなのね」)
戯談らしくこう言って御簾に身を寄せていた。 「変わった高麗人なのね」
(というひとりはむかんけいなれいじょうなのであろう。なにもいわずにときどきためいきのきこえる)
と言う一人は無関係な令嬢なのであろう。何も言わずに時々溜息の聞こえる
(ひとのいるほうへげんじはよっていって、きちょうごしにてをとらえて、 )
人のいるほうへ源氏は寄って行って、几帳越しに手をとらえて、
(「あづさゆみいるさのやまにまどうかなほのみしつきのかげやみゆると )
「あづさ弓いるさの山にまどふかなほの見し月の影や見ゆると
(なぜでしょう」 とあてすいりょうにいうと、そのひともかんじょうをおさえかねたか、)
なぜでしょう」 と当て推量に言うと、その人も感情をおさえかねたか、
(こころいるかたなりませばゆみはりのつきなきそらにまよわましやは )
心いる方なりませば弓張の月なき空に迷はましやは
(とへんじをした。こきでんのつきよにきいたのとおなじこえである。)
と返辞をした。弘徽殿の月夜に聞いたのと同じ声である。
(げんじはうれしくてならないのであるが。)
源氏はうれしくてならないのであるが。