紫式部 源氏物語 須磨 5 與謝野晶子訳

順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | subaru | 7787 | 神 | 8.1 | 96.0% | 263.1 | 2136 | 87 | 34 | 2025/10/15 |
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問題文
(はなちるさとがこころぼそがって、こんどのことがきまっていらいしじゅうてがみをよこすのも、)
花散里が心細がって、今度のことが決まって以来始終手紙をよこすのも、
(げんじにはもっともなこととおもわれて、あのひとももういちどあいにいってやらねば)
源氏にはもっともなことと思われて、あの人ももう一度逢いに行ってやらねば
(うらめしくおもうであろうというきがして、こんやもまたそこへいくために)
恨めしく思うであろうという気がして、今夜もまたそこへ行くために
(いえをでるのを、げんじはじしんながらもものたらずさびしくおもわれて、)
家を出るのを、源氏は自身ながらも物足らず寂しく思われて、
(きがすすまなかったために、ずっとふけてからきたのを、)
気が進まなかったために、ずっとふけてから来たのを、
(「ここまでもわかれにおあるきになるところのひとつにしておよりくださいましたとは」)
「ここまでも別れにお歩きになる所の一つにしてお寄りくださいましたとは」
(こんなことをいってよろこんだにょごのことなどはすこししょうりゃくしておく。)
こんなことを言って喜んだ女御のことなどは少し省略して置く。
(このこころぼそいおんなきょうだいはげんじのどうじょうによってわずかにせいかつのたいめんを)
この心細い女兄弟は源氏の同情によってわずかに生活の体面を
(たもっているのであるから、こんごはどうなっていくかというようなふあんが、)
保っているのであるから、今後はどうなって行くかというような不安が、
(さびしいいえのなかにただよっているようにげんじはみた。おぼろなつきがさしてきて、)
寂しい家の中に漂っているように源氏は見た。おぼろな月がさしてきて、
(ひろいいけのあたり、きのおおいつきやまのあたりがさびしくみわたされたとき、)
広い池のあたり、木の多い築山のあたりが寂しく見渡された時、
(ましてすまのうらはさびしいであろうとげんじはおもった。にしざしきにいるひめぎみは、)
まして須磨の浦は寂しいであろうと源氏は思った。西座敷にいる姫君は、
(しゅっぱつのまえふつかになってはもうげんじのらいほうはうけられないものとおもって、)
出発の前二日になってはもう源氏の来訪は受けられないものと思って、
(きをめいらせていたのであったが、しめやかなつきのひかりのなかを、げんじがこちらへ)
気をめいらせていたのであったが、しめやかな月の光の中を、源氏がこちらへ
(あるいてきたのをしって、しずかにいざってでた。そしてそのままふたりはならんで)
歩いて来たのを知って、静かに膝行って出た。そしてそのまま二人は並んで
(つきをながめながらかたっているうちにあけがたちかいときになった。)
月をながめながら語っているうちに明け方近い時になった。
(「よるがみじかいのですね。ただこんなふうにだけでもいっしょにいられることが)
「夜が短いのですね。ただこんなふうにだけでもいっしょにいられることが
(もうないかもしれませんね。わたくしたちがまだこんないやなよのなかのかちゅうに)
もうないかもしれませんね。私たちがまだこんないやな世の中の渦中に
(まきこまれないでいられたころを、なぜむだにばかりしたのでしょう。)
巻き込まれないでいられたころを、なぜむだにばかりしたのでしょう。
(かこにもみらいにもれいのすくないようなふこうなおとこになるのをしらないで、あなたと)
過去にも未来にも例の少ないような不幸な男になるのを知らないで、あなたと
(いっしょにいてよいじかんをなぜこれまでにたくさんつくらなかったのだろう」)
いっしょにいてよい時間をなぜこれまでにたくさん作らなかったのだろう」
(こいのはじめからきょうまでのことをげんじがいいだして、かんしょうてきなはなしの)
恋の初めから今日までのことを源氏が言い出して、感傷的な話の
(つきないのであるが、とりももうたびたびないた。げんじはやはりせけんを)
尽きないのであるが、鶏ももうたびたび鳴いた。源氏はやはり世間を
(はばかって、ここからもそうぎょうにでていかねばならないのである。)
はばかって、ここからも早暁に出て行かねばならないのである。
(つきがすっとはいってしまうときのようなきがしておんなごころはかなしかった。)
月がすっとはいってしまう時のような気がして女心は悲しかった。
(つきのひかりがちょうどはなちるさとのそでのうえにさしているのである。)
月の光がちょうど花散里の袖の上にさしているのである。
(「やどるつきさえぬるるかおなる」といううたのようであった。 )
「宿る月さへ濡るる顔なる」という歌のようであった。
(つきかげのやどれるそではせまくともとめてぞみばやあかぬひかりを )
月影の宿れる袖は狭くともとめてぞ見ばや飽かぬ光を
(こういって、はなちるさとのかなしがっているようすがあまりにあわれで、)
こう言って、花散里の悲しがっている様子があまりに哀れで、
(げんじのほうからなぐさめてやらねばならなかった。 )
源氏のほうから慰めてやらねばならなかった。
(「ゆきめぐりついにすむべきつきかげのしばしくもらんそらなながめそ )
「行きめぐりつひにすむべき月影のしばし曇らん空なながめそ
(はかないことだ。わたくしはきぼうをもっているのだが、)
はかないことだ。私は希望を持っているのだが、
(はんたいになみだがながれてきてこころをくらくされますよ」 とげんじはいって、)
反対に涙が流れてきて心を暗くされますよ」 と源氏は言って、
(よあけまえのいちじてきにくらくなるころにかえっていった。)
夜明け前の一時的に暗くなるころに帰って行った。