全て貴方の所為です。「雨曝」

(めいていのとおりのうらでは、ひかりとよぎりがまざっていました。)

酩酊の通りの裏では、光と夜霧が混ざっていました。

(はれをまってもただつくばうばかりで、なにもきこえやしない。)

霽れを待ってもただ蹲うばかりで、何も聞こえやしない。

(わたしはまいごになって、とうめいのびにーるがさをなくしました。)

私は迷子になって、透明のビニール傘を失くしました。

(はれをまってもただおびえるばかりで、なにもみえやしない。)

霽れを待ってもただ怯えるばかりで、何も見えやしない。

(うそいつわりがなけりゃ、たいくつでしようがなく。)

嘘偽りが無けりゃ、退屈で仕様が無く。

(みみをふさぐしかありません。)

耳を塞ぐしかありません。

(ぎょうかんをつめました。)

行間を詰めました。

(あまざらしのもとうたげをひらいた、)

雨曝の下宴を啓いた、

(そこではつみがゆるされたよ。)

其処では罪が赦されたよ。

(しょうじょはあいされていたんだね、)

少女は愛されていたんだね、

(くらすぎてみえなかったよ。)

幽すぎて見えなかったよ。

(どこへいっちゃったの？)

何処へ行っちゃったの？

(しんでしまったの？)

死んでしまったの？

(どうしてでてきてくれないの？)

どうして出てきてくれないの？

(ばけねこにでもなってしまったの？)

化け猫にでもなってしまったの？

(おばけなんかよりも、ひとりがこわいよ。)

お化けなんかよりも、独りが怖いよ。

(いかさまなこよみのかぜにのまれるそうぼうのこえは、)

如何様な暦の風に呑まれる蒼氓の声は、

(けたたましくて。)

消魂しくて。

(さらにおくのほうをすすんだところで、)

更に奥の方を進んだところで、

(なにもきこえやしない。)

何も聞こえやしない。

(じょうはりをのぞきこんで、うなだれていました。)

浄玻璃を覗き込んで、項垂れていました。

(どうこうをあけて、)

瞳孔を空けて、

(さらにおくのほうをのぞいだところで、)

更に奥の方を覗いだところで、

(なにもみえやしない。)

何も見えやしない。

(ゆくえふめいのじばくれいが、)

行方不明の地縛霊が、

(すすりないていた。)

すすり泣いていた。

(かえるばしょをさがすことも、)

還る場所を探すことも、

(もはやあきらめていた。)

最早諦めていた。

(あまざらしのもとうたげをひらいた、)

雨曝の下宴を啓いた、

(そこではつみがゆるされたよ。)

其処では罪が赦されたよ。

(しょうじょはあいされていたんだね、)

少女は愛されていたんだね、

(くらすぎてつかむこともできない。)

幽すぎて掴むことも出来ない。

(にせものさえもなりすまされ、)

偽物さえも成り済まされ、

(むいみでむかちなことばだけを)

無意味で無価値な言葉だけを

(のこしていました。)

残していました。

(それがあまりにもみるにこたえないものだったので、)

それが余りにも見るに堪えないものだったので、

(めをつぶるしかありません。)

目を瞑るしかありません。

(すべてあなたのせいです。)

全て貴方の所為です。

(あまざらしのもとうたげをひらいた、)

雨曝の下宴を啓いた、

(そこではつみがゆるされたよ。)

其処では罪が赦されたよ。

(しょうじょはあいされていたんだね、)

少女は愛されていたんだね、

(くらすぎてみえなかったよ。)

幽すぎて見えなかったよ。

(どこへいっちゃったの？)

何処へ行っちゃったの？

(しんでしまったの？)

死んでしまったの？

(どうしてでてきてくれないの？)

どうして出てきてくれないの？

(ばけねこにでもなってしまったの？)

化け猫にでもなってしまったの？

(わたしはおいていかれたの？)

私は置いて行かれたの？

(どこへいっちゃったの？)

何処へ行っちゃったの？

(しんでしまったの？)

死んでしまったの？

(どうしてでてきてくれないの？)

どうして出てきてくれないの？

(ばけねこにでもなってしまったの？)

化け猫にでもなってしまったの？

(わたしはおいていかれたの？)

私は置いて行かれたの？

(どこへいっちゃったの？)

何処へ行っちゃったの？

(しんでしまったの？)

死んでしまったの？

(どうしてでてきてくれないの？)

どうして出てきてくれないの？

(ばけねこにでもなってしまったの？)

化け猫にでもなってしまったの？

(おばけなんかよりも、ひとりがこわいよ。)

お化けなんかよりも、独りが怖いよ。