紫式部 源氏物語 澪標 2 與謝野晶子訳

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1 おもち 7297 7.7 94.8% 401.8 3101 169 45 2025/03/08

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問題文

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(よくとしのにがつにとうぐうのごげんぷくがあった。じゅうにでおありになるのであるが、)

翌年の二月に東宮の御元服があった。十二でおありになるのであるが、

(ごねんれいのわりにはおんおとならしくて、おきれいで、ただげんじのだいなごんのかおがふたつ)

御年齢のわりには御大人らしくて、おきれいで、ただ源氏の大納言の顔が二つ

(できたようにおみえになった。まぶしいほどのびをそなえておいでになるのを、)

できたようにお見えになった。まぶしいほどの美を備えておいでになるのを、

(せけんではおほめしているが、ははみやはそれをひとしれずくろうにしておいでになった。)

世間ではおほめしているが、母宮はそれを人知れず苦労にしておいでになった。

(みかどもとうぐうのごりっぱでおありになることにごまんぞくをあそばしてごそくいごのことを)

帝も東宮のごりっぱでおありになることに御満足をあそばして御即位後のことを

(なつかしいごようすでおおしえあそばした。 このおなじつきのにじゅういくにちに)

なつかしい御様子でお教えあそばした。 この同じ月の二十幾日に

(じょういのことがおこなわれた。たいこうはおおどろきになった。)

譲位のことが行われた。太后はお驚きになった。

(「ふがいなくおぼしめすでしょうが、わたくしはこうしてしずかにあなたへ)

「ふがいなく思召すでしょうが、私はこうして静かにあなたへ

(ごこうようがしたいのです」 とみかどはおなぐさめになったのであった。)

御孝養がしたいのです」 と帝はお慰めになったのであった。

(とうぐうにはじょうきょうでんのにょごのおうみしたおうじがおたちになった。)

東宮には承香殿の女御のお生みした皇子がお立ちになった。

(すべてのことにあたらしいみよのひかりのみえるひになった。みききするめにみみに)

すべてのことに新しい御代の光の見える日になった。見聞きする眼に耳に

(はなやかなきぶんのあじわわれることがおおかった。げんじのだいなごんはないだいじんになった。)

はなやかな気分の味わわれることが多かった。源氏の大納言は内大臣になった。

(さゆうのだいじんのせきがふさがっていたからである。そしてせっしょうにこのひとがなることも)

左右の大臣の席がふさがっていたからである。そして摂政にこの人がなることも

(とうぜんのこととおもわれていたが、 「わたくしはそんないそがしいしょくにたえられない」)

当然のことと思われていたが、 「私はそんな忙しい職に堪えられない」

(といって、ちしのさだいじんにせっしょうをゆずった。 「わたくしはびょうきによっていったんしょくを)

と言って、致仕の左大臣に摂政を譲った。 「私は病気によっていったん職を

(おかえししたにんげんなのですから、こんにちはましてとしもおいてしまったし、)

お返しした人間なのですから、今日はまして年も老いてしまったし、

(そうしたじゅうにんにあたることなどはだめです」 とだいじんはいってひきうけない。)

そうした重任に当たることなどはだめです」 と大臣は言って引き受けない。

(「しなでもせいかいのこんとんとしているじだいはしりぞいていんじゃになっているひとも)

「支那でも政界の混沌としている時代は退いて隠者になっている人も

(ちせいのきみがおきまりになれば、しらがもはじずおつかえにでてくるようなひとを)

治世の君がお決まりになれば、白髪も恥じずお仕えに出て来るような人を

(ほんとうのせいじんだといってほめています。ごびょうきでごじたいになったくらいを)

ほんとうの聖人だと言ってほめています。御病気で御辞退になった位を

など

(つぎのてんしのみよにあらためてちょうだいすることはさしつかえがありませんよ」)

次の天子の御代に改めて頂戴することはさしつかえがありませんよ」

(とげんじも、こうじんとしてしじんとしてちゅうこくした。だいじんもことわりきれずに)

と源氏も、公人として私人として忠告した。大臣も断り切れずに

(だじょうだいじんになった。としはろくじゅうさんであった。じじつはせんちょうにけんりょくをふるったひとたちに)

太政大臣になった。年は六十三であった。事実は先朝に権力をふるった人たちに

(あきたりないところがあってひきこもっていたのであるから、)

飽き足りないところがあって引きこもっていたのであるから、

(このひとにさかえのはるがまわってきたわけである。いっときふぐうになるようにみえた)

この人に栄えの春がまわってきたわけである。一時不遇になるように見えた

(しそくたちもうかびでたようである。そのなかでもさいしょうのちゅうじょうはごんのちゅうなごんになった。)

子息たちも浮かび出たようである。その中でも宰相中将は権中納言になった。

(しのきみがうんだことしじゅうにになるひめぎみをはやくからこうきゅうにぎして)

四の君が生んだ今年十二になる姫君を早くから後宮に擬して

(ちゅうなごんはだいじにそだてていた。いぜんにじょうのいんにつれられてきてたかさごをうたったこも)

中納言は大事に育てていた。以前二条の院につれられて来て高砂を歌った子も

(げんぷくさせてこうふくなかていをちゅうなごんはもっていた。はらばらにうまれたこどもがおおくて)

元服させて幸福な家庭を中納言は持っていた。腹々に生まれた子供が多くて

(いちぞくがにぎやかであるのをげんじはうらやましくおもっていた。)

一族がにぎやかであるのを源氏はうらやましく思っていた。

(だじょうだいじんけでそだてられていたげんじのこはだれよりもうつくしいこどもで、)

太政大臣家で育てられていた源氏の子はだれよりも美しい子供で、

(ごしょへもとうぐうへもてんじょうわらわとしてでいりしているのである。)

御所へも東宮へも殿上童として出入りしているのである。

(げんじのあおいふじんのしんだことを、ふぼはまたこのさかえゆくはるにかなしんだ。)

源氏の葵夫人の死んだことを、父母はまたこの栄えゆく春に悲しんだ。

(しかしすべてがむかしのむこのげんじによってもたらされたこうみょうであって、)

しかしすべてが昔の婿の源氏によってもたらされた光明であって、

(なんねんかのくらいかげがげんじのためにこのいえからとりさられたのである。)

何年かの暗い影が源氏のためにこの家から取り去られたのである。

(げんじはいまもむかしのとおりにろうふさいにこういをもっていてなにかのばあいに)

源氏は今も昔のとおりに老夫妻に好意を持っていて何かの場合に

(よくたずねていった。わかぎみのめのとそのほかのにょうぼうもながいあいだ)

よく訪ねて行った。若君の乳母そのほかの女房も長い間

(つとめているものに、あつくむくいてやることもげんじはわすれなかった。)

勤めている者に、厚く酬いてやることも源氏は忘れなかった。

(しあわせものがおおくできたわけである。にじょうのいんでもそのとおりに、)

幸せ者が多くできたわけである。二条の院でもそのとおりに、

(しゅじんをかえようともしなかったにょうぼうをげんじはこうぐうした。またちゅうじょうとか、)

主人を変えようともしなかった女房を源氏は好遇した。また中将とか、

(なかつかさとかいうあいじんかんけいであったひとたちにも、たねんのこどくがなぐさむるにたるほどな)

中務とかいう愛人関係であった人たちにも、多年の孤独が慰むるに足るほどな

(あいぶがわかたれねばならないのであったから、ひまがなくてそとあるきも)

愛撫が分かたれねばならないのであったから、暇がなくて外歩きも

(げんじはしなかった。にじょうのいんのひがしにあったやしきはいんのごいさんで)

源氏はしなかった。二条の院の東にあった邸は院の御遺産で

(げんじのしょゆうになっているのをこのごろげんじはあたらしくかいそうさせていた。)

源氏の所有になっているのをこのごろ源氏は新しく改装させていた。

(はなちるさとなどというこいびとたちをすませるためのせっけいをしてつくられているのである。)

花散里などという恋人たちを住ませるための設計をして造られているのである。

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