百人一首後半50首
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問題文
(かくとだにえやはいぶきのさしもぐささしもしらじなもゆるおもひを)
かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな もゆる思ひを
(あけぬればくるるものとはしりながらなほうらめしきあさぼらけかな)
明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな
(なげきつつひとりぬるよのあくるまはいかにひさしきものとかはしる)
なげきつつ ひとりぬる夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る
(わすれじのゆくすえまではかたければけふをかぎりのいのちともがな)
わすれじの 行く末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな
(たきのおとはたえてひさしくなりぬれどなこそながれてなほきこえけれ)
滝の音は 絶えてひさしく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ
(あらざらむこのよのほかのおもひでにいまひとたびのあふこともがな)
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの 逢ふこともがな
(めぐりあひてみしやそれともわかぬまにくもがくれにしよはのつきかな)
めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
(ありまやまいなのささはらかぜふけばいでそよひとをわすれやはする)
有馬山 猪名の笹原 風ふけば いでそよ人を 忘れやはする
(やすらはでねなましものをさよふけてかたぶくまでのつきをみしかな)
やすらはで 寝なましものを 小夜ふけて かたぶくまでの 月をみしかな
(おほえやまいくののみちのとほければまだふみもみずあまのはしだて)
大江山 いくのの道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立
(いにしへのならのみやこのやへざくらけふここのへににほひぬるかな)
古の 奈良の都の 八重桜 今日九重に にほひぬるかな
(よをこめてとりのそらねははかるともよにあふさかのせきはゆるさじ)
夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ
(いまはただおもひたえなむとばかりをひとづてならでいふよしもがな)
いまはただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
(あさぼらけうぢのかはぎりたえだえにあらはれわたるせぜのあじろぎ)
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
(うらみわびほさぬそでだにあるものをこひにくちなむなこそをしけれ)
うらみわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
(もろともにあはれとおもへやまざくらはなよりほかにしるひともなし)
もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに しる人もなし
(はるのよのゆめばかりなるたまくらにかひなくたたむなこそをしけれ)
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
(こころにもあらでうきよにながらへばこひしかるべきよはのつきかな)
こころにも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
(あらしふくみむろのやまのもみぢばはたつたのかはのにしきなりけり)
あらしふく 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の にしきなりけり
(さびしさにやどをたちいでてながむればいづこもおなじあきのゆふぐれ)
さびしさに 宿を立ちいでて ながむれば いづこもおなじ 秋の夕暮れ
(ゆふさればかどたのいなばおとづれてあしのまろやにあきかぜぞふく)
夕されば 門田の稲葉 おとづれて 葦のまろやに 秋風ぞふく
(おとにきくたかしのはまのあだなみはかけじやそでのぬれもこそすれ)
音にきく 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
(たかさごのをのへのさくらさきにけりとやまのかすみたたずもあらなむ)
高砂の 尾の上の桜 さきにけり 外山の霞 たたずもあらなむ
(うかりけるひとをはつせのやまおろしよはげしかれとはいのらぬものを)
うかりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは いのらぬものを
(ちぎりおきしさせもがつゆをいのちにてあはれことしのあきもいぬめり)
ちぎりおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり
(わたのはらこぎいでてみればひさかたのくもいにまがふおきつしらなみ)
わたの原 漕ぎいでて見れば ひさかたの 雲居にまがふ 沖つ白波
(せをはやみいはにせかるるたきがはのわれてもすえにあはむとぞおもふ)
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
(あはぢしまかよふちどりのなくこえにいくよねざめぬすまのせきもり)
淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に 幾代ねざめぬ 須磨の関守
(あきかぜにたなびくくものたえまよりもれいづるつきのかげのさやけさ)
秋風に たなびく雲の 絶え間より もれいづる月の 影のさやけさ
(ながからむこころもしらずくろかみのみだれてけさはものをこそおもへ)
ながからむ 心も知らず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ
(ほととぎすなきつるかたをながむればただありあけのつきぞのこれる)
ほととぎす 鳴きつるかたを ながむれば ただ有明の 月ぞのこれる
(おもひわびさてもいのちはあるものをうきにたへぬはなみだなりけり)
思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり
(よのなかよみちこそなけれおもひいるやまのおくにもしかぞなくなる)
よのなかよ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
(ながらへばまたこのごろやしのばれむうしとみしよぞいまはこひしき)
ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
(よもすがらものおもふころはあけやらでねやのひまさへつれなかりけり)
夜もすがら もの思ふころは 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
(なげけとてつきやはものをおもはするかこちがほなるわがなみだかな)
なげけとて 月やはものを 思はする かこち顏なる わが涙かな
(むらさめのつゆもまだひぬまきのはにきりたちのぼるあきのゆふぐれ)
村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮れ
(なにはえのあしのかりねのひとよゆえみをつくしてやこひわたるべき)
難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋わたるべき
(たまのをよたえなばたえねながらへばしのぶることのよわりもぞする)
玉の緒よ 絶えなば絶えね 長らへば しのぶることの 弱りもぞする
(みせばやなをじまのあまのそでだにもぬれにぞぬれしいろはかはらず)
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色は変はらず
(きりぎりすなくやしもよのさむしろにころもかたしきひとりかもねむ)
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに ころもかたしき ひとりかも寝む
(わがそではしほひにみえぬおきのいしのひとこそしらねかわくまもなし)
わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし
(よのなかはつねにもがもななぎさこぐあまのをぶねのつなでかなしも)
世の中は つねにもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも
(みよしののやまのあきかぜさよふけてふるさとさむくころもうつなり)
み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさとさむく 衣うつなり
(おほけなくうきよのたみにおほふかなわがたつそまにすみぞめのそで)
おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に すみぞめのそで
(はなさそふあらしのにはのゆきならでふりゆくものはわがみなりけり)
花さそふ あらしの庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
(こぬひとをまつほのうらのゆふなぎにやくやもしほのみもこがれつつ)
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
(かぜそよぐならのをがはのゆふぐれはみそぎぞなつのしるしなりける)
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
(ひともをしひともうらめしあぢきなくよをおもふゆえにものおもふみは)
人も惜し 人もうらめし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は
(ももしきやふるきのきばのしのぶにもなほあまりあるむかしなりけり)
百敷や ふるき軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり